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SciClaw 環境構築ガイド|AI for Science向けセキュア Container OS

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Last updated at Posted at 2026-03-21

はじめに

この記事で分かること:

  • SciClaw の概念と AI for Science における位置づけ
  • SATORI(190+ 科学 Agent Skills)と ToolUniverse(1000+ 科学ツール)の役割
  • SciClaw 環境の構築手順(clone → build → 起動まで)

想定読者: AI を活用した科学研究に興味がある研究者・エンジニア

📖 所要時間: 約30分
🎯 難易度: 中級
💻 検証環境: Windows 11 + WSL2 (Ubuntu)
⚠️ macOS: 未検証(動作する可能性はありますが、確認していません)

AI for Science とは

AI for Science とは、科学研究のあらゆるフェーズ—仮説の立案、実験計画、データ解析、論文執筆—に AI を統合的に活用するパラダイムです。

従来の科学研究では、研究者が手作業でデータベースを検索し、解析スクリプトを書き、結果を解釈していました。AI for Science はこのプロセスを根本的に変えます。LLM(大規模言語モデル)がドメイン知識を持つエージェントとして振る舞い、1000 以上の科学ツール・データベースと連携しながら、研究者と対話的に実験を進めます。

なぜ AI for Science が注目されるのか

課題 従来のアプローチ AI for Science
ツールの分散 各データベース・ツールを個別に操作 エージェントが適切なツールを自動選択・実行
解析の属人化 解析パイプラインが研究者個人に依存 スキルとして体系化し再利用可能
再現性の確保 手順書の記述漏れ、環境差異 コンテナ環境で実行環境を完全に固定
学際的な壁 他分野のツール習得に時間がかかる 自然言語で指示するだけで専門ツールを活用

例えば、「タンパク質 X の変異が薬剤耐性に与える影響を調べたい」という問いに対して、AI for Science エージェントは以下を自動で実行できます。

  1. UniProt / PDB からタンパク質情報を取得
  2. AlphaMissense / CADD で変異の影響を予測
  3. ADMET モデル で薬物動態を評価
  4. PubMed / Semantic Scholar で関連文献を横断検索
  5. 結果を統合して レポートを生成

なぜ AI for Science Container OS が必要なのか

AI for Science を実践するには「AI エージェントを安全に、再現性をもって実行する基盤」が必要です。これが AI for Science Container OS の役割です。

既存環境の課題

ChatGPT や Claude のような汎用チャット AI をそのまま科学研究に使う場合、以下の問題があります。

課題 説明
🔒 セキュリティ 未公開の研究データや患者情報を外部 API に送信するリスク
🔧 ツール連携の限界 科学データベース(NCBI、UniProt、COSMIC 等)への直接アクセスが困難
📦 環境の再現性 ローカル環境の差異で同じ解析が再現できない
📝 実験管理 会話履歴が散逸し、どの実験でどの解析を行ったか追跡困難
カスタマイズ性 研究室固有のパイプラインやスキルを組み込めない

AI for Science Container OS が解決すること

AI for Science Container OS は、科学研究に必要な 実行環境・ツール連携・実験管理 をひとつのプラットフォームに統合します。

これは、Linux が「ハードウェアの上でアプリケーションを安全に実行する OS」であるのと同じように、AI for Science OS は 「LLM の上で科学実験を安全に実行する OS」 と位置づけられます。

OpenClaw — オープンソース AI エージェントの登場

2025 年後半、Peter Steinberger が OpenClaw をオープンソースで公開し、自律型 AI コーディングエージェントの分野に大きな波を起こしました。

OpenClaw は Claude、GPT、DeepSeek など 75 以上の LLM プロバイダ に対応し、Telegram、Discord、WhatsApp といったメッセージングアプリからエージェントを操作できる柔軟なフレームワークです。Docker コンテナやKubernetesでのデプロイに対応し、数百のスキルと多数のサードパーティ拡張を持つ巨大なエコシステムを形成しています。

しかし、OpenClaw には課題もありました。

課題 説明
コードベースの巨大さ 40 万行以上のコードにより、監査・カスタマイズが困難
セキュリティモデル アプリケーションレベルの権限管理で、OS レベルの分離がない
依存関係の多さ 70 以上の依存パッケージがサプライチェーンリスクに
セットアップの複雑さ 初期設定に 1〜2 時間以上を要する

NanoClaw — コンテナ分離で安全性を確保

2026 年初頭、Qwibit.ai チームが NanoClaw を公開しました。OpenClaw の巨大さとセキュリティ上の懸念に対するアンチテーゼとして設計された、軽量な AI エージェントです。

NanoClaw の設計思想は「少ないコードで最大の安全性」です。

特徴 NanoClaw OpenClaw
コードベース 約 4,000 行(30 分で全コード監査可能) 約 400,000 行以上
セキュリティ OS レベル(Docker / Apple Containers) アプリケーションレベル
依存パッケージ 10 未満 70 以上
セットアップ 数分 1〜2 時間以上
対応 LLM Claude のみ 75 以上のプロバイダ

NanoClaw の最大の革新は コンテナ分離 です。各エージェントが専用の Linux コンテナ(Docker または Apple Containers)で実行されるため、エージェントが侵害されてもダメージはそのコンテナ内に限定されます。さらに、エージェントスワーム(複数の専門エージェントの並列実行)やスケジュール実行などの機能も備えています。

SciClaw — AI for Science へ特化

SciClaw は、NanoClaw のコンテナ分離アーキテクチャにインスパイアされ、そのコンセプトを 科学研究に特化 させた AI for Science OS です。

NanoClaw から GitHub Copilot CLI への転換

SciClaw の開発は、当初 NanoClaw 上でスタートしました。しかし、NanoClaw は Claude Agent SDK を使って開発されているため、利用できる LLM は Anthropic が提供するモデルに限定 されます。

AI for Science の現場では、作業が多岐にわたります。

作業 求められる能力
文献調査 大量の論文を横断検索・要約する長文処理能力
実験計画の策定 ドメイン知識に基づく推論・仮説生成能力
データ解析 コード生成・統計処理・可視化能力
レポート作成 構造化された文書を正確に生成する能力
プログラム開発 デバッグ・リファクタリング・テスト生成能力

これらの作業にはそれぞれ得意なモデルが異なるため、単一モデルに縛られる環境では最適な結果が得られません。

そこで SciClaw は GitHub Copilot CLI をエージェントエンジンとして採用しました。GitHub Copilot CLI は 複数の LLM プロバイダのモデルを選択して使用 でき、Claude、GPT、Gemini ファミリーなどを切り替えられます。さらに Auto モード を使用すれば、タスクの性質に応じて適切なモデルを自動的に選択・実行してくれるため、研究者はモデル選定を意識することなく、最適な結果を得ることができます。

NanoClaw との比較

NanoClaw がコーディングやメッセージング向けの汎用エージェントであるのに対し、SciClaw は以下の点で科学研究に最適化されています。

観点 NanoClaw SciClaw
用途 コーディング・メッセージング 科学実験の計画・実行・管理
エージェントエンジン Claude Agent SDK GitHub Copilot CLI
科学ツール連携 なし SATORI 195 スキル + ToolUniverse 1000+ ツール
実験管理 なし 実験ごとのディレクトリ・成果物・ログ自動管理
UI メッセージングアプリ Web ブラウザ(ChatGPT スタイル)
日本語対応 なし CJK フォント内蔵(グラフ・図表で日本語表示)
科学データベース なし PubMed, UniProt, COSMIC 等と MCP 連携

SciClaw は GitHub Copilot CLI 上で動作しており、作業はすべて Web ブラウザ から実施できます。ゲノミクス、プロテオミクス、創薬、臨床データ解析など幅広い科学分野の実験を、セキュアなコンテナ環境内で計画・実行できます。

SciClaw の特徴

特徴 説明
🐳 Docker サンドボックス 各エージェントが専用コンテナで実行され、ホスト環境から隔離
🧬 190+ 科学 Agent Skills SATORI によるゲノミクス、プロテオミクス、創薬スキル
🔬 1000+ 科学ツール ToolUniverse MCP サーバーによるライフサイエンスツール連携
💬 Web チャット UI ChatGPT スタイルの 2 ペイン構成で Webブラウザから操作
📁 実験管理 実験ごとにディレクトリ・成果物・会話ログを自動生成
🔄 GitHub 同期 実験結果をプライベートリポジトリにプッシュし、共同研究者とシームレスに共有
🎤 音声入力 OpenAI Whisper / Azure Whisper / Web Speech API
📝 自動ログ JSONL + Markdown で全会話を自動保存

アーキテクチャ

SciClaw は GitHub Copilot CLI 上で動作しており、作業はすべて Web ブラウザ から実施できます。

⚠️ セキュリティ: エージェントは Docker コンテナ内で実行され、認証情報はコンテナに入りません。認証プロキシ経由で GitHub トークンが注入されるため、.env ファイルはコンテナ内で /dev/null にシャドウマウントされます。

実験結果の保存と共有

SciClaw では、実験結果(会話ログ、解析成果物、生成された図表等)はコンテナ内の実験ディレクトリに自動保存されます。さらに GitHub 同期機能 により、実験結果をプライベートリポジトリにプッシュできるため、共同研究者ともシームレスに情報共有が可能です。

実験ごとに会話ログ(JSONL + Markdown)と成果物が構造化されて保存されるため、「いつ・どのような指示で・何が生成されたか」を完全に追跡でき、研究の再現性を担保します。

SATORI(悟り)— 190+ 科学 Agent Skills

SATORI は、科学データ解析のための GitHub Copilot Agent Skills コレクションです(筆者が開発)。

13 回の実験で蓄積した科学データ解析技法を 195 個の Agent Skills として体系化しています。Copilot がプロンプトの文脈に応じて適切なスキルを自動ロードし、各実験で確立した解析パターンを再利用します。

SATORI のパイプラインフロー

hypothesis-pipeline → pipeline-scaffold → academic-writing → critical-review
  (仮説定義)         (解析実行)         (草稿作成)         (レビュー・修正)

主要な科学ドメイン

ドメイン スキル例
創薬 drug-target-profiling, admet-pharmacokinetics, drug-repurposing, molecular-docking
タンパク質科学 protein-structure-analysis, protein-design, protein-interaction-network
ゲノミクス variant-interpretation, cancer-genomics, pharmacogenomics
オミクス統合 single-cell-genomics, spatial-transcriptomics, proteomics-mass-spectrometry, multi-omics
臨床 clinical-decision-support, precision-oncology, clinical-trials-analytics
先端計算 quantum-computing, graph-neural-networks, deep-learning, reinforcement-learning
疫学・公衆衛生 epidemiology-public-health, population-genetics, microbiome-metagenomics
研究ワークフロー literature-search, systematic-review, grant-writing, academic-writing

すべてのスキルが ToolUniverse MCP 経由で 1,200 以上の外部科学データベースツール と連携可能です。

ToolUniverse — 1000+ 科学ツール

ToolUniverse は、ハーバード大学医学部 Zitnik Lab が開発した AI サイエンティスト・エコシステム です。

AI-Tool Interaction Protocol により、LLM がツールを識別・呼び出す方法を標準化し、1000 以上の機械学習モデル、データセット、API、科学パッケージ を統合しています。

ToolUniverse の主要機能

機能 説明
AI-Tool Interaction Protocol LLM とツール間のリクエスト・レスポンスを標準化
MCP Integration Model Context Protocol サーバーとしてネイティブ動作
1000+ ツール データ解析、知識検索、実験計画のためのツール群
非同期オペレーション タンパク質ドッキング、分子シミュレーション等の長時間タスク対応
Compact Mode 1000+ ツールを 4–5 のコアディスカバリーツールに集約(コンテキスト 99% 節約)
68 Agent Skills 創薬、精密腫瘍学、希少疾患診断等の事前構築済みワークフロー
文献検索 15 の学術データベース・プレプリントアーカイブを横断検索(下表参照)

SciClaw では、ToolUniverse を Docker コンテナ内の Streamable HTTP MCP サーバー として起動し、エージェントコンテナから直接アクセスできます。

文献検索対応データベース(全 15 種)

ToolUniverse は 15 の文献検索ツール を内蔵しており、学術論文・プレプリントを横断的に検索できます。

プレプリントアーカイブ

データベース 分野 ツール名
ArXiv 物理学、数学、計算機科学、量子生物学 等 ArXiv_search_papers
BioRxiv 生物学プレプリント BioRxiv_search_preprints
MedRxiv 臨床医学・医療プレプリント MedRxiv_search_preprints
HAL フランスの学術オープンアクセスアーカイブ HAL_search_archive

学術データベース

データベース 分野 ツール名
PubMed 医学・生命科学文献 PubMed_search_articles
PubMed Central (PMC) 生物医学フルテキスト文献 PMC_search_papers
Europe PMC 欧州生物医学文献 EuropePMC_search_articles
Semantic Scholar AI 駆動の学際的学術検索 SemanticScholar_search_papers
OpenAlex オープンな学術ナレッジグラフ openalex_literature_search
Crossref DOI メタデータ付き学術論文 Crossref_search_works
DBLP 計算機科学文献データベース DBLP_search_publications

オープンアクセスツール

データベース 分野 ツール名
DOAJ オープンアクセスジャーナルディレクトリ DOAJ_search_articles
Unpaywall オープンアクセス状態チェッカー Unpaywall_check_oa_status
CORE 世界最大のオープンアクセス論文コーパス CORE_search_papers
Zenodo オープン研究データ・出版物リポジトリ Zenodo_search_records

前提条件

以下のツールがインストールされていることを確認してください。

ツール バージョン 確認コマンド
Node.js 24+ node -v
Docker 最新版 docker --version
GitHub CLI 最新版 gh --version
GitHub Copilot CLI 最新版 copilot --version
バージョン確認
node -v          # v22.22.1
docker --version # Docker version 29.3.0
gh --version     # gh version 2.87.3

💡 GitHub Copilot CLInpm i -g @github/copilot でインストールできます。GitHub Copilot のサブスクリプションが必要です。

環境構築手順

Step 1: リポジトリのクローン

git clone https://github.com/nahisaho/sciclaw.git
cd sciclaw

Step 2: npm パッケージのインストール

npm install

主要な依存パッケージ:

パッケージ 用途
@nahisaho/satori 190+ 科学 Agent Skills
better-sqlite3 実験データ・メッセージの永続化
ws WebSocket によるリアルタイム通信
zod スキーマバリデーション
pino 構造化ログ

Step 3: 環境変数の設定

cp .env.example .env

.env ファイルを編集して GITHUB_TOKEN を設定します。

.env
# --- Required ---
GITHUB_TOKEN=<gh auth token の出力>

# --- Assistant ---
ASSISTANT_NAME=Andy

# --- Optional ---
# CONTAINER_IMAGE=sciclaw-agent:latest
# CONTAINER_TIMEOUT=1800000
# MAX_CONCURRENT_CONTAINERS=5
# LOG_LEVEL=info

⚠️ GitHub Token の取得: gh auth token コマンドで取得できます。Classic PAT は拒否されるため、gh auth login で認証済みの状態が必要です。

Step 4: TypeScript ビルド

npm run build

Step 5: エージェントコンテナのビルド

SciClaw のエージェントは Docker コンテナ内で動作します。build.sh を実行すると、最新の SATORI、Copilot CLI、ToolUniverse を自動取得してイメージをビルドします。

cd container && ./build.sh && cd ..
📝 ビルド出力例(クリックで展開)
============================================
  SciClaw Agent Container Build
============================================

📦 Updating @nahisaho/satori to latest...
   SATORI: v0.29.0
   Copilot CLI: v1.0.10
   ToolUniverse: v1.1.4

🐳 Building Docker image: sciclaw-agent:latest

============================================
  ✅ Build complete!
============================================
  Image:         sciclaw-agent:latest
  SATORI:        v0.29.0 (190 skills)
  Copilot CLI:   v1.0.10
  ToolUniverse:  v1.1.4

エージェントコンテナには以下が含まれます:

コンポーネント 説明
Node.js 22 ランタイム
Chromium Web 自動化
GitHub CLI + Copilot CLI エージェントエンジン
Python 3 + matplotlib データサイエンス・グラフ作成
日本語フォント Noto Sans CJK JP, IPA Gothic/Mincho

Step 6: ToolUniverse MCP サーバーのビルド(任意)

ToolUniverse の 1000+ 科学ツールを利用する場合は、MCP サーバーコンテナもビルドします。

cd container/tooluniverse && ./run.sh latest build && cd ../..

ToolUniverse MCP サーバーを起動する場合:

cd container/tooluniverse && ./run.sh latest run && cd ../..

起動後、SSE エンドポイント http://localhost:8010/sse でアクセスできます。

💡 API キー: ToolUniverse の一部ツールは外部 API キー(NCBI、Semantic Scholar 等)が必要です。run.sh は環境変数から自動的に読み取ります。

Step 7: SciClaw の起動

# 開発モード
npm run dev

# 本番モード
SCICLAW_WEB_PORT=3000 npm run build && npm start

ブラウザで http://localhost:3000 を開きます。

image.png

起動後の初期設定

Web UI の ⚙️ Settings から以下を設定します。

image.png

設定項目 説明
GitHub Token gh auth token の出力
Copilot Model claude-sonnet-4.6, gpt-5.2 など
STT Provider 音声入力を使う場合(OpenAI / Azure / Ollama)
MCP Servers ToolUniverse プリセットを有効化(ワンクリック)
GitHub Sync 実験結果の同期先リポジトリ

基本操作

操作 方法
新規実験 + New または Ctrl+N
メッセージ送信 Ctrl+Enter
改行 Enter
ファイルアップロード 📎 ボタン
音声入力 🎤 ボタン
成果物確認 📁 Artifacts
GitHub 同期 🔄 Sync
タスク停止 ⏹ ボタン
サイドバー切替 Ctrl+B

使い方の例:次世代パワー半導体の新物質開発

SciClaw の実際の使い方を、次世代パワー半導体材料の研究を例に紹介します。

Step 1: 新規実験の作成

Web UI で + New をクリックし、実験名を入力します(例:「次世代パワー半導体材料の調査」)。

image.png

Step 2: プロンプトの送信

チャット欄に以下のようなプロンプトを入力し、Ctrl+Enter で送信します。

次世代パワー半導体の新物質開発について、以下を実施してください。

## 調査
SiC (炭化ケイ素) と GaN (窒化ガリウム) を超える次世代パワー半導体材料の候補を調査。

- Ga2O3 (酸化ガリウム)、ダイヤモンド、AlN (窒化アルミニウム)、BN (窒化ホウ素) 等の物性比較
- バンドギャップ、絶縁破壊電界、熱伝導率、電子移動度の比較表を作成
- 各材料の研究動向・課題・実用化見通し

## 実験計画
Ga2O3薄膜のエピタキシャル成長条件の最適化実験テンプレートを作成。

- MBE法 (分子線エピタキシー) を想定
- 基板温度、成長速度、酸素分圧をパラメータとする実験計画法 (DOE) を設計

成果物はすべてファイルとして保存してください。

image.png

Step 3: SciClaw が自動実行する処理

SciClaw はプロンプトの内容を解析し、SATORI のスキルと ToolUniverse のツールを自動的に組み合わせて処理を進めます。

活用されるスキル 役割
literature-search PubMed, ArXiv, Semantic Scholar 等から関連論文を検索
computational-materials pymatgen 等を用いた物性データの取得・比較
doe 実験計画法(DOE)の設計(応答曲面法、ボックス・ベーンケン等)
academic-writing 調査結果のレポート作成
scientific-schematics 比較図表の生成

Step 4: 成果物の確認

処理が完了すると、📁 Artifacts ボタンから生成されたファイルを確認できます。

生成ファイル例 内容
results/material_comparison.md 物性比較表(バンドギャップ、絶縁破壊電界等)
results/research_trends.md 各材料の研究動向・課題・実用化見通し
results/doe_design.json DOE 実験計画(因子・水準・実験マトリクス)
figures/bandgap_comparison.png バンドギャップ比較チャート
results/literature_search.csv 検索した論文リスト

image.png

image.png

Step 5: GitHub 同期

🔄 Sync ボタンを押すと、すべての成果物が GitHub プライベートリポジトリにプッシュされ、共同研究者と共有できます。

💡 ポイント: 自然言語で指示するだけで、文献調査から実験計画の設計まで一貫して実行されます。研究者は個別のツールの使い方を覚える必要がなく、研究の本質的な思考に集中できます。

セキュリティモデル

SciClaw のセキュリティは多層防御で構成されています。

対策
コンテナ分離 各エージェントが専用 Docker コンテナで実行
認証プロキシ GitHub トークンはプロキシ経由で注入(コンテナに直接渡さない)
環境変数保護 .env はコンテナ内で /dev/null にマウント
マウント制御 プロジェクト外のマウント許可リスト(改ざん防止)
ファイル権限 設定ファイルは chmod 600

今後の開発計画

SciClaw は現在も活発に開発を進めています。今後、以下の MCP サーバーとの連携を計画しています。

🇯🇵 日本の学術論文検索 MCP

ToolUniverse の文献検索は英語圏のデータベースが中心です。日本の研究者が日本語の学術論文にもシームレスにアクセスできるよう、国内の主要学術データベースと連携する MCP サーバーの開発を計画しています。

データベース 運営 対象
CiNii Research 国立情報学研究所(NII) 論文・図書・博士論文・研究データの横断検索
J-STAGE 科学技術振興機構(JST) 学協会誌の電子ジャーナル(全文 PDF 取得可能)
IRDB 国立情報学研究所(NII) 国内学術機関リポジトリのメタデータ
NDL サーチ 国立国会図書館 論文・図書・デジタル資料の一括横断検索
JaLC ジャパンリンクセンター 国内 DOI 登録・メタデータ連携

これらは CiNii API、J-STAGE API(OAI-PMH)、JaLC REST API など公開 API を備えており、MCP サーバーとしての実装が技術的には可能です。

⚠️ 著作権上の課題: 日本の学術論文は、海外のオープンアクセス論文とは著作権の扱いが異なります。J-STAGE 掲載論文の多くは学協会が著作権を保持しており、全文の機械的な取得・加工には個別の許諾が必要な場合があります。CiNii Research や NDL サーチはメタデータ(タイトル・著者・抄録等)の API 提供にとどまり、本文へのアクセスは各出版元のライセンスに依存します。MCP サーバーの実装にあたっては、各データベースの利用規約・API 利用条件を遵守し、メタデータ検索を中心とした設計とする予定です。

🧠 Deep GraphRAG MCP

Deep GraphRAG は、筆者が開発している知識データシステムです。従来の RAG(Retrieval-Augmented Generation)が単純なベクトル検索に基づくのに対し、Deep GraphRAG は ナレッジグラフ を活用して情報間の関係性を構造的に捉えます。

SciClaw と連携することで、以下が可能になります。

  • 実験結果・論文・データベースの情報をナレッジグラフとして蓄積
  • 過去の実験から関連する知見を関係性ベースで検索
  • 仮説生成時に、既知の知識ネットワークから新たな関連性を発見
  • 研究室・チーム全体の知識を構造化し、共有・再利用

🖥️ スパコン連携 MCP

大規模な科学計算(分子動力学シミュレーション、ゲノムワイド解析、気候モデリング等)には、ローカル環境やクラウドでは計算資源が不足する場合があります。スパコン連携 MCP により、SciClaw からジョブの投入・監視・結果取得を MCP プロトコル経由で実行できるようにします。

MCP(Model Context Protocol)の標準化されたインターフェースにより、これらの連携はすべて プラグイン形式 で追加でき、SciClaw 本体のコードを変更する必要がありません。

まとめ

ポイント 内容
SciClaw Docker コンテナ内で AI エージェントを安全に実行する AI for Science OS
SATORI 190+ の科学 Agent Skills(ゲノミクスから創薬まで)
ToolUniverse ハーバード大学医学部が開発した 1000+ 科学ツールエコシステム
構築手順 clone → npm install → .env 設定 → コンテナビルド → 起動の 7 ステップ

SciClaw は Web ブラウザからアクセスでき、セキュアなコンテナ環境内で実験計画の策定や実験を行えます。SATORI の 190+ スキルと ToolUniverse の 1000+ ツールにより、ゲノミクス、プロテオミクス、創薬、臨床データ解析など、幅広い科学分野をカバーしています。

次のステップ: 新規実験を作成し、「SiC と GaN を超える次世代パワー半導体材料の候補を調査してください」のようなプロンプトを送信してみましょう。SATORI が適切なスキルを自動選択し、ToolUniverse のツールと連携して文献調査・データ比較・レポート生成を進めます。

参考資料

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