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SaaS/ノーコード時代に必須となるiPaaSを比較 (海外編)

Last updated at Posted at 2023-03-11

前回( https://qiita.com/jsys/items/dae313d3a51dce1c9dd0 )は国内のiPaaS事業者を対象にしましたので、今回は海外の事業者を対象にまとめたいと思います。

なお、ここに書く内容は各ベンダーに許諾を得ているわけではありませんので、正確な情報は各社にお問い合わせください。

今回は調査対象を海外のiPaaSに限定しており、2023年1月にガートナーが発表した「Magic Quadrant for Enterprise Integration Platform as a Service」に記載のサービスを中心にまとめています。なお、Oracle, SAPはシェアが大きいものの専業ではないので除外しています。TIBCO SoftwareはiPaaSよりもBI色が強いので除外しています。個人的にSnapLogic, Jitterbit, Celigoは勢いを感じるiPaaSですが調査に限界があったので今回は除外しています。(いずれ追加するかもしれません)

Magic Quadrant for Enterprise Integration Platform as a Service (January 2023).png

【iPaaS海外事業者の比較】 (五十音順)

Boomi (ブーミー)

https://boomi.com/
●ターゲット:大企業
●サービス開始:2007年
●無料プランの有無:-
●価格:月額2,083ドルより
●主な国内事例:JERA、DNP情報システム他
●特徴:老舗のミドルウェアツール。2007年にiPaaSの原型となる「AtomSphere」をリリース。2010年11月にDELLに買収された後は「DELL Boomi」ブランドだったが、その後2021年5月にFPに売却され「Boomi」となった。ローコードで利用可能。インテグレーション、データハブ、API管理等、幅広い機能を提供。日本語対応不明。
●私見:2021年頃から国内でのプロモーション活動を積極的に行っており、採用も強化している。2023年に入ってからもiPaaS推しが強い。2023年1月に発表されたガートナーのMagic Quadrant for Enterprise iPaaSでは大きくポジションを落としているのが気になるところ。

IFTTT (イフト)

https://ifttt.com/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2013年7月
●無料プランの有無:○
●価格:月額11.25ドルより
●主な国内事例:個人利用多数(オフィシャルな企業事例は確認できず)
●特徴:TwitterやAlexaやInstagram等の連携を手軽にできるツール。ノーコードでSaaS間連携ができる一定のリテラシーがあるユーザ向け。日本語非対応。
●私見:個人を中心に人気があり、細かなタスクの自動化に向いているiPaaS。Twitter連携で頻繁に利用されている印象があるが、Twitter APIの有料化でどうなるのか気になるところ。対応しているSaaSのラインナップを見る限りだと業務での利用は不向き。

Informatica (インフォマティカ)

https://www.informatica.com/
●ターゲット:大企業
●サービス開始:2010年 (クラウド版リリース)
●無料プランの有無:-
●価格:非公開
●主な国内事例:クックパッド他
●特徴:老舗のデータ連携ツールでありiPaaSとしても提供。1999年にNASDAQ上場、2015年8月にMicrosoftやSalesforce Ventures等の出資によりNASDAQ上場廃止。2021年10月ニューヨーク証券取引所に上場。エンタープライズ企業向けであり、価格は非公開であるものの非常に高価。クラウドだけでなくオンプレミスを含むシステム統合に向く。日本語対応。
●私見:あらゆるシステムを統合する重厚長大なサービス。2023年1月に発表されたガートナーのMagic Quadrant for Enterprise iPaaSではそれまでリーダーポジションだったのに掲載されなくなっている点が気になるところ。クラウド版と言いつつも中身はパッケージのため一部では「iPaaSではない」と言われている。(MQから除外された理由にも関係がある?) 国産のDataSpider Cloudも同様に中身がパッケージのためiPaaSではないとされる側面がある。

make (旧:integromat) (メイク)

https://www.make.com/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2016年
●無料プランの有無:○
●価格:月額9ドルより
●主な国内事例:個人利用多数(オフィシャルな企業事例は確認できず)
●特徴:2020年10月にCelonisに買収されたiPaaS。IFTTTと同様にノーコードでSaaS間連携ができる一定のリテラシーがあるユーザ向け。LINE等の一部の国内サービスにも対応している。日本語非対応。
●私見:無料で使えることもあってここ最近人気のサービス。日本でも個人やノーコーダーを中心に使用されている。2023年1月に発表されたガートナーのMagic Quadrant for Enterprise iPaaSには掲載されなくなっている。

MuleSoft (ミュールソフト)

https://www.mulesoft.com/
●ターゲット:大企業
●サービス開始:不明 (設立は2006年)
●無料プランの有無:-
●価格:非公開
●主な国内事例:アシックス、住友商事、ユニリーバ他
●特徴:2006年に創業し、2018年5月にSalesforceに買収されたiPaaS。オープンソースの旧MuleSourceをベースにサービスを提供する。複雑なコーディングによって連携ができるため、利用するには高いリテラシーが要求される。Boomiと同様にインテグレーション、データハブ、API管理等の機能を持つ。日本語対応不明。
●私見:Salesforceによる買収で非常に話題となったiPaaS。iPaaSが日本で広まるきっかけともなった。会社としては独立しているもののSalesforce色が強いため、Salesforce以外の連携に使用されている印象はない。同一ブランドのRPA「MuleSoft RPA」を開始することをアナウンスしているため、オンプレミスからクラウドまでを自動化する様子。

Power Automate (パワーオートメイト)

https://powerautomate.microsoft.com/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2016年10月
●無料プランの有無:-
●価格:月額2,248円より
●主な国内事例:個人利用多数(オフィシャルな企業事例は確認できず)
●特徴:Microsoftが提供するiPaaS。類似のPower AppsはRPA。Microsoft365にバンドルされているため手軽に始められる。Power AutomateもノーコードでSaaS間連携ができる一定のリテラシーがあるユーザ向け。日本語対応。
●私見:IT業界の巨人が提供するiPaaSだけあって利用者も多い。リスキリングや内製化の流れによって社内教育でPower Automateを強化する企業も出てきている。機能は豊富だが、実現したいことができなかったり原因不明の不具合にも遭遇するため、使えそうで使えない場面がある。

Workato (ワーカート)

https://workato.com/
●ターゲット:大企業
●サービス開始:2013年 (設立年)
●無料プランの有無:-
●価格:年額84万円より
●主な国内事例:コインチェック、ディーエヌエー、メルカリ他
●特徴:2018年に日本での提供も開始し、2021年11月には日本法人を設立。2019年頃よりSIerを中心にパートナーセールスを展開。WorkatoもノーコードでSaaS間連携ができる一定のリテラシーがあるユーザ向け。社内に自動化の専任者がいる場合に有効。日本語は対応予定とのこと。
●私見:日本法人設立直後から鬱陶しいと話題になった桃太郎のタクシー広告を展開するなど、様々なプロモーションを実施していたが、最近は落ち着いている。パートナー企業が個別にプロモーションをしたりコネクタを作っていて、競合しあっている感じなのが不思議。(workatoでググるとよくわかる) 特定のパートナーが月額5,000円で提供しているが、ちゃんと使おうとすると高価。国産iPaaSのActRecipeと同様に「レシピ」を強調している。

Zapier (ザピアー)

https://zapier.com/
●ターゲット:中小企業
●サービス開始:2012年
●無料プランの有無:○
●価格:月額3,161円より
●主な国内事例:メルカリ、フォースタートアップス他
●特徴:iPaaSの中では最大手のスタートアップで、2021年3月時点で評価額は約5700億円。ZapierもノーコードでSaaS間連携ができる一定のリテラシーがあるユーザ向け。連携サービスが非常に多いので、社内に自動化の専任者がいる場合には手軽に自動化ができる。日本語非対応。
●私見:iPaaSと言えばZapierというくらい国内でも有名なサービス。無料でも使えるため個人を中心に利用されており、一部の企業でも社内業務の自動化に使用されている。細かな要件を盛り込もうとすると機能が足りておらずできなかったりすることや、密なサポートを受けることが難しいため、大企業での利用は難しそう。

【まとめ】

海外は日本とは異なりiPaaS市場が本格的に盛り上がっているので、非常にプレイヤーが多いです。
またSalesforceに買収されたMuleSoftが代表的な例ですが、毎年のようにiPaaS事業者がSaaS事業者によって買収されています。直近5年だけでも以下のような買収事例がありますが、SaaSがシェアを拡大するにはiPaaSが必要になるので今後も同様の買収が続くと思います。

2018年:SalesforceがMuleSoftを買収
2019年:HubSpotがPieSyncを買収
2020年:Celonisがmake(旧:Integromat)を買収
2021年:WorkivaがOneCloudを買収
2021年:NotionがAutomate.ioを買収

前回の国内事業者と今回の海外事業者を比べるとわかりやすいですが、やはり海外のiPaaSの方が機能も多く認知度も高いです。一方で、海外のiPaaSではローカライズ(日本語対応)ができていなかったり、日本のSaaSに対応していなかったり、サポートが十分でなかったりと、日本の企業が本格的に使うためにはまだまだハードルが多くあり、その意味では国内のiPaaS事業者には十分勝機も商機もあると思います。

この記事はiPaaS事業者さんから1円もいただいておらず勝手に書いているのですが、継続してウォッチしながら記事のアップデートもしていきたいと思います。

前回も触れました通り、「iPaaS」と言っても「中小企業向け」「大企業向け」「SaaS事業者向け」「エンジニア向け」「非エンジニア向け」等々の様々な種類があります。一緒くたになっていると「結局何ができるのかわからない」となってしまうので、次回は種類ごとに特徴をまとめてみたいと思います。

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