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SaaS/ノーコード時代に必須となるiPaaSを比較 (国内編)

Last updated at Posted at 2023-03-02

仕事でSaaSやノーコード系のサービスを使用することが増えてきたため、SaaS同士を繋がないと仕事が回らなくなるとひしひしと感じています。そこで必要となるのがiPaaS(integration Platform as a Service)というSaaS同士を連携するクラウドサービス。きっとこれからSaaSを使う情シス/IT部門/ビジネスユーザーも同じ課題を感じることになると思うので、これまで集めてきた情報を比較も兼ねてまとめてみたいと思います。今回は国内事業者を対象としています。

なお、ここに書く内容は各ベンダーに許諾を得ているわけではありませんので、正確な情報は各社にお問い合わせください。

今回は調査対象を国内のiPaaSに限定しており、下記のようなETLやCDPに該当すると思われるサービスは除外しています。
・Reckoner:ノーコード型ETL https://reckoner.io/
 ターゲット:中小企業
 類似:ASTERIA Warp、Waha! Transformer
・trocco:データ分析基盤 https://trocco.io/lp/index.html
 ターゲット:大企業・中小企業
 類似:Dr.Sum
・Yoom:SaaS連携データベース https://lp.yoom.fun/
 ターゲット:中小企業
 類似:Treasure Data CDP、b→dash

また、iPaaSを謳う「DataSpider Cloud」は、価格表( https://www.hulft.com/software/dataspidercloud/adapter-option
)を見る限りでは接続可能なクラウドサービスが限定的であったりCPUや機能や容量で細かな料金設定がされていることから、クラウドネイティブなiPaaSとは乖離が大きいため除外をしております。EAIツール「DataSpider Servista」のクラウド版という位置付けから、iPaaSというよりはASTERIA WarpのようなEAIツールという認識です。
・DataSpider Cloud:EAI https://www.hulft.com/software/dataspidercloud
・DataSpider Servista:EAI https://www.hulft.com/software/dataspider
 ターゲット:大企業
 類似:ASTERIA Warp、Waha! Transformer

【iPaaS国内事業者の比較】 (五十音順)

ActRecipe (アクトレシピ)

https://www.actrecipe.com/
●ターゲット:大企業・中小企業
●サービス開始:2019年8月1日
●無料プランの有無:○
●価格:月額5万円より
●主な国内事例:セブン-イレブン・ジャパン、グリー、ANYCOLOR、ラクスル他
●特徴:国内企業によるiPaaSでは最も古く(といってもあまり差がない)、大企業を主なターゲットとしているとのこと。国内のiPaaSとしては唯一無料プランがあったり、iPaaSとしてはこれまた唯一銀行APIを含むFinTech対応をしていたり、業務フローがパッケージになっているレシピだけを提供していたりと、他のiPaaSにはない様々な特徴がある。当初は財務会計領域を中心に展開していたようだが、現在はバックオフィス周りに強みを持つとのこと。無料プランでは数十件のレシピが利用可能。レビューを見る限りだと大企業向けということもあって有償プランのサポートは充実している様子。企業間のSaaSを連携する特許を取得済み。
●私見:公開されていた資料を見ると解約率が0%らしくて凄い。連携リリースも途切れることなく行われており、他社にはない連携や特徴が個人的にはとても興味深く今後に期待が持てる。無償のFreeプランは中小企業でも手軽に使えるように設けられているとのこと。有償のStandardプランが月額5万円と、大企業向けとしては安すぎるので、個別見積もりのProfessionalプランの金額が気になるところ。

Anyflow (エニーフロー)

https://anyflow.jp/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2019年11月29日 (2023年3月時点で新規受付停止)
●無料プランの有無:-
●価格:月額3万円より
●主な国内事例:キラメックス、マツリカ、タミー他
●特徴:元々クラウド型のRPAを展開していてピボットして生まれたサービスとのこと。一時期は「日本版Zapier」を目指されており、海外のiPaaSが連携できていない国内SaaSを中心に連携を進められていた。主に中小企業で使用されるSaaS連携を中心に行なっていたため、中小企業向けと考えられる。サービスリリースから半年くらいは様々な連携リリースが出されており期待ができたが、2020年中頃からでニュースリリースが停止してしまっており、今後サービス提供を継続されるのかは要確認。(追記:2023年3月時点で「一般企業向けのAnyflowは現在新規受付を停止しております。」とのこと)
●私見:2020年前後にいくつかのピッチイベントで優勝をしたり、資金調達をして話題になったスタートアップ。特徴に記載の通り、最近はあまり目立った動きがなかったものの2022年12月にSaaS事業者向けの「Anyflow Embed」を提供しているのでこちらに再ピボットか。

bindit (バインディット)

https://www.bindit.jp/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2022年4月26日 (クローズドβ開始)
●無料プランの有無:○
●価格:月額3万円より
●主な国内事例:ユニリタ(自社利用)
●特徴:執筆時点ではクローズドβのみの提供となる、ユニリタ社によるiPaaS。事例も自社利用のみのため詳細は把握できないものの、公開されている情報を確認する限りでは個人のタスクの自動化にフォーカスされているようなので主なターゲットは中小企業と思われる。今後の展開に注目。
●私見:国内サービスとしては後発ということもあってか、「レシピを選ぶだけ」というActRecipeと同じ表現をしていたり、「シンプルで直感的なUI」というAnyflowと同じ使い勝手を謳っており、サービスとしてのオリジナリティを感じられない。直近の会社全体の営業利益が赤字であることからサービスへの大規模な投資や急拡大は難しい印象。

BizteX Connect (ビズテックスコネクト)

https://service.biztex.co.jp/connect/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2020年5月11日
●無料プランの有無:○
●価格:月額3万円より
●主な国内事例:スターフェスティバル、アドウェイズ、デジタルガレージ他
●特徴:クラウド型のRPAを提供している会社によるサービス。「BizteX cobit」というRPAとの連携によって、SaaSを含むシステムと連携してワークフローの自動化や一元化を目指す。ノーコードで営業部門、マーケティング部門、人事・労務等の管理部門まで幅広い部門の業務効率化を実現するとのこと。TIS社と資本業務提携を行い、TIS社の提供するAI-OCRやチャットボット連携を進める。
●私見:サービスが発表されたタイミングもWebサイトの作りもAnyflowに近く、価格帯も同じことからAnyflowを競合と位置付けている様子。Anyflow同様にサービス開始直後は勢いがあったが、最近はリリースの頻度は高くないことから、iPaaS単体にあまり力を入れている印象がない。

HULFT Square (ハルフトスクウェア)

https://www.hulft.com/hulft_square
●ターゲット:大企業
●サービス開始:2022年6月8日
●無料プランの有無:-
●価格:月額24万円より
●主な国内事例:日清食品ホールディングス他
●特徴:2023年2月8日に正式リリースされたグローバル対応のiPaaS。ファイル連携ミドルウェアの「HULFT」を提供するセゾン情報システムズ社が満を持してリリースしたサービスであり、HULFTやDataSpiderの顧客基盤や既存商材を活かした展開や連携を進めるものと思われる。価格は国内のiPaaSの中では高めの設定。グローバル展開を見据えていることからInformaticaやBoomi、Workato等を意識したサービス展開が予想される。
●私見:非公式な情報ながら開発費は10億円を超えるようで、大企業向けということもあり重厚長大なシステムの印象。料金表を見るとCPUライセンスのようなものがあるためiPaaSというよりもSaaS型データ連携ツールではないかと思う。(同様に海外のInformaticaもiPaaSと呼ぶかには賛否がある)

JENKA (ジェンカ)

https://jenka.jp/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2023年4月
●無料プランの有無:○
●価格:初期費用10万円、月額5万円
●主な国内事例:-
●特徴:元々「RoboTANGO」というRPAを提供していた企業によるiPaaSなのでBziteX社のモデルの模倣と思われる。連携しているサービスやユースケースもBizteX社と似ており、公開情報では特徴らしい特徴がない。
●私見:上場企業の子会社なので赤字を掘っていくことはあまり考えられず、RPAとシナジーがあり儲かりそうだから始めた事業のように見える。

SaaStainer (サーステイナー)

https://saastainer.com/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2020年12月1日
●無料プランの有無:○
●価格:月額1.1万円より
●主な国内事例:ボンズコミュニケーション、PRONI、radiko他
●特徴:SaaSの導入等を行うストラテジット社によるサービス。Master HubというSaaS事業者向けのiPaaSでSaaStainerのアプリを作成されているとのこと。SlackとTeamsを連携するアプリのような「ありそうでなかったニッチな連携」や、あまり利用されていないSaaSの連携アプリもあり興味深い。アプリ単位の販売のためニーズが限定されている場合やスモールスタートには最適。アプリの数は数十件。2022年12月時点で国内最多を謳う1,500社以上が利用しているとのこと。
●私見:SaaStainerはiPaaSというよりもデータ連携のアプリを公開・販売するアプリマーケットという印象なため一覧に加えるかは迷いましたが、SaaS連携だけをするという点ではほぼiPaaSなので加えました。おそらく、ActRecipeにおけるレシピがSaaStainerにおけるアプリで、どちらもSaaSのように処理が固定なためカスタマイズはできなそう。事例にはいくつか企業名が並んでいるものの「事業者としての採用」なのか「ユーザーとしての採用」の判断が難しいです。

【関連:SaaS事業者向けiPaaS】

上記のサービスはいずれもiPaaSを利用する一般企業向けのものですが、一般企業ではなくSaaS事業者向けのiPaaSというものも存在するため簡単にまとめたいと思います。

■Anyflow Embed https://anyflow.jp/products/embed
●サービス開始:2022年12月9日
●内容:一般企業向けのAnyflowをSaaS事業者向けにピボット(?)したサービス。最短数時間で利用可能になるとのこと。特許出願中。

■Datable https://datable.jp/
●サービス開始:2022年3月17日
●内容:2022年9月に2.25億円の資金調達をして話題になったサービス。既に200種類以上のサービスとの連携が可能とのこと。

■hubflow https://hubflow.jp/
●サービス開始:2023年3月14日 (β版リリース)
●内容:β版がリリースされたばかりのSaaS事業者向けのiPaaS。「どこどこJP」と連携しているWebサイトに組織(法人や団体など)からアクセスがあるとSlackやChatworkに通知する、という連携を提供。今後の展開に注目。

■Master Hub https://www.strategit.jp/vendor-saas/
●サービス開始:2020年2月
●内容:一般企業向けのSaaStainerを提供するストラテジット社によるSaaS事業者向けのiPaaS。国内ではいち早く事業者向け対応をしており、既に様々な実績がある様子。特許取得済み。

【補足】
「サービス開始」と記している日付は利用規約の制定日やプレスリリースの日付としています。

【まとめ】

忖度なく入手可能な情報を目に映ったままを書き起こしてみました。繰り返しになりますが、正確な情報は各社にお問い合わせください。
上述のサービスだけでも「大企業向け」「中小企業向け」「事業者向け」という違いがあり特徴も様々なので、一概に「どのiPaaSが最も良いか」というのは難しいです。利用される企業の規模や目的に応じて柔軟に検討することが重要ではないかと思います。また、前述したETLやCDPとiPaaSの違いは一見すると判断がつかないため、利用者向けにはもっと情報が充実する必要がありそうです。最近ではITreviewやITトレンドといった比較サイトにiPaaSというカテゴリーができているようなので、これらのサイトに情報が集約されることにも期待をしたいです。
「iPaaS」というカテゴリー自体が日本ではまだ確立しきっていないこともあるので、今後は頻度が高く情報発信をしているサービスが必然的にシェアを獲得していくのではないかと思います。競合となる海外事業者に負けないためにも国内事業者にはがんばってほしいです。

次回は海外事業者についてまとめたいと思います。

追記:海外編を書きました。
SaaS/ノーコード時代に必須となるiPaaSを比較 (海外編)
https://qiita.com/jsys/items/350a989c5b4378db07d0

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