〜"作りたい"をAIに要件定義してもらう〜
前回までのおさらい
みなさん、こんにちは! お待たせしました。
基礎編では、#1で「開発環境を整える(=道具の準備)」、#2で「とりあえず作ってみる(=作る感覚をつかむ)」をやりました。ここまでで、AIに話しかければ、なんとなくアプリらしきものが動く——という手ごたえは掴めたと思います。
ここからは 「実践編」。いよいよ"本物"を作ります。しかも今回作るのは、私が実際に「定年後、これで少しは自分を助けられるかも」と思って作った、毎月ちゃんと使えるツールそのものの開発記です。
この連載で目指すこと
先に、この実践編のゴールを言っておきます。
コードが書けない私たち世代でも、AIと組めば「要件定義 → 動くツール → 売れるアプリ」まで辿り着ける。
これを、実際の開発でやったことをそのままなぞりながら見せていきます。
ここで一番大事なことを、はっきり言わせてください。
プログラミングができる必要は、ありません。
コードを書くのはAIの仕事です。私たちの仕事は、「何を作るか」を決めること。そして——ここが私たち世代の強みなんですが——「どの仕事がどれだけ面倒くさいか」を、長年の経験で誰よりも知っていること。これが最大の武器になります。
💡 ノウハウ①:AIにはコードではなく"困りごと"を持ち寄る。技術は向こうが持っている。
題材の選び方 ── 私の"毎月めんどくさい"
では、何を作るか。私が選んだのは 新幹線の領収書でした。
出張のたびに、ある鉄道会社の予約サイトにログインして、予約を1件ずつ開いて、領収書を表示して、保存して……を何度も繰り返す。月末の経費精算のたびに、これが地味に憂うつだったんです。みなさんにも、こういう「毎月ため息をつく作業」、ありませんか?
大発明を狙う必要はありません。むしろ "自分の面倒"がちょうどいい。題材選びのコツは、この3つです。
- 身近(自分が毎月やっている)
- 繰り返す(だから自動化する価値がある)
- 他人も困っている(=将来"売れる"種になる)
この3つが揃うと、作ったあとに「実は同じことで困ってる人、けっこういるぞ」となる。連載の最後(#5)で触れるマネタイズの話は、実はこの題材選びから始まっているんです。
💡 ノウハウ②:題材は"自分が毎月ため息をつく作業"から選ぶ。
「要件定義」って、身構えなくていい
システム開発の世界では、最初に 「要件定義」 という工程があって、「ここが一番大事」とよく言われます。……と聞くと、それだけで「うっ」となりますよね。分かります。
でも、身構えなくて大丈夫。要件定義なんて、たった一文でいいんです。型はこれだけ:
誰の・どの手間を・どう減らすか
私の場合はこうでした。
「私の・毎月の領収書ダウンロードの手間を・まとめて自動で減らす」
これで十分。立派な仕様書なんて要りません。足りないところは、あとでAIと会話しながら埋めればいいんです。
💡 ノウハウ③:要件は一文から。「誰の / どの手間を / どう減らす」。
実際に私が打った"第一撃"
ここで、実際に私がAIに最初に打った言葉を、ほぼそのままお見せします(会社名だけ伏せました)。かっこつけていません。原文の勢いのままです。
○○の予約サイトから指定した月の領収書をすべてダウンロードしたいです。そのためのアプリを Dynamic Workflow を使って作ってください。なるべくサブエージェントに分けて細かく作業を分割して並列分散処理するように実装していただきたいです。
画面の繊維などについては、Claudeさん自身で調べて実装してください。
……どうでしょう。びっくりするほど雑でしょう?(笑)
しかも白状すると、「Dynamic Workflow」も「並列分散処理」も、私は意味がよく分かっていませんでした。どこかで聞きかじった、それっぽい言葉を並べただけ。おまけに「遷移」を「繊維」と打ち間違えたまま送信しています。
それでも——AIはちゃんと汲み取って、動き始めてくれるんです。カッコいい言葉も、正しい漢字も要りません。
ここには、大事なコツが2つ隠れています。
- 画面の細かい仕様は「自分で調べて作って」とAIに丸投げした。私はそのサイトの仕組みなんて知りません。知らなくていいんです。
- すぐ続けて、こう打ちました。
調査と実装を続けてください。私にはいろいろと聞かなくて結構です。
これが "任せる"宣言です。「いちいち私に確認しないで、まず動くところまで作っちゃって」と。
完璧に説明しようとすると、いつまでも始まりません。むしろ "ざっくり投げて、あとは任せる"。これがバイブコーディングの入り口です。
💡 ノウハウ④:「あとは調べて作って」と任せる勇気を持つ。丸投げは悪じゃない。
AIに要件を"育ててもらう"
一文を投げると、どうなるか。
AIは「では、こういう手順で作っていきますね」と、作る段取りを自分で組み立てて返してきます。ログインはどうする、一覧をどう読む、保存はどこに……と。つまり、私のふわっとした一文が、対話の中でどんどん具体的な要件に太っていくんです。
私がやったのは、業務目線のツッコミを入れることだけ。たとえば「ログインだけは自分の手でやりたい(パスワードをAIに預けたくないから)」とか。これは後の回で効いてくる、大事な判断でした。
会話の中では、私もAIも「並列分散処理」みたいな難しそうな言葉を平気で使います。でも、さっきの第一撃を思い出してください。意味が分からないまま投げても、ちゃんと伝わったんです。だから——
💡 ノウハウ⑤:分からない言葉は、流していい。意味が分からなくても要件は会話で育つ。気になったら「それ何?」と聞けばAIが教えてくれる。
まとめと次回予告
今日の要点は、この3つだけ持って帰ってください。
- 困りごとを持ち寄る(コードじゃなく、自分が知っている"面倒"を)
- 要件は一文でいい(誰の / どの手間を / どう減らす)
- 任せる勇気(ざっくり投げて「あとは調べて作って」)
こうして、AIは私の"雑な一文"から、本当にツールを作り始めました。
……ところが。ここから、壁が待っていました。
次回、画面に大きく「アクセス拒否」と表示された日の話をします。ロボット扱いされて、サイトに門前払いされたんです。どうやって越えたのか——お楽しみに!
サルでもわかるバイブコーディング! 実践編 #2「AIと二人三脚で"壁"を越える」に続く。