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若手が考えるメインフレーム攻略7~VTAM概要~

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Last updated at Posted at 2026-09-29

はじめに

IBMメインフレームを学び始めると、z/OS、JES2、TSO、IMS、VTAM
といった聞き慣れない用語が数多く登場します。

その中でも VTAM(Virtual Telecommunications Access Method) は、長年にわたりIBMメインフレームの通信基盤を支えてきた重要なコンポーネントです。

本記事では、IMSを例にVTAMの役割やAPPL/LU/PUの概念、実際の銀行システムでの利用イメージを初心者向けに解説します。


VTAMとは

VTAM(Virtual Telecommunications Access Method)は、

SNA(Systems Network Architecture)ネットワーク上の通信を管理するソフトウェア

です。*i1

簡単に言うと、「メインフレームの通信管理者」のような役割を担います。

VTAMは、

  • 3270端末
  • IMS
  • 他ホストシステム
  • SNAネットワーク機器

との通信を管理します。


SNAとは

VTAMを理解するにはSNAを知る必要があります。

SNA(Systems Network Architecture)はIBMが提供するネットワークアーキテクチャです。*i2

現在のシステムではTCP/IPが主流ですが、

  • 金融機関
  • 保険会社
  • 公共機関

などでは長年稼働している勘定系システムとの接続のため、現在もSNA技術が利用されているケースがあります。*i2

VTAMの役割

VTAMの主な役割は以下の4つです。*i3

1. セッション管理

VTAMの最も重要な役割の1つがセッション管理です。*i3

VTAMは、

  • 端末
  • アプリケーション
  • 他ホスト

との通信セッションを確立・維持・終了します。

例えば、

3270端末
    ↓
  VTAM
    ↓
アプリケーション

という通信が発生した場合、VTAMが両者のセッションを管理します。

VTAMは特定のアプリケーション専用ではなく、SNAネットワーク上の通信セッションを管理する共通基盤として機能しています。*i3

2. 通信経路管理

VTAMは、端末やアプリケーション間の通信経路(ルート)を管理します。*i3

利用者やアプリケーションは通常「通信相手がどの回線や装置を経由して接続されているか」を意識する必要はありません。

例えば、

TM0001(LU)
     ↓
TMCTRL(PU)
     ↓
    VTAM
     ↓
IMSA(APPL)

という構成がある場合、TM0001はIMSAへ接続したいことだけを意識します。

実際にどの通信装置や回線を経由するかはVTAMが管理します。*i3

補足
大規模システムでは複数の通信経路が存在することがありますが、これはあくまで「同一の接続先(APPL)へ至るまでの物理的な経路の選択」です。VTAMが「複数存在するAPPL(例:IMS1かIMS2か)の中から接続先そのものを自動的に振り分ける」動作は、標準の構成では行われません。そうした振り分けは、Parallel Sysplex環境でGeneric Resources機能を明示的に設定した場合などに限られます。


3. リソース管理

VTAMはSNAネットワーク上のさまざまな資源(リソース)を管理します。*i3

代表的なリソースは以下の通りです。

リソース 役割
APPL IMSやCICSなどのアプリケーション
PU 通信装置やネットワークノード
LU 端末や論理的な通信相手

APPL

APPLは、VTAMに登録されるアプリケーションそのものです。IMS、CICS、TSOなどがAPPLとして定義されます。

APPL ID=IMSA
APPL ID=CICSA
APPL ID=TSOA

ユーザーが3270端末から

/SIGNON APPLID(IMSA)

のように接続すると、VTAMはAPPL定義を見てIMSへセッション接続します。

PU

PUは通信装置そのものを表します。PUは回線制御、ネットワーク管理、LUの収容を行います。
現在は
・TN3270サーバ
・通信ゲートウェイ
などがPUになります。

PU=PU001

の下に

LU=LU0001
LU=LU0002
LU=LU0003

とLUが定義されるイメージです。

LU

LUは実際にアプリケーションと会話する論理端末です。
3270端末セッションはLUとして扱われます。
LUは画面受信、セッション管理などを担当します。


例えば、

TMCTRL(PU)
   ├─ TM0001(LU)
   ├─ TM0002(LU)
   └─ TM0003(LU)

IMSA(APPL)

という定義があった場合、VTAMは

  • TM0001は存在するか
  • TMCTRLは稼働しているか
  • IMSAは接続可能か

を管理しています。

オペレータはVTAMコマンドを利用して各リソースの状態を確認できます。

例:

D NET,ID=IMSA

表示例:

IST075I NAME = IMSA
IST486I STATUS=ACTIVE

このようにVTAMは、ネットワーク上にどのような資源が存在し、現在利用可能かを一元的に管理する役割を持っています。*i3


4. 障害検知・状態管理

VTAMは通信障害の検知やネットワーク資源の状態監視も行います。*i3

例えば、

  • 3270端末の切断
  • 通信回線障害
  • セッション異常終了

などが発生した場合、VTAMはその状態を検知します。

また、障害が発生した際にはメッセージを発行し、運用担当者へ通知します。

金融機関のような24時間365日稼働するシステムでは多数のチャネルが接続されています。

VTAMはこれらの接続状態を常に監視し、「どの端末が利用可能で、どのアプリケーションと通信できるか」を管理することで、安定したオンラインサービスを支えています。*i3

APPL・LU・PUについて

APPLとは?

APPL(Application Program Major Node)は、
VTAMへアプリケーションを登録するための定義です。*i4

IMSを登録する例:

IMSA APPL AUTH=(ACQ,PASS)

VTAMはこの定義を見ることで、

IMSA
 ↓
IMS TM

というアプリケーションが存在することを認識します。*i4


LUとは?

LU(Logical Unit)は、
SNAネットワーク上の論理的な通信相手です。*i4

新人向けには、 「端末の論理名」と理解すると分かりやすいでしょう。

例:

TERM001 LU LOCADDR=01

PUとは?

PU(Physical Unit)は、
通信装置や通信コントローラを表します。*i4

例:

P3270 PU ADDR=01

PUとLUの役割の違い

PUとLUの関係は、**マンション(建物)と各部屋(号室)**に例えると分かりやすいです。

  • PU = マンションの建物そのもの — 建物への電気・水道などのインフラ引き込み口
  • LU = 建物内の各部屋(101号室、102号室…) — 実際に人が住み、郵便物や来客が届く単位

具体例:

BRANCHCTRL(PU)              ← マンションの建物
    ├─ BR001(LU) ← 窓口端末1   101号室
    ├─ BR002(LU) ← 窓口端末2   102号室
    └─ BR003(LU) ← 窓口端末3   103号室
  • BRANCHCTRL(PU) は営業店に置かれた通信制御装置そのものを表します。マンションの建物と同じく、VTAMから見ると「この建物(物理装置)自体が存在し、稼働しているか」を管理する対象です。
  • BR001/BR002/BR003(LU) はその建物の中にある各部屋にあたります。実際に郵便物(=IMSとのデータ)を受け取るのは、建物そのものではなく個々の部屋(LU)の方です。

この親子関係により、

  • 建物が停電・倒壊する(PUの通信障害)→ 中の部屋(LU)もすべて使えなくなる
  • 1つの部屋(BR001)だけが空室になる(LUの切断)→ 他の部屋(BR002、BR003)には影響しない

「PUは建物そのもの、LUはその中にある個々の部屋」と覚えると理解しやすいでしょう。

VTAM定義例

IMSA      APPL AUTH=(ACQ,PASS)

P3270     PU   ADDR=01

TERM001   LU   LOCADDR=01
TERM002   LU   LOCADDR=02
TERM003   LU   LOCADDR=03

IMS接続時の流れ

利用者が3270端末からIMSへ接続する場合、

利用者
   ↓
TERM001(LU)
   ↓
P3270(PU)
   ↓
VTAM
   ↓
IMSA(APPL)
   ↓
IMS TM

という流れで通信が行われます。*i5

VTAMは、

  1. まずPU(通信装置)を活性化・認識
  2. その配下のLU(端末)を活性化・認識
  3. LUとIMS APPLの間でセッションを確立

という順序で処理を行います。*i5


実際の銀行システムでVTAMはどのように使われるのか

利用者が営業店の窓口で口座開設を行うケースを考えてみます。

営業店担当者が端末から、

氏名:山田 太郎

住所:東京都○○区△△

生年月日:1990/01/01

などの情報を入力し、口座開設処理を実行します。

VTAMから見た構成

BR001(LU)
    ↓
BRANCHCTRL(PU)
    ↓
VTAM
    ↓
IMSA(APPL)
    ↓
IMS TM
  • BR001(LU):営業店端末を表す論理ユニット
  • BRANCHCTRL(PU):営業店ネットワークを収容する通信装置
  • IMSA(APPL):勘定系IMSシステム

口座開設処理の流れ

営業店担当者が口座開設処理を実行すると、

① 営業店端末で顧客情報入力
          ↓
② VTAMがセッション管理
          ↓
③ IMSへ電文送信
          ↓
④ IMSトランザクション起動
          ↓
⑤ 顧客情報登録
          ↓
⑥ 口座番号採番
          ↓
⑦ 勘定系DBへ登録
          ↓
⑧ 処理結果返却
          ↓
⑨ 営業店端末へ表示

という流れになります。*i5


VTAM自身は、

  • 顧客情報登録
  • 口座番号採番
  • 勘定系更新

といった業務処理は行いません。

営業店担当者は通信経路を意識することなく操作できますが、内部ではVTAMがLUとAPPLのセッションを管理し、入力データをIMSへ届けています。

このように銀行の営業店業務においても、VTAMはオンライン取引を支える重要な基盤として機能しています。


初心者向けまとめ

新人のうちはまず以下を覚えれば十分です。

用語 覚え方
APPL IMSなどのアプリケーション
LU 営業店端末や3270端末
PU 通信装置
VTAM 通信管理ソフト

そして銀行システムで考えると、

Webシステム
チャネル系システム
       ↓
      VTAM
       ↓
      IMS
       ↓
    勘定系DB

というイメージになります。

VTAMは業務処理を実行するわけではなく、

「利用者チャネルとIMSをつなぐ通信ハブ」

として機能しているのです。


参考文献

[1] IBM Documentation
z/OS Basic Skills Education - Systems Network Architecture (SNA)
https://www.ibm.com/docs/en/zos-basic-skills

[2] IBM Documentation
z/OS Communications Server: SNA Resource Definition Reference
https://www.ibm.com/docs/en/zos

[3] IBM Documentation
Introduction to VTAM Resource Definitions
https://www.ibm.com/docs/en/zos

[4] IBM Documentation
IMS Version 15 - IMS Transaction Manager Overview
https://www.ibm.com/docs/en/ims

[5] IBM Documentation
IMS Communications and Connections Guide
https://www.ibm.com/docs/en/ims

[6] IBM Redbooks
Introduction to the New Mainframe: Networking
https://www.redbooks.ibm.com

[7] IBM Redbooks
ABCs of z/OS System Programming Volume 1
https://www.redbooks.ibm.com

当資料に掲載の情報・図表に関する注釈

番号 対象 区分 出典・利用許諾状況など
*i1 「VTAMとは」の定義文 引用 参考文献[1][6]の内容を参照し要約
*i2 「SNAとは」の説明文 引用 参考文献[1][6][7]の内容を参照し要約
*i3 VTAMの役割(セッション管理/経路管理/リソース管理/障害検知)の説明文 引用 参考文献[2][3]の内容を参照し要約
*i4 APPL/LU/PUの定義文および図解 自作 参考文献[1][2][3][6]をもとに筆者が図表化
*i5 IMS接続時の流れ、口座開設処理の流れの図・説明文 引用 参考文献[4][5]の内容を参照し要約
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