マウスコンピューターの法人向け小型PC「MousePro-M590F2-SSD」(Core i3-6100U 搭載のSkylake世代機)に Ubuntu Server 24.04 をクリーンインストールしようとしたところ、subiquity が途中で固まる現象に遭遇しました。当初は「古い CPU と subiquity の相性問題」と判断していましたが、同型機 2 台で再現実験した結果、真因は内蔵 Wi-Fi モジュール(Realtek RTL8723BE)の PCIe AER エラーストームでした。
症状
- subiquity が
extract_autoinstall付近で停止 -
Ctrl+Alt+F2でコンソールに切り替えると大量のエラーログ - ロードアベレージが 4.0 超
回避策(インストール時)
GRUB ブートメニューで e キーを押し、カーネル行に pci=noaer を追加。
linux /casper/vmlinuz pci=noaer ---
Ctrl+X でブート → インストール完走。
真因の特定
別のNUC(以下 mouse01)を Zorin OS で運用中、別件で /proc/interrupts を眺めて IRQ 121(aerdrv)が秒間数万回発火しているのを発見しました。dmesg には RTL8723BE の PCIe Correctable Error が大量に記録されていました。
pcieport 0000:00:1d.0: AER: Corrected error received: 0000:01:00.0
rtl8723be 0000:01:00.0: PCIe Bus Error: severity=Corrected, type=Physical Layer
rtl8723be 0000:01:00.0: [ 0] RxErr (First)
ここで仮説が立ちました。Ubuntu Server インストール失敗の原因も、これではないか?
検証実験:Wi-Fi UP の瞬間に発火
同型機(mouse02)にクリーン状態で Ubuntu Server 24.04 を入れて検証しました。デフォルトの systemd-networkd 環境では Wi-Fi が state DOWN のまま放置されるため、AER カウンタは 0 のまま安定しています。そこで手動で UP してみました。
$ cat /proc/interrupts | grep aer
122: 0 0 0 0 ... aerdrv
$ sudo ip link set wlp1s0 up
$ cat /proc/interrupts | grep aer
122: 0 0 60605 0 ... aerdrv ← 即座に6万回
$ sleep 30
$ cat /proc/interrupts | grep aer
122: 0 0 2552087 0 ... aerdrv ← 30秒で255万回(毎秒約8万回)
Wi-Fi UP の瞬間からエラーストームが発火することを直接観測できました。Wi-Fi スキャンや接続を試みなくても、インターフェイスを UP にしただけでドライバが RF キャリアの検出を試行し、PCIe バス上でエラーが発生し続けます。
ip link set wlp1s0 down してもストームは止まりません(ハードウェアは通電継続のため)。sudo modprobe -r rtl8723be でドライバを完全アンロードすると即座に停止しました。
永続対策
ドライバ自体を読み込まないようブラックリスト化します。
echo "blacklist rtl8723be" | sudo tee /etc/modprobe.d/blacklist-rtl8723be.conf
sudo update-initramfs -u
sudo reboot
再起動後、wlp1s0 インターフェイスが消え、AER カウンタが 0 で安定します。Wi-Fi を使わず有線LAN運用なら副作用ありません。
ディストリビューションによる挙動の違い
| 環境 | Wi-Fi 自動 UP | AER ストーム |
|---|---|---|
| Zorin OS 18.1(NetworkManager) | あり | 発生 |
| Ubuntu Server 24.04(systemd-networkd) | なし | 未発生 |
| Live USB(インストール時) | あり | 発生 |
Ubuntu Server の通常運用では問題が表面化しないため見過ごされがちですが、何かの拍子に Wi-Fi が UP されると即座にストームに陥ります。運用環境に関わらずブラックリスト化を推奨します。
教訓
「subiquity が古い CPU で詰まる」と検索すると同様の事例が多数見つかりますが、その多くは実はハードウェア起因の割り込みストームが真因の可能性があります。症状の表面(subiquity の動作)ではなく、/proc/interrupts や dmesg でハードウェアレイヤーまで掘り下げることの重要性を再認識しました。
Realtek RTL8723BE は Linux コミュニティで PCIe Correctable Error の常連として有名です。同型チップを搭載した古い NUC やノート PC で類似の症状が出たら、まず疑ってみることをお勧めします。
検証環境: MousePro-M590F2-SSD × 2台 / Core i3-6100U / 16GB RAM / Ubuntu Server 24.04 / 2026年4月

