14
3

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 1 year has passed since last update.

TUNA-JPAdvent Calendar 2022

Day 13

おうちクラウド2022

Last updated at Posted at 2022-12-12

こんにちわ!TUNA-JPの運営メンバーをしている @hirosat です。
本記事は、「TUNA-JP Advent Calendar 2022」の13日目のエントリです。

TL;DR (この記事の要約)

  • おうちクラウドの2022年の状況と、今オススメなハードウェアをご紹介

おうちクラウドって、何?

「各ご家庭で1台以上のPCを用意してネットワークにつなげ、ちょっとした環境を準備することで、VM/コンテナ等を介したハードウェアリソースを活用できるシステム」のことを おうちクラウド と呼称しています。

個人的に、おうちクラウド逸般の誤家庭に流行らせようと思っていて、今まで、下記のような活動をしてきました。これらのコンテンツを読めば、おうちクラウドの始め方が分かると思うので、良ければ御覧下さい!

日付 概要 備考
2020年12月01〜25日 Advent Calender 2020 「NUCで始めるVMware Tanzu」という企画で25日連続投稿(リンク)
2021年03月12日 NUCで始めるVMware Tanzu CloudNative Days Spring 2021 で発表 (動画 / スライド)
2021年9月22日 「おうちクラウド」が今熱い! VMware DevOps Meetup #10 で発表 (Connpass / スライド)
2021年10月〜2022年3月 はじめよう,おうちクラウド Software Design誌で2021年11月号〜2022年04月号まで6ヶ月の連載を実施。第1回と第4回を担当(第1回のバックナンバー / GitHub)
2021年12月 TUNA-JP Advent Calendar 2021 おうちクラウド向けに3記事を投稿 (おうちクラウド考察2021 with TCE / おうちクラウドvSANを刷新 / ESXi on AMD版NUC 導入レポ)
2022年10月12日 本日、見せます。私のおうちクラウド K8s@home #1 で登壇 (Connpass / Youtube / Miroプレゼン資料)

2022年のおうちクラウドニュース

おうちクラウドに影響を与えるニュースをいくつかピックアップしました。

第12世代Intel Coreプロセッサー「Alder Lake」登場

Intel Coreプロセッサーシリーズも、ついに第12世代です。Intelはここで、大幅なアーキテクチャの刷新を行いました。Alder Lakeは、"big.LITTLE" CPUアーキテクチャを導入した初のコンシューマー向けIntel CPUです。

どのようなアーキテクチャかというと、2種類のCPUコアを1つの物理的なCPUダイに統合しています。一つはP-core(Performance-core/高性能コア)であり、もう一つはE-core(Efficient-core/高効率コア)です。

P-coreは、処理性能が重視されるコアで、強力なシングルスレッド性能を持ち、ゲームの処理や重いタスク処理に向いています。E-coreは、マルチスレッド性能と、電力効率を重視したコアとなり、OSのバックグラウンドタスクやストリーミング配信のエンコードなどに向いています。このような構成は、最近のApple Siliconプロセッサでも評判となり、コンシューマ向けにこのトレンドが続くことは間違いないでしょう。

「なんだ、いいニュースじゃん!」と思うかもしれませんが、おうちクラウドにとってはそうでもありません。何故なら、後述する最新の vSphere 8 でさえ、CPU Scheduler が Alder Lake 以降のハイブリッドCPUアーキテクチャに(今のところ)対応していません。

(2023/01/23追記)
ここにCPUサポート状況について記載していましたが、内容に間違いがあったので削除しました。

Alder Lake CPUでESXiを起動しようとすると、以下の様になります。

  • PSOD (Purple Screen of Death) が発生し、「Fatal CPU mismatch on feature」というメッセージが表示されます。これはPコアとEコアの両方でCPU特性が異なることが原因です。
    • このPSODには回避策があり、カーネルオプション cpuUniformityHardCheckPanic=FALSE を起動時に追加することで、ESXi起動時のCPU均一性チェックをスキップすることができます。
    • ただし、Alder Lake の特性を最大限に活かしたCPUスケジューリングはされない

一言でいうと、「せっかく高いCPUを買ったのに、コスパが悪い状態」になるので、今のところ、おうちクラウド用途には避けた方が無難でしょう。

NUC12シリーズの拡充と、NUC13の発表

  • (2022年02月24日) Intel NUC 12 Extreme を発表 (Intel)
  • (2022年08月18日) Intel NUC 12 Pro が登場 (PCWatch)
  • (2022年09月19日) Intel NUC 12 Enthusiast を発表 (Intel / PCWatch)
  • (2022年11月10日) Intel NUC 13 Extreme を発表 (Intel / ITmedia)

2021年は、コロナの余波で半導体不足に陥り、その影響でNUCの供給もなかなかされない状況が続いてましたが、2022年になり、それが徐々に緩和されてきた印象です。

Intelは2022年にNUC 12シリーズを発表してきたと思ったら、つい先月には、もうNUC 13が発表となっています。なお、それぞれのシリーズは、Intel Coreプロセッサーと対応しているため、NUC 12は上述のAlder Lakeであり、NUC 13はさらに次世代のRaptor Lakeを搭載しております。

各モデルの違いをまとめると、以下のようになります。Proは従来の小型モデルであり、EnthusiastはGPU組み込みのバランス型モデルであり、Extremeは外付けGPUに対応したハイエンドモデルという違いがあります。そして、Extremeは世代を重ねるごとに、どんどん巨大になりますね。。。

シリーズ名 筐体サイズ(幅mm/奥行きmm/高さmm) 特徴
NUC 13 Extreme 13.8L (129×337×318) PCIe 5.0 x16(最大3slot幅/奥行き12inchまでのGPUを利用可能)。2.5GbE+10GbE有線LANを搭載。
NUC 12 Extreme 8.1L (120×357×189) PCIe 5.0 x16(最大2slot幅/奥行き12inchまでのGPUを利用可能)。2.5Gb+10GbE有線LANを搭載。
NUC 12 Enthusiast 2.5L (230×180×60) Intel A770M GPU組み込みモデル。
NUC 12 Pro 0.7L (117x112x54) ※.高さ37mmのモデルもある 最も一般的なモデル

各型番の違いは以下の通りです。なお、この他にNUC 12 Pro Xモデルというのもありましたが、ほぼNUC 12 Extremeと近い仕様なので割愛します(筐体やCPUは同じで、チップセットとかECCメモリ対応などが違った)

※. CPUのカッコ内の表記:(総コア数(P-core/E-core), P-core基本周波数/E-core基本周波数, インテル® スマート・キャッシュ)

※. 実売価格は、2022年12月12日にAmazonで調べた価格なので、店舗や時期で変動があります。また、「不明」となっているのは検索に引っかからなかったので、まだ市場に出回っていない可能性があります。

シリーズ名 製品名 CPU 実売価格
NUC 13 Extreme NUC13RNGi9 i9-13900K (24(8P/16E), 3.0/2.2 GHz, 36 MB) 不明
^ NUC13RNGi7 i7-13700K (16(8P/8E), 3.4/2.5 GHz, 30 MB) 不明
^ NUC13RNGi5 i5-13600K (14(6P/8E), 3.5/2.6 GHz, 24 MB) 不明
NUC 12 Extreme NUC12DCMi9 i9-12900K (16(8P/8E), 3.2/2.4 GHz, 30 MB) ¥244,800
^ NUC12DCMi7 i7-12700K (12(8P/4E), 3.6/2.7 GHz, 25 MB) ¥193,281
NUC 12 Enthusiast NUC12SNKi72 i7-12700H (14(6P/8E), 2.3/1.7 GHz, 24 MB) ¥249,800
NUC 12 Pro NUC12WSHv7 i7-1270P (12(4P/8E), 2.2/1.6 GHz, 18MB) 不明
^ NUC12WSHi7 i7-1260P (12(4P/8E), 2.1/1.5 GHz, 18MB) ¥98,571
^ NUC12WSHv5 i7-1250P (12(4P/8E), 1.7/1.2 GHz, 12MB) 不明
^ NUC12WSHi5 i7-1240P (12(4P/8E), 1.7/1.2 GHz, 12MB) ¥75,857
^ NUC12WSHi3 i7-1220P (12(2P/8E), 1.5/1.1 GHz, 12MB) 不明

さらに、NUC 12 Proは型番によってバリエーションがあり、同じCPUでも以下のようにスペックが異なってきます。スペックを比較する限りでは、末尾が Hv7(Hi7/Hv5/Hi5/Hi3) となっている型番が、最もフルスペックに見受けられます。

製品名 内蔵ドライブ 対応Display数 PCI Express構成 USB ports Thunderbolt 4 筐体高さ
NUC12WSKv7 2 (M.2 x2) 4 (HDMI2.1 x2 + DP1.4a (TypeC) x2) 3 (22x80, 22x42, 22x30) 4 (前面: USB3.2 x2, 背面: USB3.2 x1, USB2.0 x1) USB4 (TypeC) x2 37mm
NUC12WSKv70Z 2 (M.2 x2) 2 (HDMI2.1 x2) 3 (22x80, 22x42, 22x30) 4 (前面: USB3.2 x2, 背面: USB3.2 x1, USB2.0 x1) なし 37mm
NUC12WSHv7 3 (M.2 x2 + 2.5inch) 4 (HDMI2.1 x2 + DP1.4a (TypeC) x2) 3 (22x80, 22x42, 22x30) 4 (前面: USB3.2 x2, 背面: USB3.2 x1, USB2.0 x1) USB4 (TypeC) x2 54mm
NUC12WSHv70L 3 (M.2 x2 + 2.5inch) 4 (HDMI2.1 x2 + DP1.4a (TypeC) x2) 2 (22x80, 22x30) 6 (前面: USB3.2 x2, 背面: USB3.2 x1, USB2.0 x3) USB4 (TypeC) x2 54mm
NUC12WSHv70Z 3 (M.2 x2 + 2.5inch) 2 (HDMI2.1 x2) 3 (22x80, 22x42, 22x30) 4 (前面: USB3.2 x2, 背面: USB3.2 x1, USB2.0 x1) なし 54mm

この中で私が選ぶとしたら、NUC12WSHv7 かな、と思ってます。最も小さいNUC12 Proシリーズの中ではCPUが強力だからです。ただし、以下の観点で、今のところ様子見です。

  • 前述の通り、今のESXiはAnderLakeの魅力を今のところ引き出せない
  • 常時稼働のサーバ用途だと、ターボブーストの値が高くても魅力に感じないため、コアあたりベースクロックでみると、AMDの方が魅力的
  • 昨今のGPUモデルの台頭をサーバ用途として考えると、AI/MLを行う分には良いですが、常時稼働するには、消費電力が高いのも難点。
  • NUC 12/13 Extreme は筐体サイズが大きいのもマイナスポイント

一言でいうと、「おうちクラウド向きな、魅力的なマシンを出して下さい!Intelさん」となります・・・

オンプレ回帰

つい昨日のニュースですが、楽天が「オンプレ回帰」を決断したようです!

実は前からこの風潮はあり、2018年には DropboxがAWSから自社環境に移す とかチラホラありましたが、年々その風潮が強くなっています。一見クラウドが流行っているようにも見えるこのご時世に、何故こういうことが起こるのでしょうか?

それは、ハードウェアのコストが年々低下しているのに、クラウド事業はほぼ値段が変わらないからです。世間はこれを、クラウド税と呼びます。もちろん、クラウドもある程度は新世代シリーズを発表して少しずつ安く見せかけてはいますが、CPUの毎年のパフォーマンス増加率と明らかに合っていません。クラウド登場時は画期的なコスパでしたが、昨今のハードウェアコスト低下に伴い、自社にインフラ部門を抱える大手を中心に、まさに今「オンプレ回帰」の選択に迫られています。

実は私がおうちクラウドを始めた要因の一因でもあります。「おや?NUCって意外に安いじゃん!」というきっかけがありました。

vSphere 8 / vSAN 8 の登場

話は変わり、2022年8月30日に、ついに vSphere 8 と vSAN 8 が発表されました。

vSphere 8 の方は、DPU(Data Processing Units)への対応や、GPUによる人工知能(AI)や機械学習(ML)のパフォーマンス向上、Tanzu Kubernetes Grid 2.0への対応など、いくつか目を引く機能はあるものの、基本的には正常進化です。

それよりも、おうちクラウドユーザにとって注目すべきなのはなんといっても、vSAN 8 による vSAN ESA (Express Storage Architecture) です!これまでのvSANは、1つのハードウェアにつき、合計3つのディスク(1つはシステム用で、さらにvSAN用に2つ)が必要でした。vSAN ESAの場合、2ドライブ構成(1つはシステム用、vSAN用にも1つでOK)でもvSANクラスタが構築できるようになり、敷居が格段に低くなりました!

NUCなどの省スペース筐体でvSANを構築するチャンスですね。

今、オススメのハードウェア

Intelが上記のような状態の今、AMD Ryzenを搭載したミニPCでおうちクラウドを構築するのが、私のオススメです。AMD Ryzenは1coreあたりのベースクロックが高いので、複数のVMでCPUを共有するおうちクラウドのような環境では、そのパワーを遺憾なく発揮することができます!

AMD Ryzenを搭載したミニPCを提供するメーカーは、ASRockGIGABYTE 等、いくつかあるのですが、私のオススメは、Minisforum です。オススメの理由は、まず直販サイトでベアボーン構成を選択した時の価格が非常に安く、筐体のバリエーションも非常に豊富なところです。実は去年のアドベントカレンダーでも、Minisforum EliteMini HM90 を紹介させていただきました。

ただし、今年は、オススメのマシンが違います!それは・・・、コチラです!!

Webサイトを見ると、もっと上位機種のUM590も存在する中、何故このマシンをチョイスしたかというと、これが GaN電源 を搭載したモデルだからです。(UM560とUM580のみ)

スペックには見えづらい電源アダプタ問題

自宅環境に複数のサーバを並べる際、筐体のサイズを参考に、設置場所を検討する人が大半かと思います。

そして、NUCやミニPCを購入して、いざ配置しようとすると、一つ気づくことがあります。「電源アダプタって、めっちゃデカイんだな・・」と。下手をすると、ミニPC筐体と同じ位大きなアダプタも存在したりします。

そんな中!GaN電源により、通常の電源アダプタが不要 になります。もちろん、UM580の場合、100Wの給電能力を有するUSBアダプタに接続する必要がありますが、購入時に付属するアダプタを使用したとしても、通常のものよりは、ずいぶんと小型になることでしょう。

こんなミニPC、他に見たことありません。非常にチャレンジングな筐体だと思います。

なお、ここまで書いておきながら、私はまだこのマシンには手を出していないので、この電源の安定性とかは保証できません・・・。 むしろ、どなたか既に持っている方、レポお待ちしていますっ!(もしくはMinisforumさん、、もし1台寄付していただければ、私の方で検証しますよーーw)

混ぜるな危険!IntelとAMD

あと、既にIntelのクラスタを組んでいる方がAMDのミニPCを組み込む場合、注意点があります。

IntelとAMDのESXiを1つのクラスタに混在させること自体は可能なのですが、Intel CPUのESXiで起動したVMは、AMD CPUのESXiにvMotionできないのでご注意を。(逆もまた然りです)

私の環境はまさに今、計5台(AMDのESXi3台/IntelのESXi2台)でクラスタを組んで運用している状況です。上記の制限により、VMの移動先が限定されて、微妙に不便なことがあります。。

2022年の総括と2023年の展望

AMD CPUのおかげで、CPUリソースは潤沢になったのは良いことなんですが、今度はメモリがボトルネックになってきたんですよね。。NUCはだいたいSO-DIMM(ノート用の小さいサイズのメモリ)2枚構成なので、Max64GBだと辛くなってきた。

実はIntelもAMDもCPUが対応する最大搭載メモリ量は128GBなので、1枚64GBのSO-DIMMが登場しないかなぁ、と、密かに願っています。もしくは、SO-DIMMが4枚載るミニPCを作ってくれないかなぁ・・・。

あとがき

気がつけば、壮大な読み物になってしまった・・。
おうちクラウドライフを、共に楽しみましょう!

14
3
2

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
14
3

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?