- この記事は、IBM Community Japanの主催する2026年ナレッジモール研究における、「WG ID: 2026-C-05 メインフレーム若手技術者の広場」の成果物です。
- 当記事の著作権はIBMに帰属します。詳細はこちらを参照ください。
はじめに
本記事では、これまでチームで調査してきた
- メインフレームが現在も利用される理由
- SMF
- アドレス空間
- JES・WLM
- RACF
- z/OSにおけるAI活用
- z/OS Container
- ハイブリッドクラウド連携
などの内容を踏まえ、メインフレームの将来像について考察します。
これまでの記事では、メインフレームの仕組みや最新技術について調査を行ってきました。
本記事では、それらの調査結果をもとに、
「メインフレームは今後どのような役割を担っていくのか」
という視点で考察を行います。
私たちが考えるメインフレームの将来像
結論から述べると、私たちは
「メインフレームは今後も基幹処理を担い続ける一方で、周辺システムとの連携はさらに進んでいく」
と考えています。
また、
「技術的な課題よりも、人材育成や知識継承がより重要な課題になっていく」
とも考えています。
なぜ基幹処理は残り続けるのでしょうか
高い信頼性と可用性
金融機関や保険会社などの基幹システムでは、
- 預金残高管理
- 決済処理
- 契約管理
- 顧客情報管理
などの重要な業務が実行されています。
これらのシステムに求められるのは、
「最新技術を採用すること」
ではなく、
「正しく、安定して動き続けること」
です。
メインフレームは長年にわたりこうした業務を支えてきた実績を持っており、現在でも高い信頼性が評価されています。
膨大な業務資産
企業にとっての資産はハードウェアやOSだけでなく、
- 現場独自開発機能
- 業務ロジック
など、長年にわたり蓄積されてきた業務資産です。
これらを別システムへ完全移行するためには、多大なコストとリスクが発生します。
企業からの評価
IBM Institute for Business Value の調査では、
経営層の71%が「メインフレーム上のアプリケーションは事業戦略上重要である」
※1
と回答しています。
また、
90%の経営層・ITリーダーがメインフレームを成長プラットフォームとして認識している
※2
という結果も示されています。
また、BMCが実施したメインフレーム調査では、
97%の企業がメインフレームを重要なプラットフォームとして評価している
※3
という結果が示されています。
参考:
https://www.bmc.com/newsroom/releases/20th-annual-bmc-mainframe-survey.html
これらの調査結果からも、多くの企業はメインフレームを単純に廃止するのではなく、今後も活用していく方向で考えていることが分かります。
メインフレームを取り巻く環境は変化しています
近年では、
- AI活用
- API化
- コンテナ技術
- ハイブリッドクラウド連携
などが進められています。
これらはメインフレームを置き換えるためではなく、
既存資産を活かしながら新しい技術と連携するための取り組み
です。
例えば、
スマートフォンアプリ
↓
API
↓
メインフレーム
のような構成は既に一般的になりつつあります。
そのため将来的には、
「メインフレーム単独で完結するシステム」
ではなく、
「メインフレームを中心に複数システムが連携する構成」
が主流になっていくのではないでしょうか。
z/OSは今後も進化し続ける
メインフレームというと、
「昔から変わらない技術」
というイメージを持たれることがあります。
しかし実際には、
- AI活用
- コンテナ技術
- クラウド連携
- API活用
など、新しい技術への対応が継続的に行われています。
また、z/OS自体も継続的にバージョンアップが実施されています。
私たちは、これらの最新技術が普及するほど、逆に基盤技術の重要性は高まるのではないかと考えています。
例えば、
- AIを業務へ適用する
- APIを公開する
- コンテナを利用する
- クラウドと連携する
といった取り組みを実現するためには、
- 基幹処理がどのように動作しているのか
- z/OS上でどのようなミドルウェアが動作しているのか
- セキュリティがどのように管理されているのか
- システム全体へどのような影響があるのか
を理解する必要があります。
つまり、
最新技術を導入するためには、基幹処理や基盤、ミドルウェアに関する知識がこれまで以上に重要になる
と私たちは考えています。
メインフレームが持つ課題
私たちは、将来的な課題は技術そのものではなく、人材育成にあるのではないかと考えています。
基幹処理が残り続ける限り、
- 業務知識
- z/OSの知識
- 基盤知識
- ミドルウェア知識
を持つ技術者は必要であり続けます。
また、
- z/OSのバージョンアップ
- セキュリティ強化
- 新技術導入
に対応するためにも、有識者の存在は欠かせません。
しかし、メインフレームは学習コストが高く、
- 用語が難しい
- 全体像が見えにくい
- 学習範囲が広い
という特徴があります。
そのため、今後も安定したシステム運用を続けるためには、人材育成や知識継承が大きな課題になるのではないでしょうか。
若手にメインフレームの魅力を伝えるために
私たちは、将来の人材課題を解決するためには、若手技術者が学びやすい環境づくりが重要だと考えています。
メインフレームには、
- 社会インフラを支えている
- 大規模システムを扱える
- 高い信頼性を実現する技術を学べる
という魅力があります。
一方で、
- 用語が難しい
- 全体像が見えにくい
という課題もあります。
そのため、
- 段階的な教育制度
- 分かりやすい技術資料
- AIを活用した学習支援
- ナレッジ継承の仕組み
などを整備し、
若手技術者が途中で匙を投げてしまわない環境を作ることが重要になると考えています。
おわりに
調査を始めた当初、私たちは
「メインフレームは将来なくなるのではないか」
というイメージを持っていました。
しかし調査を進める中で、
メインフレームは今後も基幹処理を担い続ける可能性が高いと考えるようになりました。
また、
AI活用やクラウド連携が進んだとしても、
基幹処理や基盤技術を理解する技術者は引き続き必要になると考えています。
私たちが考えるメインフレームの将来像は、
「進化しながら基幹処理を支え続けるプラットフォーム」
です。
そして、その将来を支えるためには、技術の進化だけでなく、人材育成や知識継承への継続的な取り組みが重要になるのではないでしょうか。
参考文献
当資料に掲載の情報・図表に関する注釈
| 番号 | 対象 | 区分 | 出典・利用許諾状況など |
|---|---|---|---|
| *i1 | 文章 | 引用 | BMCが提供しているサイトより取得https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/en-us/report/application-modernization-mainframe |
| *i2 | 文章 | 引用 | BMCが提供しているサイトより取得https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/en-us/report/application-modernization-mainframe |
| *i3 | 文章 | 引用 | BMCが提供しているサイトより取得https://www.bmc.com/newsroom/releases/20th-annual-bmc-mainframe-survey.html |