Hugging Face に、TikTok の公開動画 56 億本分の情報(尺、キャプション、視聴数など 31 列、合計 460 GB)を集めたデータセットが公開されています。この 460 GB を手元に落とさずに、地域が日本の直近 12 か月分(371 万本。データセット全体の 0.07%)だけを読み、調べる軸を先に決めない探索的データ分析をしました。絞り込みは、言語ではなく、TikTok が動画に付けた地域(country 列)で行っています。そのため、対象には日本語以外の動画も多く含まれ、日本語と判定された動画は 29% です(不明が 36%、英語が 19%)。上位 1% の動画が総視聴数の 70% を占めること、尺が 60 秒を超えると視聴数の中央値が大きく上がること、人気の音源に乗っても視聴数は上がらないこと、などが見えました。読み方の仕組みと、図で見た結果をまとめます。本作業の大半を Claude Code で実行・文書化したものです。何を調べるかの判断と結果の確認は筆者が行い、図の注記の数値は元データと突き合わせました。
データと、この記事の前提
- データセットは datasocial/tiktok-5.6B-videos(作者: datasocial、ライセンス: CC BY-NC 4.0)です。この記事は非営利の技術記事で、載せるのは筆者が行った集計の結果と、筆者が作った図だけです。動画やキャプションの本文、投稿者の情報は載せません。
- 対象は「地域が日本」の動画で、「日本語の動画」ではありません。地域で絞ったのは、このデータが国の順に並んでいて、国で絞ると読む量が 100 分の 1 になるからです。言語で絞ると行グループを飛ばせず、言語が不明の 36% も捨てることになります。
- 371 万本は多く見えますが、日本の投稿のごく一部です。データセットの直近 12 か月分 17.2 億本のうち、地域が日本は 0.22% しかありません。一方、日本の月間利用者は 4,200 万人超(TikTok の 2025 年 11 月の発表)で、世界の利用者(推定 13.7 億〜16.7 億人)の 2.5〜3% にあたります。利用者の割合に比べて、日本の動画は 10 分の 1 ほどしか集められていません。
- データは、提供元がクロールで集めた一部で、全数ではありません。集め方は公表されておらず、日本の投稿全体を代表するかは分かりません。
- この記事の結果から分かるのは、一緒に動く関係だけで、原因は分かりません。「尺を伸ばせば視聴数が増える」のような読み方はできません。
用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 取得 | 動画の視聴数などの数値を、データ提供元が読み取って記録すること。「取得までの日数」は、動画の投稿からこの記録までの日数 |
| 地域が日本 | TikTok が動画に付けた地域が日本のもの。日本語の動画とは限らない(言語は、日本語が 29%、不明が 36%、英語が 19%) |
| 属性が揃った記録 | 画面の幅と高さが 0 でない記録。AI 生成かどうか、案件かどうかなどの属性も入っている。幅と高さが 0 の記録は「属性が欠けた記録」で、古い動画を別に集めた分と見られる |
| 反応率 | (いいね+コメント+シェア+保存)÷ 視聴数 |
| 中央値 | 並べたときの真ん中の値。視聴数は少数の動画に大きく偏るので、平均ではなく中央値で見る |
| 上位 10% の入口 | 大きい順に並べて、上位 10% に入る最小の値 |
| 重要度 | 特徴量(尺、キャプションの長さなど、動画の特徴を表す項目)の値をばらばらに入れ替えたとき、予測モデルの当てはまり(決定係数 R²)がどれだけ下がるか。大きいほど、予測への寄与が大きい |
460 GB を落とさずに日本だけを読む仕組み
Hugging Face は、SQL を受けて集計するサーバーを持たず、ファイルを配るだけです。そこで、手元の Docker で DuckDB を動かし、hf:// で始まるパスでファイルを指定します。DuckDB は、Parquet ファイルの末尾にある目次を読み、必要な列と行グループ(約 100 万行ずつの区切り)だけを HTTP の範囲指定で取ってきて、手元で集計します。読んだデータはメモリを通るだけで、ディスクには残りません。
SELECT * FROM 'hf://datasets/datasocial/tiktok-5.6B-videos/data/2026-09.parquet'
WHERE country = 'JP'
このデータセットは、ファイルの中が国の順に並んでいて、行グループごとに国の範囲が分かれています。そのため、国を日本に絞ると、1 か月分 96 個の行グループのうち 2 個だけを読めば済みます。一方、投稿日時はどの行グループも月の全域にまたがっていて、期間で絞っても行グループを飛ばせません。どの列・どの条件なら読む量が減るかは、クエリを流す前に、各ファイルの末尾の統計(列ごとの圧縮サイズと、行グループごとの最小値・最大値)を集めて見積もれます。12 か月・全 31 列で、見積もりは 1.58 GB(国で絞らなければ 150 GB)、実際の読み取りは 104 秒でした。
使ったデータの件数
| 段階 | 件数 |
|---|---|
| データセット全体(2014-07〜2026-09) | 5,596,407,686 |
| 直近 12 か月(2025-10〜2026-09)、全世界 | 1,724,395,780 |
| そのうち、地域が日本 | 3,716,168 |
| そのうち、属性が揃った記録 | 430,229 |
探索の手順
調べる軸(尺、投稿時間帯など)を先に決めず、全 31 列を同じ条件で扱いました。順に、全列の分布と欠損、視聴数との関係を 1 変数ずつ、木の勾配ブースティング(木を何本も重ねる予測モデル)による要因の順位づけ、決定木とクラスタリングによる集団の発見、時間・ハッシュタグ・音源の集計、外れ値の確認です。図は 25 枚になったので、ここでは 10 枚に絞ります。
図で見る結果
視聴数に関係するもの
図 1: 視聴数の集中。上位 1% の動画が総視聴数の 70% を、上位 10% が 96% を占める。
図 2: 数値の特徴量ごとの、視聴数の中央値(帯は四分位)。属性が揃った記録では、尺が 60 秒を超えると視聴数の中央値が大きく上がる(最大 14,245)。同じキャプションの使われた数が多いほど、中央値は下がる(4,588 から 289)。音源の使われた数は、全体では視聴数の中央値とほぼ関係がなく(529〜628)、属性が揃った記録では、おおむね多いほど高い(1,980〜8,242)。
図 3: 特徴量ごとの、効果の大きさの順位(水準間の視聴数の中央値の比)。全体で差が大きい上位は、縦横比 17.6 倍、案件の種別 10.7 倍、月 9.7 倍である。属性が揃った記録の上位は、広告×ショップ 19.3 倍、言語 17.7 倍、推薦から外れた印 10.1 倍、画面の幅 7.2 倍である。
図 4: 要因のグループごとの重要度。視聴数の重要度は、全体では、同じキャプションの重複、キャプションの形、動画の形の順に大きい。属性が揃った記録では、言語、動画の形、投稿日・取得までの日数が上位に来る。反応率の重要度は、全体ではキャプションの形と言語、属性が揃った記録では言語と動画の形が大きい。評価の決定係数は 0.34〜0.40 である。
図 5: 投稿の時刻と曜日(日本時間)。投稿は 18〜20 時に集中し、視聴数の中央値も同じ時間帯が高い。
図 6: 音源の使われた数の分布と、視聴数との関係。動画の約 66% は、使われた数が 1 回の音源を使っている。使われた数ごとの視聴数の中央値は 520〜627 で、ほぼ平らである。
図 7: キャプションの重複(空を除く)。キャプションのある動画の約 74% は、同じキャプションが 1 回しか使われていない。視聴数の中央値は、1 回の 756 から、1,000 回以上の 102 へ下がる。反応率の中央値は、1 回が最高(0.044)である。
このデータの癖
図 8: 月別の動画数と、記録の性質。属性が揃った記録の割合は、2026-06 までは 5% 未満(1.4〜4.6%)だったが、2026-07 に 25%、2026-09 には 69% になる。案件・アフィリエイトのフラグが付いた動画の割合も、2026-06 までは 0.1% 未満で、2026-07 から 1% を超える。
図 9: 列ごとの欠損とゼロの割合(月別)。シェア 0 の動画の割合は、78%(2025-10)から 44%(2026-09)へ下がる。ダウンロード 0 の動画の割合も、99% から 72% へ下がる。属性が欠けた記録と AI フラグが欠損した記録の割合は、ほぼ同じ推移をたどる。
図 10: 視聴数の分布(全体と、記録の性質ごと)。属性が揃った記録は、視聴数の分布が右(大きい値)へずれる。視聴数 100 未満の動画の割合は、属性が欠けた記録が 11.4%、揃った記録が 3.1% である。
このデータから言えること
- 視聴数は、少数の動画に大きく偏ります。上位 1% の動画が総視聴数の 70% を、上位 10% が 96% を占め、中央値は 560 回です(図 1)。「平均視聴数」は、ほぼ意味を持ちません。
- 尺が 60 秒を超えると、属性が揃った記録の視聴数の中央値が大きく上がります(尺で区切った帯ごとの中央値は、60 秒未満が 1,545〜4,406、60〜162 秒が 5,226〜14,245)。約 180 秒を超えると下がります(図 2)。
- 同じキャプションを使い回した動画ほど、視聴数の中央値が低くなります(1 回だけの 756 に対し、1,000 回以上は 102)。空のキャプションも低い(751。あるものは 3,734)です(図 2、7)。
- 音源は、動画の約 66% が 1 回しか使われていないものを使い、使われた数ごとの視聴数の中央値は 520〜627 でほぼ平らです。人気の音源に乗っても、視聴数の中央値は上がりません(図 6)。
- 属性が揃った記録で、視聴数の違いを最もよく分けるのは言語です(中央値は、日本語が 13,086、言語不明が 800)。次に、動画の形(尺・画面)と、投稿日・取得までの日数が続きます(図 3、4)。
- 属性が揃った記録では、広告があってショップでない動画の視聴数の中央値は 17,052 で、広告もショップもない動画(3,237)より高くなります。推薦から外れた印がある動画は 301 で、ない動画(3,430)より低い値です(図 3)。広告の視聴数は広告費の影響を受けている可能性がありますが、データでは確かめられません。
- 投稿は日本時間の 18〜20 時に集中し、視聴数の中央値も同じ時間帯が高くなります。曜日による視聴数の差は、全体で 530〜577 と小さい値です(図 5)。
- 視聴数と反応率は、別の動きをします。順位相関は 0.05 で、反応率の重要度は、言語とキャプションの形が大きくなります(図 4)。
- モデルで説明できるのは、視聴数のばらつきの約 4 割(決定係数 0.39〜0.40)、反応率の 3〜4 割(0.34〜0.37)です。残りは、動画の中身など、データにない要因によります(図 4)。
注意して読む点も 2 つあります。
- データには、性質の違う 2 種類の記録が混ざります。属性が揃った記録は全体の 11.6% で、2026-06 までは 5% 未満、2026-09 は 69% です。揃った記録は視聴数 100 未満の割合が 3.1%(欠けた記録は 11.4%)で、視聴数の分布が右へずれます(図 8〜10)。
- 月ごとの推移は、記録の混ざり方の変化を含むので、そのまま読めません。属性が揃った記録の視聴数の中央値が、2026-05 までの 7,900〜12,600 から、2026-06 以降に 2,600〜4,500 へ下がるのも、その一例です(図 8)。
作る側が使える目安
関連であって原因ではない、という前提で、このデータから読める目安です。
- 尺は、1 分を少し超えるあたりの視聴数が高く、3 分を超えると下がります。
- 同じ文のキャプションを使い回す投稿と、空のキャプションは、視聴数が低い側に入ります。
- 人気の音源に乗る効果は、視聴数の中央値には見えません。
- 投稿は 18〜20 時に集中し、その時間帯の視聴数も高い。空いている時間帯を狙う利点は、このデータからは見えません。
- 見られることと、反応されることは別です。反応率は、言語とキャプションの作りに左右されます。
限界
- データは、提供元がクロールで集めた一部で、収集のまとまりごとに記録の性質が変わります(図 8〜9)。
- 属性が欠けた記録が 88% あります。AI フラグや案件のような属性は、揃った記録(12%)の値です。
- 投稿者を特定できる列が無く、少数の投稿者による偏りは確かめられません。キャプションの内容(題材や語)は読んでいません。
- 対象は地域が日本の動画で、日本語の動画は 29% です。日本語の動画だけを見たい場合は、言語で絞り直す必要があります。
出典
- datasocial, TikTok Videos: 5.6 billion. Hugging Face. https://huggingface.co/datasets/datasocial/tiktok-5.6B-videos(CC BY-NC 4.0)
- Hugging Face, DuckDB の利用. https://huggingface.co/docs/hub/datasets-duckdb
- Web担当者Forum, TikTok の日本の月間アクティブユーザー 4200 万人突破, 2025-11-28. https://webtan.impress.co.jp/n/2025/11/28/51762
- Backlinko, TikTok Statistics(世界の月間利用者の推定). https://backlinko.com/tiktok-users









