はじめに
最近の生成AIの進化、すごいですよね。
ChatGPTやNotebookLM、Claudeなどがどんどん賢くなって、コードなどを作成してくれたり、複雑な質問にも答えてくれたりする中で、ふとこんなことを思ったことはありませんか?
「Power BIでデータの整理だの、モデリングだの、DAXだの......難しいことを覚えたり試行錯誤しなくても、そのうち生成AIに『こんなレポートが欲しい』って自然言語で言えば、いい感じで作ってくれるようになるんじゃない?」
「だからBI、あんまりやらなくてもいいや(生成AIと戯れよう)」
私は、そう簡単にはいかないと思います。
いや、もちろん技術の進化は素晴らしいことですし、AIがBI作業を助けてくれる未来は確実に来ています。でも、「だからBIの知識はもう要らない」という結論は、❓です。
この記事では、生成AI時代においてもなぜPower BIの知見と経験が重要なのか、私なりの考えをシェアしたいと思います。
BIはそもそも何の役割だったか
まず、BIツールの本来の役割を振り返ってみましょう。
Power BIをはじめとするBIツールは、ビジネスに関係するさまざまなデータソースから:
- データを準備(クリーニング、変換、モデリングなど)
- データを視覚化(レポート上の各種ビジュアルのレイアウト、ビジュアル間のクロスフィルタリングなど)
- データを共有(発行と共有、自動データ更新など)
これらにより、ビジネスの次の段階に向けて、より良い意思決定や行動を起こせるようにするものでした。
つまり、BIは単に「キレイなグラフを作るツール」ではなく、ビジネス課題を解決するためのデータ活用プロセス全体を支えるものです。
BI向けのデータと向き合う準備段階から、ビジネスと向き合うことになり、その後のBIに関するワークは、単なる作業ではなく、向き合った結果様々なビジネスの仔細に触れていく、知っていくことになります。
全自動AI生成の落とし穴
では、もし生成AIが「あなたが見たいBIレポートはこれですね。はい、自動作成しました!」というアウトプットを出すだけの世界になったら、どうでしょうか。
ブラックボックス問題
準備の段階で、ノイズとなるようなビジネスに無関係なデータを除外しているのか、していないのか。あるいは、重要なデータを誤って除外していないか。プロセスが見えないと、結果の信頼性を判断できません。
たとえば、売上データに返品処理が含まれているのに、それを考慮せずにレポートが作られていたら?重複データがあるのに気づかずに集計されていたら?こういった問題に気づくには、データの準備プロセスを理解している必要があります。
理解なしには判断できない
仮にAIが視覚化に至る過程を見せてくれる機能があったとしても、Power QueryのM言語による整理、データモデリング、スタースキーマの重要性の理解、ベストチョイス的なDAXの活用などについて一定の理解がないと、AIが意図通りの処理をしているか判断できません。
「このメジャーの計算ロジック、本当に合ってる?」
「このリレーションシップ、双方向フィルターで大丈夫?」
こういった疑問を持ち、検証できる力がないと、結局AIが作ったものを盲信するしかなくなってしまいます。
試行錯誤から得られる気づきの喪失
BIの作業では、準備や視覚化の段階で試行錯誤している間に、データに関する重要な気づきを得ることがよくあります。
「あれ、この数値、思ったより少ないな。もしかして......」
「これらの列、全く使われてないじゃない」
「このテーブル、不備データ多いな」
こういった発見は、データと格闘しているからこそ生まれるもの。何でもかんでもオートメーションで「はい、できました」となると、このトライ&エラーの世界と無縁になってしまいます。
対話コストの問題
「いや、AIと壁打ちしながら、『そこは合ってる』『そこは違う』って繰り返せばいいじゃん」
確かにそうですが、BIの基礎知識がない状態でAIと対話すると、そのやりとりの過程や工程は、相応に時間とお金がかかることになります。AIに的確な指示を出すためにも、BIの知識は必要なんです。
一部の作業をAIにお願いするとしてもBIへの精通が必要
もちろん、BIの作業の一部等を生成AIが手伝ってくれる世界は、確実に充実してきています。
- DAXメジャーの作成補助や検証
- 視覚化のレイアウト提案
- その他、Copilot for Power BIのいろいろ
これらは素晴らしい進化です。
でも、だからこそ、お願いする側(つまり私たち)がBI関連作業に精通している必要があります。
AIエージェントなどが行う作業内容、そのコスト(トークン消費やAPI呼び出し)、品質管理──これらを適切にマネジメントするには:
- どこでハルシネーション(AIの幻覚)が起こっているか
- どこにエラーがあるか
- 生成AIがPower BIのベストプラクティスを理解していないのはどこなのか
- 提案された解決策が最適か
これらを見分ける目が必要です。
AIエージェントはあくまでパートナーの一人(人じゃないけど😅)。マネージャーである自分自身がBIに精通していないと、BIプロジェクトは迷走してしまいます。
結局、BIをよく知ることが大事なので学ぼう
長々と書いてきましたが、結論はシンプルです。
生成AI時代だからこそ、Power BIの学習を引き続き続けましょう。
コミュニティに参加しよう
職場でBIのことを話す相手がいない?大丈夫です。Power BIには素晴らしいコミュニティがあります:
わたしもこちらの活動を継続しています。
- Power BI もくもく・わくわく会 原則第一木曜、毎月開催
- Power BI Weekly News 毎週日曜日 20時から @yugoes1021 さん、 @akihiro_suto さんと 2025/12/21は200回目!
勉強ではアウトプット大事です。コミュニティに参加してアウトプットすることで、学びが深まりますし、同じ悩みを持つ仲間とも出会えます。
- Power BI LT 会 原則毎月最後の木曜日開催 2025年12月は26(金)なのでご注意を
ダミーデータで練習しよう
「仕事のデータは機密情報だから外で話せない......」
わかります。でも、生成AIを使ってダミーデータを作成することもできます!
「小売店の売上データのダミーデータをCSV形式で作成してください。
店舗ID、日付、商品カテゴリ、売上金額、数量を含めてください ..... 」
こんな感じでChatGPTなどに頼めば、練習用のデータセットが手に入ります。これを使ってモデリングやDAXの練習をすることができます。
生成AIは学習の味方として使おう
もちろん、生成AIは学習の過程を助けてくれる強力なツールです:
- 「このDAX式でやってみたんだけど...etc, etc」
こういったやりとりがいつでもできます。
ただし、ハルシネーションが含まれることは絶えず意識しましょう。
最新のLLMになっても急にDAXに関するハルシネーションが減ることはないです。Copilot for Power BIのDAX関連の活用もよいでしょう。
AIの回答は必ず自分で検証し、公式ドキュメントと照らし合わせることが大切です。
おわりに
生成AIの進化は目覚ましく、これからもPower BIとの融合はどんどん進んでいくでしょう。
でも、だからこそ私たちはBIの基礎をしっかり理解し、データリテラシーを高めておく必要があると思います。
AIはパートナーであり、アシスタントです。でも、判断を下すのは私たち人間。そして良い判断をするためには、知識と経験が不可欠です。
Power BIを学ぶことは、単にツールの使い方を覚えることではありません。データを通じてビジネスを理解し、価値を生み出す力を身につけることです。
この記事が、「AIが全部やってくれるなら勉強しなくていいや」と思いかけていた誰かの背中を押すきっかけになれば嬉しいです。
これからもPower BIの学習を続けていきましょう!🚀