PMBOK®の8版が出ました。
https://www.pmi.org/standards/pmbok
PMIの規定により内容の転記等はできないのですが、(chatGPT君に聞いたら目次もやめたほうがいいよと言われた)
大まかな変更点と概要のみ記載していきます。
3行で
- 第7版の「原則」と第6版の「プロセス」が合体した
- 第6版「5つのプロセス群」が「フォーカスエリア」として復活し、「40のプロセス」として帰ってきた。が内容は7版ベース
- 各プロセスのInput/Output,ツール,技法(=ITTOs)など実務的な「統合版」になった
これまで
8版の変更点に入る前に6版以前、7版について軽く触れたいと思います。
第6版まで
第6版は、プロセス中心のアプローチで。「PMBOK®と言ったらコレ」といった印象の「5つのプロセス群」と「10の知識エリア」のマトリクスで構成され、具体的な「49のプロセス」が定義されていました
ここら辺はググればいっぱい出てくるので調べて頂ければと思います。
第7版
第7版は、アジャイルやハイブリッドといった多様なアプローチに対応するため、かなりの構造改革を行いました。
というか「5つのプロセス群」と「10の知識エリア」が削除されて第6版のプロセス中心の構造を完全に放棄しました。
かわりに「12の原則」「10の知識エリア」に置き換えられました。
置き換えられたといっても
「プロセス」から「原則」へ
「知識エリア」から「パフォーマンスドメイン」へ
という違いがあるので対応して置き換えられたものではありません。
考え方そのものが変わりました。
ただ、「具体的でなくなった」「実務でどう使えばいいか分からない」という声もあったようです。
PMBOK®第8版での変更点の概要
第8版は、第7版の「原則ベース」の理念を継承しつつ、第6版の「プロセスベース」の実用性を融合させた形のようです。
「価値(Value)」への焦点
主要な用語(例:プロジェクト)の定義が更新されました 。最も重要な動機は「価値への焦点 (Focus on value)」です 。
6版まではいわば「手段を実現するためのPM」でした、それが7版で「価値実現のためのPM」に転換されたのですがその代わり記載に具体性がなくなったように思えます。
コンセプトは7版を踏襲したように思えます。
原則とプロセス
第7版で導入された「12の原則」は「6つの実用的な (actionable) 原則」に変更されました。
また第6版以前の「5つのプロセス群」が、「5つのプロジェクトマネジメント・フォーカスエリア (Focus Areas)」として『標準』パートに復活しました
これは第7版で「具体性がなくなった」という声に応えたものだと思われますが、単純に第6版に戻ったわけではないようです。
第8版では、これらのエリアは特定の公式なプロセスに縛られるものではなく、予測型(ウォーターフォール)でも適応型(アジャイル)でも適用可能な、普遍的な「注力すべき領域」として再定義されています
パフォーマンスドメインとプロセスの融合
ここが第8版の最も大きな構造変更かもしれません。
- パフォーマンスドメインの更新: 第7版の「8つのパフォーマンスドメイン」は「7つのパフォーマンスドメイン」に再編されました。
- 知識エリアとプロセスの統合: かつての「10の知識エリア」の概念が、これら7つのドメインに統合されました。
-
プロセスの復活: 第7版で本体から分離されていた「プロセス」が復活しました。
「40のプロセス」が、ITTOs(Inputs, Tools and Techniques, and Outputs:各プロセスのインプット/アウトプット,ツール,技法)、これら7つのドメイン内に直接埋め込まれました。
第7版は「原則 (Why)」と「ドメイン (What)」を示しましたが、「プロセス (How)」をPMBOK本体から分離して「プロセス実務ガイド」と別冊にしていました。
第8版は、第7版の「ドメイン (What)」の内部に、第6版の「プロセス (How)」を再統合した、という構造です。
PMBOK®第8版の概要
第8版の新しいアーキテクチャは、実務家が「何を」「どのように」使えばよいかを明確にするために、再設計されています。
「標準」と「ガイド」
PMBOK®ガイド第8版は、1冊の書籍が明確に2つのパートに分かれています。
- The Standard for Project Management(標準)
- A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide)(ガイド)
この2つの役割分担は
『標準』(第1部)は、プロジェクトマネジメントの「マインドセット(考え方)」を導く原則 (Principles) を定義します(Whyの部分)
『ガイド』(第2部)は、その原則を実践の場で「どう実行するか」を示すための、パフォーマンスドメイン (Performance Domains)(活動領域)を提示します(Howの部分)
第1部『標準』:プロジェクトマネジメントの「Why/What」
『標準』 (The Standard for Project Management) は、プロジェクトマネジメントの核となる「マインドセット」と「普遍的な活動領域」を定義しています。
6つのプロジェクトマネジメント原則(Principles)
日本語版はまだ出ていないのでGemini君が考えた用語です。正式に日本版が出た際は別の用語になっていると思います。
-
Adopt a Holistic View(全体論的視点の採用)
プロジェクトを、内部および外部の要因が相互に作用する複雑なシステム全体の一部として捉え、管理することを意味します -
Focus on Value(価値への集中)
プロジェクトの成功指標および推進力として「価値」を最優先し、その創出に焦点を当てることを求めます -
Embed Quality Into Processes and Deliverables(プロセスと成果物への品質の組込み)
顧客やステークホルダーのニーズを満たす能力を、プロジェクトのプロセス全体とすべての成果物に組み込むことを指します -
Be an Accountable Leader(説明責任を果たすリーダーであれ)
プロジェクトの目標、下された決定、取られた行動に対して、責任(アカウンタビリティ)を持ち、オーナーシップを発揮することです 。 -
Integrate Sustainability Within All Project Areas(全プロジェクト領域へのサステナビリティの統合)
プロジェクト活動が環境、社会、経済に与える影響を考慮し、「将来の世代のニーズを損なうことなく現在のニーズを満たす」という持続可能性を統合します 。 -
Build an Empowered Culture(権限を与えられたカルチャーの構築)
チームメンバーに権限を移譲し、ステークホルダーとチーム間の相互信頼を促進するようなプロジェクト環境を構築することです。
5つのプロジェクトマネジメント・フォーカスエリア(Focus Areas)
第6版の「プロセス群」が、アプローチ(予測型、適応型、ハイブリッド)に依存しない普遍的な概念として再定義されています。シンプルになった形ですね。
- Initiating (立上げ)
- Planning (計画)
- Executing (実行)
- Monitoring and Controlling (監視・管理)
- Closing (終結)
第2部『ガイド』:プロジェクトマネジメントの「How」
『ガイド』 (A Guide to the PMBOK) は、『標準』で示された「原則」と「フォーカスエリア」を、実務で実行するための具体的な「手法」と「活動領域」を提供します。
A. 7つのプロジェクト・パフォーマンスドメイン(Performance Domains)
プロジェクトの成果を生み出すために不可欠な、7つの活動領域が定義されています。
1. Governance (ガバナンス)
2. Scope (スコープ)
3. Schedule (スケジュール)
4. Finance (ファイナンス)
5. Stakeholders (ステークホルダー)
6. Resources (リソース)
7. Risk (リスク)
B. 40のプロセスとパフォーマンスドメインの統合
第8版の核心として、これら7つのドメインの内部に、「40の具体的なプロセス」が再配置・統合されました
例えば、「スコープ」に関連するすべてのプロセス(例:「スコープの定義」「スコープのコントロール」など)は、すべて「Scope Performance Domain」の配下に集約されています。
C. テーラリング、ツールとテクニック(ITTOsの実質的な復活)
第7版で「具体性が失われた」という批判に応えるため、具体的な「How-to」が大幅に拡充されました
-
テーラリング
ガイドの第3セクション全体が「テーラリング」に割かれています。プロジェクトの状況に応じて、7つのドメインや40のプロセスを「どう調整(テーラリング)するか」が解説されています。 -
インプットとアウトプット
ITTOsのうち、「インプット」と「アウトプット」が、包括的な辞書として第4セクションに復活しました。 -
ツールとテクニック:
同様に、「ツールとテクニック」が第5セクションに辞書として復活しました。伝統的な手法(例:クリティカルパス法)からアジャイルの手法(例:バーンダウン・チャート、プロダクトバックログ)までが網羅的に解説されています。
感想
概ね第7版に改版した時、不評だった部分に対して具体的なHowを追加したというように見えます。
コンセプトは第7版、記載方針は第6版といったイメージでしょうか。
WFはともかく、アジャイルはアジャイルセレモニーをなぞったところで各活動の意味を理解しない限り全く意味がないと思っています。
そういう意味で第7版は「Why/What」に集中していたのでなるほどなそうだよね、と思っていたのですが・・・
やはりPMBOKをプロマネ導入のための文章とするならば、まずはHowがないと理屈を示されたところで具体的にどうやっていいかわからん、という部分が多いでしょうね。