福祉機器の業界...
今まで地道に福祉機器、高齢者向けの装置を作ってきました。この業界、障害に応じていろいろなカスタマイズが必要だったりして、なかなか製品の大量生産が難しく、装置の値段が高い ⇒ 必要な人が購入できない ⇒ 会社の売り上げがない の悪循環に陥ったりします。新規参入者は割と多いけどなかなか長続きせずに、結局会社を閉じたり、撤退することが多くなっている感じですね。スタートアップとかハッカソンではいろいろなアイデアが出てきますが、いまだに成功した事例が見つからないので寂しい限り。装置に関しては、様々なセンサを使って状況を検出し、それを通知する(直接、または無線、ネットワーク経由)のが基本構成なので、プロトタイプの作成にはM5stackシリーズは便利で重宝しています。製品としては基板を起こして、ケースを作って製品化するのが本来の方法と思いますが、良くて月に数個しか売れない製品は、ケースの型を起こしたりする金額を回収するためには, とんでもない価格をつけることになってしまうのでなかなか制作できません。 で, 最近思うのは、大事なのは必要としている人に製品を使ってもらうことで、製品の見栄えとかは重要ではないのではないかということです(もちろん、安全性は最優先ですが)。なんなら開き直ってM5StickCそのままで使ってもらっても、必要な機能が達成されていればいいんじゃないかと。
M5StrickCを福祉機器に使う場合の良い点
・ケースと表示装置がついている → そのままでも最低限の装置の体裁が整う あとサイズも小型でいいです。
・HATやUNITの外部拡張部品が揃っているので、時にプロトタイプが作りやすい。
・WiFiとBluetoothが使える(技適も通っている!!)
通知機能が必須なので、これはありがたい。プログラムも簡単に実装できるので、サクッと機能を試すことができます。
M5StrickCを福祉機器に使う場合の残念な点
・消費電流が大きい
通信機能でBLEだけを使いたい場合、WiFi機能を完全にOFFにできないので、バッテリー駆動したいときに不便・リチウム電池がついているが、あまり使えない
最近作成したもの
1.スイッチトリガー + IFTTT
福祉機器で一番シンプルなI/Fは、スイッチのON/OFFをトリガーにするものです。コネクターはφ3.5mmオーディオプラグを差し込めるように、3.5φmmジャックを使います。
ALSなどの病気で声が出せない、体の一部がかろうじて動かせる状態の人のために、様々なスイッチ上の器具(検出方法、形状は様々ですがI/Fは、このφ3.5mmオーディオプラグでほぼ統一されています。
(スイッチの例)
なので、M5StrickCにもこのI/Fをつければ、いろいろな装置を作ることができます。
今回作成したのは、このスイッチI/Fの信号を受けて、ネットワーク経由で通知をしたり、操作で来る装置です。IFTTTを使えば、トリガー検出後は、サポートされているいろいろな機能が組み合わせで使えますね。
(ブロック図)
トリガー判定は、単純に一機能ではなく、最初のスイッチ押下で1から5までカウントを開始し、もう一回スイッチを押すとその番号を選択するようにします。1から5でいろいろな機能を割り当てれば、複数の操作ができるようになります。例えばメール、LINE(メッセージ、スタンプ)、電話コール(Twillioなどによる合成音読み上げ)、スマート家電の操作などです。
2.スイッチ SwitchBot
BLEのプロトコルが公開されているスマート家電の場合は、ネットワーク経由でIFTTTとかを使わなくても直接M5StrickCからBLEで接続して操作することができます。 単純にライトのON/OFFとか有効ですが、複数のSwitchBotを組み合わせると、インターフォンの応答、ロック解除もできたりします。3.スイッチ 音声(Alexa、Google NEST)
Alexaなどのスマートスピーカーは、音声で様々な命令を出したり、ビデオ通話ができたりするので、福祉機器としても便利です。ただ、声を出せない人たちはこの便利な装置を残念ながら使うことができません。なので、声が出せなければ替わりに音声を出してあげればAlexaを使えるのではということで、スイッチ操作でAlexa操作用の音声を出す装置を作ってみました。 M5シリーズにはスピーカーユニットも発売されているので、取り付けるだけでプロトタイプはできていしまいます。 音声はSDカードに入れたMP3を再生することにしました。 動作は、スイッチ押下で1から5までの数字を順次読み上げ、途中でスイッチを押すと読み上げた番号の音声が出るようにしています。
スピーカーユニットの音はあまり大きくないので、スピーカーとAlxeaは近くに置く必要がありました。また、認識しやすい合成音を作るためにVOICEBOXとかでキャラクターやパラメータをいろいろ調整して試してみました。高めの声でゆっくり発声すればだいたい認識はしてくれるようです。あと、起動メッセージの”アレクサ”、”OK,グーグル”と命令の音声は1秒ぐらい間を開けたほうが認識しやすいようです。
各種センサの活用の例
4.オストメイト 通知
人工肛門の人は、排泄物をパウチという袋にためて、いっぱいになったら内容物を捨てる(またはパウチを交換する)作業が必要なのですが、認知症の人は自分でその作業ができず、介護者が定期的に確認する必要があります。そこでパウチのふくらみを検出して通知する装置を研究しています。 BLEでスマートフォンにセンサー値を送り、警告状態を判断した場合には通知する仕組みです。
検出の方法は、パウチのカバーを作り、その開き具合を磁気センサー、または曲げセンサーで判断することにしました。あと、姿勢や歩行状態などを判定するために加速度センサーの値(M5StrickC内臓)も出力しています。
WiFiは使ってないので、消費電流を小さくするためにはWiFiを完全にOFFにしたいのですが、WiFi.mode(WIFI_OFF)を使っても半分ぐらいにしか減らないかつ、BLEのライブラリーとWiFiのライブラリーを同時にインストールするとメモリ不足でコンパイルできなかったので、M5StrickCでのバッテリー駆動は諦めました。実用化のめどが立ってきたら、ほかのBLEチップに置き換える必要がありますが、当面検証実験ではM5StrickCが活躍しそうです。