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法的に非準拠な挙動は情報セキュリティ上の脆弱性なのか?

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1. はじめに

情報セキュリティの世界では、技術的対策と法令遵守はもはや切り離せない存在です。
規制違反は「個人データの不正処理」に繋がる可能性があり、それは単なる法的問題に留まらず、セキュリティ上のリスクでもあります。

本記事では、法的に非準拠な動作(例:同意前のトラッキング)がセキュリティ脆弱性と見なされ得る理由と、それを裏付ける ISO/IEC 27001、GDPR、ePrivacy 指令の考え方について解説します。


2. 2025年における「セキュリティ」の定義

  • ISO/IEC 27000 シリーズは情報セキュリティを以下のように定義しています:

    「情報の機密性、完全性、可用性の維持」

  • しかし、ISO/IEC 27001:2022 の付属書Aでは、次のような管理策が追加されています:

    • A.8.9 — 個人データのプライバシー保護
    • A.8.11 — データマスキングおよび同意処理の制御

→ つまり、データ保護法違反は組織的セキュリティ失敗の範疇に含まれることが示唆されます。


3. 「同意回避」は無害ではない

例:

  • ウェブページが、Cookie同意バナーの表示や操作より先にトラッキングスクリプト(Google Analytics や WebSocketなど)を起動する
  • ユーザーの操作が一切ない状態でデータが第三者に送信される

法的観点から見ると:

  • ePrivacy 指令第5条3項は「ユーザーの同意なく端末機器にアクセスすること」を禁止
  • GDPR 第6条1項は「個人データ処理には合法的根拠が必要」と明示

セキュリティ観点から見ると:

  • 未承諾のデータ送信=機密性の侵害
  • 同意バナーを意図的に回避する設計=技術的制御の失敗

4. Firefox はブロックする。Chrome は許可する。

Firefox の強化型トラッキング防止機能(ETP) が接続を遮断する事実は、次のような意味を持ちます:

  • 単なる「法令違反」ではなく、設計としてプライバシー侵害と見なされている
  • 「非セキュリティ系の不具合」と「セキュリティ関連の欠陥」の境界が曖昧になりつつある

5. 規制当局による処分事例

→ これらは、技術実装そのものが法的違反とみなされ得ることを示す先例です。


6. セキュリティ影響の再定義

セキュリティはもはや、XSSやRCEだけではありません。

本質は「制御」にあります。
それを誰が持っているか誰が奪われているか、そしてその喪失が意図的か過失か


7. 結論

ユーザーの同意を得ないデータ送信は、単なる法令違反ではなく、情報セキュリティ上の脆弱性として扱うべき時代が来ています。
**「法務」と「セキュリティ」**の境界線は、今まさに消えつつあります。


8. 参考文献

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