はじめに
この記事で分かること:
- SciClaw の概念と AI for Science における位置づけ
- SATORI(190+ 科学 Agent Skills)と ToolUniverse(1000+ 科学ツール)の役割
- SciClaw 環境の構築手順(clone → build → 起動まで)
想定読者: AI を活用した科学研究に興味がある研究者・エンジニア
📖 所要時間: 約30分
🎯 難易度: 中級
💻 検証環境: Windows 11 + WSL2 (Ubuntu)
⚠️ macOS: 未検証(動作する可能性はありますが、確認していません)
AI for Science とは
AI for Science とは、科学研究のあらゆるフェーズ—仮説の立案、実験計画、データ解析、論文執筆—に AI を統合的に活用するパラダイムです。
従来の科学研究では、研究者が手作業でデータベースを検索し、解析スクリプトを書き、結果を解釈していました。AI for Science はこのプロセスを根本的に変えます。LLM(大規模言語モデル)がドメイン知識を持つエージェントとして振る舞い、1000 以上の科学ツール・データベースと連携しながら、研究者と対話的に実験を進めます。
なぜ AI for Science が注目されるのか
| 課題 | 従来のアプローチ | AI for Science |
|---|---|---|
| ツールの分散 | 各データベース・ツールを個別に操作 | エージェントが適切なツールを自動選択・実行 |
| 解析の属人化 | 解析パイプラインが研究者個人に依存 | スキルとして体系化し再利用可能 |
| 再現性の確保 | 手順書の記述漏れ、環境差異 | コンテナ環境で実行環境を完全に固定 |
| 学際的な壁 | 他分野のツール習得に時間がかかる | 自然言語で指示するだけで専門ツールを活用 |
例えば、「タンパク質 X の変異が薬剤耐性に与える影響を調べたい」という問いに対して、AI for Science エージェントは以下を自動で実行できます。
- UniProt / PDB からタンパク質情報を取得
- AlphaMissense / CADD で変異の影響を予測
- ADMET モデル で薬物動態を評価
- PubMed / Semantic Scholar で関連文献を横断検索
- 結果を統合して レポートを生成
なぜ AI for Science Container OS が必要なのか
AI for Science を実践するには「AI エージェントを安全に、再現性をもって実行する基盤」が必要です。これが AI for Science Container OS の役割です。
既存環境の課題
ChatGPT や Claude のような汎用チャット AI をそのまま科学研究に使う場合、以下の問題があります。
| 課題 | 説明 |
|---|---|
| 🔒 セキュリティ | 未公開の研究データや患者情報を外部 API に送信するリスク |
| 🔧 ツール連携の限界 | 科学データベース(NCBI、UniProt、COSMIC 等)への直接アクセスが困難 |
| 📦 環境の再現性 | ローカル環境の差異で同じ解析が再現できない |
| 📝 実験管理 | 会話履歴が散逸し、どの実験でどの解析を行ったか追跡困難 |
| ⚡ カスタマイズ性 | 研究室固有のパイプラインやスキルを組み込めない |
AI for Science Container OS が解決すること
AI for Science Container OS は、科学研究に必要な 実行環境・ツール連携・実験管理 をひとつのプラットフォームに統合します。
これは、Linux が「ハードウェアの上でアプリケーションを安全に実行する OS」であるのと同じように、AI for Science OS は 「LLM の上で科学実験を安全に実行する OS」 と位置づけられます。
OpenClaw — オープンソース AI エージェントの登場
2025 年後半、Peter Steinberger が OpenClaw をオープンソースで公開し、自律型 AI コーディングエージェントの分野に大きな波を起こしました。
OpenClaw は Claude、GPT、DeepSeek など 75 以上の LLM プロバイダ に対応し、Telegram、Discord、WhatsApp といったメッセージングアプリからエージェントを操作できる柔軟なフレームワークです。Docker コンテナやKubernetesでのデプロイに対応し、数百のスキルと多数のサードパーティ拡張を持つ巨大なエコシステムを形成しています。
しかし、OpenClaw には課題もありました。
| 課題 | 説明 |
|---|---|
| コードベースの巨大さ | 40 万行以上のコードにより、監査・カスタマイズが困難 |
| セキュリティモデル | アプリケーションレベルの権限管理で、OS レベルの分離がない |
| 依存関係の多さ | 70 以上の依存パッケージがサプライチェーンリスクに |
| セットアップの複雑さ | 初期設定に 1〜2 時間以上を要する |
NanoClaw — コンテナ分離で安全性を確保
2026 年初頭、Qwibit.ai チームが NanoClaw を公開しました。OpenClaw の巨大さとセキュリティ上の懸念に対するアンチテーゼとして設計された、軽量な AI エージェントです。
NanoClaw の設計思想は「少ないコードで最大の安全性」です。
| 特徴 | NanoClaw | OpenClaw |
|---|---|---|
| コードベース | 約 4,000 行(30 分で全コード監査可能) | 約 400,000 行以上 |
| セキュリティ | OS レベル(Docker / Apple Containers) | アプリケーションレベル |
| 依存パッケージ | 10 未満 | 70 以上 |
| セットアップ | 数分 | 1〜2 時間以上 |
| 対応 LLM | Claude のみ | 75 以上のプロバイダ |
NanoClaw の最大の革新は コンテナ分離 です。各エージェントが専用の Linux コンテナ(Docker または Apple Containers)で実行されるため、エージェントが侵害されてもダメージはそのコンテナ内に限定されます。さらに、エージェントスワーム(複数の専門エージェントの並列実行)やスケジュール実行などの機能も備えています。
SciClaw — AI for Science へ特化
SciClaw は、NanoClaw のコンテナ分離アーキテクチャにインスパイアされ、そのコンセプトを 科学研究に特化 させた AI for Science OS です。
NanoClaw から GitHub Copilot CLI への転換
SciClaw の開発は、当初 NanoClaw 上でスタートしました。しかし、NanoClaw は Claude Agent SDK を使って開発されているため、利用できる LLM は Anthropic が提供するモデルに限定 されます。
AI for Science の現場では、作業が多岐にわたります。
| 作業 | 求められる能力 |
|---|---|
| 文献調査 | 大量の論文を横断検索・要約する長文処理能力 |
| 実験計画の策定 | ドメイン知識に基づく推論・仮説生成能力 |
| データ解析 | コード生成・統計処理・可視化能力 |
| レポート作成 | 構造化された文書を正確に生成する能力 |
| プログラム開発 | デバッグ・リファクタリング・テスト生成能力 |
これらの作業にはそれぞれ得意なモデルが異なるため、単一モデルに縛られる環境では最適な結果が得られません。
そこで SciClaw は GitHub Copilot CLI をエージェントエンジンとして採用しました。GitHub Copilot CLI は 複数の LLM プロバイダのモデルを選択して使用 でき、Claude、GPT、Gemini ファミリーなどを切り替えられます。さらに Auto モード を使用すれば、タスクの性質に応じて適切なモデルを自動的に選択・実行してくれるため、研究者はモデル選定を意識することなく、最適な結果を得ることができます。
NanoClaw との比較
NanoClaw がコーディングやメッセージング向けの汎用エージェントであるのに対し、SciClaw は以下の点で科学研究に最適化されています。
| 観点 | NanoClaw | SciClaw |
|---|---|---|
| 用途 | コーディング・メッセージング | 科学実験の計画・実行・管理 |
| エージェントエンジン | Claude Agent SDK | GitHub Copilot CLI |
| 科学ツール連携 | なし | SATORI 195 スキル + ToolUniverse 1000+ ツール |
| 実験管理 | なし | 実験ごとのディレクトリ・成果物・ログ自動管理 |
| UI | メッセージングアプリ | Web ブラウザ(ChatGPT スタイル) |
| 日本語対応 | なし | CJK フォント内蔵(グラフ・図表で日本語表示) |
| 科学データベース | なし | PubMed, UniProt, COSMIC 等と MCP 連携 |
SciClaw は GitHub Copilot CLI 上で動作しており、作業はすべて Web ブラウザ から実施できます。ゲノミクス、プロテオミクス、創薬、臨床データ解析など幅広い科学分野の実験を、セキュアなコンテナ環境内で計画・実行できます。
SciClaw の特徴
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 🐳 Docker サンドボックス | 各エージェントが専用コンテナで実行され、ホスト環境から隔離 |
| 🧬 190+ 科学 Agent Skills | SATORI によるゲノミクス、プロテオミクス、創薬スキル |
| 🔬 1000+ 科学ツール | ToolUniverse MCP サーバーによるライフサイエンスツール連携 |
| 💬 Web チャット UI | ChatGPT スタイルの 2 ペイン構成で Webブラウザから操作 |
| 📁 実験管理 | 実験ごとにディレクトリ・成果物・会話ログを自動生成 |
| 🔄 GitHub 同期 | 実験結果をプライベートリポジトリにプッシュし、共同研究者とシームレスに共有 |
| 🎤 音声入力 | OpenAI Whisper / Azure Whisper / Web Speech API |
| 📝 自動ログ | JSONL + Markdown で全会話を自動保存 |
アーキテクチャ
SciClaw は GitHub Copilot CLI 上で動作しており、作業はすべて Web ブラウザ から実施できます。
⚠️ セキュリティ: エージェントは Docker コンテナ内で実行され、認証情報はコンテナに入りません。認証プロキシ経由で GitHub トークンが注入されるため、.env ファイルはコンテナ内で /dev/null にシャドウマウントされます。
実験結果の保存と共有
SciClaw では、実験結果(会話ログ、解析成果物、生成された図表等)はコンテナ内の実験ディレクトリに自動保存されます。さらに GitHub 同期機能 により、実験結果をプライベートリポジトリにプッシュできるため、共同研究者ともシームレスに情報共有が可能です。
実験ごとに会話ログ(JSONL + Markdown)と成果物が構造化されて保存されるため、「いつ・どのような指示で・何が生成されたか」を完全に追跡でき、研究の再現性を担保します。
SATORI(悟り)— 190+ 科学 Agent Skills
SATORI は、科学データ解析のための GitHub Copilot Agent Skills コレクションです(筆者が開発)。
13 回の実験で蓄積した科学データ解析技法を 195 個の Agent Skills として体系化しています。Copilot がプロンプトの文脈に応じて適切なスキルを自動ロードし、各実験で確立した解析パターンを再利用します。
SATORI のパイプラインフロー
hypothesis-pipeline → pipeline-scaffold → academic-writing → critical-review
(仮説定義) (解析実行) (草稿作成) (レビュー・修正)
主要な科学ドメイン
| ドメイン | スキル例 |
|---|---|
| 創薬 | drug-target-profiling, admet-pharmacokinetics, drug-repurposing, molecular-docking |
| タンパク質科学 | protein-structure-analysis, protein-design, protein-interaction-network |
| ゲノミクス | variant-interpretation, cancer-genomics, pharmacogenomics |
| オミクス統合 | single-cell-genomics, spatial-transcriptomics, proteomics-mass-spectrometry, multi-omics |
| 臨床 | clinical-decision-support, precision-oncology, clinical-trials-analytics |
| 先端計算 | quantum-computing, graph-neural-networks, deep-learning, reinforcement-learning |
| 疫学・公衆衛生 | epidemiology-public-health, population-genetics, microbiome-metagenomics |
| 研究ワークフロー | literature-search, systematic-review, grant-writing, academic-writing |
すべてのスキルが ToolUniverse MCP 経由で 1,200 以上の外部科学データベースツール と連携可能です。
ToolUniverse — 1000+ 科学ツール
ToolUniverse は、ハーバード大学医学部 Zitnik Lab が開発した AI サイエンティスト・エコシステム です。
AI-Tool Interaction Protocol により、LLM がツールを識別・呼び出す方法を標準化し、1000 以上の機械学習モデル、データセット、API、科学パッケージ を統合しています。
ToolUniverse の主要機能
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| AI-Tool Interaction Protocol | LLM とツール間のリクエスト・レスポンスを標準化 |
| MCP Integration | Model Context Protocol サーバーとしてネイティブ動作 |
| 1000+ ツール | データ解析、知識検索、実験計画のためのツール群 |
| 非同期オペレーション | タンパク質ドッキング、分子シミュレーション等の長時間タスク対応 |
| Compact Mode | 1000+ ツールを 4–5 のコアディスカバリーツールに集約(コンテキスト 99% 節約) |
| 68 Agent Skills | 創薬、精密腫瘍学、希少疾患診断等の事前構築済みワークフロー |
| 文献検索 | 15 の学術データベース・プレプリントアーカイブを横断検索(下表参照) |
SciClaw では、ToolUniverse を Docker コンテナ内の Streamable HTTP MCP サーバー として起動し、エージェントコンテナから直接アクセスできます。
文献検索対応データベース(全 15 種)
ToolUniverse は 15 の文献検索ツール を内蔵しており、学術論文・プレプリントを横断的に検索できます。
プレプリントアーカイブ
| データベース | 分野 | ツール名 |
|---|---|---|
| ArXiv | 物理学、数学、計算機科学、量子生物学 等 | ArXiv_search_papers |
| BioRxiv | 生物学プレプリント | BioRxiv_search_preprints |
| MedRxiv | 臨床医学・医療プレプリント | MedRxiv_search_preprints |
| HAL | フランスの学術オープンアクセスアーカイブ | HAL_search_archive |
学術データベース
| データベース | 分野 | ツール名 |
|---|---|---|
| PubMed | 医学・生命科学文献 | PubMed_search_articles |
| PubMed Central (PMC) | 生物医学フルテキスト文献 | PMC_search_papers |
| Europe PMC | 欧州生物医学文献 | EuropePMC_search_articles |
| Semantic Scholar | AI 駆動の学際的学術検索 | SemanticScholar_search_papers |
| OpenAlex | オープンな学術ナレッジグラフ | openalex_literature_search |
| Crossref | DOI メタデータ付き学術論文 | Crossref_search_works |
| DBLP | 計算機科学文献データベース | DBLP_search_publications |
オープンアクセスツール
| データベース | 分野 | ツール名 |
|---|---|---|
| DOAJ | オープンアクセスジャーナルディレクトリ | DOAJ_search_articles |
| Unpaywall | オープンアクセス状態チェッカー | Unpaywall_check_oa_status |
| CORE | 世界最大のオープンアクセス論文コーパス | CORE_search_papers |
| Zenodo | オープン研究データ・出版物リポジトリ | Zenodo_search_records |
前提条件
以下のツールがインストールされていることを確認してください。
| ツール | バージョン | 確認コマンド |
|---|---|---|
| Node.js | 24+ | node -v |
| Docker | 最新版 | docker --version |
| GitHub CLI | 最新版 | gh --version |
| GitHub Copilot CLI | 最新版 | copilot --version |
node -v # v22.22.1
docker --version # Docker version 29.3.0
gh --version # gh version 2.87.3
💡 GitHub Copilot CLI は npm i -g @github/copilot でインストールできます。GitHub Copilot のサブスクリプションが必要です。
環境構築手順
Step 1: リポジトリのクローン
git clone https://github.com/nahisaho/sciclaw.git
cd sciclaw
Step 2: npm パッケージのインストール
npm install
主要な依存パッケージ:
| パッケージ | 用途 |
|---|---|
@nahisaho/satori |
190+ 科学 Agent Skills |
better-sqlite3 |
実験データ・メッセージの永続化 |
ws |
WebSocket によるリアルタイム通信 |
zod |
スキーマバリデーション |
pino |
構造化ログ |
Step 3: 環境変数の設定
cp .env.example .env
.env ファイルを編集して GITHUB_TOKEN を設定します。
# --- Required ---
GITHUB_TOKEN=<gh auth token の出力>
# --- Assistant ---
ASSISTANT_NAME=Andy
# --- Optional ---
# CONTAINER_IMAGE=sciclaw-agent:latest
# CONTAINER_TIMEOUT=1800000
# MAX_CONCURRENT_CONTAINERS=5
# LOG_LEVEL=info
⚠️ GitHub Token の取得: gh auth token コマンドで取得できます。Classic PAT は拒否されるため、gh auth login で認証済みの状態が必要です。
Step 4: TypeScript ビルド
npm run build
Step 5: エージェントコンテナのビルド
SciClaw のエージェントは Docker コンテナ内で動作します。build.sh を実行すると、最新の SATORI、Copilot CLI、ToolUniverse を自動取得してイメージをビルドします。
cd container && ./build.sh && cd ..
📝 ビルド出力例(クリックで展開)
============================================
SciClaw Agent Container Build
============================================
📦 Updating @nahisaho/satori to latest...
SATORI: v0.29.0
Copilot CLI: v1.0.10
ToolUniverse: v1.1.4
🐳 Building Docker image: sciclaw-agent:latest
============================================
✅ Build complete!
============================================
Image: sciclaw-agent:latest
SATORI: v0.29.0 (190 skills)
Copilot CLI: v1.0.10
ToolUniverse: v1.1.4
エージェントコンテナには以下が含まれます:
| コンポーネント | 説明 |
|---|---|
| Node.js 22 | ランタイム |
| Chromium | Web 自動化 |
| GitHub CLI + Copilot CLI | エージェントエンジン |
| Python 3 + matplotlib | データサイエンス・グラフ作成 |
| 日本語フォント | Noto Sans CJK JP, IPA Gothic/Mincho |
Step 6: ToolUniverse MCP サーバーのビルド(任意)
ToolUniverse の 1000+ 科学ツールを利用する場合は、MCP サーバーコンテナもビルドします。
cd container/tooluniverse && ./run.sh latest build && cd ../..
ToolUniverse MCP サーバーを起動する場合:
cd container/tooluniverse && ./run.sh latest run && cd ../..
起動後、SSE エンドポイント http://localhost:8010/sse でアクセスできます。
💡 API キー: ToolUniverse の一部ツールは外部 API キー(NCBI、Semantic Scholar 等)が必要です。run.sh は環境変数から自動的に読み取ります。
Step 7: SciClaw の起動
# 開発モード
npm run dev
# 本番モード
SCICLAW_WEB_PORT=3000 npm run build && npm start
ブラウザで http://localhost:3000 を開きます。
起動後の初期設定
Web UI の ⚙️ Settings から以下を設定します。
| 設定項目 | 説明 |
|---|---|
| GitHub Token |
gh auth token の出力 |
| Copilot Model | claude-sonnet-4.6, gpt-5.2 など |
| STT Provider | 音声入力を使う場合(OpenAI / Azure / Ollama) |
| MCP Servers | ToolUniverse プリセットを有効化(ワンクリック) |
| GitHub Sync | 実験結果の同期先リポジトリ |
基本操作
| 操作 | 方法 |
|---|---|
| 新規実験 |
+ New または Ctrl+N
|
| メッセージ送信 | Ctrl+Enter |
| 改行 | Enter |
| ファイルアップロード | 📎 ボタン |
| 音声入力 | 🎤 ボタン |
| 成果物確認 | 📁 Artifacts |
| GitHub 同期 | 🔄 Sync |
| タスク停止 | ⏹ ボタン |
| サイドバー切替 | Ctrl+B |
使い方の例:次世代パワー半導体の新物質開発
SciClaw の実際の使い方を、次世代パワー半導体材料の研究を例に紹介します。
Step 1: 新規実験の作成
Web UI で + New をクリックし、実験名を入力します(例:「次世代パワー半導体材料の調査」)。
Step 2: プロンプトの送信
チャット欄に以下のようなプロンプトを入力し、Ctrl+Enter で送信します。
次世代パワー半導体の新物質開発について、以下を実施してください。
## 調査
SiC (炭化ケイ素) と GaN (窒化ガリウム) を超える次世代パワー半導体材料の候補を調査。
- Ga2O3 (酸化ガリウム)、ダイヤモンド、AlN (窒化アルミニウム)、BN (窒化ホウ素) 等の物性比較
- バンドギャップ、絶縁破壊電界、熱伝導率、電子移動度の比較表を作成
- 各材料の研究動向・課題・実用化見通し
## 実験計画
Ga2O3薄膜のエピタキシャル成長条件の最適化実験テンプレートを作成。
- MBE法 (分子線エピタキシー) を想定
- 基板温度、成長速度、酸素分圧をパラメータとする実験計画法 (DOE) を設計
成果物はすべてファイルとして保存してください。
Step 3: SciClaw が自動実行する処理
SciClaw はプロンプトの内容を解析し、SATORI のスキルと ToolUniverse のツールを自動的に組み合わせて処理を進めます。
| 活用されるスキル | 役割 |
|---|---|
literature-search |
PubMed, ArXiv, Semantic Scholar 等から関連論文を検索 |
computational-materials |
pymatgen 等を用いた物性データの取得・比較 |
doe |
実験計画法(DOE)の設計(応答曲面法、ボックス・ベーンケン等) |
academic-writing |
調査結果のレポート作成 |
scientific-schematics |
比較図表の生成 |
Step 4: 成果物の確認
処理が完了すると、📁 Artifacts ボタンから生成されたファイルを確認できます。
| 生成ファイル例 | 内容 |
|---|---|
results/material_comparison.md |
物性比較表(バンドギャップ、絶縁破壊電界等) |
results/research_trends.md |
各材料の研究動向・課題・実用化見通し |
results/doe_design.json |
DOE 実験計画(因子・水準・実験マトリクス) |
figures/bandgap_comparison.png |
バンドギャップ比較チャート |
results/literature_search.csv |
検索した論文リスト |
Step 5: GitHub 同期
🔄 Sync ボタンを押すと、すべての成果物が GitHub プライベートリポジトリにプッシュされ、共同研究者と共有できます。
💡 ポイント: 自然言語で指示するだけで、文献調査から実験計画の設計まで一貫して実行されます。研究者は個別のツールの使い方を覚える必要がなく、研究の本質的な思考に集中できます。
セキュリティモデル
SciClaw のセキュリティは多層防御で構成されています。
| 層 | 対策 |
|---|---|
| コンテナ分離 | 各エージェントが専用 Docker コンテナで実行 |
| 認証プロキシ | GitHub トークンはプロキシ経由で注入(コンテナに直接渡さない) |
| 環境変数保護 |
.env はコンテナ内で /dev/null にマウント |
| マウント制御 | プロジェクト外のマウント許可リスト(改ざん防止) |
| ファイル権限 | 設定ファイルは chmod 600
|
今後の開発計画
SciClaw は現在も活発に開発を進めています。今後、以下の MCP サーバーとの連携を計画しています。
🇯🇵 日本の学術論文検索 MCP
ToolUniverse の文献検索は英語圏のデータベースが中心です。日本の研究者が日本語の学術論文にもシームレスにアクセスできるよう、国内の主要学術データベースと連携する MCP サーバーの開発を計画しています。
| データベース | 運営 | 対象 |
|---|---|---|
| CiNii Research | 国立情報学研究所(NII) | 論文・図書・博士論文・研究データの横断検索 |
| J-STAGE | 科学技術振興機構(JST) | 学協会誌の電子ジャーナル(全文 PDF 取得可能) |
| IRDB | 国立情報学研究所(NII) | 国内学術機関リポジトリのメタデータ |
| NDL サーチ | 国立国会図書館 | 論文・図書・デジタル資料の一括横断検索 |
| JaLC | ジャパンリンクセンター | 国内 DOI 登録・メタデータ連携 |
これらは CiNii API、J-STAGE API(OAI-PMH)、JaLC REST API など公開 API を備えており、MCP サーバーとしての実装が技術的には可能です。
⚠️ 著作権上の課題: 日本の学術論文は、海外のオープンアクセス論文とは著作権の扱いが異なります。J-STAGE 掲載論文の多くは学協会が著作権を保持しており、全文の機械的な取得・加工には個別の許諾が必要な場合があります。CiNii Research や NDL サーチはメタデータ(タイトル・著者・抄録等)の API 提供にとどまり、本文へのアクセスは各出版元のライセンスに依存します。MCP サーバーの実装にあたっては、各データベースの利用規約・API 利用条件を遵守し、メタデータ検索を中心とした設計とする予定です。
🧠 Deep GraphRAG MCP
Deep GraphRAG は、筆者が開発している知識データシステムです。従来の RAG(Retrieval-Augmented Generation)が単純なベクトル検索に基づくのに対し、Deep GraphRAG は ナレッジグラフ を活用して情報間の関係性を構造的に捉えます。
SciClaw と連携することで、以下が可能になります。
- 実験結果・論文・データベースの情報をナレッジグラフとして蓄積
- 過去の実験から関連する知見を関係性ベースで検索
- 仮説生成時に、既知の知識ネットワークから新たな関連性を発見
- 研究室・チーム全体の知識を構造化し、共有・再利用
🖥️ スパコン連携 MCP
大規模な科学計算(分子動力学シミュレーション、ゲノムワイド解析、気候モデリング等)には、ローカル環境やクラウドでは計算資源が不足する場合があります。スパコン連携 MCP により、SciClaw からジョブの投入・監視・結果取得を MCP プロトコル経由で実行できるようにします。
MCP(Model Context Protocol)の標準化されたインターフェースにより、これらの連携はすべて プラグイン形式 で追加でき、SciClaw 本体のコードを変更する必要がありません。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| SciClaw | Docker コンテナ内で AI エージェントを安全に実行する AI for Science OS |
| SATORI | 190+ の科学 Agent Skills(ゲノミクスから創薬まで) |
| ToolUniverse | ハーバード大学医学部が開発した 1000+ 科学ツールエコシステム |
| 構築手順 | clone → npm install → .env 設定 → コンテナビルド → 起動の 7 ステップ |
SciClaw は Web ブラウザからアクセスでき、セキュアなコンテナ環境内で実験計画の策定や実験を行えます。SATORI の 190+ スキルと ToolUniverse の 1000+ ツールにより、ゲノミクス、プロテオミクス、創薬、臨床データ解析など、幅広い科学分野をカバーしています。
次のステップ: 新規実験を作成し、「SiC と GaN を超える次世代パワー半導体材料の候補を調査してください」のようなプロンプトを送信してみましょう。SATORI が適切なスキルを自動選択し、ToolUniverse のツールと連携して文献調査・データ比較・レポート生成を進めます。
参考資料
- SciClaw GitHub リポジトリ - SciClaw 本体
- SATORI GitHub リポジトリ - 190+ 科学 Agent Skills
- SATORI npm パッケージ - npm からインストール可能
- ToolUniverse GitHub リポジトリ - ハーバード大学医学部 Zitnik Lab
- ToolUniverse ドキュメント - 公式ドキュメント
- ToolUniverse 論文 (arXiv) - "Democratizing AI scientists using ToolUniverse"
- GitHub Copilot CLI - GitHub Copilot コーディングエージェント





