同じプロンプトを2回実行した。文章の分量はほぼ同じだった。請求は1.56倍違った。
理由は単純で、課金対象に「thinking」が含まれているからだ。問題は、この数値が出力テキストを見ても分からないことにある。画面に現れた文章の文字数や語数からコストを概算するやり方 — 見積り・単価比較・コスト管理で普通にやるやり方 — は、思考モデルでは基準そのものがずれる。
本稿は、文書作成タスクでGemini 3.8 Flashを2走させた生のusageMetadataを材料に、見積りがどの層で壊れるかを分類し、読者が自分の請求に5分で当てはめられる検算手順を出す。思考系モデルならどこでも使える原則で、測定例がGemini 3.8 Flashという話。
この記事で確定する判断は1つ:
コストの見積りと単価比較は、usageMetadata (または同等のusage明細) の実数で行う。可視出力からの逆算、1走だけの数値の流用は、どちらも根拠にしない。
まず検算手順 — 手元の請求に5分で当てはめる
結論だけ欲しい人のために、手順を先に出す。思考系LLM (Gemini 3.8・o系・Claude思考モード等) をAPIで使っているなら、今すぐ確認できる。
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レスポンスのusage明細を開く。 Gemini RESTなら
usageMetadataのcandidatesTokenCount(可視出力) とthoughtsTokenCount(思考) を見る。OpenAI系ならusage.completion_tokens_details.reasoning_tokens。CLIしか使っていない場合も、--verboseやデバッグ出力でトークン明細が出る経路を探す。 - 課金出力 = 可視 + 思考 を足す。思考モデルのoutput単価はこの合算に掛かる (Gemini 3.8 Flashの公式単価は明記: "Output (incl. thinking tokens)")。
- 同じプロンプトをもう1回走らせ、幅を見る。 ここが本稿の主張。1走の値は幅を持つ (次節の実測で1.56倍)。見積りに1走の数値をそのまま使うなら、幅を注記する。
CLI経路で明細が出ない場合の注意は後の「壊れる層」で扱う。
実測 — 同じ入力で1,408と2,201
同一プロンプト (本業の文書作成タスク・入力778トークン) をGemini 3.8 Flashに2回走らせたときのusageMetadata実数 (実測日 2026-09-11) がこれ。raw応答JSONを含む再現一式は測定記録として保管してあり、同一実測の詳細は次節の姊妹記事で追える。
| 走 | 入力 | 可視出力 (candidates) | 思考 (thoughts) | 課金出力 (合算) | 思考の占め率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1走目 | 778 | 489 | 919 | 1,408 | 65% |
| 2走目 | 778 | 495 | 1,706 | 2,201 | 78% |
注目すべきは2つ。
可視出力はほぼ同じ (489 vs 495・差1.2%)。タスクの難しさや出力の分量が変わったわけではない。思考が1.86倍に跳ねた (919 → 1,706)。モデルは2回目、ほぼ同じ答えを導くのに倍近い思考を費やした。
金額にすると、output単価$3.75/1M (期間価格) で、課金出力の差は$0.0053と$0.0083 — 同じ作業なのに同じ入力でこの幅が出る。小さい額に見えるかもしれないが、この比がそのままバッチ処理や毎時実行の請求に乗る。実行規模に比例して、差もそのまま比例して返ってくる。
見積りが壊れるのは3つの層
実測を踏まえると、「可視出力からコストを当てにする」やり方は、層ごとに別々の理由で壊れる。自分の見積りがどの層の話かを切り分けると、直す場所が決まる。
層1: 可視出力の逆算。 出力の文字数・語数からコストを概算する方法。思考が課金対象に含まれる限り、可視出力は請求の下限にすらならない。実測では請求の65〜78%が思考だった。逆算は系統的に過小になる。
層2: 明細が出ない経路。 CLIや一部のラッパーはトークン明細を出さない。思考分が隠れたままなので、利用者は過小評価に気づけない。トークン明細が出ない経路では、課金側の明細 (請求・利用額画面) で同じプロンプト2走分の差を直接確認するのが現実的な代替になる。Gemini 3.8 Flashで隣接実測した姊妹記事 (Gemini 3.8 Flash vs GPT-5.6 Sol — 週報起草の実タスクで品質・コスト・可用性を実測した) の通り、usageMetadataの実数を見る経路を用意するのが先。明細のない経路の体感コストは「見えている出力」ではなく「見えていない思考込み」で動いている。
層3: 単価表の並び。 output単価の安さで選ぶ比較も、思考を含まない読み方をしていると崩れる。実測では、可視出力が小さい競合 (GPT-5.6 Sol・可視508〜556トークン・o200k換算 — 姊妹記事で実測) との正規化比較で、単価が高い側が安いと逆転した。「output $3.75 vs $X」の表を比較するなら、タスク全体のトークン実数で正規化してから比べる。
他のモデルでも同じか — 原則の一般化と限界
水平展開の話を先にする。本稿の原則 — 課金出力は可視+思考で、走ごとに幅を持つ — は思考系モデルの課金構造一般に由来するもので、Gemini固有ではない。usageMetadata / usage / デバッグ明細のいずれかで実数を見る手順は、思考系モデル全般でそのまま使える。
ただし実測は単一モデル・単一タスクの2走という限定がある。思考の占め率が65〜78%になるのがGemini 3.8 Flash特有なのか、文書作成タスク特有なのか、本稿だけでは分からない。幅の大きさはタスクとモデルで変わるはずで、「どれくらいブレるか」は各自のプロンプトで測る価値がある。それをやるための手順が冒頭の3ステップである。
もう一つの期限つきの条件が単価だ。公式のpricing頁はこうだ (取得日 2026-09-10・2026-09-17に再確認):
Input: "$0.75 through December 31, 2026. $1.50 starting January 1, 2027." / Output (incl. thinking tokens): "$3.75 through December 31, 2026. $7.50 starting January 1, 2027."
つまり期間価格は2026-12-31まで: input $0.75・output $3.75/1M。2027-01-01からは倍額 ($1.50・$7.50)。つまり「思考が課金の7〜8割」の構造はこのままでも、金額は年内で倍額になる。見積りの前提に日付を入れておくべき理由はここにある。
まとめ — 記録の様式だけ持ち帰ってほしい
- 思考モデルの課金出力 = 可視 + 思考。単価は合算に掛かる。
- 同じ入力でも走ごとに幅が出る (実測1.56倍)。見積りに幅を注記する。
- 可視出力の逆算は過小になる。明細のない経路の体感は根拠にしない。
- 単価比較はタスク全体の実数で正規化してから行う。
あなたのタスクで1回ではなく2回走らせて、幅を1行で記録しておく — 見積りの信頼性は、その1行の有無で分かれる。幅×実行回数で月次の請求幅も1行で出るので、月額の見積りにそのまま転記できる。
※本稿はConnectivebyte AI編集部 (cb-ai-editorial) の制作過程で起草した実測記録です。測定データ (raw応答JSON・再現スクリプト) は測定記録として保管しています。