PDFドキュメントはレイアウトが固定されているため、レポートや契約書など改ざんできない形式の出力に最適です。しかし、このようなPDFに後からテキストを挿入・修正するのは通常の方法では容易ではありません。Pythonを活用することで、PDFへのテキスト追加を効率化し、ドキュメント生成から内容確認までのプロセスを自動化できます。

この記事では、技術的な観点からPDFにテキストを追加する3つの方法を詳しく解説します。

✅ 新規PDFを作成して段落テキストを追加する
✅ 既存のPDFに短いコメントや注釈を挿入する
✅ テキストの書式、配置、レイアウト領域を自由にカスタマイズする

ここで紹介する方法では、無料で利用できる Free Spire.PDF for Python を使用します。pipでインストール可能です。

pip install spire.pdf.free

新規PDFを作成して段落テキストを追加する

システムレポートを作成したり、テンプレート文書を生成する際には、空白のページに複数の段落を挿入し、レイアウトを統一することがよくあります。

from spire.pdf import PdfDocument, PdfTrueTypeFont, PdfFontStyle, PdfSolidBrush, PdfRGBColor, PointF, RectangleF, \
    PdfStringFormat, PdfTextAlignment, PdfVerticalAlignment

# 新しいPDFドキュメントを作成し、ページを追加
pdf = PdfDocument()
page = pdf.Pages.Add()

# 挿入するテキスト内容
text = ("The purpose of this document is to provide an overview of the company’s financial highlights for the fiscal year 2024. "
        "It includes revenue trends, operational costs, and net income summaries. "
        "The following sections will outline each metric in more detail.")

# フォント、ブラシ（色）、レイアウト領域を設定
font = PdfTrueTypeFont("Arial", 14.0, PdfFontStyle.Regular, True)
brush = PdfSolidBrush(PdfRGBColor(0, 0, 0))  # 黒色テキスト
layout_area = RectangleF(50.0, 50.0, page.GetClientSize().Width - 100.0, page.GetClientSize().Height)
string_format = PdfStringFormat(PdfTextAlignment.Left, PdfVerticalAlignment.Top)

# テキストを描画
page.Canvas.DrawString(text, font, brush, layout_area, string_format, False)

# 保存してクローズ
pdf.SaveToFile("output/new.pdf")
pdf.Close()

📌 技術ポイント：

PdfTrueTypeFont は外部フォントファイルを埋め込むことができ、フォント互換性を確保できます。
RectangleF でテキストの配置領域を定義し、段落枠を自由に設定可能。
DrawString() は領域を超える場合に自動で折り返し表示をサポート。
PdfStringFormat を使用して、水平方向・垂直方向の配置を細かく指定できます。

生成されたPDF：

既存のPDFにテキストを挿入する

既にPDFが存在しており、その一部にコメントやメモ、承認スタンプなどを追加したい場合には、以下のように記述できます。

from spire.pdf import PdfDocument, PdfFontStyle, PdfSolidBrush, PdfRGBColor, PointF, PdfFont, PdfFontFamily

# 既存のPDFドキュメントを読み込み
pdf = PdfDocument()
pdf.LoadFromFile("PDF.pdf")
page = pdf.Pages[0]

# フォント、色、挿入位置を設定
font = PdfFont(PdfFontFamily.TimesRoman, 12.0, PdfFontStyle.Bold)
brush = PdfSolidBrush(PdfRGBColor(0, 128, 0))  # ダークグリーン
location = PointF(130.0, 90.0)

# テキストを挿入
page.Canvas.DrawString("Verified by QA Department", font, brush, location)

# 保存
pdf.SaveToFile("output/ModifiedPDF.pdf")
pdf.Close()

📌 技術ポイント：

PdfFontFamily.TimesRoman はPDFに標準で組み込まれているフォントのため、埋め込み不要です。
座標 PointF(x, y) の単位はポイント（1pt ≈ 0.3528mm）、原点はページ左上。
領域指定なしで、短いラベルやスタンプに最適です。

修正後のPDF：

複雑な書式設定：透明で斜めのテキストウォーターマークを追加

文書のレビュー用や内部版の配布では、透明度と回転角度を持つウォーターマークを付けて、機密性を示したり誤配布を防止することが一般的です。Spire.PDF では、キャンバス状態の保存、回転、透明度設定などの機能を使って、このような高度なフォーマットにも対応できます。

from spire.pdf import PdfDocument, PdfTrueTypeFont, PdfFontStyle, PdfSolidBrush, PdfRGBColor, PointF
from spire.pdf.common import Color

# 既存のPDFを読み込み
pdf = PdfDocument()
pdf.LoadFromFile("input1.pdf")
page = pdf.Pages[0]

# ウォーターマークテキスト
text = "Internal Use Only"

# フォントスタイルとサイズ
font = PdfTrueTypeFont("Arial", 40.0, PdfFontStyle.Bold, True)

# ブラシカラー（ダークレッド）
brush = PdfSolidBrush(PdfRGBColor(Color.get_DarkRed()))

# テキストサイズを測定して中央配置
size = font.MeasureString(text)
x = (page.Canvas.ClientSize.Width - size.Width) / 2
y = (page.Canvas.ClientSize.Height - size.Height) / 2

# キャンバス状態を保存
state = page.Canvas.Save()

# 透明度を設定
page.Canvas.SetTransparency(0.3)

# 原点をテキスト中央に移動
page.Canvas.TranslateTransform(x + size.Width / 2, y + size.Height / 2)

# テキストを-45度回転
page.Canvas.RotateTransform(-45.0)

# ウォーターマークテキストを描画（中央基準）
page.Canvas.DrawString(text, font, brush, PointF(-size.Width / 2, -size.Height / 2))

# キャンバス状態を復元
page.Canvas.Restore(state)

# 保存
pdf.SaveToFile("output/with_watermark.pdf")
pdf.Close()

📌 技術ポイント：

SetTransparency(0.3) を使用してテキストの透明度を設定し、本文を隠さずにウォーターマーク効果を出す。
TranslateTransform() で原点をテキスト中央に移動。
RotateTransform(-45) により、対角線方向に回転させるのが一般的。
DrawString() でウォーターマークを描画し、PointF(-size.Width / 2, -size.Height / 2) で中央基準に配置。
Canvas.Save() と Canvas.Restore() を活用し、他の要素に影響を与えずに局所的な描画設定を適用。

ウォーターマーク付きPDF：

まとめ

Spire.PDF for Python を使えば、シンプルなPythonコードでPDFに多様なテキストを追加できます。主な機能は以下の通りです。

機能	方法・ポイント
✅ 新規ドキュメント作成	`PdfDocument.Pages.Add()` + `DrawString()`
✅ 既存ドキュメントに挿入	`LoadFromFile()` + `PointF` で挿入位置を指定
✅ レイアウト制御	`RectangleF` + `PdfStringFormat` で配置・領域調整
✅ 複数行テキスト対応	テキスト内に `\n` を含めれば自動改行
✅ フォント・色設定	`TrueType` フォント、標準フォント、RGBカラーを自由設定

これら3つの方法を活用することで、PDFのテキスト追加に関する主要なニーズをカバーできます。ドキュメントの一括生成、承認フロー、内容出力など、さまざまな業務シーンで活用してください。

📚 さらに詳しいPDF操作のチュートリアルはこちら：
Spire.PDF for Python チュートリアルセンター