はじめに
「みんな頑張っているのに、なぜかチームが楽にならない」
定期的にリリースはしている。タスクも回っているし、手も動いている。
それでも、リリース前は毎回ギリギリで、終わると消耗感だけが残る。
こういうチームでよく聞くのは、
「忙しいから仕方ない」「今は踏ん張りどころ」という言葉です。
でも、このつらさの正体は個人の努力不足ではなく、ビジネスのフィードバックが遅いことにあります。
- 作ったものが本当に価値あるものか分かるのが遅い
- 方向修正が入る頃には、変更コストが大きい
- 結果として、頑張りは増えるのに、次の意思決定に活かせる学習が増えない
この記事では「頑張っているのに楽ならない」チーム体制を、
フィードバックと学習の遅さという観点で課題として捉え、言語化します。
1 経験:要件を固めて進めるほど、後半の変更が重くなる
多くのチームは最初、こういう進め方を選びがちです。
- まず要件を固める
- それを設計・実装し、最後にまとめて検証する
- リリースまで持っていく
このやり方(なんちゃってウォーターフォール)は、初期の見通しが立てやすい反面、現実にはこうなりやすいです。
- “作ってみたら違った”が後半に出る(そもそも、経験の浅い人は特に要件を詰め切ることが難しい)
- 仕様変更が、設計・実装・テスト全体に波及する
- 変更が怖くなる → フィードバックの受け取り方が鈍る
そして「定期リリース」をしようとする(なんちゃってスパイラル)と、さらに難しくなります。
- 定期で出したい → でも毎回ギリギリ
- スケジュールは常にぱつぱつ
- 検証や学習の時間が削られ、次のリリースも苦しくなる
ここでよくある落とし穴は、「回している感」はあるのに、
フィードバックが次の開発に反映されるまでの距離が長いことです。
回しているのに学習が加速しない。だからしんどい。
2. 課題:いちばんの課題は「学習が遅い」こと
リリースが苦しくなる現場で、だいたい起きていることは同じです。
- フィードバックが入ってくるのが遅い
- 入ってきても反映までさらに遅い
- その結果、改善の手応えが弱く、次の意思決定の精度も上がらない
つまり、問題の本質は「開発していない」ではなく、
学習(フィードバック → 改善)サイクルが遅いことにあります。
この遅さが連鎖すると、こうなります。
- PDCAが遅れる
- 価値提供が遅れる(“正しいものを作れている確率”が上がらない)
- スケジュールは常にぱつぱつになる
- 余裕がないので検証もできず、さらに学習が遅くなる
- 最後は、リリース日が後ろ倒しになり続ける(=ビジネス上の損失が膨らむ)
ここで重要なのは、「頑張りが足りない」ではなく、
構造として遅くなる進め方になっているケースが多いという点です。
3. あるべき姿:価値最大化のために「学習の量と速度」を上げる
目指すのは結局ここです。
- ビジネス価値を最速で届けたい
- しかも、当てずっぽうではなく、確度高く当てたい
- そのために、学習を回して意思決定の精度を上げたい
価値最大化を「当たりを引く確率を上げること」だとすると、やるべきは明確で、
- 小さく作る
- 早く見せる
- 早く学ぶ
- 次に活かす
この繰り返し(=学習サイクル)を 量 × 速さ で増やすことが、顧客満足につながります。
4. 解決策:スクラムは「学習を最短距離にする」ための道具
そこで出てくるのがスクラムです。
スクラムの強みは、ざっくり言うと
「学習を遅らせない仕組みが最初から組み込まれている」ことです。
スクラムが効くポイント
(1) フィードバックが遅い → “必ず見せる場”を固定する
スプリントという区切りを作ると、「いつ見せるか」が曖昧にならず、レビューの入口が消えません。
(2) ぱつぱつ → “期間固定・スコープ調整”に寄せる
大きいタスクで延期し続けるのではなく、期間を固定し、入れる量を調整する発想に切り替えられます。
(3) 後ろ倒し → “小さな価値を前倒しで出す”に寄る
毎回“完成形”を狙うのではなく、価値を刻んで前に出すことで、意思決定が前倒しになります。
まとめ:しんどさの正体は「学習の遅さ」で、処方箋は「学習の仕組み化」
- 経験:要件固定・後半一括で検証するほど、変更が重くなり、後ろ倒しが起きる
- 課題:フィードバックが遅く、PDCAが回らず、価値提供が遅れる
- あるべき姿:学習の量と速度を上げ、意思決定の精度で価値を最大化する
- 解決策:スクラムで“必ず学ぶ”構造を作り、学習サイクルを短くする

