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これであなたも雑談マスター

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Last updated at Posted at 2026-09-22

人を覚えるのが苦手。でも、人と話したい

私は、人を覚えるのが苦手です。

懇親会で自己紹介を聞いても、その人の名前と会社、取り組んでいることが、なかなか結び付きません。話してみたい気持ちはあるのに、「次に何を聞こう」と話題を探してしまいます。

初対面でも、仕事上どうしても話す必要がある場面があります。相手の仕事や関心事を少し知っていれば、もっと自然に質問できるはずです。

ただ、目の前の相手と話しながら、名前を検索し、同姓同名を見分け、プロフィールを読むのは難しい。

そこで作ったのが、「これであなたも雑談マスター」 です。

会話に出てきた人物名・会社名を手がかりに、AIエージェントが公開情報を調査し、根拠のある話題と質問を提示します。スマートグラス「Even G2」へ短い情報を届け、会話の下調べを支援するサービスです。

調べる作業をAIに任せて、相手の話を聞く余裕をつくる。

この課題に、AI HACKのテーマ「業務を自律化するAIエージェント」として取り組みました。

ソースコード:GitHub公開リポジトリ

プロダクトの概要

項目 内容
サービス名 これであなたも雑談マスター
対象ユーザー 人を覚えるのが苦手な人、話題を探してしまう人、初対面で会話を始める必要がある人
自律化する業務 人物・会社の調査、公開情報の確認、話題の選定、質問案の作成
入力 会話音声、または手入力した人物名・会社名
出力 根拠付きの事実と質問案を最大4組
表示 スマートフォンの2×2表示、Even G2向けの4行表示
AI・外部サービス OrcaRouter、Tavily、X公式API
開発 Codexを利用。AWS AI-DLCを採用方針とした仕様・設計・検証

顔認識や、過去に会った人の長期記憶は今回の対象にしていません。会話で得た名前や会社名から、その場で背景を理解することを支援します。

審査基準と、今回の工夫

評価項目 実装した工夫 評価の根拠・確認状況
セキュリティ カメラ映像不使用、サーバー側の鍵管理、取得先URLの検査、会話データの期限・削除 カメラ非搭載のEven G2を採用。アプリのスマホ音声入力も映像を取得しない実装
コストパフォーマンス 同一人物の再検索抑制、処理の直列化、時間・回数・予算の上限 費用制御と重複抑制を実装・自動検証。確定実費と手動検索との比較は未計測
信頼性・堅牢性 本文に存在する事実を選択、出典表示、曖昧な人物の確認、障害時の部分結果 実APIで出典付きカードを取得。Xの空結果からWeb調査へ切り替える経路も確認
自律性 調査先の選択、根拠評価、追加検索、棄却、終了の判断 判断履歴を表示。対象が明確な実API検証では、途中の手動再検索なしで結果を取得
アイディア・独創性 会話中の調査と質問準備を、スマートグラスの表示につなげる 個人的なペインを起点にMVPを実装。実機での体験評価・会話への効果測定は今後

以下で、それぞれの仕組みを説明します。

1. セキュリティ:相手のカメラデータを一切使わない

Even G2を採用した理由の一つが、カメラを搭載していないことです。公式資料でも、写真や動画を撮影できない設計であることが説明されています。Even Realities公式:Privacy & Security

本サービスは、目の前の相手を撮影したカメラ映像や顔写真を一切利用しません。スマートフォン側の音声入力でもカメラは使用しません。

調査の手がかりは、会話で出た名前や会社名です。顔画像から本人を特定する処理は行いません。

相手や周囲の人を撮影するデータを取得しないことを、ハードウェアとアプリの両方で徹底しています。

そのほか、次の保護を実装しています。

  • APIキーをサーバー側で管理する
  • 外部ページのURL・DNS・転送先を検査する
  • 取得したページ内の文言を、AIへの操作命令として扱わない
  • アプリ側で原音を永続保存しない
  • 会話セッションを15分で失効させる
  • 「終了して削除」で会話データと端末の認証記憶を削除・失効させる

調査対象は公開情報です。非公開情報の取得や、写真・フォロー関係から親密な交友関係を推測する機能は作っていません。

2. コストパフォーマンス:会話中の重複処理を減らす

会話では、同じ人物の名前が繰り返し出ます。

毎回同じ検索をすると、費用が増え、表示の更新も落ち着かなくなります。そこで、同じ人物・会社の組については、結果がある場合は120秒、結果がない場合は30秒、再検索を抑制します。

音声の処理は直列で実行します。処理が追い付かない場合には、古い区間を大量に積み上げず、最新の区間を優先します。

調査1回の上限も明確にしています。

項目 上限
調査時間 20秒
調査用LLM呼び出し 3回
検索 2回
本文取得 4件

継続会話では、音声認識と調査を同じ会話予算に集約します。日次・イベント全体の予算も確認し、上限を超える新たな処理を止めます。

重複検索を減らすことと、使い過ぎを止めることの両方を実装した点が、コスト面の工夫です。

確定請求額の照合や、手動検索と比較した費用対効果の測定は未完了です。そのため、未検証の「1回○円」「○%削減」といった主張はしていません。

3. 信頼性・堅牢性:根拠がないときに、情報を作らない

人物の情報を間違えると、会話そのものを損なってしまいます。
そこで、カードに表示する「事実」と「質問案」を分けています。

事実は、取得した本文に存在する文やプロフィール項目から選びます。質問案は、その事実をもとに生成します。

モデルには、本文から用意した候補のIDを選ばせます。存在しないIDや、根拠と一致しない内容は棄却します。利用者はカードから原文・出典URL・取得時刻を確認できます。
名前と会社名の一致も、人物を判断する手がかりの一つです。同姓同名や所属に曖昧さが残る場合は、人による確認を挟みます。
カードは最大4組ですが、確認できた情報が2件なら、残りは「未確認」と表示します。4枠を埋めるために情報を作りません。

エラーからの復旧方法

状況 対応
Xから十分な情報が得られない 残りの上限内でWeb調査へ切り替える
一部の本文を取得できない 検証できた情報だけを返し、調査未完了を示す
人物が曖昧 候補確認へ進む
根拠が不足している 追加調査、または情報を提示せず終了する
時間・回数・費用の上限に達する 新しい呼び出しを止める
利用者が停止、対象が変更された 遅れて届いた古い結果を表示しない

実APIの検証では、Xの投稿が得られない経路からWeb調査へ切り替え、取得できた資料から出典付きカードを返す動作を確認しました。

これらは誤りを減らすための対策です。人物の取り違えや意味の誤解が完全になくなると保証するものではなく、評価対象を増やした検証が必要です。

4. 自律性:調査から追加検索・棄却まで進める

実装した調査の流れは、次のとおりです。

人物・会社の候補抽出 → 調査先の選択 → 検索 → 本文取得 → 根拠評価 → 必要に応じた追加検索 → カード提示または確認・停止

対象が明確な場合、利用者が検索語を考え、検索結果を一つずつ開く作業を減らせます。
また、情報が足りなければ追加検索し、根拠が確認できなければ採用を見送ります。調査の判断履歴も画面に表示します。

AIと人の担当範囲

AI・アプリが担当すること 人が担当すること
人物名・会社名の候補抽出 音声入力への同意確認と開始・停止
調査先の選択、検索、本文取得 曖昧な人物候補の確認
人物・所属・根拠の照合 続行できない場合の再開判断
追加調査、情報の棄却、質問案の作成 実際の会話で話題を使うかの判断
上限内での復旧と停止 相手の反応を見ながら話すこと

調査の途中で何をするかまでエージェントが判断し、人は会話に関する最終判断を持つ。 この分担を、自律性の中心に置いています。

会話を続けながら更新する構成

継続会話モードでは、直近12秒の音声を約8秒間隔で処理します。
直前の会話も限定的に参照し、人物名と会社名が別のタイミングで出る場合に対応します。所属が曖昧な場合は、推測で結び付けません。
音声認識・調査の待ち時間はあります。また、最大100区間、15分のセッション期限、設定済み予算などの停止条件があります。

5. アイディア・独創性:相手の話を聞く余裕をつくる

スマートグラスを選んだ理由は、対面で会話する場面にあります。

目の前で人が話しているのに、検索のためにスマートフォンへ視線を落とし続けたくない。そこで、次の話題の候補を短く視界へ届ける体験を目指しました。

想定している利用場面は、懇親会だけではありません。

  • 営業で、初対面の相手と会話を始める
  • 採用や協業の場で、相手の公開活動を知る
  • イベントで、気になっていた人に話しかける
  • 名前や背景を覚えるのが苦手でも、その場で理解を補う

公開情報は、相手への関心を深めるための手がかりになります。その人が今何を話したいかは、実際の会話で確かめます。

今後の話題選びでは、本人が公表している家族との出来事や、育児の経験も扱う方針です。たとえば「子どもが熱を出して大変だった」という経験も、育児と仕事を両立する大変さに共感する会話につながると考えています。

この家族・育児の話題への対応は、現在の除外設定から調整が必要であり、動作確認済み機能には含めていません。

「何を聞こう」と探す負担を減らし、目の前の相手の話を聞く余裕を増やす。 これが実現したい価値です。

OrcaRouterの利用内容

本サービスでは、OrcaRouterを実際の調査処理に利用しています

用途 構成
人物・会社の抽出、根拠評価、質問生成 OrcaRouter経由の openai/gpt-4o-mini
音声認識の実装 OrcaRouter経由の google/gemini-2.5-flash-lite
Web検索 Tavily
Xの公開情報取得 X公式API
グラスとの連携 Even Hub SDK

調査APIの疎通確認と、音声入力からG2表示までの実機検証は分けて扱っています。
OrcaRouter公式ドキュメント

AWS AI-DLCを採用した開発

AWSが提唱するAI-DLCを採用方針とし、人が意図と重要な要件を確認し、AIが設計・実装・検証を進める形で開発しました。開発にはCodexを利用しています。AWSによるAI-DLCの説明
リポジトリには、要求、エージェントの自律範囲、失敗時の挙動、検証内容を残しています。
公式ワークフローの全段階を完了した状態ではありません。今回の要求・設計・検証記録と、公式ワークフローの完了状態は区別しています。

検証結果:確認したことと、残っていること

開発環境で、次の結果を確認しました。

検証対象 結果 条件・限界
自動検証 459件の自動テスト、型検査、ビルドが成功 外部APIや端末を模擬する試験を含む
実APIによる人物調査 「マイクロソフトのちょまどさん」からXの公開プロフィールを取得し、出典付きカードを提示 文字入力・単一人物の検証
調査時間の一例 約5.8秒で3件のカード 音声認識・G2表示を含まない。平均値や性能保証ではない
障害時の別経路 Xの投稿が得られない場合にWeb調査へ切り替え、出典付きカードを取得 少数回の実API検証
スマートフォン表示 幅390pxで4枠が同時に収まることを確認 G2実機の読みやすさとは別の検証

明日の懇親会で、ぜひ体験してください

明日の本番後の懇親会では、希望する皆さんに順番に体験いただく予定です。実機の準備・接続状況に合わせてご案内します。

「人を覚えるのが苦手」
「話したいけれど、何を聞けばいいか迷う」
「初対面の人との会話を、もう少し楽しみたい」

そんな方は、ぜひ「使ってみたい」と声をかけてください。
役立った質問、会話の邪魔になった表示、欲しかった情報を教えていただけるとうれしいです。

「これであなたも雑談マスター」で、話したい気持ちを、次の一言につなげる。

AI HACKで作ったこのサービスを、皆さんとの会話の中で育てていきたいです。

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