はじめに
はじめまして。オープンロジでエンジニアチームのリーダーをやっているikeda_maです。
今年の4月に初めてチームリーダーという仕事をいただき、初めての経験に苦戦しながらひたすら業務に邁進してきました。
最近ようやく仕事にも慣れて一息つく余裕が出たところで、あることに気づきました。
「最近、本を読んでないなぁ」
そんな時にふと手に取って読み返した本が様々な刺激を与えてくれたので紹介させていただきたいと思います。
書籍の紹介
情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記
堀 栄三 (著)
1996年に出版された本です。
- 著者は旧日本陸軍の情報部で情報参謀として勤務した元軍人。
- 多方面から様々な手段を使って収集される情報を分析して、アメリカ軍の動向を探る仕事をしていた。
- アメリカ軍の作戦を正確に予測したことから、戦後『マッカーサー参謀(マッカーサーの作戦を最も理解していた男)』とも評された人物。
旧日本軍について分析した書籍であれば 失敗の本質 が有名と思いますが、それに負けず劣らずの名著だと思っています。
失敗の本質が「組織」についてアカデミックな視点で論じた本であることに比べ、こちらの本は著者個人の目線で試行錯誤したこと、体験したこと、考えたことが書かれているため、個人の仕事の取り組み方として吸収できることが多いと思っています。
特に印象に残っているのは、著者が情報の仕事について次のように述べていることです。
『情報を百パーセント集めて、左団扇で戦いを進めた例は皆無である。』
『いつまでに判断をして答えを出せという時期的制約が、非情なまでにつきまとう。』
情報参謀と聞くと何をやっているのかよくわからない遠い存在のように思えますが、仕事の本質はあまり変わらないのかもしれません。
不確実性の高い、まさに霧の中を彷徨うような状況下において、可能な限りの情報を集め、評価・分析して限られた時間内で判断を下すという点は、チームリーダーに限らず様々な仕事に共通することではないかと思います。
心に残った至言・エピソード
それでは、私の心に残った至言・エピソードをいくつか簡単に紹介させていただきます。
二線、三線と異なった複数の視点の線の交叉点
この言葉はこの本の中でたびたび登場します。
「一つの線 = 視点・情報源」には主観・バイアス・偏りが含まれる可能性があるが、二線三線と複数の視点・情報源が重なって交叉点となった時、それが強力な裏付けとなって確度の高い情報になるということだと理解しています。
(Geminiに聞いたら「ひとつの情報だけで分かった気になるな。複数の視点を組み合わせて、その中心にある『確からしい事実』をあぶり出せ」とわかりやすい言葉にしてくれました。)
実際に著書の中でも戦場を飛び交う情報の中から重要な情報を見極めることに苦労したエピソードが多くありました。
著者は「篩に土砂を入れて篩い落とす」「時にはダイヤが出ることだってあるが、そのダイヤが本物か、偽物かという問題にぶつかる」と述べています。
この言葉が心に残った理由は、チームリーダーに求められる考え方を的確に表現した言葉だと思うからです。
例えばある問題が発生したとき、指標Aは?指標Bは?指標Cは?...と複数の指標を総合的に見ることで真の原因が見えてきます。
また場合によっては各指標が正しく計測されているか?を点検し、正しい情報を元に判断できているか確認することも重要です。
そのような我々が日常的に取り組んでいる業務を、まさに簡潔に表現した言葉のように思います。
枝葉末節にとらわれないで、本質を見ることだ。
この言葉も著者が体験したエピソードに織り交ぜられて度々登場します。
元々は著者の父の軍関係者の言葉ですが、難題にぶつかった時に著者に天啓をもたらす言葉となっています。
ネタバレになるため具体的なエピソードは差し控えさせていただきますが、「勝敗を決める指標は何か?」「相手の行動の裏にある哲理は?」などを紐解き、著者は困難な仕事を成し遂げていきます。
よく「手段と目的が逆転する」と言われるように、困難な仕事に直面したり膨大な情報に飲み込まれると当初の目的が頭の中から消えて枝葉末節ばかりに目が行くようになると思います。
そんな時にこの言葉を思い出し、当初の目的や本質に立ち戻れるチームリーダーになりたいと思います。
正体不明の特務任務機
これは著書の後半に出てくるエピソードになります。
著者は無線傍受した内容を解析し、マリアナ諸島から飛来するB29の動向を探っていました。
この時に他とは違う行動をとっている編隊を見つけ、正体不明機として注視していましたが、最後までその正体を見抜くことができませんでした。
そして正体不明の特務任務機と、あの情報が結びついていたら...と著者は深い悔恨と共に振り返っています。
著者は「平素から広範な知識を、軍事だけでなく、思想、政治、宗教、哲学、経済、科学など各方面に渡って、自分の頭の中のコンピューターに入力しておかなければいけなかった」と述べています。
最近はあまり本を読めず、新しい知識を得ることをしなくなっていたので、来年はたくさん本を読みたいなぁと思います。
おわりに
先にも述べましたが、著者は情報参謀として可能な限りの情報を収集・分析し、限られた時間の中で相手の意向を探るという不確実性の高い仕事に従事されていました。
その中で著者が得たノウハウは、現在の我々にも通ずるものがあり、多くの示唆に富んでいると思います。
これは著者の父が、情報参謀になる著者に対して話した言葉です。
情報は結局相手が何を考えているか探る仕事だ。
だが、そう簡単にお前たちの前に心の中を見せてはくれない。
しかし心は見せないが、仕草を見せる。
その仕草にも本物と偽物がある。
それらを十分に集めたり、点検したりして、これが相手の意中だと判断を下す。
- 心の中 = あるべき仕様や問題解決の方法など本当に知りたいこと
- 仕草 = 顧客の声、公式ドキュメント、技術書、計測している各種指標 etc...
こう読み替えるとやはり本質は近いのではないかと思います。
かなりミリタリーな話が多いので抵抗を感じる方もいると思いますが、興味を持って読んでいただけると嬉しいです。
ご一読いただきありがとうございました。