第1章 GIGAスクール構想
1.1 第1期GIGAスクール構想の概要
GIGAスクール構想第1期は、全ての児童生徒にICT環境を提供し、教育の質を向上させることを目的として、2020年度に開始されました。この構想は、日本全国の学校においてICTを活用した学習環境を整備するという大規模なプロジェクトであり、教育のデジタル化を推進する重要なステップとなりました。政府と自治体、学校が連携し、短期間で膨大な数の端末とネットワークインフラを整備するという、前例のない取り組みでした。
GIGAスクール構想の背景には、21世紀に求められる新たな学力観や社会の変化に対応するための教育改革の必要性がありました。デジタル技術を活用することで、児童生徒が主体的に学び、創造性を発揮できる環境を整備することが狙いです。さらに、教育の機会均等を実現し、地域格差を縮小するための手段としても位置づけられました。
1.1 第1期での主要な取り組みと成果
全児童生徒への1人1台端末の配布
GIGAスクール構想第1期の最大の成果の一つは、全ての児童生徒に対して1人1台の端末を配布したことです。この取り組みにより、児童生徒は家庭でも学校でも学習を続けることができ、学びの環境が大幅に拡充されました。特に、新型コロナウイルス感染症の影響でリモート学習が必要となった際に、この取り組みは大いに役立ちました。端末の配布により、オンライン授業やデジタル教材の利用が可能となり、学習の継続性が確保されました。
さらに、端末の利用は単にリモート学習にとどまらず、日常の授業においても活用されるようになりました。例えば、児童生徒は調べ学習やプレゼンテーション、プログラミングなど、さまざまな活動で端末を使用することができました。これにより、学習の幅が広がり、児童生徒の興味や関心に応じた学びが実現されました。
インターネット接続環境の整備
また、学校における高速インターネット接続の整備も進められました。これにより、オンライン授業やデジタル教材の利用がスムーズに行えるようになり、ICTを活用した教育活動が一層促進されました。インターネット接続環境の整備は、GIGAスクール構想の重要な要素であり、学校内のネットワークインフラの充実が図られました。
具体的には、学校のWi-Fi環境の整備や、クラウドサービスの利用が進められました。これにより、教員と児童生徒がリアルタイムで情報を共有し、協働して学ぶことができる環境が整いました。また、遠隔地の学校間での連携や、外部の専門家によるオンライン授業の実施など、教育の可能性が広がりました。
1.2 第1期目で見えてきた課題と学び
技術的な課題
第1期では多くの成果が得られた一方で、技術的な課題も浮き彫りになりました。例えば、端末の設定や管理、トラブルシューティングなどに時間と労力がかかることが明らかになりました。多くの学校では、教員がこれらの技術的な問題に対応するために多大な労力を割かねばならず、本来の教育活動に集中する時間が減少するという問題が発生しました。
また、インターネット接続の安定性やセキュリティの確保といった面でも改善の余地があることが分かりました。特に、ネットワークの負荷が増大する中で、安定した接続を維持することが難しく、セキュリティ対策の強化が求められました。これにより、次期構想に向けては、技術支援や運用サポートの充実が必要であることが認識されました。
教育現場での運用課題
教育現場での運用に関しても、教員のICTスキルの向上や、端末を活用した効果的な授業の実施方法についての課題が見えてきました。多くの教員は、ICTを活用するためのスキルや知識が不足しており、研修やサポート体制の強化が必要であると感じました。また、児童生徒のICTリテラシー向上も重要な課題として認識されました。
さらに、端末を活用した授業の計画や実施において、効果的な教材や活動の設計が求められました。これにより、教員同士の情報共有や連携が重要となり、ベストプラクティスを共有するための仕組みが必要です。また、保護者や地域との連携も強化され、家庭と学校が一体となって児童生徒の学びを支える体制が求められました。
1.3 第2期目に向けての展望
教育改革に向けた定量的なKPIが公表
文部科学省は令和6年4月22日のデジタル行財政改革会議(第5回)で「子供たちと教師の力を最大限に引き出すためのデジタルを活用した教育の充実」と題した資料 を公開しました。この資料では教育DXの推進やオンライン教育、民間人材の活用などが取り上げられています。具体的な取り組みとして、以下のポイントが挙げられています。
達成目標 | 達成率 |
---|---|
指導者用端末の整備 | 64.6%(R4)→100%(R6) |
予備端末の整備 | →80%(R7)→100%(R10) |
インターネット接続環境の整備 | 97.8%(R4)→100%(R6) |
十分な回線速度の確保 | 35.7%→100%(R7) |
クラウド利用を前提としたセキュリティポリシーガイドラインの策定 | 49.1%(R5)→100%(R7) |
クラウドを活用した校務DXの推進 | 5.5%(R5)→100%(R8) |
FAX、押印の廃止 | 1.1%(R5)→100%(R7) |
校務での生成AI活用 | 1.2%(R5)→50%(R7) |
次世代校務システムの導入検討 | 63.4%(R5)→100%(R8) |
児童生徒の端末の活用率(週3回以上) | 小: 90.6%(R5)→100%(R6)、中: 86.5%(R5)→100%(R6) |
デジタル教科書の活用 | 40.5%(R4)→80%(R8)→100%(R10) |
また ➊ 個別最適・協働的な学びの充実 ➋ 情報活用能力の向上 ➌ 学びの保証 ➍ 働き方改革への寄与 に関するアウトカムのKPIも設定されています。
これらの取り組みにより、子供たちと教師の学びや指導の質を向上させ、持続可能な教育環境を構築していくことが目指されています。
第2期GIGAスクール構想では、端末の買い替え以外にもこれらのKPIを達成するための施策をも考慮する必要があります。