はじめに
AIを使った開発は、もはや特別なものではありません。
設計、実装、インフラ、テストまで、AIが支援できる時代です。
一方で最近、
「AIに聞けば何でもできる」
「AIに任せた方が速い」
という空気を感じる場面も増えてきました。
しかし、**便利さの先にある“思考の委譲”**は、
開発者を「設計者」ではなく「オペレーター」にしてしまいます。
この記事では、
AIを最大限活用しつつ、主導権を人間が握るための開発スタイル
── AI駆動型開発の心得 を、実践ベースでまとめます。
AI駆動型開発の前提思想
まず大前提として、AIは以下を持ちません。
- 目的意識
- 責任
- 現場の文脈
- 価値判断
AIが得意なのは、
- 網羅
- 速度
- パターン提示
- ベストプラクティスの提示
つまり、
AIは意思決定者ではない
設計者は常に人間である
この関係を崩さないことが、AI駆動型開発の出発点です。
AI駆動型開発の基本フロー(実践)
① 人間が「構造」を作る
最初に行うのは実装ではありません。
- ユーザーフロー
- 管理フロー
- 運用イメージ
- インフラの役割分担
これらを CLIやテキストで構造化 します。
重要なのは
👉 AIに聞く前に、問いを作ること
② AIに「選択肢」を出させる
AIに依頼するのは「正解」ではありません。
- 一般的な構成案
- ベストプラクティス
- セキュリティ観点
- 抜け漏れチェック
👉 答えではなく候補を出させる
主導権は、まだ人間側にあります。
③ 人間がその場で判断する
AIの提案に対して、
- 採用する
- 却下する
- 修正する
- 一部のみ使う
を その場で判断 します。
ここで重要なのが、
「もっとこうしてはどうだろうか?」
と 人間が問い返すこと です。
④ 判断ログを残す(非常に重要)
なぜこの構成を選んだのか。
なぜ“普通の正解”を採用しなかったのか。
これは コードだけでは絶対に残りません。
AI案:Private Subnet + NAT Gateway
判断:初期は採用しない
理由:コスト優先、想定トラフィックが少ない
正しさは不要です。
判断理由が残っていること自体が価値になります。
⑤ 実装はAIに任せる
最後に、AI(Codex等)へ実装を依頼します。
- 再利用前提
- 注釈付き
- 読めるコード
AIは 作業者、
人間は 設計者。
この主従関係を崩さなければ、AIは非常に強力な相棒になります。
AIを使える人 / AIに使われる人の違い
ここまでの内容を、図にすると以下の違いになります。
| AIに使われる人 | AIを使える人 |
|---|---|
| ・設計をAIに丸投げ | ・目的を自分で定義 |
| ・答えをそのまま採用 | ・問いをAIに投げる |
| ・理由を説明できない | ・選択肢を比較判断 |
| ・トラブルで停止 | ・判断理由を残す |
| ・速いが積み上がらない | ・遅く見えて資産化 |
| ▲ | ▲ |
| │ | │ |
| AIが主導 | 人間が主導 |
主従関係の違い
| AIに使われる開発 | AIを使える開発 |
|---|---|
| [ AI ] | [ 人間 ] |
| │ | │ |
| ▼ | ▼ |
| [ 人間 ] | [ AI ] |
| (実行係) | (提案係) |
👉 この上下関係が逆転した瞬間、人間は思考を手放します。
AI駆動型開発の心得(まとめ)
- AIに考えさせない
- 人間は問いを作る
- AIは選択肢を出す
- 判断は人間が行う
- 理由をログとして残す
- 実装はAIに任せる
- 主従関係を崩さない
おわりに
AI駆動型開発とは、
AIに依存することではなく、AIを管理することです。
AIの進化が問題なのではありません。
判断を手放す人間が増えることが問題なのです。
AIを使うかどうかではなく、
AIに「何を任せないか」を決められるかが、
これからの開発者の価値になる。
補足(私のスタンス…たぶん)
- 構想・設計・判断は人間が行う
- AIは提案・網羅・実装を担う
- 判断ログを資産として残す
このスタンスで、AIと協業しています。
この記事を書いた理由
AIを使った開発が当たり前になり、
コードを書く速度も、調べ物をする時間も、
数年前とは比べものにならないほど短縮されました。
一方で、自分自身の開発を振り返ったとき、
ふと次のような感覚を持つことがありました。
- この設計は「自分が考えた」と言えるだろうか
- もしAIが使えなくなったら、同じ判断ができるだろうか
- このコードの意図を、他人や未来の自分に説明できるだろうか
便利になったはずなのに、
考える時間そのものが削られているような違和感を覚えたのです。
私はAIを否定したいわけではありません。
むしろ、AIは非常に優秀で、開発効率を劇的に高めてくれる存在だと思っています。
ただその一方で、
設計や判断までAIに委ねてしまうと、
開発者は少しずつ「考えなくても回せる人」になってしまう
──そんな危うさも感じるようになりました。
そこで、
- 自分はどこまでをAIに任せているのか
- どこは必ず人間が考えているのか
- その判断をどう残しているのか
を一度、言語化して整理してみようと思い、
この記事を書くことにしました。
あくまでこれは「私自身の現時点でのスタンス」です。
正解を提示するつもりはありませんし、
AIの使い方は人それぞれで良いと思っています。
ただ、この記事が
「自分はAIとどう付き合っているだろう?」
と一度立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。
もし
「自分はこうしている」
「ここは違う考えだ」
といったスタンスがあれば、ぜひ教えてください。