はじめに
「市場調査レポートを作成して」「競合分析をまとめて」——こうした依頼を受けたとき、あなたはどうしていますか?
Web検索で情報を集め、Excelで整理し、PowerPointやWordでレポート化...。この一連の作業を、AIに自然言語で依頼するだけで完了させられるとしたら?
本記事では、GitHub CopilotとSHIKIGAMI(式神)を組み合わせて、高品質なコンサルティングレポートを作成する方法を紹介します。
SHIKIGAMIとは
SHIKIGAMI(式神)は、AIエージェントによるDeep Researchとコンサルティングフレームワーク分析を組み合わせた、コンサルティングレポート自動生成システムです。
名前の由来:陰陽道と式神
「式神(しきがみ)」とは、日本の陰陽道において陰陽師が使役する霊的存在です。
陰陽道は、古代中国の陰陽五行思想を起源とし、7世紀頃に日本に伝来した呪術・占術体系です。平安時代には朝廷の陰陽寮で天文・暦・占いを司る官職として確立され、安倍晴明に代表される陰陽師たちが活躍しました。
式神は、陰陽師の術によって召喚・使役される存在で、主人の命令に従い、情報収集、護衛、雑務などを行います。紙や木片に術をかけて動かす「紙の式神」から、鬼神を従える強力なものまで様々な種類があったとされています。
SHIKIGAMIは、この式神のコンセプトを現代のAIに適用しました。
| 式神(陰陽道) | SHIKIGAMI(AI) |
|---|---|
| 陰陽師の命令に従う | ユーザーの自然言語指示に従う |
| 情報収集・偵察 | Deep Research(Web検索・分析) |
| 複数の式神を使い分け | 22種類のフレームワークを自動選択 |
| 術者の代わりに働く | レポート作成を代行 |
あなたのデジタル式神として、調査・分析・レポート作成を代行します。
SHIKIGAMIの特徴
SHIKIGAMIは、単なるAIチャットボットではありません。構造化されたワークフローと専門的な分析手法を組み合わせることで、コンサルタントが数日かけて作成するような高品質なレポートを、数時間で生成します。
最大の特徴は「自然言語での依頼」です。コマンドを覚える必要はありません。「〇〇について調査してレポートにまとめて」と伝えるだけで、SHIKIGAMIが適切なフレームワークを選択し、Web検索で情報を収集し、分析を行い、整形されたレポートを出力します。
また、品質ゲートにより各フェーズで自動的に品質チェックが行われます。ソースの信頼度評価、数値の整合性確認、引用の完備性など、人間が見落としがちなポイントも漏れなくチェック。さらに、過去のプロジェクトから関連知見を自動継承するため、同じテーマの調査では回を重ねるごとに精度が向上します。
そして、SHIKIGAMIの隠れた強みが「対話型目的探索」です。「〇〇について調べて」という曖昧な依頼に対して、いきなり調査を始めるのではなく、1問1答形式で本当に知りたいことを深掘りします。「なぜそれを知りたいのか?」「誰がその情報を使うのか?」「成功とは何か?」——こうした質問を通じて、依頼者自身も気づいていなかった真の目的を明らかにし、的を絞った調査を実現します。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 対話型目的探索 | 1問1答で真の目的を発見、5 Whys/JTBDフレームワーク |
| Deep Research | Web検索による多角的な情報収集、ソースの信頼度評価 |
| 22種類のフレームワーク | SWOT、3C、PEST、5 Forces、TAM/SAM/SOM等を自動推薦・適用 |
| 32種類のレポートテンプレート | ビジネスケース、市場分析、提案書、技術レポート等 |
| 品質ゲート | 各フェーズで品質チェック、信頼度スコアリング |
| ナレッジ継承 | 過去プロジェクトの知見を自動参照 |
🔄 ワークフロー概要
環境構築
1. WSLのインストール(Windows)
Windows上でSHIKIGAMIを使用するには、まずWSL(Windows Subsystem for Linux)をインストールします。
# PowerShell(管理者権限)で実行
wsl --install
インストール後、PCを再起動し、Ubuntuのユーザー名とパスワードを設定します。
# WSLのバージョン確認
wsl --version
2. Node.jsのインストール
SHIKIGAMIはNode.js 20以上が必要です。
# nvmのインストール
curl -o- https://raw.githubusercontent.com/nvm-sh/nvm/v0.40.1/install.sh | bash
# ターミナルを再起動後
nvm install 20
nvm use 20
# バージョン確認
node -v # v20.x.x
npm -v # 10.x.x
3. VS Codeのインストール
Visual Studio Codeをインストールし、以下の拡張機能を追加します。
- Remote - WSL: WSL環境でVS Codeを使用
- GitHub Copilot: AIコーディングアシスタント
- GitHub Copilot Chat: 対話型AIアシスタント
# WSLからVS Codeを起動
code .
4. SHIKIGAMIのインストール
プロジェクト用のディレクトリを作成し、そこにSHIKIGAMIをローカルインストールします。
# プロジェクトディレクトリを作成
mkdir my-research-project
cd my-research-project
# package.jsonを初期化
npm init -y
# SHIKIGAMIをローカルインストール
npm install @nahisaho/shikigami
# バージョン確認
npx shikigami --version
# SHIKIGAMIを初期化
npx shikigami init
インストールが完了したら、VS Codeでプロジェクトディレクトリを開きます:
# VS Codeでプロジェクトを開く
code .
5. GitHub Copilotの設定
VS CodeでCtrl+Shift+Pを押し、以下を実行:
- 「GitHub Copilot: Sign In」でGitHubアカウントにサインイン
- 「Preferences: Open Settings (JSON)」で設定を開く
- 以下を追加:
{
"github.copilot.chat.agentExtensions.enabled": true,
"github.copilot.advanced": {
"agent.skills": true
}
}
使い方
LLMとモードの設定
SHIKIGAMIを使用する前に、GitHub Copilot Chatの設定を行います。
- VS Codeで
Ctrl+Shift+Iを押してCopilot Chatを開く - チャット画面下部のモデル選択で「Claude Opus 4.5」を選択
- 同じく下部のモード選択で「Agent」を選択
┌─────────────────────────────────────────┐
│ GitHub Copilot Chat │
├─────────────────────────────────────────┤
│ │
│ (チャット履歴) │
│ │
├─────────────────────────────────────────┤
│ モデル: [Claude Opus 4.5 ▼] │
│ モード: [Agent ▼] │
│ ┌─────────────────────────────────┐ │
│ │ メッセージを入力... │ │
│ └─────────────────────────────────┘ │
└─────────────────────────────────────────┘
💡 なぜClaude Opus 4.5 + Agent Mode?
- Claude Opus 4.5: 複雑な分析タスクに優れた推論能力を持つ最新モデル
- Agent Mode: ファイル操作、Web検索、ターミナル実行などのツール使用が可能
基本的な使い方
SHIKIGAMIはコマンドを覚える必要がありません。GitHub Copilot Chatに自然言語で依頼するだけです。
- VS Codeで
Ctrl+Shift+Iを押してCopilot Chatを開く - モデルを「Claude Opus 4.5」、モードを「Agent」に設定
- 調査したい内容を自然言語で入力
- SHIKIGAMIが自動的にワークフローを実行
⚠️ 重要なルール
SHIKIGAMIには「プロジェクト作成前の調査禁止」という絶対ルールがあります。
❌ NG: 「レアメタルについて調べて」→ いきなりWeb検索
✅ OK: 「レアメタルについて調べて」→ プロジェクト名を確認 → npx shikigami new → 調査開始
GitHub Copilotは自動的にこのルールに従いますが、プロジェクト名を聞かれたら回答してください。
実践例:投資調査レポートの作成
プロンプト例
以下のような詳細なプロンプトを入力すると、高品質なレポートが生成されます。
# 目的
中国のレアメタル・レアアース輸出規制が日本の産業・企業に与える影響を
多角的に分析し、投資判断の参考情報を整理する
# 調査対象となる規制措置
- 2023年8月:ガリウム・ゲルマニウム輸出規制
- 2024年12月:ゲルマニウム、ガリウム、アンチモン、超硬材料の対米輸出禁止
- 2025年2月:タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウムの輸出規制
- その他最新の規制動向
# 調査項目
## 1. 影響を受ける日本の産業セクター
- 半導体製造装置
- 電子部品・材料
- 電気自動車(EV)・バッテリー
- 防衛産業
- 再生可能エネルギー(太陽光パネル等)
## 2. 企業への影響分析
【ネガティブ影響を受ける可能性のある企業】
- 中国からの調達依存度が高い企業
- 代替調達が困難な企業
【ポジティブ影響を受ける可能性のある企業】
- 国内・非中国でのレアメタル採掘・精製企業
- リサイクル・都市鉱山関連企業
- 代替材料・技術を持つ企業
- 在庫を十分に確保している企業
## 3. 各企業について調査する項目
- 事業内容と該当レアメタルとの関連性
- 中国依存度(調達先の多様化状況)
- 財務状況・株価推移
- 競合他社との比較
- アナリストの見解(あれば)
## 4. リスク要因
- 規制の緩和・撤回の可能性
- 他国(豪州、カナダ等)からの代替供給の進展
- 需要減少リスク
- 為替変動リスク
# 出力形式
1. エグゼクティブサマリー
2. 規制の現状と今後の見通し
3. 影響を受けるセクター・企業のマトリクス表
(影響度:大/中/小、方向性:ポジティブ/ネガティブ)
4. 注目企業リスト(10社程度)と分析根拠
5. 投資判断における注意点・リスク
# 注意事項
- 特定銘柄の売買推奨ではなく、判断材料の提供を目的とする
- 最終的な投資判断は自己責任で行う前提
- 情報は調査時点のものであり、最新情報の確認が必要
実行の流れ
-
Phase 0: プロジェクト初期化
Copilot: プロジェクト名を教えてください。 You: RareMetalInvestmentResearch Copilot: npx shikigami new RareMetalInvestmentResearch を実行します... -
Phase 1: 目的探索(1問1答形式)
Copilot: ご依頼内容を拝見しました。非常に詳細な調査要件をいただいていますが、 投資判断の参考情報として最大限活用いただくために、1つ確認させてください。 この調査結果を**誰が使いますか?** 例えば: - ご自身の個人投資の参考として - 機関投資家・ファンド向けのレポートとして - 事業会社の経営企画部門向けとして - その他 You: 個人投資の参考として使います Copilot: 承知しました。個人投資家向けに、専門用語は解説を添え、 具体的な銘柄情報と判断ポイントを明確にしたレポートを作成します。 -
Phase 2: Deep Research
- Web検索で最新の規制動向を収集
- Reuters、経産省、各社IRから情報取得
- ソースの信頼度を評価
-
Phase 3: フレームワーク分析
- SWOT分析(各企業の強み・弱み・機会・脅威)
- リスクマトリクス(発生確率×影響度)
- マッチングマトリクス(影響度×方向性)
-
Phase 4: レポート作成
- テンプレート自動選択(投資調査レポート)
- 品質チェック(数値整合性、引用完備)
出力されるレポート例
⚠️ 免責事項: 本レポートは情報提供を目的としており、特定銘柄の売買推奨ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。情報は調査時点(2026年1月20日)のものです。
エグゼクティブサマリー
## エグゼクティブサマリー
本レポートは、中国のレアメタル・レアアース輸出規制強化(2023年〜2026年)の
影響を受ける日本企業を、**ネガティブ影響**と**ポジティブ影響**の2軸で整理し、
投資判断に資する情報を提供する。
### 📊 影響分類サマリー
| 分類 | セクター | 代表銘柄 | 投資スタンス |
|------|---------|---------|-------------|
| **ネガティブ・高** | 半導体製造装置 | 東京エレクトロン、SCREEN | ⚠️ 短期リスク注視 |
| **ネガティブ・中** | 電子部品・材料 | 村田製作所、TDK | 🟡 中期的には技術力で対応 |
| **ポジティブ・高** | リサイクル | DOWAホールディングス、エンビプロ | ✅ 買い検討 |
| **ポジティブ・中** | 非中国採掘 | 住友金属鉱山、JX金属 | ✅ 買い検討 |
投資判断マトリクス
| 銘柄 | コード | セクター | 中国リスク | 成長性 | 推奨 |
|------|--------|---------|-----------|--------|------|
| **DOWAホールディングス** | 5714 | リサイクル | 🟢 低 | 🔵 高 | ✅ **買い** |
| **住友金属鉱山** | 5713 | 非鉄金属 | 🟢 低 | 🔵 高 | ✅ **買い** |
| **信越化学** | 4063 | 材料 | 🟡 中 | 🔵 高 | 🟡 **買い検討** |
| **東京エレクトロン** | 8035 | 半導体装置 | 🔴 高 | 🔵 高 | ⚠️ **短期注意** |
| **日産** | 7201 | 自動車 | 🔴 高 | 🟠 低 | ⚠️ **回避推奨** |
ポートフォリオ構築案
推奨ポートフォリオ配分イメージ
┌─────────────────────────────────────────┐
│ リサイクル関連(30%) │
│ └ DOWAホールディングス、エンビプロ等 │
├─────────────────────────────────────────┤
│ 非中国資源関連(25%) │
│ └ 住友金属鉱山、日鉄鉱業等 │
├─────────────────────────────────────────┤
│ 代替技術・多角化企業(25%) │
│ └ 信越化学、TDK等 │
├─────────────────────────────────────────┤
│ 低中国依存自動車(15%) │
│ └ スバル、スズキ等 │
├─────────────────────────────────────────┤
│ キャッシュ(5%) │
│ └ 機動的な追加投資用 │
└─────────────────────────────────────────┘
SHIKIGAMIが使用するフレームワーク(22種類)
戦略分析(4種類)
| フレームワーク | 用途 |
|---|---|
| SWOT分析 | 強み・弱み・機会・脅威の整理 |
| PEST分析 | 政治・経済・社会・技術環境分析 |
| 5 Forces分析 | 業界競争環境分析 |
| 3C分析 | 顧客・競合・自社分析 |
顧客・市場分析(4種類)
| フレームワーク | 用途 |
|---|---|
| ペルソナ分析 | ユーザー像の具体化 |
| STP分析 | セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング |
| TAM/SAM/SOM | 市場規模の3段階推計 |
| カスタマージャーニー | 顧客体験の可視化 |
投資・リスク分析(3種類)
| フレームワーク | 用途 |
|---|---|
| リスクマトリクス | 発生確率×影響度マッピング |
| コストベネフィット分析 | 費用対効果の定量評価 |
| ROI分析 | 投資対効果算出 |
問題解決(3種類)
| フレームワーク | 用途 |
|---|---|
| 5 Whys | 根本原因分析 |
| イシューツリー | 問題のMECE分解 |
| フィッシュボーン図 | 因果関係の可視化 |
その他(8種類)
マッチングマトリクス、シナジー分析、バリューチェーン分析、技術ロードマップ、ガントチャート、マイルストーンチャート、TAM/SAM/SOM、ブルーオーシャン戦略
SHIKIGAMIのレポートテンプレート(32種類)
ビジネス・経営向け(7種類)
- executive-summary(エグゼクティブサマリー)
- business-case(ビジネスケース)
- budget-approval(予算承認申請)
- staged-approval(段階的承認)
- immediate-approval(緊急承認)
- pilot-approval(パイロット承認)
- qbr(四半期ビジネスレビュー)
市場・競合分析(3種類)
- market-analysis(市場分析)
- competitive-analysis(競合分析)
- due-diligence(デューデリジェンス)
リサーチ・調査(4種類)
- user-research(ユーザーリサーチ)
- interview-guide(インタビューガイド)
- ab-test(A/Bテスト結果)
- joint-research-proposal(共同研究提案)
提案・営業(6種類)
- proposal(提案書)
- rfi / rfp(情報提供依頼/提案依頼)
- vendor-evaluation(ベンダー評価)
- sales-playbook(セールスプレイブック)
- customer-success(カスタマーサクセス)
リスク・セキュリティ(4種類)
- risk-assessment(リスク評価)
- security-assessment(セキュリティ評価)
- compliance(コンプライアンス)
- sla(SLA文書)
プロジェクト・技術(8種類)
- project-status(進捗報告)
- change-request(変更要求)
- post-mortem(振り返り)
- product-roadmap(ロードマップ)
- technical-report(技術レポート)
- white-paper(ホワイトペーパー)
- training-material(研修資料)
- workshop(ワークショップ)
Tips
1. 詳細なプロンプトを書く
SHIKIGAMIは詳細なプロンプトほど高品質なレポートを生成します。以下を含めると効果的:
- 目的:何を判断したいのか
- 調査対象:具体的な範囲・制約
- 出力形式:希望するレポート構成
- 注意事項:免責事項、制約条件
2. 対話を活用する
Phase 1の目的探索では、AIからの質問に丁寧に回答してください。これにより、的を絞った調査が可能になります。
3. 緊急度を伝える
急ぎの場合は「急ぎで」「今日中に」と伝えると、SHIKIGAMIは緊急度トリアージを実行し、短縮ワークフローを選択します。
| 緊急度 | ワークフロー | 所要時間 |
|---|---|---|
| 🟢 通常 | フルフロー(Phase 0-5) | 数時間〜 |
| 🟡 緊急 | 分析スキップ | 2-4時間 |
| 🔴 超緊急 | 要約のみ | 30分〜1時間 |
4. 中断・再開を活用する
長時間の調査を中断したい場合は「中断」「後で続ける」と伝えてください。再開時は「続きから」と言えば、チェックポイントから再開できます。
トラブルシューティング
Q: プロジェクトが作成されない
# SHIKIGAMIのバージョン確認
npx shikigami --version
# 再インストール
npm install -g @nahisaho/shikigami@latest
Q: Web検索が動作しない
GitHub Copilotの設定を確認してください:
-
Ctrl+Shift+P→ 「Preferences: Open Settings (JSON)」 -
github.copilot.chat.search.enabledがtrueか確認
Q: レポートの品質が低い
- プロンプトをより詳細に記述してください
- Phase 1の質問に丁寧に回答してください
- 「詳しく調べて」と追加指示を出してください
📚 関連リンク
まとめ
SHIKIGAMIを使えば、GitHub Copilotに自然言語で依頼するだけで、以下が自動化されます。
- ✅ Web検索による情報収集
- ✅ 22種類のコンサルティングフレームワークによる分析
- ✅ 32種類のテンプレートを使った高品質なレポート作成
- ✅ 信頼度スコアリングによる品質保証
ぜひ試してみてください!