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「余命が縮まる生活習慣」を診断するアプリを個人開発で公開したら炎上した

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Last updated at Posted at 2026-04-13

公開から6時間で Qiita のトレンド1位に入った。

その日のうちに★1レビューが50件を超えた。

Slack に「怖くて使えない」「胃が痛くなった」「こんなアプリ要らない」という感想が届き続けた。

炎上した。でも削除しなかった。

どんなアプリを作ったか

アプリ名は「Yomei」(余命)。ストレートな名前だ。

機能はシンプル。以下の生活習慣を入力すると、「生活習慣スコア」と「余命への推定影響」を返す。

入力項目 詳細
睡眠 平均睡眠時間、就寝時刻のバラつき、睡眠の質の自己評価
運動 週の運動頻度、1回の時間、有酸素・無酸素の比率
食習慣 野菜摂取頻度、加工食品・砂糖の摂取量、朝食の有無
ストレス 慢性ストレスの自己評価、趣味・回復時間の有無
孤立度 信頼できる人間関係の数、週の対面交流の頻度
喫煙・飲酒 本数・量・頻度

これらを入力すると、疫学研究のデータをもとにした「余命への影響推定」が出る。たとえば「あなたの現在の生活習慣は、平均的な生活習慣と比較して推定余命を−8.3年影響する可能性があります」のような形式だ。

さらに「一人暮らしリスク診断」という機能も付けた。社会的孤立が死亡リスクに与える影響(孤独は1日15本の喫煙と同等、という研究がある)を可視化するものだ。

公開初日の反応

Qiita に開発記事を投稿した。タイトルは「生活習慣が余命に与える影響を可視化するアプリを個人開発した」。

時間 出来事
0時間 投稿
2時間 LGTM 200超え。Qiita トレンド入り
4時間 X(Twitter)でバズり始める。「これは使いたくない」ツイート多数
6時間 トレンド1位
12時間 ★1レビューが殺到。「公開するな」「削除しろ」のコメントも
24時間 PV 約8万。アプリのアクティブユーザー数 約3,500人

「バズった」と「炎上した」が同時に起きた。

★1レビューの内容を分析した

★1レビューが50件を超えたとき、ひとつひとつ読んだ。

傾向を分類すると、大きく3種類に分かれた。

分類 割合 代表的なコメント
「当たりすぎて怖い」 約40% 「思ってた数字が出た。見たくなかった」「当てはまりすぎて胃が痛い」
「こんなもの要らない」 約35% 「知ってどうするんだ」「不安を煽るだけ」「使いたくない」
「一人暮らし機能が傷つく」 約25% 「孤独を数値化しないで」「独身への差別」「余計なお世話」

興味深かったのは、「計算が間違っている」というレビューがほぼなかったことだ。

怒りの理由は「不正確だから」ではなく、「正確すぎるから」だった。

「知りたくない真実」の問題

アプリのフィードバックを整理していて、ある共通点に気づいた。

最も強い反発が来た機能は「孤立度」の項目だった。

項目 強い反発があった内容
孤立度 「信頼できる人が0〜1人」の場合のリスク表示
睡眠 「平均5時間未満」の場合の余命影響
一人暮らしリスク 「週の対面交流が3回未満」のリスクスコア

これらの共通点は、「自分で薄々気づいていたが、直視していなかった現実」であることだ。

「孤独がリスクだ」とは多くの人が知っている。「睡眠不足は良くない」とも知っている。

でも「あなたの孤立度は危険域です。推定余命への影響: −4.2年」と数値で出ると、知識が「自分ごと」になる。

これが不快感の正体だと思う。

炎上の構造

今回の炎上は、アプリの「欠陥」に対する反応ではなかった。

**「正確すぎるデータは人を不快にさせる」**という現象だった。

心理的メカニズム 内容
認知的不協和 知識と行動が矛盾している状態を指摘される不快感
オストリッチ効果 都合の悪い情報を見ないようにする傾向
自己効力感の低下 問題を知っても解決できないと感じると怒りに転換される

オストリッチ効果(ダチョウが砂に頭を突っ込んで現実から目を背けるイメージ)は、行動経済学で有名な概念だ。株価が下がっているときに証券口座を見ない、健康診断の結果を開封しない、というあれだ。

「Yomei」が計算した数値は、多くのユーザーにとって「見たくなかった、でも正しい現実」だったのだと思う。

でも削除しなかった理由

炎上から48時間後、友人から「削除した方が良くない?」と連絡が来た。

自分は「しない」と答えた。

理由は2つある。

理由1: 「知ること」自体に価値があると思っているから

健康診断を受けたくない人はいる。でも健康診断は存在する価値がある。不快でも、知ることで行動が変わる可能性があるからだ。

「一人暮らしリスク診断」で「危険域」と出た人が、友人に連絡するかもしれない。睡眠スコアで警告が出た人が、就寝時刻を30分早くするかもしれない。

不快感は変化のきっかけになりうる。

理由2: ★1をつけた人たちが、アプリをちゃんと使っていたから

★1レビューの多くは、実際にアプリを使った上でのフィードバックだ。

数値が「当たりすぎて怖い」と言う人は、アプリを信頼している。不正確なら怖くない。怖いということは、認知としてリアルに受け取ったということだ。

怒りは「正確性」の証明でもあった。

3ヶ月後の状況

公開から3ヶ月が経った時点のデータ。

指標 数値
累計ユーザー数 約18,000人
DAU(日次アクティブ) 約200人
平均セッション時間 8.2分
★5レビュー 89件
★1レビュー 61件
「友人に勧めた」回答(アンケート) 34%

★1と★5が両立している。これは「強い感情を引き起こすコンテンツ」の特徴だと思う。無関心な人はレビューを書かない。

アンケートで「このアプリを使って、何か生活習慣を変えましたか?」という質問をしたところ、「何か変えた」と回答した人が全体の28%だった。

IQテスト結果画面

ちなみに現在、同じ「知りたくない真実を直視する」系のコンテンツとして、IQテストも開発している。自分の認知能力を数値で知ることも、生活習慣スコアと同じく「不快かもしれないが有益な自己認識」だと思っている。

「知りたくない真実を直視する」行為について

「Yomei」の炎上を通じて考えたことがある。

人は「知ること」を恐れる。特に、知った後に「でも変えられないかもしれない」と思うことを。

孤独は「友達を作ればいい」と頭では分かっていても、行動に移すのが難しい。睡眠は「早く寝ればいい」と知っていても、スマホを置けない。

だから「知らない方が幸せ」という選択をする人がいる。それは一つの合理的な判断だと思う。

でも「知った人だけが変えられる」のも事実だ。

健康診断を毎年受けている人と受けていない人では、早期発見率に差がある。家計簿をつけている人とつけていない人では、無駄遣いへの意識に差がある。

「見たくない数値」は「変えるべき現実」の地図だ。

見たくない数値 見た場合のリスク 見なかった場合のリスク
生活習慣スコア 不快感・自己批判 問題が続く
認知能力スコア 自己評価の揺らぎ 認知の偏りに気づけない
孤立度スコア 孤独の直視 孤立が深まる
体重・血圧 不安 疾患の見逃し

不快でも、知ることの方が長期的には得だ。そう思っている。

まとめ

出来事 内容
アプリ公開 生活習慣スコアと余命影響を可視化
反応 公開初日にトレンド1位、★1が殺到
炎上の理由 「不正確」ではなく「正確すぎた」
削除しなかった理由 知ることに価値があると思ったから
3ヶ月後 28%のユーザーが何か生活習慣を変えた

「余命が縮まる生活習慣診断」は炎上した。でもそれは、多くの人に「自分の現実を直視させた」ということだと思う。

正確なデータは不快だ。でも不快感の先にしか、変化はない。

それはIQテストも同じだと思っている。自分の認知能力を測ることは、「知りたくないかもしれない真実を直視する行為」だ。でも知った人だけが、自分の脳の使い方を変えられる。

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