本稿は ミライトデザイン Advent Calendar 2025 の25日目最終日の記事となります。
24日目は @FrozenVoice さんの Rails4保守開発でAIを“読む/直す”に使った所感 です。
この記事について
2025年はコーディングを強力にサポートできるLLMの登場により開発者の環境が劇的に変わった年となりました。LLM自体はもう少し前から存在していたのですが、一気に爆発したのが今年だった。という感じでしょうか。
あまりにも急激に環境が変化したため、単純にAIが開発の現場に導入されたというよりは多くのエンジニアがAIの波に翻弄された一年だったとも言えそうです。
そんな中例にもれず私も翻弄された一年になりました。
本稿ではせっかくなのでそんな2025年を振り返って、AIに対する考え方や捉え方、スタンスなどがどう遷移していったかを見ていきたいと思います。
前提
まず、AI(LLM)というものに対しての私の前提知識や理解度をそろえておくと、私はAIのスペシャリストでもなんでもありません。AI開発の先駆者でもモデルの製造者でもなく一番大多数を占めるであろうAIって何ができるんやろ?くらいのよくある開発者の一人となります。
従って、AIを使用した開発については、代替数のエンジニアの方と同様に2025年から本格的に身近になって来たという状態です。つきましては、実体験としてどうAIと接してきたか、という事がテーマとなりますので、本稿に登場するAIの理解や登場時期などの記憶が間違っている可能性はありますが、それも含めて本稿で一開発者がAIに対する認識がどう遷移していったのか、というものを楽しんでいただければと思います。
※ 本稿で単純に「AI」と表現するものはLLMを使用したコーディング関連の用途にAIを使用しているという意味となります。
AI遭遇期(2025以前)
私がAIの存在を間近に認識したのは2025年より数年前、chatGPTが世に誕生した際でした。なんかめちゃくちゃ話題だったので、とりあえずアカウントを作って試してみた記憶があります。
ただ、その時の感想としては、まるで人間と会話してるかのように会話が成立していてすごい!。ただ、なんかちょいちょい嘘をつくし、どうやらモデルの情報とやらもモデルが学習した時点までの情報しか持ち合わせていないらしい。ケースによっては使えそうだが、まあふーん。 くらいの感想でした。
その程度の興味だったため、当然chatGPTのアカウントを作った以外に何もしていません。github copilot についても別に補完してくれなくてもコードくらいかけるわい。くらいの認識でした。
- 存在は把握していた
- ちょっとだけ触ったけど興味はわかなかった
AIエージェント脅威期
そんな中、正確には覚えていないのですが2025年明け早々くらいから新たなワードをよく耳にするようになりました。なんかAIの前にいてなんかしてくれるぽいやつ。
まず、このAIエージェントの登場が私のAIに関するスタンスを大きく変える事になります。いまだに詳しくは理解していないのですが、このエージェントを仲介してAIモデルと対話する事でこれまでのチャットでAIと会話するだけの時とは全く違う体験をする事になったからです。この時期はDevinやCursor, windsurf などがよく話題になっていた気がします。こういったエージェント搭載の開発環境(エディタ)の登場も大きかった気がします。
チャットでAIに質問するだけだったのが、実際に我々のテリトリーである開発環境自体にAIが組み込まれ、突然身近なものと感じられるようになりました。
さらに、そのエージェントを試してみた際にスーパー雑な指示(三国志の武将をマスタから検索できるサイトを作って。くらいの指示)を出しただけで、ゼロベースから数分であっという間に検索・一覧・詳細・フィルター・武将マスタくらいの機能がある数ページのサイトが完成したものだから、めちゃくちゃびっくりしました。
はい。普通にびっくりしました。 マジか。凄すぎる!って。
この瞬間から私もAI驚き屋の一員となったと言えるでしょう。
- エージェントの登場(認識)
- 開発環境とAIがセットに
- AI驚き屋の一員に
AI焦燥期
2025年春くらいの時期になると、エージェントの力を見せつけられAI驚き屋の一員と化した私はそこから急にAIの情報をキャッチアップしたくなります。
どのモデルが良いのか?、クライアントツールは何が良いのか?モデルごとの性能の違いは?そもそもLLMとはなんなのか?等々。当時はClaudeのモデルが特に話題になっていた気がします。
この時期に自分なりに一生懸命AI関連の用語や概念を理解を深めていきました。
LLMとは何やら次に来る可能性が単語の重みを比較して出しているだけらしい。とか、ローカルで動くモデルがあるらしい(当時はDeepSeekが高性能を誇っていると話題でした)、MCPとかfunction callingという手法があるらしいなど。
意識して調べだすと大げさではなく毎日のように新しい知識や情報が洪水のように襲ってきて、プログラミングを初めて学習し出した時と同じような感覚を感じました。 用語もわからないし当たり前が何かもわからない。情報の取捨選択もできず、とにかく目についたものをまずは全て理解してみよう。というような状態です。
その甲斐もあってか、おおよそのAIを取り巻く概念は(ざっくりベースですが)理解することができた気がします。
新しい発見や発表がある度に、凄っと驚いてばかりの時期でしたがその分敵(?)の正体もだいぶ掴めてきて、未知と遭遇した際の驚きとは少し違う驚きになっていったと思います。
また、料金体系などもこの頃から色々進化していった気がします。
- AI驚き屋最盛期
- ただ、なんとなく実態も見えてきた
- この時期メインで使用していたのはCursor
RAG思春期期
敵の正体がなんとなく掴めてくると自然に次は実用的にどう使いこなすか という事に関心が移り替わっていきました。LLMがもたらしうる可能性、とまでいうと大げさですがそういった事をより意識するようになった気がします。つまり、ただ開発が楽にできるとか、レビューなどがAIでできる。など「開発の手助けをする使い方だけではもったいなく」感じるようになったと言えます。
巷の開発者の間では、どういうプロンプトを組みと良い、エージェントのルール(ツールによって名前は違うが事前設定のようなもの)をどう設定すべきか、などプロンプトエンジニアリングの話題が大半だった気がしますが、私の興味はそこにはなく(もちろん開発にもどう使うかは試行錯誤していたが)このAIの登場により、我々が作るべきサービスはどう変化していくか。 という事が一番の関心事となったと言い換えてよいでしょう。
つまり、ツールとしてではなくソリューションとしてAIとどう向き合うか。という時期に入りました。
そんな時に一番興味を引いたのはRAGでした。
元々はMCPの理解をするために学習していた際に遭遇した言葉でした。「MCPとはRAGなのか?」みたいな文脈が当時はよくありましたよね。
MCP自体は単なるプロトコルなのと、SDKで簡単に作れるので少し試してそこまで興味を引くこともなかったのですが、RAGに関してはまだ知識ゼロ学習に再ループ突入したような新しい概念だらけでした。
詳細に理解する事はできませんでしたが、
- モデルの知識と別の情報を持つ
- データストアに保存しておく(とも限らないが)
- ここで使うデータ形式はエンベッティングしたデータ
- なんか数字らしい
- LLMとは別でエンベッティングモデルを使う
- LangChainや Ollama, LlamaIndex 等々 RAG環境構築をサポートするツールがある
- AWSにもBedrockなどがある
みたいな雰囲気を理解しました。そしてそこにソリューションとしての可能性を強く感じるようになります。
そこからはひたすらローカルでRAG環境を作ってみたりBedrockを使ってRAG環境を構築してみました。
上記にある通りサポートするフレームワーク的なものが既に充実しているおかげで構築自体はそこまで難しくなかったです。
ですが、実用的な精度かどうかと言われると正直全然でした。
簡単なテキストドキュメントを拡張知識として提供したRAG環境を作成し、そこに対する問い合わせを行っても納得いく返答が返ってくる確率はかなり低かったです。拡張知識を見てはいるな、とは感じますが、これが例えば社内の仕様書や設計書などのドキュメントをRAG化して、ローカルで動く社内専用LLM環境を構築した場合、実用的になるにはあと10段階くらい必要な感覚でした。
ここでは趣旨が違うので詳細には触れませんが、RAGで与えた情報は理解しているが、逆にモデルが元々知っているはずの情報を返答できなくなる、とか、PDFのドキュメントをocrでエンベッティングした際に情報がめちゃくちゃになる、など、知識不足のせいや、RAG自体の性能が発展途上なせいなどもあり、実用的な環境の構築までには至りませんでした。
ただ、RAGはRAGでチューニング方法が今でも日々新しいものが出ているくらいなので、これから先はもっと簡単に実用的な環境が作れる時代がくる気がします。
- ツールではなくソリューションとしての関心
- RAGとの出会いと構築
- (現時点での)RAGに感じる限界
- 驚き屋はいつのまにか卒業してた
- 仕様ツールはCursorに加えてチャット用にGenSpark
AI倦怠期
春から夏にかけて、ひたすらRAGの事ばかり考えたり触ったりしていたのですが、前述の通り意図したものを作るところまではできませんでした。
「AIエージェント脅威期」にAIの正体を漠然と掴み、「RAG思春期期」に理想のローカルRAG環境を構築を目指して挫折し、驚き屋も気づけば卒業し、その先に待っていたのは倦怠期でした。
思い起こせば2025年年初からAIの事ばかり考え、囚われ、恐れ、可能性を見出し、挫折し、日々更新されるAIの最新情報に一喜一憂し(大げさ)てきましたが、特にRAG環境構築に気持ちと労力を費やしてきたので、なんかそこがいまいちな成果に終わったことにより、突然AIの事を気にするのが嫌になってきました。
どうせ、今学習しても3か月後には別の情報が優位になってるんだろ。とか、このモデルが凄い!とか言ってもまた次の対抗馬が出るたびに変わるじゃん。とか。AIの学習をする非生産性に嫌気がさしてきた感じです。
誰か結論が出たら教えてくれー
って感じ。
まあ、そんな時期もあるよね。AI関連のキャッチアップも適度に行うようになり、(元々自分もそうだったくせに)AI驚き屋が単なる情報商材屋のように成り果てていく姿を見て嫌悪感を覚えるようになります。
縁側で仲良くお茶すすり期(現在)
倦怠期を迎えはしましたが、やはり現代の開発環境にAIはもう不可欠な存在です。使わなくなるという事はありません。私は会社の社長という立場上日々コーディングタスクを持っているという事はないのですが、それでもコードを書く機会はまだたくさんあります。実プロジェクトにエンジニアとしてヘルプで入ることもありますし、個人的に作りたいものを作る機会もあります。
なので、AIを使ったコーディングについては倦怠期中も継続していました。家庭内別居みたいな感じですかね。必要なやり取りはするけど、それ以上でもそれ以下でもないような。
ただ、そんな冷えた状態だったのがある時からまた少し変わった気がします。
それはCodexの使用を開始してからです。
ここまでも書きましたが、AI環境何が最適かなどは日進月歩日々変化していくので、Codexが最高だ!最強だ!みたいな事を伝えたいわけではありません。実際私も来年はまた別のツールを使っている可能性も十分あると思います。
ですが、少なくともCodexを使用したからAIに関する倦怠期が抜けた気がします。
Codexが特別なのか、他のモデルやクライアントも現時点では同等なのか、正直それすらわかっていませんが私には凄くあっていました。
Codexは(厳密にはGPT-5-Codex)モデルの特性上プロンプトで余分な前提を一生懸命渡す必要がありません。むしろ少ないほど良いと謳われています。※ 詳細はGPT-5-Codex プロンプトガイド
一時期よく「あなたはxxxxnのプロフェッショナルです。うんたらかんたら」みたいなプロンプトを良く見かけましたよね。私も一時期多用していましたが、今は全く使っていないです。文脈もプロジェクト単位で勝手に理解してくれてる(印象)です。
シンプルな対話形式で納得いくやり取りができているのでストレスを感じる事が少なくなりました。個人的にはVSCode拡張を使ってcodex を使うのが一番楽に感じます。
また、単純に自分がAIと対話しながらコーディングする事に慣れてきたからというのも大きいと思います。計画の立て方や確認の仕方、必ず指示しておきたい事、ステップバイステップで必ず確認作業をすること、対話の際の会話スタンス、など、自分なりの使い方が確立できてきたことも大きく影響していると思います。
おかげで現時点では、開発タスクをこなす際に自力でコードを書く機会はほぼなく、Codexが書いたコードをチェックする作業がメインとなっている状態です。
- Codexが気に入った
- CursorもGenSparkも解約した
- 開発作業のメインは実装ではなくチェックに変わった
- 設計は相変わらずこっちがやるけどね
まとめ
いかがでしたでしょうか。
AIにまったく馴染みも知見も何もない、(おそらく)一般的なエンジニアがAIエージェント元年とも呼ばれる2025年にどうAIと向き合ってきたか、正体の見えない恐怖から、倦怠感やら、色々移り変わりながらもどう接してきたかの記録でした。
きっと皆さんの中にも似たような体験をされた方も多いのではないでしょうか。
AI開発というものはまだまだ発展途上だと思います。来年、再来年にはまた現在とは何もかもが違うほど進化していてもおかしくないでしょう。AIがもたらす生産性向上についても様々な意見やデータが散見します。
ですが、急速に我々の環境に変化をもたらしている事だけは間違いないです。
現在の私の所感としては、めちゃくちゃ役に立つし既に手放せない。 だが、同時にプログラミングスキルはこれまでと同様必須 という感想です。
それはAIが書いたコードを理解することがまだまだ必要とされるからです。
また、自分の目に入る環境だけで言えばプログラミングスキルが高い人ほどAIを活用できているという気がします。脳内にあるものや完成形が見えるもの、また無かったとしても出されたものを精査できる力。これらが揃う事でAIコーディングはより強力で生産性に寄与するものとなっている気がします。
余談ですが、最近では一周回ってLLMとは次に来る単語の予測がベースとなって文章を作っているというのはやっぱ嘘で、こいつは感情と脳みそを持っているのではなかろうか、という気分にさえなっています。もちろん実際にはそんな事はないでしょうが。でも、それで良いと思うんです。こいつがどうやって返答を生成しているかは重要じゃない。こいつをどう実用的に使えるかどうかが重要なんだと思います。
来年以降もまた色々な変化と向き合っていくことになると思いますが、ある意味この業種の面白いところでもあると思うので、楽しみながらより現場に取り入れていければなと思います。
最後に
ミライトデザインのアドベントカレンダーは今年で5年目。
全125記事に到達しました。
毎年記事を書いてくれるミライトメンバーや外部からの参加者の方に感謝です。
また、ミライトデザインでは、Miraito Channelというyoutubeチャンネルも運営しています。AI関連の動画やその他技術に関する動画などを不定期更新しておりますので良かったら見て見てください!
また、ミライトデザインは一緒に働くメンバーも募集しています。
気になる方は私のX や コーポレートサイト からご連絡ください。応募に限らずカジュアル面談から雑談程度まで気軽にご連絡ください!
最後にミライトデザインでは毎月勉強会を開催しています。オンライン・オフラインどちらでも参加できますのでぜひお待ちしています。
ペチオブ
ちなみに次回のイベントはこちらでLT兼書初めをします!
【ペチオブ】2026年 新年会 書き初めLT
また来年もきっとアドカレをやると思うので、参加してくれる方も毎年募集してますのでよろしくお願いいたします!