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Claude Codeで人や組織を分析・解析した話 — AIに丸裸にされすぎて怖い

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Last updated at Posted at 2026-05-06

はじめに

人や組織を客観的に見ることは難しいと思いませんか。

人や組織を評価するにせよコミュニケーションを改善するにせよ、自分のバイアスがどこまで入っているのか、果たしてわかる人はいるのでしょうか。誰しもがそれぞれの色眼鏡で見ていると思います。AIに会議の文字起こしやSlackの投稿を渡して分析させたら、人の何が見えるのか。現時点における、AIの性能でどこまでできるのか。その好奇心から、2025年秋頃からAIによる分析・解析を始めました。

やってみると想像以上に分析・解析できることがわかりました。発言パターンから思考の特性が見えたり、コミュニケーションが噛み合わない構造的な理由がわかったりします。自分では気づけなかったものが、AIを通すことで初めて見えてきました。それが面白くて、入力データの与え方やプロンプトの設計を調整しながら、徐々に人や組織の解析方法を作っていきました。

苦労したのは、私のバイアスを排除したくてAIに渡しているのに、入力の仕方次第ではそのバイアスがAIに伝播してしまうことです。私の先入観が混入しないよう、データの与え方を工夫する必要がありました。そうした試行錯誤を半年ほど続ける中で、新しく気になることも出てきました。

この記事では、AIで人や組織を解析してみた経緯と、解析できたからこそ見えてきた問題について書いています。

分析と解析の違い: この記事では「分析」と「解析」を区別しています。分析は物事を要素に分けて現状を明らかにすること。解析はその要素からなぜそうなっているかを読み解くことです。

この記事で得られること

  • AIで人や組織を解析するとはどういうことか——経緯と何が見えたか
  • AIによる解析は何に使えるか
  • AIが人や組織を解析できるようになったとき、新しく生じる問題

AIで解析する

データ分析と文字起こし

最初に試したのは、業務の中でのデータ分析でした。手作業で整理すると何日もかかるような集計や傾向の抽出が、AIを使うと人がやるのとは比べ物にならないくらい早くできました。同じ頃、会議の文字起こしを業務に活用し始めて、要求整理や要件定義が格段に楽になることもわかりました。

元々、文字起こしを始めた時点で様々なことに活用できるだろうとは思っていました。実際にやってみると予想以上で、活用の幅をもっと広げたいという気持ちが大きくなりました。

人の特性の解析

データ分析や文字起こしで手応えを得た延長で、人の解析を試してみました。会議の準備として文字起こしデータから参加者の特性を分析してみたのが始まりです。発言パターンを読み込ませると、その人の思考の傾向やコミュニケーションスタイルが浮かび上がってきます。

ここで大きかったのは、ずっと感じていた違和感の正体がわかったことです。ある人との会話がなぜ噛み合わないのかがわからなかった。AIの解析結果を見ているうちに、それがスタイルの違いだとわかりました。私の思考の外にある説明で、納得感が大きかったです。理解が進んだことで、対策を考えられるようになりました。

さらに、AIの解析をきっかけに、私のアプローチがなぜ機能しないのかもわかりました。私は抽象と具体を行き来して思考を精緻化するやり方をしていますが、相手の思考はそもそも抽象ではなかったのです。抽象のハシゴを使うアプローチ自体が噛み合わない構造にあったのだと気づきました。

この経験から、複数人を分析して比較したいと思うようになりました。ただ、人ごとにバラバラの基準で分析しても比較ができません。比較するために統一した軸が必要で、思考・判断、コミュニケーション、価値観、役割、問題解決の5カテゴリで評価する形を作りました。

統一した軸で複数人を並べてみると、会議の文字起こしベースの解析は会議の発言量に左右されることもわかりました。会議データだけでは十分に見えない人もいるので、Slackの投稿を使った解析も行っています。

自己分析

自己分析は他人のとは違って制約がありません。データも自由に追加できますし、結果に対して「合っている」「ここは違う」と判断できます。最も深く踏み込める対象です。そして、AIは容赦がありません。

私の場合、AIは「柔軟性に欠ける思考」「可能性を狭める議論スタイル」「新しい概念を受け入れにくい」といった特性をはっきり提示してきました。強みと弱みは表裏一体で、論理的で一貫性があることの裏には柔軟性の欠如がある、収束させる力の裏には可能性を狭めるリスクがある、と。

さらに、「批判を無効化する構造」も指摘されました。私は以前から「頭が硬い」「融通がきかない」と言われることがありましたが、それを言う人を「思慮が浅い人」と判断して、批判の内容を受け止めていませんでした。AIはそれに対して「批判の内容ではなく、批判者の属性で判断していないか」と突いてきました。私の行動原則——「相手を変えるのは難しいので、自分が変わる」——と矛盾していると。

こうした発見から、自己分析をもっと体系的に進めたいと思うようになりました。日々の作業記録から行動パターンを蓄積する仕組みを作り、数ヶ月かけて観察記録を溜めました。そこからプロファイルを抽出しています。結果は概ね自覚している通りでしたが、それを体系的に整理することは自分ではできていませんでした。AIが整理してくれたことで、全体の輪郭がはっきりし、分類が明確になりました。

会議と組織の解析

人の特性を解析するのと同じ時期に、組織の解析にも取り組んでいました。会議の文字起こしをデータとして使い、2つの方向で分析しています。

1つは会議そのものの構造の分析です。時間配分や発言構造、議論のパターンを見ていきました。会議の構造を解析すると、充実感と実際の成果が一致していないケースがデータから見えてきます。議論が抽象的な場所にとどまっていると、具体的な結論に至らなくても「話し合った」感覚が残ります。会議に費やした時間や体力に対して、思っていたよりも成果が少ないというものです。このパターンの原因がデータで浮かび上がってきたのは発見でした。

もう1つは、会議データを通して見える組織の構造の解析です。最初は個別の会議の議論パターンから始まり、次にマネジメント構造の分析、さらにメンバー間のコミュニケーション構造の分析へと段階的に深掘りしていきました。複数の会議を横断して見ることで、個別の会議だけでは見えない構造が浮かび上がってきます。先ほどの発言量の偏りについても、なぜ偏りが生じるのかの構造的な理由がAIからデータで出てきました。

ここで一つ問題がありました。初期の解析ではバイアスを明示的に排除していなかったのです。私の指示が二転三転する中で、私の認識がAIの解析に混入している可能性がありました。そこで、サンプル数を増やしてバイアスを排除した形でやり直しました。このとき気をつけたのは、会議の文字起こしと私の認識を厳密に分離することです。例えば「この会議の問題を抽出してください」という指示では、AIは問題がある前提で解析してしまいます。もっと抽象的に「この会議で認められる特徴的な事象はありますか」のような指示に変えました。また、分析結果を記録したファイルと、解析結果を記録したファイルを明示的に分離し、分析ファイルには私の解釈もAIの解釈も入れないルールにしました。私のバイアスがAIに伝播して、AIがそれを追認するだけの結果になることを避けるためです。

AIの行動設計への転用

自己分析で得たプロファイルを、AIの行動設計に転用し始めました。AIに私の特性を理解させて、私に合った提案や補完をさせる試みです。

ただ、蓄積した観察記録をそのまま渡してもAIは意図した動きをしません。「この人はこういう傾向がある」という記録を読んでも、それをどう行動に反映すればいいかはわからない。観察記録を行動指針の形に変換する——「私がどういう人間か」という記述から「AIにどう動いてほしいか」という設計に作り替える必要があります。この取り組みの詳細は別の記事に書いています。

全体の整理

半年ほどの間、AIで分析・解析するということをずっとやってきました。振り返って整理すると、個人の解析・組織の解析・AIの行動設計という3つに分けられます。

会議の文字起こしやSlackの投稿を渡すと、人の思考パターンやコミュニケーションスタイルが見えます。私自身の強みや弱み、行動パターンの構造も容赦なく出てきます。組織の構造的な問題が浮かび上がります。個人の解析結果はAIの行動設計にも転用できました。バイアスの問題は残りますが、データの与え方を設計すれば対処できることもわかりました。

想像以上にでき、私では気づけなかったものが、AIを通すことで見えてきました。

活用

AIが人物の特性や組織の構造を解析するということは、今までになかったことです。これができるようになると、いろいろなことが変わります。

例えば業績評価。今は人が人を評価するので、どうしても評価者の感情や相性が結果に影響します。異なる分野で異なる業務をしているメンバーを、客観的な基準で比較することも容易ではありません。そこに不満が生まれ、時には修復が難しい溝に発展することもあります。AIに客観性を持たせられれば、こうした問題を構造的に解消できます。

評価される側も同様です。自分の貢献や強みを正しく認識して発信できるかは人の能力に依存していて、アピールが苦手な人は実力に関わらず損をしてしまいます。AIがあれば、自分では体系化できなかった特性を客観的に整理し、正当な根拠を持って示せるようになります。

AIがある前提で考えると、評価する側もされる側もそれぞれAIを使い、間に立つAIが客観的な材料を出してくれるようになります。評価する側は自分のバイアスを補正でき、評価される側は自分の価値を根拠付きで示せます。どちらか一方が得をするのではなく、双方が納得できる着地点が見つかりやすくなります。そうなったら面白いと思っています。

組織の診断やリスクの抽出も変わります。今は人の目と経験や感に頼っていて、感覚としてはわかっていても言語化できないことがあります。「なんとなくこの会議はうまくいっていない」「あの人たちの連携がぎこちない」と感じていても、それを構造として説明するのが難しいこともあります。言語化できないから共有もできず、個人の感覚の中に閉じてしまっているかもしれません。AIが言語化してくれれば、チームで共有し、一緒に対策を考えられるようになるかもしれません。

さらに、AIは時間を横断して見ることができます。個別の会議では気づかない傾向も、数ヶ月分のデータを横断すれば構造として見えてきます。人の記憶では追えない規模のパターンを、AIは客観的に検出できます。

もう一つ、人には無意識に目を背けてしまうものがあります。組織の膿やリスクは、わかっていても直視したくないことがあります。指摘すれば波風が立ちますし、自分が対処を求められることにもなります。結果として、全員が薄々感じているのに誰も言語化しない問題が残り続けます。AIにはその心理がないので、人が避けていた問題も含めて構造として浮かび上がってきます。早い段階で問題が見えれば、手を打つ余裕も生まれます。

ただ、AIで人や組織を解析できるようになると、詳らかになりすぎるとも感じています。人がやる以上は感情が入って、それが良くも悪くも結果を緩和していた部分があります。AIにはその遠慮や配慮がないです。そこに新しい問題が生じます。

新しく生じる問題

活用の可能性がある一方で、AIで人や組織を解析できること自体に伴う問題もあります。

人間の「忘れる」が作っていた余地

評価する側もされる側も、人間が「忘れる」ことに助けられていた部分があります。

評価される側にとっては、過去の失敗が時間とともに薄れることで、やり直しの余地が生まれていました。1回の失敗がずっとついて回るのではなく、成長すれば新しい目で見てもらえます。評価する側にとっても、古い印象に引きずられたり、いちいち過去に遡ったりすることなく、新鮮な判断ができるメリットがありました。

AIがデータを使って解析する場合、過去のデータも現在のデータも同じ重みで扱われる危険性があります。過去の成功や失敗が、ずっと現在の評価に使われてしまうということです。人間の記憶にある時間による忘れや減衰が、AIの解析にはありません。この「忘れてもらえる」ことで成り立っていた余地が消える可能性があります。

見えなかったものまで見えるようになる

今まで人間の観察力では見えなかったものが、AIで見えるようになります。これは活用の章で書いた通り、貢献が正当に認識されるという良い面があります。

一方で、今まで見えていなかったからこそ触れずに済んでいた部分も見えてしまいます。人間の目では気づかなかった粗や弱みも、AIは同じように検出します。良いところだけを見て悪いところは見ない、という都合のいい使い方はできません。AIが重箱の隅をつつくような、嫌な存在になる可能性があります。

見えるものが増えること自体は良いことですが、何が見えるかを選べないというのがこの問題の本質です。

個々は無害でも、集約するとパターンが見えてしまう

会議での発言1つは無害です。Slackの投稿1件も無害です。例えば、1回の言い訳や逃げの発言は誰にでもあることで、それ自体は何の問題もありません。

ただ、それを数ヶ月分集めてAIに渡すと、本人も自覚していないパターンが浮かび上がります。「この人はいつもこういう場面で逃げる」といったパターンが、データの裏付けとともに出てきます。今も周囲が印象として感じていることはあるかもしれませんが、印象は印象でしかなく、そこには救われる余地がありました。データで裏付けられると、その余地がなくなります。

個々のデータは同意のもとに取得されていても、それを集約してパターンを抽出することまで想定されていたかは別の問題です。

分析と解析の境界

はじめに で分析と解析の違いを書きましたが、AIの出力がどちらに該当するか、実はかなり曖昧です。

AIの学習データ自体に、分析と解析の混同が含まれています。人間が書いた文章を学習している以上、客観的な事実と主観的な読み解きが入り混じったデータで学習しています。そのため、AIに「分析してください」と指示しても、出力に解析が混入することは構造的に避けられません。この区別を意識しない人が使うと、AIの解釈が事実として流通するリスクがあります。

AIのバイアス

はじめに と組織の解析の章で書いた通り、AIは入力に引っ張られます。「この人はこうだ」と取れる情報を与えると、その方向に解析結果が寄ります。

バイアスを排除する設計をしても、完全に排除できたかの確認は難しいです。解析結果が正しいのか、それとも自分の先入観をAIが追認しているだけなのか。この区別は、結果を見ているだけではわかりません。評価にAIを使うなら、この問いを常に持ち続ける必要があります。

おわりに

AIで人や組織を解析してみて、できることも問題もわかりました。

この一連の試行錯誤をしている背景には、ずっと持ち続けている下記のような問題意識があります。

  • 組織の問題を公に出すのは難しい
  • 部下の評価を公平に行おうとしてもバイアスを排除するのが難しい
  • 顧客の意図や言葉の裏にある事情を理解し切るのは難しい

いずれも人が人を見ることの難しさに起因する問題で、AIという新しい方法が出現したとき、ここに使えるのではないかと思いました。そう思って、さまざまな角度からAIによる人や組織の解析に取り組んでいます。

AIは分析において速度の問題を解決してくれます。人が何日もかけてやる作業を、一瞬で終わらせることができます。そして解析において、人の認知や感情が介在することで避けられなかった問題に対して、新しいアプローチを提供してくれます。

はじめに で「人を客観的に見ることは難しい」と書きました。AIを使ってみて、すごいと思う反面、認知できないところまで詳らかになることへの怖さもあります。個人の思考や行動パターンの弱点、対人関係の構造的な問題、組織の文化的な問題——面と向かっては言えないようなことが、データから構造として出てきてしまいます。この記事には私自身以外の結果は書いていませんが、出てくるものの性質はそういう類のものです。知らないことが返って幸せということもあります。難しさは消えていません。人の限界に起因するものから、AIの特性に起因するものへ、形が変わりました。それでも、わからなかったことがわかるのは楽しいものです。

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