1. はじめに
こんにちは、天パです。👨🏻🦱
髪の毛だけでなく、学びたい技術もあちこちに広がりがちなインフラエンジニアです。
クラウド、IaC、コンテナ、CI/CD、そして生成AI。
学びたいことが増えるほど、いかに早く理解し、成果物を作るかを重視するようになっていました。
そんな自分が手に取った本は、牛尾剛さんの『世界一流エンジニアの思考法』です。
- 書籍:『世界一流エンジニアの思考法』牛尾剛
- 出版社:文藝春秋
この本を読んで、もっと速く学ぶ方法を探していた自分が、
逆に「理解するために時間をかけよう」と考えるようになりました。
この記事は、本の内容をまとめた書評ではありません。
本を読む前と読んだ後で、自分の技術学習に対する考え方と行動がどう変わったのかを書いています。
2. 読む前は、とにかく早く形にしたかった
以前の自分は、生成AIを活用して成果物を早く作ることを重視していました。
学習の順番は次の通りです。
- まずAIに実装してもらう
- 生成されたドキュメントやコードを読む
- 分からないところをAIに聞く
AIに実装してもらえば、短時間で動くものが手に入ります。
完成形を見ながら学べるため、この方法でも理解は進んでいると思っていました。
実際、何もない状態から始めるよりも、動くものが目の前にある方が学びやすい場面はあります。
ただ、いつの間にか「動いたこと」と「理解したこと」を同じものとして扱うようになっていました。
2.1 学ぶ対象を増やしすぎていた
インフラエンジニアが学べる技術はたくさんあります。
しかも、どれも仕事に役立ちそうに見えます。
「今は何を学ぶべきか」
「次は何を作るべきか」
「AIが進化しているのに、この勉強へ時間をかけてよいのか」
このようなことを常に考え、目の前の学習に集中できなくなっていました。
効率よく学ぼうとしていたはずなのに、学ぶ対象を選ぶことへ頭を使いすぎていました。
2.2 表面的な理解がエンジニアとしての不安につながっていた
これまでインフラエンジニアとして仕事をしてきた経験があります。
そのため、新しい技術を学ぶときも、基礎は多少飛ばして全体像から入っても何とかなると思っていました。
しかし、知っている技術と似ているから何となく理解できることと、
その技術の仕組みを理解していることは別物でした。
コマンドは実行できる。設定ファイルも読める。構成もある程度は説明できる。
それでも、新しいものを作るときにはAIへ質問し、実装も任せ、分からないところをまたAIへ聞く。
実装中にエラーが出たときも、原因と解決方法を調べ、
なぜエラーが起きたのかを理解してから先へ進めていました。
意味が分からないまま、AIの回答を使っていたわけではありません。
ただ、そこで得た知識は、「目の前のエラーを解消するための知識」にとどまっていました。
次に別のエラーが出たとき、今回得た知識をどのように応用できるか。
同じようなエラーを繰り返さないために、設計や設定の段階で何を見直せるか。
そこまで考えないまま、目の前のエラーが解消すると次の実装へ進んでいました。
1つの事象としては理解していても、仕組み全体を捉え、
別の場面へ応用できるところまでは掘り下げられていませんでした。
成果物は作れていても、AIがなければ自分で考え、判断できるのか。その自信はありませんでした。
表面的な理解のまま成果物だけが増えていくことが、
「自分はエンジニアとして必要なのだろうか」という不安につながっていました。
3. 本を読んで、理解に時間をかけると決めた
『世界一流エンジニアの思考法』を読み、自分に特に刺さったのは、
一流のエンジニアも、基礎や仕組みを理解するために時間をかけているという点でした。
自分は、一流のエンジニアなら新しい技術をすぐに理解できるものだと考えていました。
しかし、基礎を徹底して理解しているからこそ、その知識を応用し、
新しいことも素早く理解できるのだと気づきました。
自分は、技術を早く理解して使えるようになるには、
基礎にかける時間を短くし、まず使い始めることが重要だと考えていました。
しかし、「基礎を理解するために手を動かすこと」と
「ただ動くものを作るために手を動かすこと」では、同じ実装でも向き合い方が違います。
応用の利く知識にするには、動いたという結果だけで終わらず、基礎を理解することが必要でした。
理解に時間がかかることを、学習が遅い証拠だと思わなくてもよい。
分からないことを1つずつ掘り下げる時間も、エンジニアとして必要な時間です。
この考え方に触れたことで、「早く次へ進まなければ」という焦りが少し軽くなりました。
4. 読んだ後に変えた学習の順番
現在は、次の順番で学ぶようにしています。
- まずは最小構成を自分で実装する
- 値を1つずつ変更して挙動を見る
- 分からないところをAIに聞く
- AIの回答を自分の環境で確かめる
読む前との大きな違いは、最初の実装をAIへ任せないことです。
もちろん、最初から大きなものを自力で作ろうとはしていません。
機能や構成をできる限り小さくして、自分が追いかけられる範囲から始めます。
たとえば、コマンドを1つ実行するときも、動けば終わりにはしません。
- なぜこのコマンドを使うのか
- 指定した引数にはどのような意味があるのか
- その引数を外すと、結果はどう変わるのか
- なぜこの構成が必要なのか
- 誰かに自分の言葉で説明できるか
このような問いを持ちながら、値を変更して挙動を確認します。
ドキュメントを読んだだけでは曖昧だった知識も、実際の動きに結び付けると理解しやすくなりました。
5. AIを使わなくなったわけではない
学習の順番を変えましたが、AIを使わなくなったわけではありません。
AIとの付き合い方が変わりました。
| 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|
| 最初の実装を任せる | 最小構成は自分で実装する |
| 生成されたものを後から読む | 自分で考えた後に認識を確認する |
| エラーの原因と解決方法をAIに聞く | 仮説を立てて検証し、AIから別の視点をもらう |
| 完成を早めるために使う | 理解を深めるために使う |
以前は、AIを実装者として使うことが多くありました。
現在は、分からないことを掘り下げる相手や、自分の理解を確認する相手として使っています。
AIは、質問すればすぐに答えを返してくれます。
ただし、その答えが自分の環境でも正しいのかを判断し、成果物に責任を持つのは自分です。
だからこそ、AIが便利になるほど、基礎を理解する重要性は高まると感じています。
6. AI時代に専門性を深めるということ
生成AIを使えば、知らない技術でも、それらしいコードや構成を短時間で作れます。
これはとても便利ですし、これからも積極的に使っていきます。
一方で、インフラの設定は、動いたから問題ないとは限りません。
可用性、セキュリティ、運用性、障害時の影響など、考えることがたくさんあります。
生成された設定を採用してよいか。
障害が起きたときに、どこを確認すればよいか。
なぜこの構成にしたのかを、ほかの人へ説明できるか。
こうした判断をするには、技術の土台となる知識が必要です。
自分にとって専門性を深めるとは、すべてのコマンドを暗記することではありません。
仕組みを理解し、分からないことを調べ、試した結果を自分の言葉で説明できる状態に近づくことです。
AIが答えを出してくれる時代だからこそ、答えを評価できる専門性を持つ必要性を感じるようになりました。
7. 目の前の学習に集中しやすくなった
基礎を学ぶことに時間を使うと決めてから、目の前の学習に集中しやすくなりました。
以前は、成果物を完成させることをゴールにしがちでした。
今は「今日はこのコマンドの動きを説明できるようにする」のように、
理解したい範囲を小さく区切っています。
学習速度が急に上がったわけではありません。
むしろ、1つのテーマに使う時間は増えています。
それでも、何を学ぶかを自分で決め、1つずつ理解しているため、
毎日の学習を自分でコントロールできている感覚があります。
8. この学習法が正しいかは、まだ分からない
ここまで書きましたが、この方法が本当に応用の利く学習につながるかは、まだ分かりません。
これから仕事や個人開発の中で、自分の身をもって確かめていく段階です。
それでも、分からない部分を残したまま成果物だけを増やしていた頃より、
1つの技術と向き合えている実感があります。
すぐに結果が出なくても、焦らず基礎を積み重ねる。
今は、その過程そのものを大切にしています。
9. こんなインフラエンジニアにおすすめしたい
『世界一流エンジニアの思考法』は、次のような人におすすめしたい本です。
- 学びたい技術が多すぎて、何から手を付けるか迷っている人
- 早く成果を出そうとして、理解が追い付いていないと感じる人
- AIで成果物は作れるが、自分の知識になっているか不安な人
- AI時代に、エンジニアとして何を学ぶべきか悩んでいる人
具体的な技術を解説する本ではありません。
しかし、技術とどう向き合い、どのように理解を深めるかを考え直すきっかけになる本でした。
また、学習への向き合い方だけでなく、
一流のエンジニアが実践するコミュニケーションや生活習慣にも触れられています。
10. まとめ
この本を読む前の自分は、AIを使って、いかに早く成果物を作るかを重視していました。
読んだ後は、最小構成を自分で作り、値を変え、挙動を確かめ、
誰かに説明できるまで理解することを重視するようになりました。
早く形にすることも大切です。
ただ、急いで次へ進むことだけが、成長への近道とは限らないと気づきました。
もし、AIが作ったものを眺めながら「自分は本当に理解できているのだろうか」と感じているなら、
一度立ち止まり、最小構成を自分で作る方法もあります。
AIに実装を頼む前に、まずは自分の手で1つだけ動かしてみる。
自分も、そこからもう一度学んでいきます。