GitHub のアカウントを100万件、無作為に引いて調べました。トレンドに載るリポジトリや、スターの多いプロジェクトからたどったのではありません。アカウントID空間から一様ランダムに引いたので、「目立つ開発者」ではなく「登録されている人の全体」が写ります。費用はゼロ。GitHub の無料 API 枠だけで、収集に29日かかりました。
普段見ている GitHub は、この母集団のごく一部です。調べてみたら、思っていた開発者像とだいぶ違いました。この記事は面白かった結果を並べます。
*本作業の大半をClaudeCodeで調査・文書化したものです。
用語
- identicon: 画像を設定していないときに出る GitHub の既定アバター。ID のハッシュから作られる5×5の模様。
- 草: プロフィールに出る貢献グラフ。ここでは直近1年の公開貢献数を指します。
- 活動あり: 直近1年に2回以上の貢献。1回だけ(多くはアカウント作成時のコミット)は数えません。
- 常連: 直近1年に52回以上、つまり週1回以上のペース。
割合には95%信頼区間を付けています。相関はすべて相関であって、因果の主張はしません。
先に全部
| # | 分かったこと |
|---|---|
| 1 | 4人に3人はプロフィール画像を設定していない。人口で重み付けすると7人に6人 |
| 2 | 86%は直近1年ほぼ何もしていない。「活動している」人も中身は年6日 |
| 3 | GitHub の個人アカウントは約2.45億。公開の場で手を動かすのは3,300万人、常連は670万人 |
| 4 | 「欧米は週末も働き、日本は働かない」は両方向とも外れ。週末寄りの首位は韓国とインドで、日本は欧米のどの国より上 |
| 5 | 貢献カレンダーに各国の祝日がそのまま写る。韓国の秋夕は平常日の25%まで沈む |
| 6 | アニメアバターの1位はワンピース。そして日本人のアバターは世界一「作品を特定できない」 |
| 7 | リポジトリの65%は作られた日に放置される。寿命の中央値は0日 |
| 8 | レビューする人は活動者の2.1%だけ。新しい世代はコミットはするがレビューしない |
| 9 |
master→main の移行が、作成年ごとの階段としてそのまま見える |
| 10 | 活動している開発者の貢献の4割は非公開。公開 GitHub は氷山の一角 |
| 11 | 活動をいちばん言い当てるのはアバターではなくプロフィール欄の記入数(9.2倍差) |
| 12 | 2026年に作られたリポジトリの8本に1本が LLM SDK に依存している |
| 13 | JavaScript プロジェクトの65%にテストが1つも無い |
| 14 | 新規リポジトリの言語首位が交代。Python が1位、TypeScript が2位、JavaScript は3位に陥落 |
| 15 | リポジトリ名の語彙で ai はすでに17位。上位にはチュートリアルの化石が並ぶ |
| 16 | スターのジニ係数0.99。公開リポジトリ約3.8億件・コード約11PB、そして9.8%は空 |
| 17 | Ruby は本当に日本の言語だった(17.9% 対 世界7.8%) |
| 18 | 公開メールの55.7%が gmail。1.7万ドメインの9割は一度しか現れない |
| 19 | cron で草を偽装する人はほぼ実在しない。365日毎日は161人、機械的なのは22人だけ |
| 20 | GitHub の成長曲線を復元。公称の2点が曲線に乗り、2026年の流入は毎秒2.2人 |
以下、ひとつずつ。
1. 4人に3人はアバター画像がない
100万件のうち、プロフィール画像を設定しているのは22.8%だけでした。77.2%は既定の identicon のままです。しかも標本は登録年で層化してあり、実測した各年代の人口で重み付けし直すと85.5%まで上がります。GitHub の生きているアカウントについて言うなら、7人に6人は一度も画像を設定したことがありません。
2019年の先行研究(Wu ほか)は identicon 21.5%・人物写真56.4%と報告していました。今回は活動のあるユーザーに絞ってもなお identicon が44.8%です。矛盾ではなく、彼らは「動いている人」を、こちらは「登録されている人全体」を測っているという母集団の違いと、この数年の新規アカウント激増が理由です。
2. 「活動している」の中身は年6日
86.1%は直近1年の貢献が1回以下で、草の中央値は0。活動している13.9%に絞っても中央値は年17回です。さらに日単位で見ると、活動者が貢献した日数の中央値は年6日、連続日数の中央値は2日で、その年の貢献の33%を最も忙しい1日に置いています。12%は1年分が1日で終わっています。活動は継続ではなく、数回の噴出でした。
「若いアカウントほど活発」に見える山もありますが、これは1年窓が若いアカウントの生涯をほぼ覆ってしまう測り方の見かけで、常連(週1回以上)で見ると順序は逆転します。古い世代ほど続いています。
3. GitHub の開発者は、実際は何人か
GitHub は「アカウントを持つ全員」を開発者と定義して1.8億超と発表しています。ID空間の密度を実測して数え直すと、個人アカウントは2億4,487万で、1年分の成長を見込めば公称値と辻褄が合いました。非公開情報なしで公式の数字を再現できたことになります。
公称値が言わないのはここからです。実測した活動率を掛けると、直近1年に公開貢献が2回以上あるのは3,298万人、週1回以上の常連は669万人。つまり7人に1人だけが何かを公開でやっていて、36人に1人だけが毎週手を動かしています。世界の「GitHub 常連」は、だいたい東京都の人口の半分です。
| 母集団 | 人数 | 公称1.8億に対して |
|---|---|---|
| 個人アカウント | 2億4,487万 | 136% |
| 公開活動あり(年2回以上) | 3,298万 | 18% |
| 常連(年52回以上) | 669万 | 3.7% |
4. 週末の都市伝説?は逆だった
「欧米の開発者は週末もコードを書く。日本人は書かない」というわたしの感覚がありました。まず白状すると、この話の一次資料は探しても見つかりませんでした。近くにあるのは、勤務外にもコードを書くことを情熱の証とする英語圏の採用文化(2012年の「501 Developer Manifesto」はその反発として書かれました)と、「北米の人は退勤が早い代わりに、家族との夕食後に夜また働く」という定番の逸話です。誰もが聞いたことはあるのに誰も出典を出せない、都市伝説の典型でした。なお貢献データは日単位で時刻が無いので、検証できるのは週末の部分だけです。夜の話はこのデータでは白黒つきません。国を書いた常連貢献者47,585人で確かめると、両方向とも外れていました。まず日本の常連の96%は週末にも何かしら動いています。そして週末寄り(平日より週末に多く貢献する人)の割合は、日本5.4%で、米国4.7%、英・豪4.5%、加・仏・西3.7%より上です。欧米の主要国はすべて日本より下でした。首位は韓国9.8%とインド9.4%です。
なお「週末だけの開発者」はほぼ実在しません。活動量の基準を上げると4.71%→0.01%まで消えます。該当者を開くと貢献の中央値は年3回・活動1日で、たまたま触った日が土日だったアカウントでした。
ひとつ白状すると、この分類の「週末」は世界一律で土日です。週末が金土のイスラエルとエジプトでは系統的にずれていて、実際イスラエルの日曜は平日並みに動き、エジプトの金曜は全データで最も深い「平日」の谷でした。数字がそれを教えてくれたのは面白いところです(詳しくは実装編の記事で)。
5. カレンダーに祝日が写る
国ごとの日次貢献を、その国の平常日と世界全体の曲線で割ってやると、最も静かな日に各国の祝日がそのまま並びます。日本は静かな8日のうち7日が祝日(文化の日・敬老の日・秋分の日…)、中国も7日(国慶節の連休が丸ごと沈む)、韓国は6日で、秋夕は平常日の25%まで落ちます。感謝祭の米国は50%、クリスマスの英国は56%なので、東アジアの谷のほうがずっと深い。週末には欧米より働く母集団が、自国の祝日ではいちばん強く止まる、という対になっています。
6. アニメアバターの世界
イラスト・キャラクター系のアバター53,886枚のうち、アニメ・漫画は12,656枚。作品を特定できた上位はワンピース、ナルト、ポケモン、ドラえもん、ドラゴンボールで、世界的な作品が並びます。西洋カートゥーン(サウスパーク、シンプソンズなど)との比は11.2対1で、イラストアバターの世界共通語は日本アニメでした。
いちばん面白いのは「特定できなかった」ほうです。作品名が出た割合は中国のアバターで47%、日本のアバターで26%と、区間が重なりません。特定できなかった日本のアバターを目視すると、絵師への委託、同人、手描き、GAN生成——つまり世界のどこにも存在しない絵でした。中国はアニメアバターの数が国別最多で最も有名な作品を選び、日本は数が少なく最も特定しにくい絵を選ぶ。広さと深さの対比が1枚の表に出ます。
なお、この作品特定には脚注があります。当初のモデル出力は「雰囲気」を最も有名な作品名に当てはめる誤りだらけで(暗くサイバー調なら何でも lain になる)、一度出した集計を撤回し、根拠を先に書かせるプロンプトで直してからの数字です。
7. リポジトリは作られた日に死ぬ
標本の100万人が持つ公開リポジトリ265万件も、同時に一様ランダムな標本になっています。作成から最終プッシュまでの寿命は中央値0日。65.3%は作られた日の翌日までに触られなくなっています。85.3%はスターが1つも付かず、全スターの90%を上位1%が持ち、ライセンスが付いているのは15%だけでした。
8. レビューする人は2.1%しかいない
貢献の内訳で役割を分けると、活動者の68.1%は一人でコミットする個人開発者で、レビュアーは2.1%しかいません。ただしそのレビュアーの草の中央値は129で全類型の最深です。オープンソースが頼るレビューという仕事は、ごく少数の忙しい人に集中しています。
登録世代で割るとさらにはっきりします。レビューの割合は2008〜2012年登録世代の5.0%から、2024年以降登録の0.7%まで一直線に落ち、コミットの割合は80.1%から94.7%へ上がります。新しい世代はコミットはするが、レビューはしません。
9. main への移行が時計になる
GitHub は2020年10月に新規リポジトリの既定ブランチを master から main に変えました。作成年ごとに既定ブランチ名を数えると、この変更が階段としてそのまま見えます。2019年までに作られたリポジトリでは約1%、2020年16%、2021年69%、そして2026年作成では91%。頭打ちにはなっていません。プラットフォームの既定変更が母集団に浸透していく様子を、ランダム標本で観測できたことになります。
10. 仕事の4割は見えない
活動者の26.5%は非公開の作業を持ち、その人たちの全貢献の40.6%が非公開でした。非公開数を表示しない設定の人は0と数えているので、これでも下限です。公開 GitHub をどれだけ丹念に調べても、活動している開発者の仕事のおよそ5分の2は原理的に見えません。この調査自体にかかる但し書きでもあります。
11. アバターよりプロフィール欄
画像を設定している人は identicon のままの人より活動率がおよそ4倍高いのですが、それを上回る予測材料がありました。プロフィール5項目(自己紹介・所属・所在地・サイト・README)の記入数です。0個の8.9%から5個の82.3%まで単調に上がり、9.2倍の開きになります。どちらも因果ではなく、「手をかけているアカウントは動いているアカウント」という同じ事実の別の面です。
12. 新しいリポジトリの8本に1本が LLM SDK
依存関係ファイル(package.json や requirements.txt)の中身を読み、openai・anthropic・langchain などの LLM SDK に依存するリポジトリの割合を作成年別に数えました。
| 2019 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.05% | 0.42% | 3.3% | 5.0% | 9.7% | 12.6% |
2022年から2026年で30倍。ダウンロード数でもスターでもなく、無作為に引いたリポジトリの依存関係で測った AI の波です。ついでにフレームワークの盛衰も同じ時計で見えます。Vue は2018年がピークで2026年は1.7%、vitest は2026年作成分で jest の4倍、FastAPI は Flask と Django の合計を抜きました。
13. JavaScript プロジェクトの65%にテストが無い
package.json を持つ29.8万リポジトリのうち、65.3%にテストの配線がありません。15.4万件は test スクリプト自体が無く、4万件は npm が生成する「no test specified」のスタブが残ったままでした。なお実行時依存の中央値は5個で、頼られているのは react・express・axios、Python 側は numpy・requests・pandas です。
14. 新規リポジトリの言語首位が交代していた
作成年ごとの言語シェアです。
| 年 | JavaScript | TypeScript | Python |
|---|---|---|---|
| 2013 | 18.7 | 0.2 | 9.8 |
| 2020 | 20.2 | 5.3 | 11.7 |
| 2024 | 17.2 | 9.8 | 13.9 |
| 2026 | 13.6 | 16.3 | 19.4 |
2026年に作られたリポジトリでは Python が1位、TypeScript が2位で、10年間首位だった JavaScript は3位に落ちています。Octoverse 2025 は「AI が TypeScript を1位に」と言いましたが、この枠だと1位は Python でした。
15. リポジトリの名前という語彙
正直に言うと、上位は test、app、hello-world と予想どおりでした。面白いのは端のほうです。GitHub 公式チュートリアルの残骸 github-slideshow が3,018件、ある Coursera 講座の命名規約 datasciencecoursera が2,604件と、教育の化石が地層になって残っていること。そして単語としての ai がすでに17位で、AI 風の名前は2022年作成分の0.25%から2026年の5.3%まで伸びていることです。
16. GitHub の不平等と総量
割合を人口の重みで実数に直すと、個人アカウントが持つ公開リポジトリは約3.8億件(取得上限があるので下限)、総スター約2.7億、公開コードの総量は約11PB。スターのジニ係数は0.99、フォロワーは0.97で、記録にあるどの国の資産格差(最大でも0.85前後)よりも不平等です。そしてオリジナルの9.8%は、コミットが一度も無い空のリポジトリでした。
17. Ruby は本当に日本の言語だった
この調査で検証した通説のうち、唯一生き残ったものです(作者が日本人という実在の出どころつき)。リポジトリを持つ所在地申告者のうち Ruby リポジトリを持つ割合は、日本17.9%、世界7.8%、2位の米国11.3%。日本の突出は本物でした。
18. 公開メールのドメイン
メールを公開しているのは7.28%だけ。そのドメインは gmail が55.7%、中国系(qq/163/126/foxmail)5.0%、学術系3.1%。1万7,476種のドメインのうち1万6,163種は一度しか現れない、個人ドメインの長い尾でした(集計のみで、アドレスは一切出していません)。
19. 草は偽装されているのか
「毎日1コミットの cron で草を維持する人がいる」という話を、100万人の年間カレンダーで確かめました。365日毎日貢献した人は161人。そのうち毎日ちょうど1回が10人、回数がほぼ一定なのが12人で、機械的と言えるのは合計22人だけです。300日以上活動した1,137人を見ても、均一なパターンは28人。つまり草の見栄えを機械で整える文化は、100万人あたり数十人の規模でしか存在しません。
一方で、極端な尾は別の世界でした。標本で最大のアカウントは年145万件——すべてコミット、リポジトリ2個——で、活動アカウントの中央値(年17件)の約8.5万倍です。上位はこの種の産業規模の自動化が占めていて、人間のペースの上限はだいたい年2.5万〜4万件のあたりにあります。
20. GitHub の成長曲線を引き直す
登録年ごとの生存アカウント数に実測の人口重みを掛けると、GitHub の公式発表の間を埋める曲線が引けます。
2022年末の累積は1億900万(GitHub は2023年1月に「1億」と発表)、2025年央は約1億8,500万(公称「1.8億超」)。どちらの公称点も曲線の上に乗ります。そして流入は加速していて、2025年は4,400万人=毎秒1.4人、2026年上半期は毎秒2.2人。「毎秒1人の開発者が参加」という GitHub のコピーは、実測ではもう2倍速です。
どうやって測ったか(超要約)
- アカウントID空間から二分探索と棄却法で一様に抽出。活動では一切絞らない
- 1ユーザーの情報は GraphQL 1クエリに束ね、依存関係ファイルはブロブ取得で相乗り(実測1人あたり1.00ポイント)
- 母集団の実数は
GET /users?since=の密度測定500回で推定 - アバター22.7万枚は、手元の GPU で動かした公開重みの視覚言語モデルで分類(人手ラベルと95%一致)
- 全工程が無料枠内・再開可能。律速は終始レート制限で、金額ではなく時間
限界
公開データだけの読み取り専用・記述的な調査です。人手ラベルとの一致は正解率ではなく整合性の指標。性別は推定せず、地理は自己申告の少数派について地域単位の集計のみ。横断の関係はすべて相関で、交絡があります。収集・分析のコードは非公開ですが、標本の引き方と問い合わせの形は本文と Zenn 版に書いてあり、無料のトークンがあれば同じ調査をやり直せます。
参考文献
- Y. Wu, Y. Zhang, T. Wang, H. Wang. Exploring the Relationship Between Developer Activities and Profile Images on GitHub. Internetware '19, 2019.
- GitHub. Octoverse 2025: A new developer joins GitHub every second, 2025. https://github.blog/news-insights/octoverse/
- H. Itoh. Structural Decline of Stack Overflow: Measuring the Impact of Large Language Models on Community-Driven Programming Q&A (2010–2026), 2026. https://github.com/hisashi-ito/stackoverflow-knowledge-dynamics
- The 501 Developer Manifesto, 2012. https://501manifesto.dev/










