以下のようなソースを開発したいときに・・・

#include <iostream>

static int add(int a, int b);

int main(int argc, char *argv[])
{
    std::cout << add(11, 22) << std::endl;
    return 0;
}

static int add(int a, int b)
{
    return a + b;
}

間違って・・・

#include <iostream>

static int add(int a, int b);

int main(int argc, char *argv[])
{
    std::cout << add(11, 22) << std::endl;
    return 0;
}

static int add(int a, int b, int c) // int c という引数が多い
{
    return a + b;
}

・・・のように書いてしまってもコンパイルエラーにはなりません。(リンクエラーになって修正すべき所がわかりにくいことがあります)
これは、C++ では同じ関数名で引数の数や型が違う関数の定義が許されているからです。
今回は、static 関数として add を定義していて同じソース内なので比較的簡単にエラーを訂正できますが、extern で複数のファイルにまたがって関数呼び出しをしている場合には(コンパイルの)デバッグが大変です。

このように複数の引数のバリエーションが許されてしまう状況を是正したい場合は、クラス関数にしてしまいましょう。

#include <iostream>

class Calc
{
public:
    static int add(int a, int b);
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    std::cout << Calc::add(11, 22) << std::endl;
    return 0;
}

int Calc::add(int a, int b)
{
    return a + b;
}

こんな感じにします。オブジェクト指向っぽく使うわけではないので、コンストラクタやデストラクタもなく public の static 関数があるだけです。

これで以下のように、引数の数(または型)が違う定義で書いてみると・・・

#include <iostream>

class Calc
{
public:
    static int add(int a, int b);
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    std::cout << Calc::add(11, 22) << std::endl;
    return 0;
}

int Calc::add(int a, int b, int c) // int c という引数が多い
{
    return a + b;
}

・・・「error: no declaration matches 'int Calc::add(int, int, int)'」というコンパイルエラーがでました。
ファイル名と15行目ということもわかり、すぐに訂正すべき箇所がわかります。

私は、(それが不合理でなければ) C言語のように関数呼び出しだけでプログラムを書くことが好きですので、C++ を使うときでもそうすることが多いのですが、あえて class の static 関数にしておくことで、プロトタイプによるチェックがうまく働くようにしています。

以上、細かな tips でした。

追伸1・・・

@Nabetani さんのコメントにあるようにクラス関数でなく「名前空間(この場合は Calc)」で書くのもありです。
オブジェクト指向を使うのでなければ、よりスマートな記法と言えるでしょう。

#include <iostream>

namespace Calc
{
    int add(int a, int b);
}

int main()
{
    std::cout << Calc::add(11, 22) << std::endl;
    return 0;
}

int Calc::add(int a, int b)
{
    return a + b;
}

ただし、add関数の実体定義を以下のように書かないでください。引数が違ったりしてもコンパイルエラーにならずに、(この記事で回避したい)リンクエラーとなってしまいます。

namespace Calc
{
    int add(int a, int b)
    {
        return a + b;
    }
}

追伸2・・・

@fujitanozomu さんのコメントにあるように、警告をエラーにするようなコンパイルオプションを使えば上記の単純な例ではリンクエラーになる前にコンパイルエラーとして検出できますが、実際には(コメントの返信に書いたように)以下のようにソース分けされていて extern でリンクされている場合にはコンパイルエラー(コンパイル警告)とはならずに、やはりリンクエラーなってしまいます。
以下が現実に即した本当のサンプルです。

main.cpp

#include "add.h"

#include <iostream>

int main() // 余計な警告がでないように argc, argv を削除しました
{
    std::cout << add(11, 22) << std::endl;
    return 0;
}

add.h

#ifndef ADD_H
#define ADD_H

extern int add(int a, int b);

#endif // ADD_H

add.cpp

#include "add.h"

int add(int a, int b, int c) // int c という引数が多い
{
    return a + b + c; // 余計な警告がでないように c を使ってます
}