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メンタルモデルとUIデザインをウェブサイト開発に

Last updated at Posted at 2024-07-18

ウェブアプリやスマホアプリのユーザーインターフェース(UI)デザインは、ユーザーに選んでもらえるサービスになるために重要な要素です。単なる見た目の美しさだけでなく、ユーザーがアプリやサービスを直感的に理解し、快適に利用できるかどうかが非常に重要視されています。

このブログ記事では、ユーザーにとって最適なUIを設計するために、メンタルモデルという概念について掘り下げていきます。

1. メンタルモデルとは?

メンタルモデルとは、ユーザーがシステムや製品について頭の中に構築する、内部的な表現のことです。これは、過去の経験、知識、直感などから形成され、ユーザーがシステムを操作し、その結果を予測する際に重要な役割を果たします。

例えば、スマートフォンで音楽を聴きたいとします。ユーザーは、音楽再生アプリのアイコンをタップし、プレイリストを選択し、再生ボタンを押すという操作を行います。この一連の操作は、ユーザーがスマートフォンや音楽再生アプリのメンタルモデルに基づいて行われています。

2. メンタルモデルの日常生活での例

メンタルモデルは、UIデザインだけでなく、私たちの日常生活のあらゆる場面で働いています。

  1. 自動販売機: お金を投入し、ボタンを押すと飲み物が手に入るというメンタルモデルに基づいて操作します
  2. 交通信号: 赤は止まれ、青は進めというメンタルモデルに基づいて、安全に道路を渡ることができます
  3. ドアノブ: 回すとドアが開くというメンタルモデルに基づいて、部屋に入ることができます
  4. エレベーター: ボタンを押すと、指定した階に移動するというメンタルモデルに基づいて、目的地に移動することができます
  5. スマートフォン: 画面をタッチして操作し、アプリを起動したり、情報を閲覧したりすることができます。これは、スマートフォンが持つメンタルモデルに基づいて行われています
  6. テレビのリモコン: ボタンを押すことで、チャンネルを切り替えたり、音量を調整したりすることができます。これは、リモコンの操作方法に関するメンタルモデルに基づいています
  7. 電子レンジ: 時間を設定し、スタートボタンを押すことで、食品を温めることができます。これは、電子レンジの動作に関するメンタルモデルに基づいています
  8. ATM: カードを挿入し、PINコードを入力することで、お金を引き出すことができます。これは、ATMの操作方法に関するメンタルモデルに基づいています
  9. ショッピングカート: 商品をカートに入れることで、購入したい商品をまとめて管理することができます。これは、ショッピングカートの機能に関するメンタルモデルに基づいています
  10. 検索エンジン: キーワードを入力することで、必要な情報を見つけることができます。これは、検索エンジンの動作に関するメンタルモデルに基づいています

これらの例からも分かるように、メンタルモデルは、私たちが世界を理解し、行動する上で非常に重要な役割を果たしています。

3. ユーザー体験を設計する視点 - メンタルモデルの活用

ユーザーがウェブサイトを訪れてから使い終わるまでの体験を、ユーザーエクスペリエンス(UX) と呼びます。UXを向上させるためには、ユーザーのメンタルモデルを理解し、そのモデルに沿った設計を行う必要があります。

カスタマージャーニーマップは、ユーザーがウェブサイトとどのようにインタラクションするかを視覚的に表現するツールですが、ここに「メンタルモデル」を掛け合わせることで、より深くユーザーニーズを洞察することができます。

例えば、オンラインショッピングサイトの場合、カスタマージャーニーは以下のようになります。

  1. 認知: ユーザーは検索エンジンや広告を通じてウェブサイトを発見します

    • メンタルモデル: この段階では、ユーザーは「問題解決のための情報収集」というメンタルモデルを持っています。例えば、「新しいスマートフォンが欲しい」という問題を解決するために、検索エンジンで「最新スマートフォン おすすめ」といったキーワードで検索します
    • UI設計: 検索エンジンの検索結果ページに似せた、情報が整理された分かりやすいレイアウトにする。ユーザーが求める情報に辿り着きやすいよう、サイト内検索窓を目立つように配置する
  2. 検討: ユーザーは商品ページを閲覧し、商品情報やレビューを確認します

    • メンタルモデル: ここでは、「比較検討」と「購入意思決定」という2つのメンタルモデルが働きます。ユーザーは、いくつかの商品ページを比較し、価格、機能、デザインなどを検討し、最終的に購入するかどうかを決定します
    • UI設計: 商品画像を大きく見やすく表示する。価格、スペック、レビューなどの重要な情報を分かりやすくまとめる。比較検討しやすいよう、比較表機能や、お気に入り登録機能などを提供する
  3. 購入: ユーザーはカートに商品を入れ、決済を行います

    • メンタルモデル: この段階では、ユーザーは「スムーズな購入手続き」というメンタルモデルを持っています。ウェブサイトは、ユーザーが迷うことなくスムーズに購入手続きを進められるように、分かりやすく、シンプルなデザインである必要があります
    • UI設計: 購入手続きをステップごとに分割し、進捗状況を分かりやすく表示する。入力フォームは、最低限必要な項目に絞り込み、分かりやすく入力しやすいデザインにする。入力ミスを防ぐため、入力内容の確認画面を設ける
  4. 配送: ユーザーは商品が届くのを待ちます

    • メンタルモデル: ユーザーは「配送状況の把握」と「安心感」を求めています。ウェブサイトは、配送状況をリアルタイムで確認できる機能や、配送に関する質問に答えるFAQなどを提供することで、ユーザーの不安を解消する必要があります
    • UI設計: ユーザー専用のマイページで、注文履歴や配送状況を分かりやすく表示する。配送状況をメールで通知する。配送に関するよくある質問と回答をまとめたFAQページを設ける
  5. 評価: ユーザーは商品やサービスについてレビューを投稿します

    • メンタルモデル: ユーザーは「自身の経験を共有したい」という欲求と、「他のユーザーの役に立ちたい」という altruismに基づいて行動します。ウェブサイトは、レビューを投稿しやすいUIを提供することで、ユーザーの投稿を促進することができます
    • UI設計: 商品ページに、レビュー投稿欄を設ける。星や点数で評価をつけやすくする。レビュー投稿を促すメッセージを表示する

このように、カスタマージャーニーの各段階におけるユーザーの行動や感情を、「メンタルモデル」というレンズを通して分析することで、より的確にユーザーニーズを捉え、UXを向上させることができます。

4. 一貫性のあるデザインの具体例

ウェブサイト全体で操作方法やデザインを統一することで、ユーザーの学習コストを削減できます。これは、私たちが日常生活で、特定の行動パターンを身につけていることと似ています。例えば、私たちは、新しい自動販売機でも、以前に使ったことのある自動販売機と同じように操作できることを期待します。

ウェブサイトのデザインにおいても、ユーザーが既に持っているメンタルモデルに沿ってデザインすることで、ユーザーはウェブサイトの使い方を直感的に理解し、ストレスなく利用することができます。

具体的には、以下の様な要素を統一することで、わかりやすいUIに近づけることができ、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。

  1. ボタンデザイン: ボタンの形(角丸、四角など)や色、サイズを統一します。例えば、ウェブサイト全体で角丸のボタンを使用する場合は、全てのボタンを角丸にすることで、デザインで統一感を出して「押せる」という意図を伝えることができます。押せるボタンにはすべてドロップシャドウをつけて統一するなどもよいでしょう。これは、自動販売機で、ボタンの形や色を統一することで、ユーザーは操作方法を理解しやすくなるのと同じです。

  2. タイポグラフィ: フォントの種類、サイズ、行間隔などを統一します。例えば、見出しには太字で、本文は通常のフォントを使用するなど、明確に区別することで、読みやすさを向上させることができます。これは、新聞書籍の見出しと本文のように、フォントの大きさや太さを変えることで、情報の重要度を視覚的に表現しているのと同様です。

  3. カラーパレット: メインカラー、アクセントカラーなどを決めて、ウェブサイト全体で一貫性を持たせます。例えば、ブランドカラーをメインカラーとして使用し、ボタンなどにアクセントカラーを使用することで、ブランドイメージを統一することができます。これは、道路の信号で、赤は停止を意味し、緑は進行を意味するといったように、色が特定の意味を持つことを利用して、ユーザーに情報を伝えているのと似ています。

  4. レイアウト: ウェブサイトのレイアウトを統一することで、ユーザーは情報を見つけやすくなります。例えば、ヘッダー、フッター、サイドバーの位置を固定したり、コンテンツの表示領域を統一することで、ウェブサイト全体に統一感が生まれます。これは、テレビのニュース番組を想像してみてください。どのニュース番組でも、画面上部に共通してロゴや番組名が表示され、下部にテロップが表示されることが多いでしょう。このように情報を決まった場所に配置することで、ユーザーは違和感なく情報を得ることができます。

  5. マイクロインタラクション: ウェブサイト上の小さなアニメーション効果や、マウスホバー時の効果などを統一することで、洗練された印象を与えることができます。例えば、ボタンをクリックした時に、ボタンが少しへこむようなアニメーションを加えることで、ユーザーはクリックしたことを視覚的に確認することができます。これは、物理的なボタンを押した時にボタンが沈み込むように、物理的なボタンの動作を模倣することで、ユーザーはウェブサイト上でも同様の操作感を得ることができ、迷わずに操作を進めることができます。

  6. アイコン: アイコンのデザインを統一することで、ユーザーはウェブサイトを直感的に理解することができます。例えば、ウェブサイト全体で同じアイコンセットを使用することで、ユーザーはアイコンの意味を理解しやすくなります。これは、道路標識のように、視覚的な記号を用いることで、言語が通じなくても情報を伝えることができるのと同様です。

  7. フォーム: 入力フォームのデザインを統一することで、ユーザーは迷うことなく情報を入力することができます。例えば、入力フィールドのサイズ、ラベルの位置、エラーメッセージの表示方法などを統一することで、入力ミスを減らすことができます。これは、書類の記入欄で、書くべき欄の見た目が枠線で統一されていることや、各項目には「氏名」「住所」といったラベルが明記されていることで、記入漏れや記入ミスを防ぐことができるのと似ています。

5. まとめ

ウェブサイトを開発する際、どうしても機能や技術的な側面に目が行きがちです。しかし、本当に使いやすいウェブサイトとは、ユーザーがストレスなく目的を達成できるウェブサイトです。そのためには、ユーザーのメンタルモデルを理解し、それに寄り添ったUIデザインを行う必要があります。

ユーザーのメンタルモデルとUIデザインが一致していれば、ユーザーはウェブサイトの使い方を直感的に理解し、快適に操作することができます。
ぜひ、ユーザーのメンタルモデルを意識したウェブサイト開発を行い、ユーザーにとって真に価値のあるウェブサイトを提供していきましょう。

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