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量子の重ね合わせ

Last updated at Posted at 2025-08-24

はじめに

最近ぽつぽつ話を聞く量子コンピューター。これの基礎知識である量子ビットの話をメモ書き程度のざっくりとした内容を書いていこうと思います。

※ここで量子力学ではなく、量子情報理論の話をします。
(超電導やゲートなど具体的にどう実現するみたいな話ではないので、その手の話が欲しい方はブラウザバックしてください。)

状態の重ね合わせ

1つの量子に、2つの状態が重なっていることです。

よくわからないですね。

では、分かりやすく体験してみましょう。

現実世界でのイメージ

イメージしやすいように実際にやってみましょう。
下記の手順に沿ってやってみてください。(床に落としたコインは指示があるまで見ないでください。)

1. 1枚のコインを用意してください。
2. そのコインを床に落としてください。(この時、下のコインを見てはいけません)

では、床に落ちたコインの状態はどうなっているでしょう?(表?裏?)
落ちたコインを見ていないので分からないですよね。「表」かもしれないし、「裏」かもしれないです。
量子の世界では、この状況を「表」と「裏」が重なっていると表現しています。つまり重ね合わせです。

この不確実な状態を一方の状態にする方法があります。これを観測といいます。
では実際に、観測を体験してみましょう。

下に落ちたコインを見てください。

どうでしたか?
表か裏のどっちかになってますよね。観測するまでは表が50%、裏が50%の不確実な状態から、観測することでどちらかの状態が100%になりました。

これがよく言われる重ね合わせのイメージです。
また、最後に確率(50%, 100%)が出てきましたが、量子では確率を使っていきます。

ブラケット記法

コインを使ったイメージ

まず聞きなれない言葉が来ました。
このブラケット記法は量子の状態を表現する方法です。具体的には下記のようなものをいいます。

\displaylines{
\Ket{0} \\
\Bra{+}
}

よくわからないですね。
先ほどのコインに当てはめてみましょう。

\displaylines{
\Ket{0}:= 表\\
\Ket{1}:= 裏
}

こんな感じになりました。
これで現実世界のたコインの状態をブラケット記法で表現できましたね!!

いや、よく考えてください。表と裏が50%ずつの状態がないと思いませんか?
というわけで定義します。(一般化しました。)

\displaylines{
\Ket{\psi} = \alpha \Ket{0} + \beta \Ket{1}\\
}

一般化された値に実際のコインの状態を当てはめてみましょう。
と、その前に観測について話す必要があります。

上記の$\Ket{\psi}$を観測すると、$|\alpha|^2$で$\Ket{0}$, $|\beta|^2$で$\Ket{1}$となります。
また、確率のため$\alpha$と$\beta$の確率を合計すると$1$になります。

|\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1

したがって、50%で$\Ket{0}$と$\Ket{1}$が出るので下記になります。

\displaylines{
\Ket{+} &:=& \frac{1}{\sqrt{2}} \Ket{0} + \frac{1}{\sqrt{2}} \Ket{1} \\
&=& \frac{1}{\sqrt{2}}(\Ket{0}+\Ket{1})
}

実際のブラケット記法

上ではコインを使ったイメージの話を多くしてきました。ここからはコインを使ったイメージから少しずつ離れていきます。
先ほどは、をブラケット記法で表現しましたが、実際はベクトルです。そのため下記を今後使用していきます。

\displaylines{
\Ket{0} &:=& \begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
\end{pmatrix}
 \\
\Ket{1} &:=& \begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
\end{pmatrix}\\
}

また、重ね合わせの状態は下記です。

\displaylines{
\Ket{\psi} = \alpha \Ket{0} + \beta \Ket{1}\\
|\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1
}

ここでブロッホ球の話をしたほうが良いのかもしれないですが、ざっくりとした理解を目標としているので省略します。

基底

次の4つを基底といいます。

\displaylines{

\Ket{0} &:=& \begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
\end{pmatrix}
 \\
\Ket{1} &:=& \begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
\end{pmatrix}\\
\Ket{+} &:=& \frac{1}{\sqrt{2}}(\Ket{0}+\Ket{1})\\
\Ket{-} &:=& \frac{1}{\sqrt{2}}(\Ket{0}-\Ket{1})\\
}

ブラ

今まで使用していた$\Ket{0}$はケットといいます。ブラケット記法という名前なので当然ブラがあります。
ブラは下記のように書きます。

\displaylines{
\Bra{0} &=& \Ket{0}^\dagger \\
&=&\begin{pmatrix}
1 & 0
\end{pmatrix}\\ \\
\Bra{1} &=& \Ket{1}^\dagger \\
&=&\begin{pmatrix}
0 & 1
\end{pmatrix}\\\\
\Bra{+} &=& \frac{1}{\sqrt{2}}(\Bra{0}+\Bra{1})\\\\
\Bra{-} &=& \frac{1}{\sqrt{2}}(\Bra{0}-\Bra{1})
}

ブラケット記法での計算

ブラケット記法は下記のような感じで計算していきます。

\displaylines{

\Braket{0|0} &=&
 \begin{pmatrix}
1 & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
\end{pmatrix} \\
&=& 1\cdot1 + 0\cdot0\\
&=& 1\\\\

\Braket{0|+} &=& \Bra{1} \left\{ \frac{1}{\sqrt{2}} (\Ket{0}+\Ket{1}) \right\} \\
&=& \frac{1}{\sqrt{2}}(\Braket{0|0} + \Braket{0|1})\\
&=& \frac{1}{\sqrt{2}}(1+0) \\
&=& \frac{1}{\sqrt{2}}

}

重ね合わせ/測定

2つの状態が重なったケットベクトルを測定(観測)してみよう!!
ある状態「$\Ket{\psi}$に対し$\Ket{0}$の測定を行う」とは下記の式になります。

\displaylines{

\Ket{\psi} &:=& \alpha \Ket{0} + \beta \Ket{1} \\\\

|\Braket{0|\psi}|^2 &=& | \alpha \Braket{0|0} + \beta \Braket{0|1} |^2 \\
&=& |\alpha \cdot 1 + \beta \cdot 0|^2 \\
&=& |\alpha|^2
}

これにより$\Ket{\psi}$は確率$|\alpha|^2$で$\Ket{0}$が得られることがわかりますね!


え、分かりにくいって?

一般化されているケットはピンとこないので、コインの話で使用した$\Ket{+}$を使ってもう一回やってみます。

表と裏が重ね合わせになっている$\Ket{+}$に対して、「表」が出るかを測定します。

\displaylines{

&\Ket{0} := 表& \\
&\Ket{1} := 裏& \\\\

&\Braket{0|0} = \Braket{1|1} = 1&\\
&\Braket{0|1} = \Braket{1|0} = 0&\\\\
}
\displaylines{
\Ket{+} := \frac{1}{\sqrt{2}} \Ket{0} + \frac{1}{\sqrt{2}} \Ket{1} \\\\
}

測定の計算は下記です。

\displaylines{
|\Braket{0|+}|^2 &=& | \frac{1}{\sqrt{2}} \Braket{0|0} + \frac{1}{\sqrt{2}} \Braket{0|1} |^2 \\
&=& |\frac{1}{\sqrt{2}} \cdot 1 + \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot 0|^2 \\
&=& |\frac{1}{\sqrt{2}}|^2 \\
&=& \frac{1}{2}
}

$\Ket{+}$を観測すると$\frac{1}{2}$でなことがわかりましたね!!!

量子ビット

ここまでブラケット記法の話をしてきました。

今までブラケットで使用してきたのは1つのブラケットでした。これが1量子ビット(1Qbit)のことです。
2Qbitの場合、$\Ket{01}$のような感じになります。

量子暗号

今までの知識を使うと量子暗号通信(BB84)が何となくわかります。

BB84

BB84は盗聴されずに鍵を共有する通信技術です。

まず規定をグループ分けします。
$Bit0$が古典コンピューターでの0、$Bit1$が古典コンピューターでの1のことです。

\begin{equation}
  01グループ=
  \begin{cases}
    \Ket{0}\\
    \Ket{1}
  \end{cases}
\end{equation}
\begin{equation}
  +-グループ=
  \begin{cases}
    \Ket{+}\\
    \Ket{-}
  \end{cases}
\end{equation}
\begin{equation}
  Bit 0=
  \begin{cases}
    \Ket{0}\\
    \Ket{+}
  \end{cases}
\end{equation}
\begin{equation}
  Bit 1=
  \begin{cases}
    \Ket{1}\\
    \Ket{-}
  \end{cases}
\end{equation}

Alice(送信)からBob(受信)に情報を送ることを想定してみます。
AliceとBobの間には量子通信をするネットワークと、既存のネットワーク(所謂インターネット)が存在し、Mallory(盗聴者)がAliceとBobの通信を傍受しようとしていることを考えます。

プロトコル

  1. $n$Bit分下記を行う
    A. Aliceは$\Ket{0}, \Ket{1}, \Ket{+}, \Ket{-}$から1つBobに送信します
    Aliceは送信したQbitの状態を(グループ, Bit)を保存する(ケット状態は保持しない)

    B. Bobは01グループ, +-グループの測定のどちらかを選択し、Aliceから送られてきたQbitに対し、測定を行う

    C. 既存のネットワークを使用してAlice->Bobにどちらのグループの状態であったか, Bob->Aliceにどちらのグループで測定を行ったか共有し、送信と測定のグループが一致しない場合は、その1Qbitは破棄する

  2. $n$Bitの中から ランダムな同一位置の$m$Bitを既存ネットワークを使用して、Alice, Bobそれぞれの$m$Bitを共有し、一致していることを確認する

  3. 確認の結果、不一致がない場合$n-m$Bitを鍵として使用する

盗聴なし

8Bitを送ることを考えます。

通し番号 Alice(送信) Bob(測定) 有効
0 $\Ket{0}$ 01グループ
1 $\Ket{0}$ +-グループ ×
2 $\Ket{1}$ 01グループ
3 $\Ket{0}$ 01グループ
4 $\Ket{0}$ +-グループ ×
5 $\Ket{1}$ 01グループ
6 $\Ket{-}$ +-グループ
7 $\Ket{1}$ 01グループ
8 $\Ket{-}$ +-グループ
9 $\Ket{1}$ 01グループ

送信したグループと測定したグループが異なる場合、$1/2$の確率で値が変わってしまうため、通し番号1を破棄します。(プロトコル1-C 参照)

次に、通し番号2,3,6,9の情報を互いに送りAliceとBobで対応するBitが一致することを確認します。

一致したので、確認に使用していない通し番号(0,5,7,8)をAlcie,Bob間の鍵として使用します。

盗聴あり(Mallory)

次に通し番号3,7が盗聴されたとします。

通し番号 Alice(送信) Bob(測定) 有効
0 $\Ket{0}$ 01グループ
1 $\Ket{0}$ +-グループ ×
2 $\Ket{1}$ 01グループ
3 $\Ket{0}$ 01グループ
4 $\Ket{0}$ +-グループ ×
5 $\Ket{1}$ 01グループ
6 $\Ket{-}$ +-グループ
7 $\Ket{1}$ 01グループ
8 $\Ket{-}$ +-グループ
9 $\Ket{1}$ 01グループ

通し番号3が盗聴(Malloryによる+-グループの観測)された場合、$|\Braket{+|0}|^2=1/2$, $|\Braket{-|0}|^2=1/2$となり、Bobの01グループ測定により、正しい情報が得られる確率が$\frac{1}{2}+\frac{1}{2}p$となります。($p$はMalloryが01グループの測定を行う確率)

上記のように、途中で観測されることで、AliceとBobで状態が一致しない場合があります.
これと$m$Bitを利用して盗聴の確認します。

ちょっとした小ネタ(安全性)

すべての確率をここに書くのは面倒なので省略しますが、盗聴があったにもかかわらずAliceが送信した状態をBobが受信する確率は下記になります。(1Qbit)

\frac{3}{4}

あれ。。。
結構、盗聴に気がつけない!!!


そうBB84は1Qbitで検証する場合、だいぶ盗聴に気が付けないんです。 では$m$Bitを増やしたらどうだろう

\left( \frac{3}{4} \right)^{80} \simeq 1.0 \times 10^{-10}

これで確率がだいぶ減り、安全になったことかわかります。
BB84は$m$が十分に長いと安全なことがわかりますね!!!(安全性が欲しい場合は$m$を大きくするとより安全になることもわかりますね)

また、Qbitは量子のため量子通信ネットワークの量子ビットを複製して、Alice-->Bob間の通信と同じ通信をMallory宛てにすることができません。この複製できないことをクローン禁止定理といいます。

最後に

今までざっくりとしたイメージの話、 そこからブラケット記法、測定、量子通信の話をしてきました。
量子コンピューターを少しでも知りたい!!と思った方の助けになれたら幸いです。

p.s. 間違ったことを言っていたらご指摘お願いします。 m(_ _)m




量子もつれも書こうかなー

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