1982年頃の話
FM-7というパソコンがあった。富士通が1982年に発売した8ビットパソコンだ。
当時、画像認識に興味があった。本に載っているプログラムで遊びたかったら手打ちするしかなかった。本から手打ちは大変だった。本に載っているプログラムを画像としてパソコン雑誌に載っていた方法で読み込ませたりして試していた。しかし文字を認識する方法がまだなかった。OCRは業務用の高価な専用機の世界で、個人がパソコンで文字認識をやろうとしても手法がなかった。
画像をデジタルで扱うこと自体がまだ新しかった時代だ。
40年後の話
2026年、Amazonのタイムセールで3,799円のUSB顕微鏡を買った。
京商ミニッツ用に3Dプリントで自作したギヤの歯形を計測したかった。モジュール0.5・8Tという極小サイズのギヤで、500万円の工業用歯形測定機でも接触式プローブが物理的に入らない領域だ。
PythonとOpenCVとClaudeを組み合わせたら、顕微鏡画像からギヤのフランク曲率半径・等価圧力角・左右フランクの非対称性が計測できるようになった。
FM-7の頃にやりたかったことが、40年後に3,799円で実現した。
40年間で何が変わったか
1982年(FM-7時代):
- 画像をデジタルで扱うこと自体が新しかった
- OCRは業務用専用機のみ
- 個人が画像認識をやる手法がなかった
- プログラムは自分で全部書く必要があった
2026年(現在):
- USB顕微鏡が3,799円
- OpenCVが無料
- Pythonが無料
- Claudeがコードを書いてくれる
- 工業用測定機でも難しい計測が自宅でできる
変わらなかったこと
「これを数値で測りたい」という動機は40年間変わっていない。
FM-7の頃も、測定リグを自作してArduinoで計測している今も、やりたいことの本質は同じだ。定量的に評価して、数字で判断する。
道具が変わっただけだ。
計測結果
3,799円のUSB顕微鏡とPython(0円)で計測した結果:
| 項目 | 実測値 | 理論値 | 差 |
|---|---|---|---|
| 歯先円直径 | 4.930mm | 5.100mm | -0.080mm |
| 歯底円直径 | 2.870mm | 2.750mm | +0.120mm |
| フランク曲率半径 | 0.671mm | 0.684mm | -0.013mm |
| 等価圧力角 | 17.9° | 20.0° | -2.1° |
| 左右フランク差 | +0.3° | 0° | — |
FDMの冷却収縮で歯先が縮み、材料が根元方向に移動してフィレット状に膨らむという変形パターンも視覚的に確認できた。
コードについて
FM-7からベーシック言語・マシン語・C言語・C++・Pythonまで書こうと思えば書けるが、今回のコードはすべてClaudeに任せた。その方が楽だからだ。
コードの中身は逐一確認していないが、ノギスの実測値と画像解析の結果が一致しているか、物理的に筋の通る値が出ているかで動作確認をしている。
まとめ
40年前にFM-7でやりたかった画像認識が、2026年に3,799円で実現した。
道具は劇的に安くなった。手法は誰でも使えるようになった。コードはAIが書いてくれる。
残ったのは「これを測りたい」という動機だけだ。それだけあれば、老眼でもここまでできる。
環境
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 顕微鏡 | USB顕微鏡 3,799円(Amazonタイムセール) |
| Python | 3.12(Anaconda)0円 |
| ライブラリ | OpenCV・NumPy・SciPy・Matplotlib 0円 |
| コード | Claude生成 |
| 対象ギヤ | モジュール0.5、8T、PETG |