はじめに
前回の記事、
「RAGだけで詰んだ人へ:LLMファインチューニングの“適用判断”を設計図にした」
では、ファインチューニングをやるべきかどうかの判断基準を整理しました。
今回はその続編です。
ファインチューニングを「やる」と決めたなら、次は構築です。
- GPUは何枚必要なのか。
- データはどの形式を選ぶべきか。
- トレーナーは何を使うべきか。
本記事では、FPT AI FACTORYを使い、
オープンモデルのファインチューニングを
ノーコード・4ステップで実行する手順を解説します。
まずは 小さく回す。
それから 大きく育てる。
そのための具体的な手順をまとめました。
この記事を読むとできるようになること
- GPU1枚でファインチューニングを実行できる
- オープンモデルを自分仕様に調整できる
- 「小さく試して大きく育てる」運用の流れが理解できる
この記事はこんな人向け
- RAGだけでは出力が安定しなかった
- プロンプト調整に限界を感じている
- 環境構築せずにファインチューニングを試したい
なぜノーコードでやる価値があるのか?
通常のファインチューニングでは、
- GPUサーバーの準備
- CUDAや依存ライブラリの調整
- 学習スクリプトの修正
- ログの可視化
- 実行管理
といった 環境構築の壁 があります。
FPT AI FACTORYではこれらを抽象化し、
「モデル」「データ」「GPU」
の3つに集中できます。
つまり、本質にだけ向き合える環境です。
インフラ構築ではなく、モデル設計やデータ品質の改善に時間を使えることが重要です。
前提
- FPT ID を取得済みで、FPT AI FACTORYにログインできること
- クレジットカードを持っていること(無償バウチャーの範囲内であれば不要)
スタータープラン等で「カード登録」が必要なケースがあります。
※利用条件・キャンペーン条件は変更される可能性があるため、必ず公式ページをご確認ください。
全体フロー(4ステップ)
- 基本モデル&トレーナーを選ぶ
- データセットを選び、学習データをアップロードする
- トレーニング設定(ハイパーパラメータ・インフラ)を決める
- 完了(パイプライン名などを設定して保存)→ 実行
事前準備:ファインチューニングのパイプライン画面操作
- FPT AI FACTORY にログインします
- サイドバーから FPT AI Studio > モデルファインチューニング > パイプラインの微調整 を開きます
- 「+パイプラインを作成」 ボタンを押下します
① 基本モデル&トレーナー(ノーコードでファインチューニングができる!)
1. ベースにするオープンモデルを選択
モデルカタログから、ベースとなる オープンモデル を選択します。
- 最初は 小さいモデル で試す
- 期待通りの回答品質が出たら 大きいモデル に移行する
→ コストと試行回数のバランスが良いです
本手順では例として Gemma の小さいモデル を選択します。
2. トレーナーを選択
トレーナーは下表の3種類から選べます。
| トレーナーの種類 | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| SFT(Supervised Fine-Tuning) | 教師ありファインチューニング。 人が 「正しい答え」 を示したデータ(質問と模範解答のペアなど)を使って、モデルにより具体的な振る舞いを学習させる。 |
ユーザーの質問に対して望ましい返答をするよう学習する。 |
| DPO(Direct Preference Optimization) | 直接選好最適化。 人間が 「どちらの回答がより良いか」 と判断したデータを使い、モデルに 「より好ましい応答」 を直接学ばせる方法である。 |
2つのAIの返答のうち、どちらが良いかを人が選び、その選択を元にモデルを調整する。 |
| Pre-training | 事前学習。 AIモデルが 大量のデータから「言葉の使い方」や「知識」を学ぶ 最初の学習ステップである。 |
Wikipediaや本、Web記事などから膨大な情報を学習する。 |
SFT と DPO は既存モデルを調整するファインチューニング手法であり、
Pre-training はモデルの基礎能力を獲得するための事前学習フェーズです。
本手順では SFT を選択します。
トレーナーとデータセット形式の詳細は、以下の公式ドキュメントをご確認ください。
Select dataset format(Trainer / Dataset形式)
3. ボリュームを選択
- マネージドボリューム
- 専用ネットワークボリューム
本手順では マネージドボリューム を選択します。
目安として、データセット容量が 20GB未満ならマネージド、20GB以上なら専用ネットワークを検討すると分かりやすいです。
4. 「次のステップ」を押下
設定できたら 「次のステップ」 ボタンを押下します。
② データセット
1. データセット形式を選択
利用できるデータセット形式は以下の通りです。
| 形式 | 説明 |
|---|---|
| Alpaca | 指示(Instruction)と応答(Response)のペアからなる単一ターン形式。主に指示応答タスクのファインチューニングに用いられる。 |
| ShareGPT | ユーザーとAIのマルチターン(複数往復)の対話ログをまとめた形式。会話の流れや文脈を学習させる場合に適している。 |
| ShareGPT-Image | 画像を含む対話データセット。画像入力に対する応答を学習させるマルチモーダル形式。 |
| Corpus | 膨大な文章・テキストの集まり。小説、ニュース、ネット記事など幅広い内容を含み、主に事前学習に用いられる。 |
本記事ではファインチューニングを前提とするため、Alpaca形式を使用します。
データセットの詳細は以下の公式ドキュメントをご確認ください。
Select dataset(Dataset形式の選び方)
2. トレーニングデータをアップロード
トレーニングデータは以下の2種類で設定できます。
- ファイルをアップロード(ローカルから)
- データハブ(事前登録された保管場所から)
本手順では ファイルをアップロードを選択します。
- ブラウザからアップロードできる容量は 最大100MB
- 100MB以上の場合は、別途 Object Storage の利用を検討してください
3. (任意)評価データをアップロード
評価データ(学習結果のチェック用データ)も、トレーニングデータと同様に
- ファイルをアップロード
- データハブ
から選択できます。
こちらも 100MBを境にアップロード方法を切り分けるのが分かりやすいです。
③ トレーニング設定
1. ハイパーパラメータを設定
ハイパーパラメータは「学習の回し方」を決める設定です。
デフォルトでは 「一般」 と 「LoRA」 が選択されています。
- LoRA:モデル全体を更新せず、一部のパラメータのみを学習する軽量なファインチューニング手法
本手順では デフォルト設定のまま進めます。
ハイパーパラメータの詳細はこちら(公式)。
Set up hyperparameters(ハイパーパラメータ設定)
2. インフラストラクチャを選択
- シングルノード:1台のサーバーで学習(1~8基までGPU数を選択可能)
- マルチノード:複数台のサーバーで学習(1ノードあたりGPU8基を基準にノード数選択)
本手順では シングルノード:1ノード GPU 1基 を選択します。
まず小さく試してコストと時間を把握し、必要に応じて増やすのが安全です。
④ 完了(保存して実行できる状態にする)
- パイプライン名を設定します(任意の名前でOK)
- (任意)パイプラインの説明も設定できます
- (任意)メール通知でパイプライン状況を受け取れます(必要に応じて設定)
- 最後に 「保存」 ボタンを押下します
これでファインチューニングの パイプライン設定は完了です。
あとは 実行するだけです。
パイプラインを開始する(実行)
作成したパイプラインの 三点リーダーを押下し、開始を押下します。(下図赤枠箇所を押下)
これでファインチューニングが実行されます。
おまけ:ファインチューニングデータの作り方(Alpaca形式)
ファインチューニングの元ネタが無い場合に、以下のプロンプトを参考にデータセットを生成してみて試してみてください。
ChatGPTやGeminiなどに、以下のプロンプトで指示してみてください。
# システムプロンプト
あなたは、業界別のファインチューニング用データを作成するプロフェッショナルです。
トレーニングデータと評価用データをJson形式で作ることが得意です。
データセット形式:Alpaca
# 指示
業界を指定するから、ファインチューニング用のトレーニングデータと評価用データをJsonファイルで出力してください。
※新規チャットで前述のプロンプトを一発実行したうえで、以下の例のように追加指示を実行すると良いです。
例)半導体業界向けのファインチューニングのデータセットを作る場合
業界:半導体
まとめ
まずは小さく回し、効果を確認してから拡張するのが現実的なアプローチです。
- ノーコードで、オープンモデルをベースにしたファインチューニング環境を構築できます
- 4ステップで「モデル選択 → データ投入 → 学習設定 → 保存・実行」まで完了します
- 最初は 小さいモデル・小さいデータ・単一GPUで試すと、失敗コストが低く安全です
次回予告
ファインチューニングは「回したら終わり」ではありません。
大事なのは、
✔ 本当に出力が改善したのか
✔ 期待通りの振る舞いになっているか
✔ プロンプト依存から脱却できているか
を確認することです。
次回は、今回作成したモデルを FPT AI FACTORY の「モデルテスト > 対話型セッション」 で検証します。
学習前と学習後を並べて比較し、 改善 を可視化します。
FPT AI FACTORY(リンク集)
ファインチューニングの実行環境へ、いってらっしゃい!
- 日本リージョン:https://ai.fptcloud.jp/
- ベトナムリージョン:https://ai.fptcloud.com/
無料バウチャー(期間限定)
※新規ユーザー向けに100ドル分のクレジットが提供されています。
詳細は公式ページをご確認ください。






