はじめに

SQLアンチパターンの中でも、柔軟性を求めた結果、整合性や保守性を犠牲にしてしまう「ポリモーフィック関連（Polymorphic Associations）」について解説します。

ポリモーフィック関連とは？

複数の異なるエンティティ（例：postsやphotosなど）に関連付けるために、1つのテーブルに対して汎用的な外部キーを持たせる方法です。

一見便利そうに見えますが、実はデータ整合性・クエリの可読性・保守性に大きな問題を抱えています。

❌ アンチパターンの例

CREATE TABLE comments (
  id INT PRIMARY KEY,
  commentable_id INT,
  commentable_type VARCHAR(50), -- 'post', 'photo'など
  body TEXT
);

この設計だと、commentable_idがどのテーブルを参照しているかをcommentable_typeで判断する必要があり、以下の問題が発生します。

問題点

外部キー制約を使えない（整合性の保証なし）
JOINが動的になりSQLが複雑化
不正データの混入（存在しないpostやphotoにコメントが付けられる）

解決策①：テーブルを分ける

対象ごとに個別のコメントテーブルを作成します。

CREATE TABLE post_comments (
  id INT PRIMARY KEY,
  post_id INT,
  body TEXT,
  FOREIGN KEY(post_id) REFERENCES posts(id)
);

CREATE TABLE photo_comments (
  id INT PRIMARY KEY,
  photo_id INT,
  body TEXT,
  FOREIGN KEY(photo_id) REFERENCES photos(id)
);

各コメントは明確な対象に結びつき、整合性が保証されます。
JOINや検索もシンプルになります。

解決策②：共通親テーブルを使う（継承パターン）

全ての対象エンティティに共通の親テーブルを持たせる方法です。

CREATE TABLE entities (
  id INT PRIMARY KEY
);

CREATE TABLE posts (
  id INT PRIMARY KEY,
  title TEXT,
  FOREIGN KEY(id) REFERENCES entities(id)
);

CREATE TABLE photos (
  id INT PRIMARY KEY,
  url TEXT,
  FOREIGN KEY(id) REFERENCES entities(id)
);

CREATE TABLE comments (
  id INT PRIMARY KEY,
  entity_id INT,
  body TEXT,
  FOREIGN KEY(entity_id) REFERENCES entities(id)
);

commentsはentitiesを介してpostsやphotosと間接的に紐付きます。
柔軟性と整合性のバランスが取れる方法です。

まとめ

項目	ポリモーフィック関連	対応策
柔軟性	高い	中〜高
整合性	低い	高い
クエリの容易さ	難しい	比較的簡単

便利そうに見えるポリモーフィック関連ですが、長期的に見てトラブルの原因になります。
設計段階で「何と何を関連付けたいのか」を明確にして、正規化された設計を心がけましょう！