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バイブコーディングの次は「お気持ち駆動開発」かもしれない

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Last updated at Posted at 2026-09-16

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— 人間が指示する時代の、その先を考えてみた

ここ数年、自分はAIコーディングについて何度か未来予想を書いてきた。

最初に考えたのは、

人間が直接AIコーダーへ指示する構造は長続きしない

ということだった。

人間というものは、だいたい指示が雑である。

「なんかここ変」

「もっといい感じに」

「これ、前より使いにくくない?」

こんなものを仕様書として渡されたら、人間のプログラマーなら怒る。

少なくとも私は怒られる。

そこで以前の記事では、

(投稿日 2025年08月25日、この1年でここまできたことに驚き)

人間
  ↓
統括AI
  ↓
複数のAIコーダー
  ↓
テスト・検証

という構造を予想した。

人間の曖昧な要求を統括LLMが解釈し、タスクへ分解し、複数のAIへ仕事を割り振る。

そして人間は、最終的な仕様や方向だけ決める。

実際、以前の記事では「統括LLMが人間の曖昧な指示を咀嚼し、コーダーへタスクを分配する」という構造まで考えていた。さらに、作者の意図をメモリに保持し、成果物がその思想に合っているか評価する未来まで書いている。

そして、その次の記事ではさらに進んで、

AIが計画・実装・テスト・修正まで自律的に回し、人間は「AとBならどちらが好き?」と聞かれた時だけ答える

という未来を書いた。

(投稿日 2026年03月08日)

つまり、

コードを書く
      ↓
AIにコードを書かせる
      ↓
AIチームを指揮する
      ↓
AIチームが勝手に開発する

ここまでは想像できた。

以前の記事の結論も、「人間は何を作るか、どの方向へ進むかだけを決め、実装はAIチームに任せる」というものだった。

ところが最近。

GPT-6 Astraを使っていて、少し困ったことが起きた。

その「方向を指示する」という仕事すら、だんだん必要なくなってきたのである。


GPT-6 Astraで何かが変わった

GPT-6 Astraは、単純に「コードが上手になったモデル」と表現すると、少し違う気がする。

もちろんコードは強い。

しかし個人的に一番大きく感じるのは、

自律性である。

さらに視覚理解とComputer Useが強くなった。

OpenAI自身も、Astraについてコード生成だけではなく、ソフトウェアを自律的にインストールしてテストしたり、画面上の問題を見てトラブルシューティングしたり、Webサイトを作った後にフロントエンドQAまで実行できるモデルとして説明している。Codex側のハーネス改善と合わせると、一部のComputer Use評価ではGPT-5.6 Solより大幅に短時間で仕事を終えている。(OpenAI)

つまり、

「この関数を書いて」

ではない。

「これ直しといて」

が、だんだん成立し始めている。

もっと言えば、

「このプロジェクト見て、次に何やるべきか考えて」

すら成立する。

これは結構大きい。


賢いAIには「説明しすぎない方がいい」?

ここで妙な逆転現象が起きる。

以前のAIには、とにかくお膳立てが必要だった。

詳細なAGENTS.mdを書き、

細かなルールを書き、

作業手順を書き、

「このファイルを読め」

「次にこれを実行しろ」

「この場合はこう判断しろ」

と大量のハーネスを作る。

AIが迷子にならないように、線路を敷いていたわけだ。

ところがAIが賢くなると、

その線路自体が邪魔になる。

実はOpenAIのGPT-5.6向け公式ガイダンスでも、システムプロンプトを簡素化した方が内部のコーディング評価で成績が上がり、トークン消費も大きく減ったという結果が紹介されている。さらに、「安全な範囲ではモデルを止めずに仕事を続けさせる」ため、自律性と承認境界を簡潔に定義することが推奨されている。(OpenAI Developers)

なんだか妙な話である。

昔は、

AIがバカだから詳しく説明する必要があった。

これからは、

AIが賢いので余計なことを言わない方がいい。

になる可能性がある。


ただしAstraも普通に暴れる

もちろん現在はそんな美しい話だけではない。

Astraを実際に使っている開発者からは、大規模コードベースの理解やデバッグ能力を非常に高く評価する声がある。一方で、単純な仕事まで巨大な設計にしてしまう「オーバーエンジニアリング」や、セッションによる性能のばらつき、クォータ消費の大きさを指摘する声も出ている。(OpenAI Developer Community)

スクリーンショット 2026-09-16 21.32.45.png
(最近のCodexのよく見る画面、GPT-6Astraは、瞬く間にクォーターがなくなる)

つまり現在は、

「自由にさせると凄い。でも時々どこかへ走っていく」

という状態なのだと思う。

大型犬か。

ものすごく頭のいい大型犬である。

だからテストはまだ重要だ。

ただし、テストの意味が変わってくる。

昔のハーネスは、

この道を歩け。

だった。

これからのテストは、

この柵から外には出るな。

になる。

どう歩くかはAIに任せる。

しかし、

「このAPIは壊すな」

「この測定精度は下げるな」

「この処理速度を下回るな」

という境界線だけ置いておく。

手順ではなく、制約を与える。

これはかなり重要な変化かもしれない。


そして、もっと困ったことに気づいた

ここまではまだいい。

ではAIがさらに賢くなったらどうなるのか。

最近OpenAIは、GPT-6 Astraよりも「significantly more capable」とする内部モデルを使い、多数のエージェントを協調させてNavier–Stokes問題へ取り組ませたと発表した。

OpenAIによれば、最終的に解へ到達したグループは約1万の同時エージェントから構成され、最初のエージェント起動から約88時間後に結果へ到達したという。なお、これはOpenAIが公開した解答であり、数学界での検証や正式な扱いとは分けて考える必要がある。(OpenAI)

1万体。

88時間。

……。

そこで私は考えてしまった。

これ、将来1万体を借りる必要があるのだろうか。

例えば100体でもいい。

10体でもいい。

なんなら、その世代のAIを1体だけ借りても、とんでもなく優秀なのではないか。

これまで、

AIは優秀な同僚になる

と言われてきた。

でも違うのかもしれない。

将来個人が手に入れるものは、

優秀な同僚ではなく、小さな研究所そのもの

なのではないか。


研究所が家に来たら、何を指示すればいいのか

これは意外に困る。

例えば、

「この低雑音アンプを改善してください」

と言ったとする。

未来のAI研究所は、

論文を調べる。

回路を解析する。

シミュレーションをする。

別方式も検討する。

部品を調査する。

温度特性を見る。

試作案を複数作る。

失敗したら原因を調べる。

再設計する。

そして数時間後。

「3方式を比較しました。方式Bが最も目的に合います。回路図、BOM、シミュレーション、検証計画を用意しました」

と言ってくる。

人間:

「あ、はい。」

終わりである。

では次に何をすればいいのか。


そこで「お気持ち駆動開発」である

ここ数日考えていて、変な言葉を思いついた。

お気持ち駆動開発。

もう少し格好良く言うなら、

Latent Intent Development

日本語なら、

潜在意図駆動開発

である。

これは何か。

人間はもう、

この関数を書いてください

とも、

次はこの機能を実装してください

とも言わない。

普段からAIに、

「最近ちょっと機能多すぎる気がするんだよね」

とか、

「便利なのはいいんだけど、なんか測定器っぽくないんだよな」

とか、

「将来は3D空間に測定結果が浮かんでたら面白いよね」

とか、

「この画面、なんとなく好きじゃない」

とか言っておく。

完全にお気持ち表明である。

ところが未来のAIにとっては、

これが重要な開発データになる。


AIが「あなたならどうするか」を持つ

例えば、プロジェクト専用の小さなAIを一つ置く。

こいつはコードを書かない。

役割はただ一つ。

作者を理解する。

今までの会話、

採用した設計、

捨てた設計、

「これは好き」

「これは嫌い」

「この方向は違う」

という大量の判断から、

作者の価値観をモデル化する。

デジタルツインというほど大げさではない。

言うならば、

Intent Twin

である。

そしてメインの開発AIがこいつに相談する。

開発AI:
新しいスペクトル表示を作りました。
案Aと案Bがあります。

Intent Twin:
作者はたぶんAを嫌います。

開発AI:
なぜ?

Intent Twin:
過去に3回、
「情報密度を上げるためだけのUI」を却下しています。
測定値への直接性を重視する傾向があります。

開発AI:
了解。Bを改良します。

本人は寝ている。


本人より本人に詳しいAI

さらに進むと恐ろしい。

人間自身は結構いい加減だから、

昨日、

「シンプルな方がいい」

と言った翌日に、

「ここに機能追加したい」

と言う。

普通である。

人間なので。

しかしIntent Twinは長期間の履歴を見る。

そして、

「本人は『シンプル』と言っていますが、この人が本当に嫌っているのは機能数ではなく、操作目的が曖昧になることです」

などと分析する。

本人:

「……そうかもしれない。」

こうなったらもう、

自分のお気持ちの解説をAIから受ける

という訳の分からない世界になる。


「仕様書」がなくなるかもしれない

現在のソフトウェア開発では仕様が重要だ。

当然である。

しかし超強力なAIにとって、仕様とはもしかすると圧縮された人間の意図にすぎないのかもしれない。

ならば元データを直接持ってしまえばいい。

つまり、

会話
判断履歴
過去の修正
採用した案
却下した案
使い方
不満
夢
妄想

こうしたもの全部から、

「このプロジェクトはどちらへ進みたいのか」

というベクトルをAIが推定する。

人間は仕様を書く代わりに、

暮らす。

喋る。

文句を言う。

喜ぶ。

そしてAIが勝手に学ぶ。

なんだそれ。


朝起きるとプロジェクトが進んでいる

未来の開発者の朝は、こんな感じかもしれない。

朝9時。

AI:

昨日の会話で「設定画面が少し複雑になってきた」と話していたため、夜間にUI構造を再評価しました。

人間:

え?

AI:

既存ユーザーの操作経路を保持したまま設定項目を3グループへ再編した案を試作しました。GUIテストと回帰テストは通過しています。あなたの過去の選好との一致度は87%です。

人間:

……見せて。

AI:

こちらです。

人間:

ああ、これこれ。

AI:

マージしますか?

人間:

うん。

本日の開発終了。

所要時間2分。

開発者とは。


そのうち「確認」すら減る

しかしさらに先がある。

AIが、

「この程度なら本人はまず承認する」

ということまで学習したらどうなるか。

毎回聞く必要がない。

例えば、

確信度 99.5%
→ 自動実行

確信度 80%
→ プレビューを作る

確信度 55%
→ 本人に聞く

重大な設計変更
→ 必ず本人に聞く

という形になる。

これは、現在のアクセス権限に少し似ている。

ただし制御しているのはファイル権限ではない。

作者の意思である。

ここまで行けば、

プログラミングというより、

意思の自動実行システム

だ。


そして小学生が宇宙開発を始める

以前、

「エージェント能力が爆発したら、小学生でも宇宙開発ができるのではないか」

というような話を書いた。

今回の話は、実はそれともつながっている。

例えば小学5年生がこう言う。

「月で植物を育てたらどうなるんだろう?」

現在なら自由研究で終わる。

しかし未来のAI研究所は違う。

月面環境を調査する。

植物候補を調べる。

温度条件を解析する。

放射線量を計算する。

密閉容器を設計する。

地上実験を提案する。

必要なら3Dプリンタ用データを生成する。

シミュレーションを走らせる。

そして、

「まず地球上でこの実験をしてみましょう」

と返してくる。

子供:

「こっちの形の方が宇宙船っぽくてカッコいい。」

AI:

「では性能を維持したままその形状へ変更します。」

数年後。

本当に小型衛星へ載る。

もちろん現実の宇宙開発には資金も設備も規制も安全性も必要だ。

だが、

知的能力への入口

だけを考えるなら、年齢はかなり意味を失うかもしれない。

博士号を持っているかどうかではない。

何をやりたいと思ったか。

そこから始まる。


「できる人」の意味まで変わる

これはプログラミングだけの話ではない。

現在、

電子回路を作れる人、

ロボットを作れる人、

物理シミュレーションを書ける人、

Webサービスを作れる人、

それぞれに専門家がいる。

しかし研究所クラスのAIを誰でも呼べるようになるなら、

「できる人」という言葉の意味が変わる。

技術を全部知っている人ではなく、

「こういうものが存在したら面白い」

と考えられる人。

そして出来上がったものを見て、

「違う」

と言える人。

そちらの能力が重要になる。


ではローカルAIはいらなくなる?

ここも最近少し考えが変わってきた。

巨大モデルそのものを自宅GPUで動かす意味は、だんだん薄くなる可能性がある。

研究所レベルのAIを個人PCへ詰め込もうとするより、

巨大な知能はクラウドから借りればいい。

しかし。

Intent Twinだけはローカルに置く

という構造は面白い。

つまり、

巨大な知能       → クラウド
自分の価値観     → ローカル
プロジェクト履歴 → ローカル
秘密情報         → ローカル

となる。

頭脳はクラウド。

魂は手元。

なんだか急にSFっぽくなってきた。


もしかすると「会話」がソースコードになる

ここまで考えると、

最近自分がChatGPTに延々と、

「Astraを使っていてこう感じた」

「このUIはこういう方向がいい」

「テストって今後こういう意味になる気がする」

などと話していることも、

未来には単なる雑談ではなくなる。

それ自体が、

プロジェクトの入力データ

になる。

GitHubにコミットする代わりに、

AIと話す。

設計書を書く代わりに、

考えていることを話す。

仕様書を書く代わりに、

不満を言う。

AIはそこから、

人間自身にも完全には言語化できていない方向性を抽出する。

そう考えると、

未来のソースコードはPythonでもRustでもないのかもしれない。

人間の会話そのもの

なのかもしれない。


バイブコーディングのさらに先

振り返ると、

最初はこうだった。

Programming
↓
AI Pair Programming
↓
Vibe Coding
↓
Agentic Coding
↓
Autonomous Development
↓
Latent Intent Development

コードを書く。

AIにコードを書かせる。

AIへ曖昧に指示する。

AIチームへ仕事を任せる。

AIが自律的に開発する。

そして最後には、

AIが人間の意図そのものを学習する。

もはや、

「こうしてください」

ですらない。

「最近こういうのが面白いと思うんだよね」

から開発が始まる。


最後に

もちろん、これはかなりぶっ飛んだ未来予想である。

GPT-6 Astraですら現在はオーバーエンジニアリングするし、クォータを食うし、普通に間違える。

ときどき、

「いや、誰がそこまでやれと言った」

ということもある。

しかし同時に、以前なら詳細に説明しなければ動かなかったAIが、今ではコードベースを読み、画面を見て、自分で調査し、テストし、長時間仕事を続け始めている。

そしてそのさらに先では、約1万のAIエージェントを動かして未解決数学問題へ挑む実験まで現れた。

だとしたら。

次に必要になるのは、

AIへの上手な指示方法ではない

のかもしれない。

AIが理解できるように、

自分が何を考えているのかを残しておくこと。

どんなものが好きなのか。

何を嫌うのか。

何を大切にしているのか。

どこへ行きたいのか。

そんな、

これまでは仕様書に書く価値すらないと思われていた

「お気持ち」

こそが、未来の開発で最も重要なデータになるのかもしれない。

そしていつの日か。

人間:

「なんか面白いもの作りたいな。」

AI:

「わかりました。あなたが最近話していた内容から、3つほど進めています。」

人間:

「え、もう?」

AI:

「はい。」

人間:

「……じゃあ頑張って。」

AI:

「もう終わっています。」

そんな時代が来たら。

我々はもう、

プログラマーですらない。

ただ、

未来に対してお気持ちを表明する人

になっているのかもしれない。


未来の開発者は、コードを書かない。

仕様すら書かない。

自分がどんな未来を見たいのかを話す。

そしてAIが、その言葉にならない部分まで拾って、
世界の方をそこへ近づけていく。

2026年9月。

今のところこれは、単なる妄想である。

たぶん。

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