埋蔵文化財業務では膨大な文章や記録データを管理する必要があります。従来、これらのデータはWordやExcelによって、作成、管理されてきました。WordやExcelによる文章作成や管理には、ソフトウェアの互換性、長期保存、機械可読性などの問題があります。シンプルなテキストベースのアプローチで、将来的なAI活用や情報公開にも対応できる記録管理の方法を5つのステップで解説します。
ステップ1: VS Codeをインストールする
VS Code(Visual Studio Code)はMicrosoftが開発しているテキストエディタ(開発環境)です。ソースコードが公開されているため、派生エディタも数多く公開されています。お好みのものをインストールしてください。私はVS Code派生のCursorというAIエディタを愛用しています。
VS Codeは以下のリンクからダウンロード可能です:
VSCodeの画面例 - 左側のエクスプローラーでファイル管理、中央で編集作業、右側のチャットボックスでAIと対話が可能
ステップ2: Markdown All in OneとMarkdown PDFをインストールする
VSCodeのプラグイン「Markdown All in One」と「Markdown PDF」をインストールします。
Markdown形式のドキュメント作成の支援ツール一式がインストールされます。
MarkdownドキュメントをPDFやHTMLにエクスポートします
ステップ3: Markdown記法を覚える
Markdown記法は簡単に構造化されたドキュメントを作成できます。HTMLやWord形式に変換することも容易です。
# セクション
## サブセクション
### サブサブセクション
- 箇条書き
- 箇条書き
- 箇条書き
- 箇条書き
1. 数字付き箇条書き
1. 数字付き箇条書き
2. 数字付き箇条書き
2. 数字付き箇条書き
図の挿入

(見本です)
セクション
サブセクション
サブサブセクション
- 箇条書き
- 箇条書き
- 箇条書き
- 箇条書き
- 数字付き箇条書き
- 数字付き箇条書き
- 数字付き箇条書き
- 数字付き箇条書き
図の挿入
ステップ4: Edit CSVをインストールする
VS CodeをCSVエディターとして利用するためのプラグインをインストールします。
Execelのようなテーブル形式のデータとしてCSVファイルを開くことができます。もちろんセル結合などはできません。
ステップ5: WordとExcelをアンインストールする
WordやExcelはビジネスツールとして極めて優秀なツールです。カスタマイズ性が高く、多くの用途に対応します。しかし、これが裏目に出るケースもあります。「方眼エクセル」や「ネ申エクセル」などと呼ばれるものがこの典型です。
VS CodeがあればWordやExcelは不要となり、ドキュメントの見た目にとらわれることなく、目の前の仕事に集中できます。
MarkdownとCSVが生み出すクリーンな文化財記録
MarkdownとCSVを主たる業務ツールにすることで、人間にも機械にも読みやすい形式のデータが生み出されます。Markdown形式のドキュメントはLaTeXのような出版物に耐えられる品質のDTP環境への変換も容易ですし、HTMLに変換することもできます。CSVはもっともシンプルなデータ形式の一つであり、ここからJSONやXMLなどのモダンな構造に変換することも容易です。
埋蔵文化財の記録保存の仕事は、文化財情報流通のもっとも上流に位置します。この段階でデータを汚してしまうと、下流には汚れたデータしか流通しません。テキストエディタで開けるクリーンでシンプルな構造のデータを作成することで、埋蔵文化財記録が将来にわたって有効に活用されることになります。
バージョン管理システムの利用
テキストベースのデータ形式を採用することで、バージョン管理システム(Gitなど)との親和性も高まります。発掘調査の進行に伴うデータの変更履歴を追跡したり、複数の担当者が同時に作業する際の変更を統合したりすることが容易になります。報告書用のマスターデータからブランチを切って、年報や紀要、学会報告用にはフォークしたデータを利用するなど、局面に応じて様々なデータ利用とその履歴の管理が可能になります。
AI時代のワークフロー
テキストベースのデータ形式は、近年急速に発展している人工知能(AI)技術との相性も良好です。バイナリ形式と異なり、テキストデータは直接AIモデルに入力することができます。MarkdownやCSVなどのシンプルなテキスト形式で記録されたデータは、AI活用において大きなアドバンテージがあります。
たとえば、自動レポート生成も現実味を帯びてきます。構造化されたデータからAIが自動的に報告書の草案を作成することができ、調査担当者は定型的な記述作業から解放され、分析や考察に時間を使えるようになります。
埋蔵文化財記録が死蔵されないためにも、将来的なAI技術の進展を見据えたテキストベースのデータ形式を選択するべきです。
言いたいことは「脱・Word・Excel」です。