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スキルの採点ツールは、書いてある内容が正しいかを見ていない

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Last updated at Posted at 2026-08-26

自分で書いた Agent Skill の中に、規格の定義が正反対で書かれているのを見つけました。

しかもそれを、スキルの品質を採点するツールにかけても、点数はほとんど動きませんでした。

この記事は、その実験の記録です。

検証環境: Windows 10 / Claude Code 2.1.243


何が間違っていたか

境界値分析(Boundary Value Analysis)を扱うスキルです。ISTQB の教科書どおりに書いたつもりでした。

| 2-point | 境界値そのもの + 隣接 1 値 | min, min+1, max-1, max の 4 点 |

これが逆です。 ISTQB Foundation Level Syllabus v4.0.1 §4.2.2 の原文はこうです。

In 2-value BVA (Craig 2002, Myers 2011), for each boundary value there are two coverage items: this boundary value and its closest neighbor belonging to the adjacent partition.
(2-value BVA では、各境界値につき2つのカバレッジ項目がある。その境界値と、隣接パーティションに属する最も近い隣接値である)

「隣接パーティション」は範囲の外側です。[min, max] なら min-1max+1。私が書いた min+1max-1内側で、まったく別のものを指していました。

さらに悪いことに、同じ文書の中で矛盾していました。

(説明文)境界値そのものと、境界を1だけ越えた値の組を取る
(結論) (min, min+1) と (max-1, max) の 4 点セットが正しい

「越えた値」と書きながら、越えていない値を挙げています。 書いた本人が読み返しても気づきませんでした。


採点ツールにかけてみた

いま Agent Skills を評価するツールがいくつかあります。その1つ、darwin-skill は9次元のルーブリックで100点満点の採点をします。

# 次元 重み
1 Frontmatter Quality 7
2 Workflow Clarity 12
3 Failure Mode Encoding 12
4 Checkpoint Design 6
5 Actionable Specificity(具体的なパラメータ・形式・例) 18
6 Resource Integration 4
7 Overall Architecture 12
8 Measured Performance 23
9 Anti-patterns / Blacklist 6

定義が逆だった版と、修正後の版を用意して、独立したエージェントに採点させました。 互いの存在は知らせていません。

定義が逆の版 : 38.8 / 100
修正後の版   : 54.6 / 100

(2026-08-25 時点の採点。LLM の採点なので、同じ入力でも実行のたびに数点は動きます。

15.8点の差がつきました。 ただしこの比較には大きな穴があります。 別々のエージェントが片方ずつ採点したので、採点者の甘辛が混ざっています。darwin-skill 本来の設計は「1人が両方を1回で読む」ペア評価なので、そこは再現できていません。

点数は動いたが、そこではない

見るべきは合計ではなく、どの次元が動いたかです。

定義の誤りが直接関わる次元5(Actionable Specificity、重み18)は、6点から7点。1点しか動いていません。

理由を考えると、当たり前でした。次元5が評価するのは「具体的なパラメータ、形式、例があるか」です。

| 2-point | 境界値そのもの + 隣接 1 値 | min, min+1, max-1, max の 4 点 |

これは極めて具体的です。 パラメータも点数も明示されています。内容が逆であることは、この軸では減点になりません。

具体的に書かれた誤りは、むしろ高得点になります。

darwin-skill のルーブリックを読み直すと、9次元のどこにも「引用した事実が正しいか」がありません。 次元6(Resource Integration)は「参照先のパスが辿れるか」を見ますが、中身の正しさは見ません。

自作の評価スキルも同じだった

スキルそのものを監査する自作のスキルもあります。念のため、同じ観点で調べました。

規格   : 0 件
引用   : 0 件
出典   : 0 件
事実   : 0 件
正確   : 0 件

1件もヒットしません。 見ているのは description の書き方、行数、frontmatter の記法、スキル同士の競合でした。

「スキルとしての品質」と「書いてある事実の正しさ」は、別の軸です。 私は前者しか測っていませんでした。


聞いたら、気づいた

ここからが本題です。

採点を頼むとき、ルーブリックとは別にこう書き添えていました。

このドキュメントに問題があると感じた箇所があれば、次元に関係なく指摘してください

2人とも、矛盾を見つけました。

最重要:同一セクション内の直接矛盾
表:2-point = min, min+1, max-1, max(内側寄せ)
本文:2-value = (min-1, min)(max, max+1)
正しいのは本文側で、表が誤りです。

点数には出ないが、聞けば分かる。 これが実験でいちばん意外だった点です。

しかも、私が見落としていた誤りまで拾ってきました。

  • ISO/IEC 29119-4 §6.2 — 29119-4 は Clause 5 が仕様ベース技法、Clause 6 は構造ベース。BVA が §6.2 に来るのは考えにくい
  • ISTQB ATA v3.1.2 §1.3.2 — ATA の第1章は risk-based testing で、技法は別章
  • BS 7925-2:1998 §5.1.2本文から一度も引かれていない孤立参照

どれも有料規格で、私には裏が取れません。 そこで条番号を伴う参照そのものをやめました。 規格名は残し、番号だけ落とす。29箇所ありました。

無料で公開されている ISTQB Foundation Level Syllabus を一次の根拠にする、という方針に切り替えています。

ただし、1件は誤りだった

2人が一致して指摘した項目が6件ありました。そのうち1件は外れです。

prompt_injection_detected が飾りになっている。出力JSONにあるのに、検出手順が本文に一切ない

手順は存在しました。 別のファイル(共通プロンプトのテンプレート)にあり、しかも良く書けていました。

PII 候補そのものを引用してはならない。「phone-like 11 digits in line 234」のような汎用表現で記録する(本 skill 自体が PII を漏らさないため

2人とも、渡されたファイル1本しか見ていませんでした。 そのファイル単体では確かに欠落に見えます。

一致は信頼の材料にはなりますが、正しさの保証ではありません。 指摘をそのまま受け入れていたら、既にある手順を二重に書くところでした。

指摘を鵜呑みにしないのは、AI の指摘でも同じです。


何をどう直したか

結局、今日の作業はこうなりました。

直したもの 箇所
2-point の定義(正反対だった) 41
参照している節番号の誤り 11
裏の取れない条番号の削除 29
存在しない論文引用の差し替え 1

41箇所と29箇所という数字が、この問題の性質を表しています。 定義を1つ間違えると、それを参照する側に全部伝播します。採点ツールを何度回しても、この41箇所は減りません。


まとめ

  • スキルの採点ツールは、構造を測る。 手順の明確さ、具体性、失敗時の分岐、チェックポイント
  • 書いてある事実が正しいかは、どの次元にも入っていない(darwin-skill の9次元、自作の監査スキルとも)
  • 具体的に書かれた誤りほど、具体性の次元では高得点になる
  • ルーブリックとは別に「問題があれば指摘して」と頼むと、LLM は矛盾に気づく。 点数には出ない
  • AI の指摘も鵜呑みにしない。 2人が一致した指摘のうち1件は誤りだった
  • 有料規格の条番号は書かない。 裏が取れないものは、規格名だけ残して番号を落とす

点数が上がることと、中身が正しいことは別です。 採点ツールを使うなら、点数とは別に「おかしいところはないか」を聞く工程を足しておくと、拾えるものが変わります。


参考

※ 引用は原文と日本語訳を併記しています。訳は読みやすさを優先しているので、正確な表現は原典をご確認ください。

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