導入・背景
年末年始に暴飲暴食の限りを尽くして、10kg近く増量してしまいました。
減量をしようと思い立ったのですが、減量を始めようとするとまず何がいいのか調べたくなりますよね。エンジニアなので特に。
調べていると食事・運動・睡眠・サプリ・ストレス管理……と情報が際限なく増えていきます。情報の海に溺れた結果、知識だけはあるという状態に陥りがちです。そんな経験から、情報を絞ってメタアナリシスに従うだけというシンプルなアプローチに落ち着きました。
本記事は現在の私の減量備忘録兼、同じような悩みを抱えている方の参考になればと思って書いています。
Who am I?
都内のSIerに勤務する5年目のインフラエンジニアです。
解剖学や生理学の専門家ではなく、社会人になってから健康について学んだ程度の知識しか持っていません。
続かない理由は意志じゃない
健康習慣を始めようとすると、こんな流れになりがちです。
- 何がいいのか調べる
- 食事・運動・睡眠・サプリ・ストレス管理……と情報が増える
- より良い方法を探しているうちに、何もできていない
「続かないのは自分が弱いから」と結論づけてしまいがちですが、実際は情報量が多すぎて設計が破綻しているだけなんじゃないかと思っています。
エンジニアは特に情報過多になりやすい?
これはある種の職業病だと感じています。
エンジニアには「情報収集が好き」「最適解を探したい」という特性が重なりやすいです。
問題なのは、この特性が情報を集めること自体が目的化してしまいやすい点です。
気づけば情報収集ばかりが進んで、肝心の行動が後回しになる。コードを書く前に設計だけ膨らんで破綻するのと、構造は近いかなと思います。
「情報の取捨選択が下手」ということを言いたいわけではなくて、大量の情報を収集してもそれを精査して正しく判断できるほど自分は専門家ではない、という開き直りに近い感覚を持った方がいいのではと考えています。専門家でないなら、専門家が積み上げた知見をそのまま借りる方が合理的だと思っています。
解決策 メタアナリシスだけ見て、情報を絞る
情報を絞るとき、何を基準にするかが問題になります。
私が採用しているのはメタアナリシスを参照するというシンプルなルールです。
なぜメタアナリシスなのか
メタアナリシスとは、同じテーマを扱った複数の研究を体系的に収集し、統計的に統合して分析する手法です。エビデンスレベルの階層では最上位に位置づけられることが多く、単発の論文よりも過剰な一般化を避けやすいです。
単発の論文はいわばn=1のベンチマーク結果に近くて、サンプルの偏りや測定方法の差によってバイアスが入り込みやすく、単一の研究から「これが正しい」と結論づけるには限界があります。健康情報で「hogehogeが体にいい」「fugafugaは体に悪い」という話が定期的に出てくるのも、こういった単発の研究結果が一人歩きしやすいからだと思っています。エンジニア的に言えば、複数環境で繰り返し検証済みの知見に近いイメージです。
もちろんメタアナリシス自体にも限界はありますし、私は専門家ではないので読み方に誤りがある可能性もあります。ただ、単発の論文を1本読んで行動に移すよりは、複数の研究をまとめた知見を参照する方が、非専門家なりの判断基準として現実的かなと思っています。
メタアナリシスで繰り返し確認されていることだけに絞ると、扱う情報量は大幅に減ります。
守るべき3つのこと
メタアナリシスを参考にして「これだけ守れば十分」と私が判断したのは以下の3つです。
これ以上は増やさないようにしています。
食事編 まず「何を食べているか」を知る
ダイエットなどで消費カロリーを管理しようとする方が一定数いるのですが、これは結構難しかったりします。
というのも、活動量計の消費カロリー推定は誤差が大きく、実際の消費カロリーとは乖離が起きてしまうからです。
これは複数の研究で一貫して報告されています。O'Driscoll et al.(2020)の41機種・60研究を対象としたメタアナリシスでは、すべてのデバイスで有意な誤差が確認されています。スタンフォード大学が7機種を直接比較した研究(Shcherbina et al., 2017)でも、いずれの機器も誤差20%以下を達成できなかったと報告されています。FitbitやGarminに特化したシステマティックレビューでも同様の結果が出ており、過小評価・過大評価の傾向はブランドによって異なるものの、精度が許容範囲に収まることはほとんどないようです。
この状態でダイエットの基本原則である消費カロリー>摂取カロリーを正確に管理するのは難しいです。
一方、摂取カロリーは自分でコントロールできるので、こちらに集中する方が再現性が高いかなと思っています。
まず最初にやるべきことは、「自分が普段どれだけ食べているか」を把握することです。
あすけんなどで1〜2週間記録するだけで、自覚できていなかった摂取量が見えてきます。
最初の段階では特に重要なのは「普段通りに食べること」です。記録していると無意識のうちに制限しようという考えが働きますが、目的が達成できないので普段通り食べてください。
タンパク質について
摂取カロリーと並行して意識しておきたいのがタンパク質です。
体重1kgあたり1.6g~/日を目安にすることが、複数のメタアナリシスで繰り返し示されています。
筋量を維持しながら体重をコントロールするには、カロリーだけ減らすのではなくタンパク質の確保がセットになります。
「カロリーを減らすだけ」だと体力が落ちてパフォーマンスにも影響しやすいので、この点は意識しておく価値があると思います。
私は固形物でタンパク質を摂取するのがあまり得意ではないので、食後にプロテイン(タンパク質 30g/回)を摂取してなんとか目標の数値を達成するようにしています。
運動編 筋トレ+有酸素の組み合わせ
運動の種類はたくさんありますが、メタアナリシスで一貫して有効性が示されているのは筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせです。
WHOのガイドラインでも以下が推奨されています。
| 種類 | 推奨量 |
|---|---|
| 有酸素運動(中強度) | 週150〜300分 |
| 有酸素運動(高強度) | 週75〜150分 |
| 筋力トレーニング | 週2回以上 |
どちらか一方より、両方を組み合わせる方が体力維持・代謝維持・精神的な健康への効果が得られやすいです。
「何から始めるか」で迷うくらいなら、週2回の筋トレと週3回の30分ウォーキングを先にカレンダーに入れてしまうのが現実的かなと思っています。
私は運動部に所属していたこともあり筋トレに対してネガティブ(めんどくさいなど)な感情は持っていません。一方で、筋トレに対してネガティブな印象をお持ちの方もいらっしゃると思います。そういった方は昼食後に軽く散歩するなどのちょっとした活動を増やすだけでいいんじゃないかなと思っています。
睡眠編 7〜8時間の確保 & 午後のカフェインを避ける
睡眠に関して守っていることは2つだけです。
- 睡眠時間を7〜8時間確保する
- 午後のカフェインを避ける
CDCをはじめ複数の機関が成人に7時間以上の睡眠を推奨しています。睡眠不足は集中力・判断力・感情コントロールに直結するので、エンジニアの業務パフォーマンスへの影響は特に大きいと感じています。
カフェインについては、摂取から6時間後も覚醒作用が残ることが研究で示されています。
午後2〜3時以降のカフェイン摂取は入眠や睡眠の質を下げやすいので、ここは優先的に潰しておく価値があります。
私は睡眠については7時間確保することだけを考えていて、それ以外はあまり気にしていません。食事や運動と比べると意識的に取り組んでいることが少ないですが、逆に言えば7時間という数字を守るだけで十分だと思っています。
やめたこと
「守ること」を絞るのと同じくらい、「やらないことを決める」のも重要だと感じています。
以下は一度は気になって調べたものの、今は取り組んでいないことです。
- 細かいマクロ管理:PFC(タンパク質・脂質・炭水化物)をグラム単位で管理するのは続かないので、タンパク質の量だけを意識して、あとは気にしないようにしています。タンパク質だけ管理していると「それもマクロ管理では?」と思われるかもしれませんが、脂質・炭水化物まで細かく見るのと、タンパク質だけ見るのでは管理の煩雑さがかなり違います。
- 複数のサプリ摂取:サプリも調べると際限なく種類が増えるので、現在はビタミンDとマグネシウムだけに絞っています。どちらも食事から十分量を摂取しにくいという理由で選んでいます。
「やらないことを決める」のは、情報を絞るのと表裏一体です。試していないことへの不安は残りますが、続けられない仕組みを作るよりは、続けられるシンプルな仕組みを守る方が長期的には勝ると思っています。
減量中に気をつけたいこと
減量に取り組む人の中に、一定数こういった変化が見られることがあります。食事に気を遣っていない人を見て否定的な感情を持つようになったり、友人との飲み会を「カロリーが…」という理由で断るようになったりといった変化です。
健康習慣は自分の生活を豊かにするために取り組むものだと思っていて、それが人間関係や精神的な余裕を削るようになったら本末転倒だと感じています。
友人からの誘いだけは断らないことをおすすめします(マルチ商法は除く)。飲み会の1回や2回で減量が崩れることはほとんどないですし、そういった場を犠牲にしてまで続ける健康習慣に意味があるかは疑問です。
まとめ
健康習慣が続かない根本には、情報が多すぎて設計が破綻することがあると思っています。
メタアナリシスで繰り返し確認されていることだけに絞ると、守るべきことは驚くほど少ないです。
| 分野 | やること |
|---|---|
| 食事 | 摂取カロリーを記録して自覚する。タンパク質を確保する。 |
| 運動 | 筋トレ+有酸素を週に組み込む。 |
| 睡眠 | 7〜8時間確保する。午後のカフェインを避ける。 |
情報を増やすより、この3つを守り続ける方が長期的には確実に効くと思っています。
免責事項
本記事の内容は、一般的な健康情報の共有を目的としたものであり、医療行為の代替ではありません。持病・既往歴がある方や、体調に不安がある方は、実践前に主治医にご相談ください。また、記事内で紹介している数値や方法はあくまで私個人の判断に基づくものであり、すべての方に適用できるわけではありません。
参考資料
- WHO, Guidelines on physical activity and sedentary behaviour (2020)
https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128 - CDC, About Sleep
https://www.cdc.gov/sleep/about/index.html - St-Onge et al., Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before bedtime (J Clin Sleep Med, 2013)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24235903/ - Morton et al., A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength (Br J Sports Med, 2018)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28698222/ - Noetel et al., Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis (BMJ, 2024)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38355154/ - O'Driscoll et al., How well do activity monitors estimate energy expenditure? A systematic review and meta-analysis (Br J Sports Med, 2020)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30194221/ - Shcherbina et al., Accuracy in Wrist-Worn, Sensor-Based Measurements of Heart Rate and Energy Expenditure in a Diverse Cohort (J Pers Med, 2017)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28538708/ - Chevance et al., Accuracy and Precision of Energy Expenditure Measured by Combined-Sensing Fitbits: Systematic Review and Meta-analysis (JMIR mHealth, 2022)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35416777/