はじめに
本記事は、日々チームを率いているエンジニアやリーダー、あるいはこれからマネジメントや組織運営に関わろうとしている方に向けてお勧めしたい2冊をご紹介します。
特に、「早く成長しなきゃ」「成果を上げないと」という焦燥感に苛まれ、辛い今を生きている方やそうした人達をマネジメントしている方には、この2冊から得られる示唆は多いのではないかと思います。
読んだきっかけと目的
今回紹介する2冊はいずれもKindle Unlimitedで読み、その後に紙の書籍として購入したほど強く印象に残ったものです。
一見すると自己啓発書に見えますが、実際にはチームマネジメントやリーダーシップに直結する内容が多く、自分自身の仕事の仕方を大きく見直すきっかけになりました。
個人の振り返りだけでなく、チームや組織としての在り方にも活かせると感じたために記事にしたためました。
『パッション・パラドックス』を読んで見えてきた「情熱」のリスクと光
情熱の負の側面を見つめ直す
私はこれまで「情熱さえあれば頑張れる」、「その対象を早く見つけなければ」と信じてきました。
しかしこの本は、情熱にも負の側面があることを突きつけてきます。
この本とは別なところで、私の師匠に「モチベーションはもともと工場の生産性を高めるために使っていたにすぎない」という言葉を思い出し、私はその“善”とされてきた情熱を他者に押し付けていなかったか、自問することになりました。
炎ではなく灯火としての情熱
歴史を振り返っても、情熱に飲まれて破滅した人は数多く存在します。
「完璧」「好成績」といった瞬間的な報酬に引き寄せられ過ぎると、ヒトはその急激なドーパミンの誘惑にかられ不正や過剰な恐れを生みやすくなります。
だからこそ、情熱は自分を焦がす炎ではなく、未来を照らす灯火であってほしい。
そのためには過集中を避け、俯瞰した自己認識を持つことが重要であると説かれていました。
アクセルとブレーキの両立
情熱とバランスは相反するトレードオフの関係性があります。
多くの自己啓発本では情熱を煽るか、バランスこそが大切だ…と両極端な論調が多い印象です。
しかしこの本ではどちらにも言及しており、「今だ」と思った時にはバランスの天秤を傾け情熱に向かってひた走ること。そのために日ごろはバランスを整えておく準備が必要だという視点は焦燥感を持っていた私には非常に刺さる内容でした。
『世界一流エンジニアの思考法』が示す「理解」に基づく生産性と文化
理解に立脚した思考法
この本は、「生産性を上げるためのノウハウ集」ではなく、「組織にとっての思考の質」を深く掘り下げた一冊でした。
表面的な効率化ではなく、まず“理解”に時間をかけ、仮説を立てたうえで検証に進む。
個人の成果ではなく、組織的に再現可能なナレッジの蓄積へとつなげる思考法が描かれています。
初歩の徹底と聞く力
「初歩の学習を応用できるレベルにまで引き上げること」や、「エキスパートに早く積極的に聞くことは必須であり最短ルートである」といった考え方の最たるものとして、「試行錯誤は悪である」とまで言い切っていました。
こうした姿勢が長期的に生産性を高めていくことに繋がるのであろうと実感しました。
やらないことを決める力
「いかにやることを減らすか?」に頭を使う。マルチタスクを避け、最も重要なことだけに集中する。
そのための判断軸として、「リスクや間違いを早く受け入れて学ぶ」Fail Fastの文化や、「他人の意見を違う視点から自分の理解を助けてもらうためのものとして受け入れる」相互理解のためのコミュニケーションが、組織全体のスキル底上げを支える鍵になると感じました。
成果よりも共有される価値
定例会議で「スケジュールの計画状況」ではなく「やってみて実際どうだったか?改善ポイントやベストプラクティスは?」を問うというエピソードには自分自身の振り返りや1on1でも聞いていきたいと思いました。
一人一人が責任を持って仕事をする
チームをコントロールするのではなく「自己組織チーム」として、目指すゴールを共有した後その道程は各チームに任せるという「サーバントリーダーシップ」が非常に印象的でした。
更に、インターンでも学生でも「できるもの」として大人扱いすることで周囲の助けを得ながら進んでいくという「育てる」のではなく「育つ」環境を作るマネージメントはまさに私の理想です。
まとめ ~目指すは幸せに成長しながら価値を創出するチームビルディング~
"成長するためにプライベートを犠牲にしないと…"、"幸せのために出世を諦める…"、"お客様の価値提供のために一同身を粉にして…"
仕方ない。そういうものだ。そんな弱音がぶっ飛ばされた(少々乱暴なのはご容赦ください)。そんな気持ちになりました。自己啓発というよりも、チームや組織をより良くするための“灯火”を見たような感覚があります。
どちらの本も、単に「個人が強くなるため」ではなく、「組織と個人との関係性でいかに大きな価値を生むか」を問うものだと感じました。
記載の内容は理想論かもしれません。全てやり切ることは難しいかもしれない。でも、目指すことはできる。
2つの書籍を読み、本記事の題名にもある"成長"と"幸せ"と"価値"これらはトレードオフではなく両立できるものであると信じることができました。
そんな組織を、私は育てていきたい。
…もっとも、私自身まだまだ未熟で出来ることなんて少ないですし、ここに記載の内容もほとんど自戒を込めているようなものです。この記事が、同じように悩んでいる誰かの背中を、そっと支えられるヒントになれば幸いです。