難易度(合格率)の割りに、資格を生かして食っていくことができないと評判の気象予報士登録者の現状について、気象庁が令和2年度に実施した結果が、気象庁により公表されました。
いろいろと面白い傾向があったので、見ていきます。
#令和2年度に実施した気象予報士の現況に関する調査概要
気象庁が実施した結果については、ここにあります。
前回調査が平成25年(2013年)からの令和2年(2020年)という7年ねんぶりの調査のようです。
気象予報士は登録時に住所を気象庁に登録している(はず)なので、調査方法は気象庁からのアンケート送付式で行ったようです。
##気象予報士登録者数
令和2年度(2020年)の気象予報士登録者数は10880人で、平成25年(2013年)は8935人のようです。
予報士本人が死んでも誰も抹消届は出されないので、実質増え続けるので、2030年には13000人もの気象予報士が日本に存在することになり、多すぎる論が噴出されることでしょう。そのころにはAI様の予報に人類は勝てなくなってるかもしれませんが。
##到達数
令和2年度の調査時に気象庁に登録されている気象予報士数は10880人ですが、あて先不明で帰ってきた数が、3298人だったようです。約3割の方が、住所を変更していないか既に亡くなられているかしているのでしょう。これらの方々は少なくとも気象予報士という資格が必要な予報業務を行っていないのでしょう。
以後のアンケートは有効回答数が分母なので、実態としては、はるかに多い気象予報士が予報業務を行っていない可能性があります。
気象予報士試験の学科一般の法律問題で頻出なのが、住所変更届です。
それとは別に、過去問でも稀に現れる、「気象予報士本人が死亡した場合は相続人が抹消手続きを行わなければならない」についてですが、合格者以外の家族がこのことを知るわけもありません。なので、以下のようなお知らせが付属していました。
マイナンバーで名寄せしろよ 死亡届は誰かが出すから自動的に関連情報の抹消できるようにしろよ デジタル庁がんばれ
##回収率
回収数/到達数 68.9%
回収数/気象予報士登録数 48.0%
今回の調査結果は、気象予報士登録者のうち、半分以下の人による結果であることをよく考慮しなければなりません。
特に、住所変更を行う必要が無い程度には、気象予報業務を行っていない可能性が高いです。
#気象予報士の登録時の年齢と現在の年齢
##気象予報士の登録時の年齢
以下の図をみると、気象予報士に合格する年齢は、20代から40代が8割近いです。
筆者が科目免除無しで受験したときに感じた年齢構成は、「平日の病院の待合室」でした。
それなりに難関資格なので、お年を召した方々には、難しいのでしょう。
##気象予報士の現在の年齢
2020年度での気象予報士の年齢構成は以下の図です。
30代から40代といった係長・課長くらすばかり供給されるため、このような年齢構成になるのは仕方がないのかなぁと思います。
##そもそもNがおかしい
このデータのタイトルには大いなる嘘があって、令和2年度はN=5187なので、正確には「アンケートに答えた人の年齢」です。
気象庁に登録されてる気象予報士の個人情報(誕生日)からこのグラフを作っているわけではありません。
おそらく、90歳とか100歳が10代より無視できない程度が含まれているので、出せないのでしょう。しらんけど。
気象予報士の登録用紙に生年月日を書く欄が無いのでしょうか?
#登録前と現在の勤務先・所属業種
この項目は、気象予報士試験を受験しようと思ったときに何をしていて、合格後に何の仕事をしているかを示しています。
##登録前業種
登録前業種(上図でオレンジ色)で最も多いのが学生(13.1%)で、次が製造業(11.0%)となっています。
気象予報士試験は、理系資格でも難関に分類されがちなので、勉強することに慣れてる学生か、いわゆるエンジニア職(主に理系出身者)の方が圧倒的に有利な資格試験です。そのあたりの事情が反映されている結果と読み取れます。
##現在業種
現在職種(上図の青色)で最も多いのは無職14.7%で次が予報業務許可事業者8.8%で、さらに製造業8.4%となっています。
そもそも働いてないんかいっ!
(僕もよくこの手のアンケートには個人情報保護のため無職って書くけど)
約9%しか予報業務やってないんかいっ!
アンケートが到達しなかった約3割は予報業務を行っていないと考えられるので、全気象予報士保持者の実質4%くらいしか、気象予報士の資格が必要となる業務を行ってないと予想されます。
無職・学生・予報業務許可事業者を除くと、気象予報士登録前後でほとんど割合に変化がありません。
ことから、気象予報士という資格を取得しても、予報業務を行うような職へ転職するわけではなく、また転職を動機とした資格であると、大半の合格者は思っているようです。つまり、キャリアアップにはほぼ何の役にも立っていないと見做されていることが示されています。
そりゃそうですよ。難易度のわりに給料安いんだもん。
#気象予報士試験の受験動機
最も多いのは、「気象に関する知識を得たかったから」で「職場での仕事のスキルアップに有効と考えたから」「仕事とは関係ないが、気象予報士資格を取りたかったから」等の「仕業としての気象予報士には興味ない勢」が大半であることがわかります。
だったら天気検定でいいやん、と思わないこともありません。
**これ、%を全部足したら100超えてるんやけど。複数回答可にしてるよね?どこにも書いてないけど **
弁護士のように、合格後に「弱い人を助けたい」~~「お金持ちになりたい」といった、資格取得後の姿とその重要性と「給料」~~について、気象予報士受験者ですら、明確な何かを持っているわけではないかと予想されます。
本記事を執筆している2021年9月現在、NHKの朝ドラで「おかえりモネ」という気象予報士を題材にした内容のドラマが放送されてます。まぁ、一般的サラリーマンは朝ドラを見る時間には仕事してますけどね。 気象予報士試験学習者である筆者ですら、気象ニュース作成の裏側をほんの少し知るいい機会でした。脚色されまくってるでしょうけどね
#垣間見える、予報の業務に関わっていない大半の気象予報士が思う不満と希望
##気象予報士資格を活用できると考える場
気象予報士が考える、気象予報士資格を活用できると考える場は以下です。
大変不幸なことに、「気象の現象の予測の業務」が業務独占として最も役に立つ場面であるハズにもかかわらず、圧倒的多数ではありません。
##気象予報士の活躍の場の拡大のために必要だと思うこと
1も2も言いたいことは同じで「雇用機会の創出、待遇改善、地位向上」で、それを地方自治体に要望しています。
つまり仕事がなくて給料が安いことです。
##気象予報士として不満と感じていること
最も多いのが、「気象予報士資格を活用できる場が少なかったから」なので、平たく言うと仕事がなかったということなのでしょう。
気象予報士試験学習者として思ったのは、「気象予報士試験に合格しても明日の天気すらわからん」という事実です。
##気象予報士の仕事とは。
つまり予報業務の仕事はほとんど無いため、せっかくとった資格なので何に役立てればよいかとひねり出した結果が現れていて、「防災・安全・危機管理など職場の防災対策」と「地域における防災活動」であり、これらのために自治体が俺らを雇用しろ、と言っているように見えます。
ですが、この二つは、気象予報士「試験内容」とは直接関りがありません。
筆者が考える「防災・安全・危機管理・防災活動」は、会社なら「経営者と管理職」、自治体なら「首長とその管理職」が行うものであって、「気象予報士の仕事」ではありません。
「気象予報士の仕事」は、「明日雨がどこに何時にどれだけ降る?風は?」を予報することです。その情報を元に、経営者や首長がどのような行動を取るかを判断します。ですが、現代社会では気象庁の予報に勝る何かを出すのは「かなり難しい」としか思えません。
また、個人がスマホでほぼリアルタイムにレーダー画像を見れなかった時代に作られた資格
なので、時代遅れ感が半端ないことになっています。
#クロス集計
N=1や一桁な事例が大量に出てくるので、面白そうな結果だけ。
##年齢別にみた気象予報士資格の役立ち状況
地域における防災活動 が 年齢が上がるほど増えていくのがものすごく興味深いです。
つまり、ご老人の暇つぶし、といっても過言ではないのでしょう。
#感想
気象予報士試験は、合格率がやたら低く難関と言われています。(実際に、簡単ではないです)
ですが、士業にもかかわらず仕事は無いようです。
大半は趣味の延長線上で取られる資格となっている現状が浮かび上がりました。
私もほぼ趣味で合格したんですけどね!