ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)アドベントカレンダー2024 の17日目です!他の記事もぜひご参照ください!
はじめに
本記事は「例を通して学ぶ戦略策定プロセス① 概要・経営戦略」の続編です。
前提など記載しておりますので、まずは上記リンクからご参照ください。
①概要・経営戦略
②事業戦略 ←本記事
③製品戦略 ←後日公開
以下記載の内容はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
ビジネス上の穴、分析品質の低さ、納得いかない点など多くあるかと思われますがツッコミ無用です。
また、本記事には数字が特にありませんが、実務では定量情報に基づいた戦略立案が重要です。
おさらい
本記事は上記のうち事業戦略を対象とした記事です。
Q計算株式会社の電卓事業に所属しているAさんは、関数電卓のスマホアプリの実現性を検討しています。
事業戦略
1. 外部分析
企業を取り巻く外部環境について分析を進めます。
後述するKSF(Key Success Factors:重要成功要因)を明確にすることがゴールです。
以下の分析により、KSFを検討します。
- マクロ環境分析
- 顧客分析
- 業界分析
- 競合分析
マクロ環境分析
自社ではコントロールすることが難しいが、事業に影響を与える可能性のある要素をPESTで分析します。
PESTは、自社を取り巻く外部環境による影響を確認するために、「政治」「経済」「社会」「技術」の観点で分析します。
情報ソースとして以下などを利用します。
- 統計局の公開データ
- 政府の公式レポートや白書
- 調査会社の調査レポート
- 特許庁データベース
- 業界メディア
- 消費者行動調査
Aさんはこう考えた
電卓やスマホアプリという範囲で検討し、以下のようにまとめました。
顧客分析
製品/サービスの顧客(潜在的な顧客含む)の状況を分析します。
- 市場規模と成長性:製品/サービスの利用者数、地域、市場の成長性を確認します。
- セグメンテーションとターゲッティング:年齢や地域など様々な軸で顧客を分割し、誰を狙うかを決めます。ターゲットが所属する市場が魅力的かも合わせて確認する必要があります。
- ニーズの把握:顧客の課題とニーズを把握します。表面化していない可能性もあります。今後ニーズがどのように変化するかも検討します。
Aさんはこう考えた
Aさんは関数電卓の領域に絞り、利用ユーザーを理系学生としました。そして、市場調査やユーザーヒアリングを行い、調査結果をまとめました。
業界分析
業界を取り巻く状況を明らかにします。
Aさんはこう考えた
Aさんは「関数電卓アプリ」について5F分析(ファイブフォース分析)を実施しました。
5F分析は、自社の脅威を5つの競争要因(競合、売り手、書い手、新規参入、代替品)に分割し、脅威の度合いがどれくらい大きいかを明らかにする分析手法です。
アプリ開発ということで、新規参入障壁の低さと、競合にどう勝つかという点が鍵になりそうです。
なお、関数電卓のハードウェアはQ計算株式会社の主力製品であり、学生にも多く利用されています。Aさんが関数電卓アプリをリリースした場合、競合としてシェアの食い合いが発生するかもしれません。社内での早めの意思確認が必要でしょう。
今回は「新たな可能性を模索したいし、既存製品とのシナジーが考えられるなら企画を進めてもOK」と前向きな返事をもらったとのことでした。
競合分析
競合について強み弱みを中心に分析します。
情報ソースとして以下などを利用します。
- 業界紙、業界レポート
- 競合のWEBサイトや販売資料
- 口コミサイト
- 顧客・取引先へのインタビュー
Aさんはこう考えた
Aさんは5F分析で上がった2つの競合について掘り下げることにしました。
KSFの特定
KSF(Key Success Factors:重要成功要因)を特定することが外部分析のゴールです。
KSFとは、成功(=目標の達成)のために決定的な影響を与える要因のことです。
製品/サービスの機能要件だけでなく、売り方やコスト削減にまで触れる必要があります。
Aさんはこう考えた
AさんはKSFを以下のように設定しました。
2. 内部分析
設定したKSFに対し、事業が満たせている点および満たせていない点を確認することが内部分析の目的です。事業のコスト構造やリソース、強みや弱みを分析します。
自社の特徴の確認
バリューチェーン分析を利用し、自社の特徴を確認します。
バリューチェーン分析では、製品・サービスをユーザーに届けるまでの過程における、自社の各業務活動における強み・弱みを確認します。また、コスト削減要素があるかも合わせて確認します。
Aさんはこう考えた
電卓事業はハードウェア製造がメインなので、原料調達や物流の機能もあります。ただ今回は、それらは置いておいてアプリ開発に関わる内容だけピックアップして確認します。
サービスの肝となりそうな「電卓の企画・開発」「教育現場までに届ける方法」を抑えることができています。課題はあるものの、まるっきり難しいという状況ではないかもしれません。
コスト削減の観点では、既存の事業のバリューチェーン(調達→製造→営業→アフターサービス)との差が多く、コスト削減につながる点はなさそうです。
KSFとのギャップの確認
自社の特徴とKSFとのギャップを確認します。
3. 戦略立案
外部分析と内部分析を通して以下を確認できました。
- 企業を取り巻く状況
- 勝つための要因(KSF)
- 自社の特徴
- KSFとの差分
本パートでは、GAPを埋めてKSFを満たすための施策と、競争優位性を確立するための戦略を立案します。
- KSFを満たすための施策を検討する
- 戦略を検討する(どう攻めるかを決める)
KSFを満たす施策を検討する
KSFとの差分を埋める方法があるかを中心に施策を検討します。
施策については「まず最低限のアプリを提供してみて、顧客(教育現場)の反応を確認する」というレベルで記載しています。ビジネスの拡大とともに要求および施策の変化があると思いますので、常に見直す必要があります。
また、ここではコスト面について触れていませんが、施策と併せて発生する費用をどチェックしなければならないでしょう。
(余談ですが、こう考えてみるとメーカーがソフトウェアを内製し続けるために、継続的なタスク供給や人材調達などの面で難しいなと改めて思いました。)
戦略を検討する(どう攻めるかを決める)
戦略立案ではいくつかのフレームワークがあります。
- ポーターの基本戦略
- コトラーの競争地位戦略
- VRIO
今回はポーターの基本戦略を元に考えてみます。
ポーターの基本戦略の概略
基本的な戦略として3つあり、狙う市場の規模と競争優位の出し方を軸に戦略を決めるものです。それぞれに向き不向きやリスクの違いがあります。
- コストリーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
Aさんはこう考えた
集中戦略を取り、ターゲットを理系学部の新入生と絞ることとしました。その中で同たち振る舞うかを以下のように整理しました。
ここまでのプロセスを通すことで、状況を整理し、取るべき戦略へと繋げることができました。
まとめ
事業戦略は以下のプロセスで進める。
- 外部分析
- 外部分析の目的はKSFの特定である
- そのために各分析手法を利用する
- 内部分析
- 内部分析の目的はKSFに対する自社のギャップを明らかにすることである
- そのためにバリューチェーン分析などを利用する
- 戦略立案
- 外部分析と内部分析の結果を元に、戦略を立案する
次回の記事で製品レベルでの戦略(マーケティング戦略)をまとめる予定です。
①概要・経営戦略
②事業戦略 ←本記事
③製品戦略 ←後日公開