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Jev(TypeSafe AI)はみんなどうやって使っているのか?

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はじめに

2026 年 9 月 15 日に TypeSafe AI が「Jev」というモデルを発表しました
文章を生成しない、判断だけを返すモデルとなっているので、既存の LLM とは異なる点です。

発表の翌々日、X を見ていると「Jev で作った」という投稿が流れ始めてきて、これまでの LLM とは違う Jev をどのように使っているのか気になったので、GitHub と X の公開情報から数えてみました。

Jev の概要

  • 入力は「状態」(文字列か JSON)と、型の決まった「質問」です。質問の型は選択(Choice)、段階評価(Score)、真偽(Noul)の 3 つだけです(公式ドキュメント
  • 出力は質問ごとの確率と信頼度です。LLM のように文を返却しない。
  • 料金は入力トークンだけに掛かり、100 万トークンで 0.042 ドル。出力は無料です(Models)。

文を返さないので、全部の質問を並列に計算できます。速さと安さの秘密はここ。
API は POST https://api.typesafe.ai/v1/systemone の一本で(API リファレンス)、PythonTypeScript の公式 SDK があります。

発表から 2 日間の動き

GitHub で Jev に言及するリポジトリを数えました。検索 API で候補を集め、README 本文に Jev か typesafe.ai への言及があるものだけを残しています。
本調査は AI を利用して調査しました。

日(日本時間) 新規リポジトリ
発表前 4 件
9 月 16 日 50 件
9 月 17 日 329 件(取得は 23:30)

Jev に言及する GitHub リポジトリの 1 時間ごとの新規作成数と累積

17 日の午後(日本時間)から急に増えています。この日の朝 9 時に Vercel AI Gateway への掲載告知され、待機列に並ばなくても Jev を呼べるようになりました。
昼過ぎには創業者が「36 時間で 14 万人を待機列から通した」と投稿しています。API 鍵を手にした人が、その日のうちに作り始めたみたいです。1 時間に 27 件という時間帯もあり、取得した時点でもまだ増え続けていました。

作られているものの系統分類

リポジトリ 383 件から README を調査して、13 系統に分類しました。

系統別の件数

系統 件数
コーディングエージェント向けの道具 77 MCP サーバ、モデルルータ(jev-router)、Claude Code や Codex や Pi の拡張、エージェントの監督役(Foreman
ゲーム・シミュレータ・取引 49 マリオ、スネーク、チェス、五目並べドローン取引ボット
遊び場・実験・まとめ 42 110 の用例を集めた遊び場、awesome リスト、Jev で文章を 1 語ずつ生成する実験
非公式 SDK 42 Rust、Go、PHP、Elixir、Ruby、Swift、.NET、Scala
業務の判断 34 チケットの振り分け、履歴書の審査、詐欺の検知、Discord の荒らし検知
ベンチマーク・独立評価 32 フィッシング判定再ランク、韓国語、タイ語、日本の共通テスト
コードレビュー・開発支援 24 差分の危険度(jev-review)、コミットの分類、コードベースの検索
ブラウザ・計算機・スマホの操作 23 Browser Use のフライト検索、Mac の操作Android の操作
オープンな再実装 22 jevlikeopenjev、Gemma や Qwen に採点ヘッドを足したもの

残りの 4 系統(文章や音声の判定、既存の枠組みへの組み込み、ガードレール、検索)は合わせて 38 件です。

件数で最多はコーディングエージェント向けの道具

件数で一番多かったのは、Claude Code や Codex のようなコーディングエージェントの中で使う道具をみんな作っているようです。

エージェントは作業中に小さな判断を何度も下します。このコマンドは実行して安全か、どのモデルに送れば十分か、この道具の結果を文脈に残すか、作業は終わったか。こうした判断を LLM に聞くと 1 回に数秒と数セントかかり、回数が多いので積み上がります。Jev なら 1 回が数百ミリ秒と 0.0001 ドル程度で、確率が付くので「確信が低いときだけ LLM に聞く」という段構えが組めます。Vercel の CEO も、エージェントが実行するコマンドの安全審査を Jev に置き換えて現行モデルより p95 で最大 18 倍速くなったと投稿しています。

スター数で最多のブラウザ操作

件数は 23 件と少ないのに、スター数の合計は 1,233 で全系統の中で最も多かったのがブラウザと計算機の操作です。Browser Use が公開した jev-ultrafast は、ページの操作可能な要素の一覧を状態にして、次の操作と対象を Jev に選ばせます。文字入力だけ小さな LLM が書きます。Google Flights でチューリッヒからロンドンを検索する課題を 7.1 秒で終え、Jev の要求は 17 回、入力 9 万トークン、費用は 0.0039 ドル(測定の詳細投稿)。スクリーンショットを大きなモデルに送る従来の方式と比べて、1 手が 0.0002 ドルになったそうです。

数字の出ている業務の判断

  • HiringCafe(月間利用者 250 万人の求人サイト)は、履歴書と求人の関連度を Jev で付けています。人手ラベルとの順位相関は Jev 0.79、DeepSeek V4 Flash 0.77、Gemini 3.1 Flash-lite 0.72 で、費用は Jev が最も安いと投稿しています。費用の単位は投稿に書かれていないので、絶対額ではなく比だけを読んでください
  • AI 論文 1,018 本を 24 のトピックに分類した人は、分類の費用が 0.08 ドル、1 本の中央値が 256 ミリ秒でした。要約に使った DeepSeek は 3.99 ドルです
  • セキュリティ警報のトリアージでは、1 警報につき 15 の判断を 1 要求に詰めて、1 警報 0.000082 ドル、約 270 ミリ秒。15 個目の判断を足す追加の時間は約 1 ミリ秒だったそうです

費用

料金は入力だけに掛かるので、費用は「状態の大きさ × 呼ぶ回数」で決まります。質問をいくつ付けても変わりません。

1 件の入力トークン Jev Claude Haiku 4.5(出力 50 トークンを仮定)
1,000 0.00004 ドル 0.00125 ドル
10,000 0.00042 ドル 0.01025 ドル

1 日に 100 万回、1 回 1,000 トークンで呼んでも 42 ドルです。利用者の投稿では「200 回呼んで 0.06 ドル」「Vercel に 20 ドル入れたが使い切れないかもしれない」という声があり、個人の試作の規模では費用がほぼゼロに見えます。

利用者が報告した 1 件あたりの費用

この料金のもとでは、設計の作法が LLM と逆になります。LLM では長いプロンプトに全部書いて答えを 1 つ返させますが、Jev では質問を増やしても無料なので、1 要求に 15 の判断を詰め、状態はできるだけ小さくします。ある投稿者はこれを「プロンプトを書くのをやめて、システムを書く」と表現していました。

費用で負けた報告もあります。Claude Code の会話をモデルルータで振り分けたところ、振り分けのたびに LLM 側のキャッシュ(一度読んだ文脈を保持して次の呼び出しで読み直さずに済ませる仕組み)が書き直され、逆に 19.53 ドル余分に払ったという人がいます。判断器を挟むこと自体は安くても、挟んだ先の LLM の呼び方が変わると全体では高くなることがあります。

設計で変わる精度

独立したベンチマークで、条件がきちんと書かれているものを一つ挙げます。フィッシングメール 2,000 通を Claude Haiku 4.5 と比べた実験です。

  • 「これはフィッシングか」と一問で聞くと、Jev は 62.6%、Haiku は 81.3% で Jev の負けです
  • 「差出人と本文の会社名は一致するか」「リンク先のドメインは差出人と同じか」のような小さな信号を 5 つ並列に聞き、コード側でロジスティック回帰で合成すると 95.1% になりました
  • 費用は 1,000 通あたり Jev 0.038 ドル、Haiku 0.462 ドルです

一問で聞くと LLM に劣り、小さな信号に分けて聞くと上回ります。後者は公式文書が勧める「業務をコードで決める部分と小さな判断に分ける」作法そのもので、この作法に乗せられる課題でだけ、費用と精度の両方が成り立ちます。「微調整した Qwen のほうが 3 倍速く精度も近いので置き換えない」と結論した社内分類器の報告もあり、すでに専用モデルがある課題では Jev を選ぶ理由はありません。

日本から使うときの注意

  • API は早期アクセスのままです。待機列に並ぶか、Vercel AI Gateway 経由で使うかの二択で、Gateway 経由でも単価は同じ 0.042 ドルです
  • 日本からは遅くなります。五目並べを作った方が「速いには速いが、言うほど速くない」と書いていて、Azure の米国東部から測った人は平均 340 ミリ秒でした。公式の「70 から 500 ミリ秒」の下端は日本からは出ません。日本からの実測はまだ無いので、1 判断 300 ミリ秒前後を見込んでおき、1 秒に何度も聞く設計は避けたほうがよさそうです
  • 入力は外部の API に送られます。チケットの本文や履歴書やログがそのまま出ていくので、扱えるデータかは先に確かめる必要があります
  • 「作った」投稿の質には幅があります。383 件のうち 250 件はスターが 0 で、X 上では「作り方を出さず結果だけ見せるのは嘘だ」という警告も出ています。この記事では、デモの URL か GitHub のあるものだけを事例にしました。1 週間後に更新が続くものがどれだけあるかは、まだ分かりません

まとめ

Jev の API は、安くて速い判断を大量に呼ぶ用途、とりわけコーディングエージェントの内側で真っ先に試されています。向く課題の条件は 3 つで、選択肢を列挙できること、判断が小さくて頻度が高いこと、コード側で答えを合成できることです。この 3 つが揃うと費用が 5 分の 1 から 30 分の 1 になり、精度も LLM と同等かそれ以上になります。一問で高い精度が要る課題や、理由を文章で説明する必要がある課題には向いてないというのが現状です。

参考リンク

公式

この記事で引用した事例

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