この記事は tk3.biz のブログ からの転載です。
はじめに
前回は、dev-orchestra を作った経緯を書きました。今回は、これが何をするもので、どんな人に向いているのかを紹介します。
- GitHub: istb16/dev-orchestra(MIT、1.0.0)
- 動く場所: Claude Code / Codex / Antigravity のプラグインとして
この連載では、このあと Claude Code・Codex・Antigravity それぞれでの使い方や、設定の詳しい話を順に書いていきます。この記事はその入口です。
一言でいうと
1 文の依頼から、設計 → 実装 → テスト → 複数の AI による独立したレビュー → 指摘の仕分け → 修正 → 再テストまでを回すプラグインです。
この issue を設定済みのワークフローで実装して
と話しかけると、dev-orchestra が依頼に必要な工程だけを選んで、順番に AI へ割り振ります。
| 工程 | 担当 | ポイント |
|---|---|---|
| 設計 | architect | 調べて計画を書く。読み取り専用で、あなたが承認するまで実装に進まない |
| 実装 | implementer | 計画からコードとテストを書く |
| レビュー | reviewers | 2 つ以上の AI が、凍結した同じ差分を、互いの結果を見ずに読む |
| トリアージ | orchestrator | 重複をまとめ、指摘を採用・却下・重複に仕分ける |
| 修正 | review_fixer | 採用した指摘だけを直す |
typo の修正なら編集だけ、スキーマの変更なら全部、というように、動く工程は依頼の大きさで変わります。
なぜ別の AI にレビューさせるのか
AI は、自分が書いたコードのレビューが苦手です。バグを生んだ思い込みを、レビューするときもそのまま持っているからです。
互いの意見を知らない状態で同じ差分を見た別々の AI は、ときどき意見が食い違います。その食い違いが、本物のバグのありかになります。
もう 1 つ大事なのが、レビュー結果をそのまま修正に回さないことです。複数の AI の指摘は重複しますし、的外れなものも混ざります。全部を「直して」と渡すと、要らない変更が量産されます。そこで dev-orchestra は、指摘を機械的にまとめたうえでトリアージし、採用したものだけを修正役に渡します。
公式の codex-plugin-cc との違い
「Claude Code から Codex にレビューさせる」だけなら、OpenAI 公式の codex-plugin-cc があります。手軽さでは向こうが上なので、違いを正直に並べます。
| codex-plugin-cc | dev-orchestra | |
|---|---|---|
| 提供 | OpenAI 公式 | 個人の OSS |
| 動く場所 | Claude Code | Claude Code / Codex / Antigravity |
| レビューする AI | Codex | 2 つ以上を並列(Claude / Codex / 自作。Antigravity は限定対応) |
| 扱う範囲 | レビューと、Codex への作業の委任 | 設計からレビュー・修正・再テストまで通しで |
| 指摘の扱い | 結果を Claude Code に返す。任意の review gate を有効にすると、問題があれば Claude に対応させる | 重複統合 → トリアージ → 採用分だけ修正 |
| 始めやすさ | スラッシュコマンドですぐ使える | 最初にプリセットを選ぶ |
| 便利な機能 | バックグラウンド実行、狙いを指定する批判的レビュー、Codex への会話の引き継ぎ | 計画の承認、レビューの往復の上限、トークンの記録 |
公式プラグインの review gate は、/codex:setup --enable-review-gate で有効にできます。Claude が応答を終えようとすると Codex がレビューし、問題が見つかれば終了を止めて、Claude に先に直させます。自動でレビューして直させるだけなら、これでも十分です。
README には、review gate は往復が続いて利用枠を使い切るおそれがある、という注意があります。
違いは、レビュアーの数と指摘の扱いです。review gate のレビュアーは Codex 1 つです。dev-orchestra は複数のレビュアーの指摘を突き合わせ、重複をまとめてトリアージし、採用したものだけを直します。
使い分けの目安はこうです。
- Claude Code での作業に、Codex のセカンドオピニオンを 1 つ足したい → codex-plugin-cc
- 開発の流れ全体を、複数の AI で回したい → dev-orchestra
対応している CLI
dev-orchestra は、手元に入っている AI の CLI をそのまま使います。API キーは要りません(各 CLI のログインを使います)。
| Claude Code | Codex | Antigravity | |
|---|---|---|---|
| プラグインとして入れる | ○ | ○ | ○(リンクで導入、再起動が必要) |
| 実装・修正の役 | ○ | ○ | ○(テストを走らせるには設定が要る) |
| 設計・レビューの役 | ○ 読み取り専用を CLI が強制 | ○ 読み取り専用のサンドボックス | △ 読み取り専用を強制できないので、警告付きの限定対応 |
| 設計の続きから再開 | ○ | ○ | × |
Claude Code と Codex は全部の役をこなせます。 Antigravity は実装・修正向けで、設計やレビューに置くこともできますが、ファイルを書き換えられる状態で動くことになります。くわしい違いは、それぞれの使い方の回で書きます。
Claude Code だけでも使う意味はあるか
「複数の AI」と言われると、Claude Code しか使っていない人には関係なさそうに見えます。でも、Claude Code だけでも使う意味はあります。
| Claude Code だけでも得られること | なぜ効くか |
|---|---|
| レビュアーは別プロセスで、実装したときの会話を持ち込まない | 「さっき自分でこう決めた」という前提なしにコードを読める |
| 読み取り専用を CLI が強制する | 「書き換えないで」とお願いするだけでは守られないことがある |
| 役割ごとにモデルを分けられる | 設計は強いモデル、安く済ませたいレビューは軽いモデル、と費用をかけ分けられる |
| トリアージで採用した指摘だけを直す | 要らない修正が入らない |
必要な工程だけ動き、記録が .ai/ に残る |
小さな依頼は軽く、大きな依頼は計画やレビューを後から読み返せる |
プリセットを選ぶと、そのマシンに入っている CLI に合わせて構成が決まります。Claude Code しか入っていなければ、レビュアーも Claude だけで組まれます。
とはいえ、いちばん効くのは別ベンダーの AI を混ぜたときです。同じ系列のモデルどうしは、思い込みも似やすいからです。Codex も使える人は、ぜひ 2 社構成で試してみてください。
メリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 自分では気づけないバグが見つかる | 実行時間とトークン消費が増える(AI を何度も呼ぶため) |
| 運び屋の作業(コピペと待機)がなくなる | 指摘のトリアージは要る(オーケストレーターがやるが、最後に確認するのはあなた) |
| 要らない修正が入らない | レビュアーが読んだコードが、登録した各ベンダーに送られる(差分だけとは限らない) |
| 計画やレビューの記録が残る | 最初にプリセットを選ぶなど、導入の手間が少しある |
特に 3 つ目のデメリットは気にしておいてください。Claude と Codex でレビューすれば、コードは Anthropic と OpenAI の両方に送られます。
送られるのは差分だけではありません。レビュアーは差分のまわりを調べるために、リポジトリ内のファイルを読めます。読み取り専用でも、Claude でも Codex でも、.env のようなファイルまで読めます。しかも Claude の場合は、自分で書いた permissions.deny もレビュアーには効きません。理由と対策(ルールを managed settings に移す)は、次の Claude Code の回で書きます。
外に出せないコードを扱うなら、ローカル LLM だけでレビューを組むこともできます。ただしそのときは、Claude Code などのクラウドの AI から dev-orchestra を呼ばないでください。呼び出し元の AI 自身がコードを読むので、そこからクラウドに出ていきます。ターミナルから直接実行し、--only でレビュアーをローカル LLM に絞ります。くわしくは以前の記事に書きました。
トークンの消費を抑える仕組み(小さな変更はレビュアーを減らす、2 回目のレビューは修正分だけ、など)は入っていますが、1 つの AI で済ませるよりは確実に増えます。まずは小さな依頼から試すのがおすすめです。
使い方
インストールは Claude Code なら 2 行です。
claude plugin marketplace add istb16/dev-orchestra
claude plugin install dev-orchestra@dev-orchestra
Codex や Antigravity での入れ方、初期設定、各コマンドの説明は、GitHub のドキュメントにまとめています。最新の情報はこちらが正です。
- README(日本語) — インストール、初期セットアップ、使い方
- ワークフロー — 各工程で何をするか、ワークフローの例
- 設定 — プリセット、モデル、レビュアーの組み方
まとめ
- dev-orchestra は、1 文の依頼から設計・実装・複数 AI のレビュー・修正までを回すプラグイン
- レビュアーは凍結した同じ差分を、読み取り専用で、互いを見ずに読む。指摘はトリアージして採用分だけ直す
- Codex のセカンドオピニオンを 1 つ足すなら公式の codex-plugin-cc、開発の流れ全体を回すなら dev-orchestra
- Claude Code と Codex は全部の役、Antigravity は実装・修正向け(設計・レビューは限定対応)
- Claude Code だけでも、別プロセスのレビューとトリアージで意味がある。いちばん効くのは別ベンダーを混ぜたとき
- デメリットは時間とトークン、そしてコードが各ベンダーに送られること。レビュアーは差分以外のファイルも読める
- 機密のコードは、ターミナルから直接、ローカル LLM だけでレビューする
次回からは、Claude Code・Codex・Antigravity それぞれで実際に使ってみます。