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40万件のAI承認を分析したら、見逃し率が3倍違った — 危ないものほど、ちゃんと止められている

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Last updated at Posted at 2026-08-06

Claude Code を使っていると、こう聞かれます。

このコマンドを実行しますか?
  rm -rf ./build

  1. はい
  2. いいえ

これ、毎回ちゃんと読んでいますか。

先日、409,000件の承認/拒否判断を集計したデータが公開されました。結果は平均正答率 66.3%。3回に1回、危険なコマンドを通していたことになります。

ただ、面白いのはここではありません。

見逃し率が、コマンドの種類によって3倍違いました。


危ないものほど、止められている

集計されたデータの内訳がこれです。

脅威の種類 見逃し率
明白な破壊的操作 11.7%
永続的な変更 23.8%
持ち出し・コード実行 33.4%
スコープ違反 35.0%

一番上と一番下で、約3倍の開きがあります。

つまり、いかにも危なそうなコマンドは、ちゃんと止められている。冒頭の rm -rf みたいなやつです。あれは目に入れば分かります。

止められていないのは、一見すると普通に見えるものでした。

「スコープ違反」は、コマンド自体は正常なのに、触ってはいけない範囲に手を出しているというものです。単体で見れば何の問題もない。文脈を知らないと判断できません。


なぜ判断できないのか

ゲームを作った Alex Wauters(元 Uber の Staff Engineer)が、こう言っています。

developers don't always have the context of what has changed to quickly determine the risk
(開発者は、リスクを素早く判断するために必要な「何が変わったか」の文脈を、常に持っているわけではない)

これが核心だと思います。

承認プロンプトに出てくるのはコマンドそのものです。でも危険かどうかを決めるのは、そのコマンドが何に対して実行されるかのほう。

  • rm -rf ./build危なそうに見えるが、ビルド成果物なら問題ない
  • cp config.json /tmp/普通に見えるが、中身がAPIキーなら持ち出しになる

判断に必要な情報が、プロンプトに出ていない。目の前の文字列だけで判断させられているわけです。

だから「危なそうな見た目かどうか」で選別することになる。そして実際の危険度は、見た目とは別の軸で決まる。


回数を重ねるほど、雑になる

もうひとつ、データに出ていた傾向があります。

最初の数コマンドでは正答率が上がるのに、セッション後半に向けて見逃し率が上がっていく。慣れると読まなくなる、というやつです。

これを裏付ける数字が、Anthropic 側から出ています。The Register の記事によると、実際のテレメトリではユーザーは約93%の許可プロンプトを承認しているとのことでした。

そして同じく Anthropic の指摘として、こう書かれています。

The more approvals a user sees, the less attention they pay to each
(承認を目にする回数が増えるほど、ひとつあたりに払う注意は減っていく)

ゲームの被験者だけの話ではない、ということになります。


じゃあ、どうするか

「気をつけて読む」では解決しません。注意力を上げる方向の対策は、回数が増えると必ず崩れます。

データが示しているのは、種類によって難易度が違うということでした。なので、種類で分けて扱うのが素直だと思います。

種類 人間の目で足りるか
明白な破壊的操作 足りる(見逃し11.7%。目に入れば分かる)
スコープ違反 足りない(見逃し35.0%。文脈がないと判断不能)

上は承認プロンプトのままでいい。問題は下です。

スコープ違反は、人間に見せる前に潰すしかありません。

  • 触ってよいディレクトリを設定で制限する
  • 本番環境の認証情報を、そもそも実行環境に置かない
  • 到達できないホストは、ネットワークレベルで遮断する

つまり、「承認するかどうか」の場面に持ち込まない。持ち込まれた時点で、35%の確率で通ってしまうからです。


このデータの限界

鵜呑みにしないために、気になった点を書いておきます。

査読された研究ではありません。 ベルギーの開発者が作ったブラウザゲームのデータを、本人が集計して公開したものです。

脅威の割合が現実より高い。 ゲームでは約34%が危険なコマンドでした。The Register も「実際の開発者が日常で遭遇する割合よりはるかに高い」と指摘しています。3回に1回危険が混ざる環境なら、警戒度も現実とは違うはずです。

被験者が自己選択です。 面白がってプレイした人の結果なので、業務中の承認精度そのものではありません。

とはいえ、種類によって見逃し率が3倍違うという傾向と、Anthropic の実データ(93%承認)が同じ方向を向いている点は、無視しにくいと思います。


まとめ

  • 409,000件の承認判断で、平均正答率は66.3%
  • ただし内訳が重要で、見逃し率は種類によって3倍違う
  • 明白な破壊的操作は11.7%しか見逃されていない。 目に入れば分かる
  • 見逃されるのはスコープ違反(35.0%)。 コマンド単体では正常に見えるもの
  • 原因は、判断に必要な文脈がプロンプトに出ていないこと
  • 対策は「注意して読む」ではなく、危ない種類を承認画面まで持ち込まないこと

自分が普段どのプロンプトを承認しているか、一度思い出してみてください。「見るからに危ないもの」を止めた記憶はあっても、「普通に見えたもの」を止めた記憶は、あまりないかもしれません。


参考

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