はじめに
タイミーでPdS(Product Strategist)をしているHKと申します。さっそくこの「プロダクトストラテジスト」という職種について紹介していきたいのですが、このページを見てくれている皆さんのほとんどは、この職種について見たことも、聞いたこともないことかと思います。
自分も2025年8月に最初のPdSとして入社をさせてもらった当時は、日本にほとんどないこのPdSという職種について、経験に紐づいた知識はまだない状態でした。むしろ何もない職種だからこそ、入社後すぐは「一緒にPdSという職種を作って行こう」と考えていました。
いま、入社から4ヶ月弱が経過し、このPdSという謎の職種について見えてきた部分があるので、この度Timee Product Advent Calender 2025の12月8日分の記事として、徒然と書き下ろしていこうと思います。
なお、この記事ではPdM(Product Manager)という職種との対比を用いていますが、PdMについて知らない方でもある程度理解できるように構成しています。
PdSってなに?PdMじゃないの?
結論から言うと、自分はPdSを「領域はPdMとオーバーラップするが、ミッションの異なる職種」だと思っています。
しかしオーバーラップする部分は多くあるので、PdSについて語るにあたり、まずは一般にも広く知られているPdMから話を始めるのが、筋が良さそうです。
まずPdMについて調べてみると、PdMとは「製品やサービスの企画から開発、販売、改善まで、プロダクトのライフサイクル全体を統括する責任者」のようです。改めて領域が広いですね。
PdMはこの管轄する領域の広さゆえに、「PdMやってます!」という人がいたとしても、その実情は各業界・各社によりけりすぎて、ぶっちゃけどういうことをやってきたのかは、詳しく聞いてみないとよくわからないことが多いと思います。
ここでPdSの話に移りますが、PdSとはこの一般にはPdMが管轄する広い領域の中から「経営戦略とプロダクト戦略をアラインし、重要な課題発見/解決が遂行される状態を作りながら時には実行する」というミッションに軸足を置く職種になります。
・・・まだぜんぜんわかりませんよね?
PdMは「操舵手」、PdSは「航海士」だ
さらに意味がわからないと思いますが、ここで突然、大航海時代にトリップしたいと思います。
PdSというロールは(あくまで例えですが)、船に例えるとわかりやすいです。
プロダクトをひとつの船と捉えると、それぞれのロールは以下のように例えられます。
- 経営全体(組織によってはCPOやPdM):船長
- 目指すべき島(目標/到達点)を描き、全船員に示す
- PdM(Product Manager):操舵手
- 船長や航海士が示した航路を踏まえて実際の海流を読み、船を操舵する
- PdS(Product Strategist):航海士
- 風向きや海流を読み、最適な航路を選択する
つまり、経営全体が船長だとすると、そのもとで地図(=経営戦略とプロダクトビジョン)を開き、現在の風向き(=実行の現状と市場のインサイト)を読みながら、どのような方向に進んでいくのかを考えていくのが航海士であるPdSです。
PdSは操舵手であるPdMとも連携し、航路の方針を示しながら進路の調整を行なっていきます。逆に、PdMが拾い上げた舵取りからわかる現場の感覚を、船長に伝えて、航路を再検討することもあります。そうして、実際に船が目的地にたどり着くところまで責任を持つのがPdSのミッションです。
ただ、冒頭に書いたとおり、PdSはその役割がPdMとオーバーラップする職種です。当然ながら、船が荒波に揉まれたら、一緒に船を漕ぐこともあります。
と、このレトリックを頭に描いていただきながら読んでもらえると、次の実務の話がわかりやすいかと思います。
PdSの実務は「俯瞰」と「DeepDive」
PdSの実務は、大きく分けて2種類の属性に分けられます。それが「俯瞰」と「DeepDive」です。
まず「俯瞰」とは、経営サイドと会話をしてプロダクトの戦略をCPOやVPOPと立案したり、会社で走っているプロダクトに関連するプロジェクトについて、濃淡はありつつも一通り把握し、(プラスも、マイナスも)大きなインパクトになりうるものを監視したりしながら、都度、経営サイドと連携をする業務です。具体的には次のような業務があります。
- プロダクト戦略の考案:経営層と連携し、中期経営計画に基づいたプロダクト戦略とビジョンを CPO/VPOP と共に策定する。
- リソースポートフォリオの最適化:全イニシアチブの投資対効果と戦略的健全性を俯瞰し、リソース配分の大枠の方針を決定する。
- サイロ化の監視と予防:部門を横断する戦略的課題(例:データ基盤、法務リスク対応)における認知の摩擦や実行の遅延を監視し、早期に経営へ提言する。
次に「DeepDive」とは、個々のプロジェクトの中でも特に重要度の高いものにメンバーとしてJoinし、そのプロジェクトにおける戦略的な課題の解決について、プロジェクトの責任者やPdMなどのステークホルダーと調整しながら遂行をしていくという業務です。こちらも、具体的には次のような業務があります。
- 新規事業の戦略的阻害要因排除:例えば介護領域など、新領域における戦略展開において、複数部署の連携強化や、ボトルネックとなるレバーの発見・解消を行う。
- 横断的課題解決:例えばテーマごとのプロダクト活動(例えばVoC運用や知財リスクの監視・対応方針検討)や、特定の技術戦略のプロジェクトへの適応など、プロダクト全体に横断的に存在する課題を解決する。
この2つの視点を行き来しながら、常に現状動いているプロジェクトが、構造的にはどこに位置するのかを考えながら、この両方の間で軌道修正を繰り返していくのがPdSの基本的なあり方と言えます。
PdSの魅力
ここまでPdSとはどんな職種かについて語ってきましたが、最後にPdSの魅力についても触れておきたいと思います。
PdSの魅力は、ジェネラリスト的(広く浅く)な側面も、スペシャリスト的(狭く深く)な側面も両方持って働けることにあると思います。「俯瞰」の領域では広く浅くさまざまなプロジェクトを見ることができますし、「DeepDive」の領域では狭く深く特定の領域の知識を得て、成長につなげることができます。
なお切り口は変わりますが、個人のスペシャリティを深めるという意味だと、PdSは事業戦略を考えたり、経営との連携を強めたり、という「事業を構造把握し、スケールさせていく」ような、やや経営よりのスペシャリティが深まる職種になっています。
スペシャリティの性質としては、プロダクトをガンガン回していくぞ、という領域への意欲が強い方は、PdMの方が近い領域かもしれません。PdSの具体的なイメージでいうと、コンサルなどで経営や事業・戦略のバックグラウンドがありつつ、プロダクト領域に興味のある方や、反対にPdM経験はあるが、再現性高く事業をスケールさせていく能力を高めたい方には、非常にマッチ度が高い職種なんじゃないかなと思っています。
より広く考えると、キャリア的にプロダクト領域において、現在ジェネラリストでスペシャリティが欲しい人。もしくは逆に、現在スペシャリストでジェネラルな視点を獲得したい人にはぴったりの職種なんじゃないかと思っています(ちなみに僕は前者です)。
タイミーの採用について
以上、タイミーのPdS、HKからでした。
タイミーのプロダクト組織では、今回のアドベントカレンダー企画のように、いつも自律的な情報発信活動を行なっています。
みんなでワイワイ発信活動をやってく環境いいな〜と思う方、ご興味があればぜひお話ししましょう!
それではまた!