はじめに
『Delphi XE』 についての概要です。
概要
製品概要です。
項目 | 説明 |
---|---|
製品名 | Delphi XE |
コードネーム | Fulcrum |
発売年 | 2010 |
発売元 | Embarcadero Technologies |
ビルドバージョン | 15.0 |
コンパイラバージョン | 22.0 |
BDS バージョン | 8.0 |
サポートプラットフォーム | Windows |
前バージョンとの違い
- スレッドクラスでパラメータのないコンストラクタを使えるようになった
-
CreateAnonymousThread()
が使えるようになった -
TThread.Sleep()
が使えるようになった -
TLightweightSemaphore
が使えるようになった - SubVersion が統合された
- コマンドライン版コードフォーマッタ (
Formatter.exe
) が付属するようになった - 正規表現ライブラリが追加された
- デフォルトの EXE の出力先が
.\$(Config)\$(Platform)
になった - 文字列をデリミタで分割し、文字列型の動的配列に格納する
SplitString()
が使えるようになった
その他
- ユニット名前空間が拡張されていない最後の Delphi (for Win32)
- IDE 環境設定のレジストリエントリは
HKEY_CURRENT_USER\Software\Embarcadero
にある - 旧バージョンを貰えるようになった (Professional 以上の SKU)
- 低価格な Starter Edition が発売された (但し、かなり機能が削られている)
-
EditorLineEnds.ttr
の問題が起きなくなった - TBitmap にバッファオーバーフローの脆弱性がある
- RAD Studio に『RadPHP (旧 Delphi for PHP)』が付属するようになった
- 『Delphi XE』だけの情報を集めるのが難しい (XE2 ~ XE8 もヒットするため)
- 2010 年は初代『Windows Phone』が発売された年です
次に
Starter Edition についても触れておく必要があると思います。
Starter Edition
機能が限定された低価格版です。Professional 版から削られた主な機能は次の通りです。
- UMLデザイナ
- InstallAware インストーラテクノロジーにより、IDE アップデートの自動チェックが可能な「on-the-fly アップデート」を搭載
- Microsoft Resource Compiler、EXE、OBJ、LIB ファイルの構造分析のためのtdump ユーティリティ、GREP、MAKE などの追加のコマンドラインツール
- ブロック整形を含むコード整形
- 自動ビルドプロセスにも統合可能なコマンドラインでのコード整形
- コード整形のカスタマイズオプションの作成/保存/読込
- コードエディタとクラスエクスプローラのコンテキストメニューから利用可能になった「使用箇所の検索」
- プロジェクト全体にわたるクラスライブラリの階層ビューを提供する
- クラスエクスプローラ
- リソースマネージャ
- ライブコードテンプレート
- シンボルインサイト
- コードインサイト
- コード補完機能
- クラス補完
- To-do リスト
- [ソースコード管理全般]
- リソースDLL ウィザード
- ITE (Integrated Translation Environment)
- ETM (External Translation Manager)
- 翻訳リポジトリ
- [リファクタリング全般]
- [UML モデリング全般]
- マルチスレッドデバッグ
- Vista および Windows Server 2008 でのWCT(Wait Chain Traversal)のサポート
- 逆アセンブリペインの「オペコードの表示」「アドレスの表示」ローカルメニュー
- 呼び出し履歴ビュー
- CPU ビューペイン
- 情報を容易に発見、理解できるデバッガビューとペイン間の統合
- 項目のダブルクリックでローカルビューと自動的に同期する呼び出し履歴ビュー
- CTRL キーを押すとツールチップ式評価が透明化し、エディタコードとともに確認可能
- 展開可能なツールチップ式評価
- 展開可能なローカル変数表示
- 選択可能なシンボルテーブルのロード
- モジュール表示でのロード順によるソート
- エディタ上で次に実行する行を設定できる[次の文を設定]メニュー
- モジュール表示のソート
- デバッガ制御下にあるすべてのプロセスとスレッドの状態を表示するスレッド表示
- 低レベルデバッグ用のCPU 表示
- 式評価
- マルチプロセスデバッグ
- ツールチップ、アクション、グループ機能を搭載した先進のブレークポイント機能による完全なデバッグ制御
- データをトリガーとしたブレークポイント
- 生成されたプロセスのデバッグ
- デバッグ中のプロパティ監視を容易にするデバッグインスペクタ機能
- イベントログの表示
- [統合されたユニットテスト機能全般]
- オンラインヘルプ
- TClientDataset
- DBX4 (dbExpress)
- dbGo (ADO Express)
- [DATASNAP 関連]
- [データベースツール 関連 (データベースエクスプローラ等)]
- [クラウドサポート全般]
- [プロファイリング全般 (AQtime)]
- [ファイル比較全般 (Beyond Compare Differ)]
- [ロギング全般 (CodeSite Express)]
- [コミュニケーションコンポーネント全般 (IP*Works)]
- [チャートコンポーネント全般 (TeeChart)]
- [レポートツール全般 (Rave Reports)]
- glyFX アイコンライブラリ(Embarcadero Edition)
- InstallAware Express CodeGear Edition
- [XML / SOAP WEB サービス開発全般]
- VCL FOR THE WEB(INTRAWEB)
- WEBSNAP™ / WEB BROKER
- DCOM サポート
- COM/DCOM ベースのDataSnap/MIDAS 多層データベースアプリケーションフレームワークのサポート
- COM 開発を完全に透過的に実行可能なタイプライブラリエディタのIDL サポート
- 履歴マネージャによるIDL サポート
- 複数レベルの自動ファイルバックアップ、差分表示、復元
- オートメーションオブジェクトのイベント処理をサポート
- COM オブジェクトウィザード
- Microsoft ActiveXRコントロールのデータバインディング
- COM サーバーをビジュアル開発が可能なコンポーネントとしてインポート
- dbExpress コンポーネント
- Internet コンポーネント
- DataSnap Client コンポーネント
- Windows Azure コンポーネント
- WebSnap コンポーネント
- Web Services コンポーネント
- dbGo コンポーネント
- VCL for the Web コンポーネント
- TeeChart Standard コンポーネント
- [データベースモデリング / 設計全般]
- VCL のソースコード
- コマンドラインコンパイラ
Delphi 6 とか 7 辺りまで機能を削ぎ落した感じです。市販車ベースのレース車は市販車に付属している快適な機能を外してからチューニングしますが、その快適な機能を外したばかりの状態に近いです。
概要
- 基本的に商用不可。例えばスタートアップ企業でお金がなくて Starter Edition を使い、利益が $1000 以上出たら Professional 版以上の有償版を購入する...なんてのはアリ
- 所属している会社で使うのも不可 (年間売上が $1000 以下の会社なんてまずないでしょう?)。個人で使おう
- 痛くない腹を探られるのがイヤなら EDN アカウントは法人/個人でキッチリ分けよう
- サブネットあたり 5 ユーザーの制限があるので、ネットワークの繋がった教室等での利用には向かない (スタンドアロンでの自習用なら OK)
- Delphi Starter Edition と C++Builder Starter Edition を同一の PC にインストールしてミニ RAD Studio とする事はできない。インストールは排他
- 価格は ¥18,000
各種支援機能が外されているので、初心者には逆にオススメしにくい製品になっています。
See also:
おわりに
個人的にはマイルストーンだと思っている製品です。
『Delphi XE』の XE は Cross-platform Edition の略...のハズだったけれど、クロスプラットフォーム開発は落ちています。そういった経緯があるので、製品的にはほぼ『Delphi 2010』と同じです。XE でやれる事は 2010 でもやれる事が多いです。
余談
どうでもいい事ですが、2010 年というとくまモンと同い年ですね。
2010~XE8 のスプラッシュは、どうしてもくまモンを連想してしまうのですよねぇ...
See also:
- Delphi / C++Builder の新機能 (2007 以降) (Qiita)
- 「MS Help 2.x ランタイムがインストールされていない」というエラーを解消する (Qiita)
- Delphi のソースコードフォーマッタ (Qiita)
- 【Delphi】ゆるく正規表現を使う (Qiita)
- Delphi Starter Edition でのデバッグ (Qiita)
- Delphi / C++Builder Starter Edition の VCL で WebBrowser コンポーネントを使う (Qiita)
- 正規表現の活用 (主に Delphi 2009 以降) (ht-deko.com)
- Delphi および C++ Builder における VCL Bitmap LoadFromFile の脆弱性について (Support Wiki)
- オフラインインストール用に登録コードを取得する(RAD Studio/Delphi/C++Builder 2009からXE5まで) (Support Wiki)
- 手動アンインストール手順(RAD Studio XE)(Supprt Wiki)