はじめに
この記事は、下記のアドベントカレンダーのために作成した記事となります。
午前中は1冊も売れず絶望したが、午後に2冊売れて救われた話です
技術同人誌とは?
この記事を見ていらっしゃる方には釈迦に説法かもしれませんが、商業誌は出版社が発行するのではなく個人が自費で出版して頒布している書籍及びそれに関連する製作物が該当します。
今回のアドベントカレンダーの企画元である技術書同人誌博覧会(通称:技書博)や、技術書典といった技術同人誌を中心にした頒布会が開催されています。
作ってみようと持ったきっかけ
シンプルに、「楽しそう!」と思ったからです。
東京で勤務するようになってからたまたま旧XのTwitterで技術書を自分で作って届けるというイベントの通知が流れてきて、世の中にはこういったアウトプットをしている人がいるのか!と驚きました。
それなりの厚さの本の形にするのだけでも一苦労だというのに自分で自分の持っている技術を紹介してあわよくば(あわよくなくても?)広めようという情熱・・・そんなものを感じてそういった頒布イベントに興味を持つようになりました。
初めて行ったのが技術書同人誌博覧会(通称:技書博) で、そのあと技術書典にも一般参加したことがあるのですが、頒布会によって雰囲気が違うな~~と感じました。
- 技書博:少しこじんまりとしているかもしれませんが和気あいあいとした感じ
- 技術書典:会場は広いがサークル参加者間はややドライ?な感じ
あくまでもこれは感想に過ぎないのですが、初心者には和気あいあいとした雰囲気の技書博がいいのかなという点と、実際人生で初めて足を運んだ技術書オンリーイベントということで技書博に人生で初めてサークル参加することにしてみました。
作成した本
今回は自分が経験しているSAPというERPパッケージ製品に関連する、GUIツールの利用方法について実際の画面を交えつつ利用の癖を説明し、少しでも使い方のイメージを持ってもらおう・・・ということで同人誌デビューの題材、折角自分で頑張って作成するのですから、他人と被りにくいものにしたいなという思いからこの題材を選びました。
想定読者層は
-
AWS on SAP (PAS試験 ※もう廃止されたけど)
-
Azure on SAP (AZ-140)
などの試験で、「SAPってなんだ?」ってなっている人 -
これからSAPを操作するけど何かよくわかってない人
-
忘れたころに対応しないといけなくて困ったときの自分
これらの方々に届けるつもりで作成しました。
作成で苦戦した点
一番はERPパッケージ製品ということもあり、実行可能な環境を準備するのに手間取りました。ブログなどでABAPの環境を構築すればSAP-GUIを操作することができるようになるのでその構築のためにミニPCをこしらえ、VM環境を作成してその中に実行環境サーバを立てるようなことをしました。
実務経験でインフラ担当になったことはないのですが、ネットワークや基盤周りといったこれまで自分が経験したことのない経験ができ、とてもよかったと思います。
そのあとは実際に書くコンテンツのアウトラインを作成し、組版については初心者がこだわることもあるまいとWordを選択してそろそろ執筆しないと~という
その時、事件が起こった
… 開発環境を構築したミニPCから少し音がしたかと思うと、二度と動かなくなりました。
破裂音だったか、スイッチの「カチッ」という音だったか、とにかく、故障しました。
- 環境構築に2週間かかった
- ミニPC代数万円が水の泡
- 見本誌締切まであと10日
大きな手戻りです。気がめいってしまい正直、一度ここであきらめようかなとも思いました。ただ、「やります」と公言してしまった以上引くに引けず、すべきことはしなければなりません。修復が出来ないと見切りをつけた翌日にはAmazonでPCを買い、再度環境構築に苦しみ、何とか、見本誌の締め切り5日前に開発環境の再構築を完了しました。
今思うに「貴様の作った本など読みたくない」という神的存在の思し召しだったのでしょうか?だとしたらそんな意地悪をしてくる神など不要ですね。
そこからは毎日9時から22時まで仕事した後、家に帰って日付をまたぐ手前ぐらいから必死に執筆をする日々・・・生成AIに目次をもとにベースラインと追加の提案をもらって、提案を採択したら自分の考えをただひたすらにキーボードで打鍵する時間を過ごしました。
見本誌提出期限の当日となる最終日は完徹しました!卒論ですら1時間寝られたのになぁ…
人生、いついきなり完徹することになるかわからないものですね・・・(笑)
印刷会社さんにお願いする余裕もなかったのでコンビニのプリンタを使って手作りの中綴じ本を用意しました。
本当はカラーにしたかったのですが…1冊の印刷費用だけで1500円かかるので諦めました。
題材も題材ですから7冊印刷し、2冊は見本誌ということで5冊売れれば大成功!ってことで事前準備もOK。
期限ぎりぎり、ほうほうの体で何とか見本誌を提出してOKをもらい、当日会場入りしました。
当日苦しんだ点
会場に先立ち別会場のほうで出版社さんの講演もあり、話を聞くしかできませんでしたが興味を惹かれる内容でした。将来的には印刷会社さんにお願いしたいなぁと期待も膨らませつつ・・・
午前中の感想
率直に申し上げます
お金を払って受ける罰ゲームかな?
イベントが悪いわけではないんです。すべては私の責任なのです。
下記、敗因の分析です。
理由1:題材にERPパッケージを選んだため、流行り・鉄板外で臨むことになった。
- 「せっかくだし見たことないジャンルを」ということで鉄板から外れたら見てもらえない
- 当日はAWSやAI、セキュリティ題材は沢山お客さんがいらっしゃったように感じました
理由2:表紙、何かよくわからない
- 手ぶら+よくわからない青白の表紙
- ⇒ みてもらえるわけがない!
- ほかの方の参加エントリを拝読してみても、表紙の要素が大きいという分析をされていたので表紙はもっと時間をかけてこだわるべきなのかもしれません。
理由3: スペース、何も準備されていないので何もわからない
- 周りはきれいにスペースを整えている方やこちらは裸一貫机と題材のみ!
- 周りとの格差にいたたまれなくなりました。
理由2と理由3を複合して思うのは
- プロダクトアウト と マーケットイン って言葉がありますが
- プロダクトアウトで革新性を追求しつつ、
- マーケットインで市場性を確保する、
これがマーケティング戦略を考えるうえで大切だと思うのですが…
そもそもアウト・イン両方とも貧弱(よく言えば伸びしろだらけ)なので刺さらない。
理由4:重要:1冊も売れないので「自分の提供するアウトプットに価値はない」という事実を突きつけられた
- これが一番精神的に突き刺さりました。周りは売れていくのに、こちらは見向きもされないのです
- お金と苦労を払って受ける羞恥プレイなのかな?そういうプレイなん?(冒頭の感想へ)
- いっそ参加しなかったほうがほかのサークルに迷惑をかけないで済む分よかったのではないか…
頒布会の洗礼を痛烈に浴びた、そんな午前中でした。
いっそ午前中で切り上げて帰ってしまおうかとも思ったのですが結局プライドが邪魔したのか諦めきれずに残りました。
※最後まで残って売れなければそれはそれで笑いのネタにできると思って…
午後の感想
午後…まったく売れる状況にもなく自分の周辺だけ暗い雰囲気が流れていたような気もするのですが、なんと、2冊売れました!お買い上げいただいた方に興味を持っていただいた理由など話を聞く限りではこんな感じ
- ERPについては全く触れたことがないので操作の癖がどんな感じなのか気になった
- 製造関連の案件に携わりそうだがERP系のコミュニティの存在を知らないのでなかなか情報を収集するすべが思い当たらない。勉強になりそうだと思い買おうかな…と思った。
午後になると数度声をかけてくださる方も増えたように思います。
当初はGUIの操作説明という感じで声をかけていたのですが、操作の面倒な癖を説明する本です!というようにこの本の持っているメッセージを伝えると気にしてくれる人もちらほらと出てきたように思います。
一番の救いは、「自分のアウトプットに価値を見出してくれる人がいる」ことでした。これはお金に代えがたい大切な経験として今でも頭の中に残っています。お買い上げいただきました2名の方、本当にありがとうございます。
この逆転満塁サヨナラホームランのおかげで、次回についてももう少し頑張ってみようという気持ちになりました。
総評
- 初心者は比較的メジャーな題材を選んだほうが良いと思います
- そもそもの市場がないと誰も買ってくれる可能性は(ほとんどの場合)ありません
- メジャーな題材は「売れないというプレッシャー」にさらされるリスクは低く抑えられると思います
- この「売れないというプレッシャー」は自分自身の存在価値を揺るがしかねないので極力避けたいものです
- ニッチな題材でも、目を向けてくれる人は(本当にまれだと思いますが)います
- 頭の片隅に、しかしながら頭に残り続けているニーズを喚起する行為はかなり難しいです
- しかしそれが出来ればその市場は独占できます。ここはどの市場でも同じかもしれませんね
- 何度か同じ題材で出店していれば「~~の人」という立場も出てくるかもしれません
- しかしこれらの立ち位置は一朝一夕に出来上がるものではないので強い意志が必要と思います
- あ!大事なことを忘れてました!
- ちゃんとサークル名は決めましょう!
- 自分の出したものにはちゃんと自分の名前で自分の責任をもって送り出したい…と思って、初参加の時は本名で参加したのですが………サークルページにサークルさんの名前がある中自分の本名がでかでかと掲載されるのは、超、恥ずかしい!ただの自己顕示欲の強い人になってしまいました
- 個人の思いによりますがあまりの恥ずかしさにまともに宣伝できなくなってしまい、これがこんな本あるんだ…という情報がいきわたらない原因になったので「サークル名は別に用意しておいて、その主宰として本名を名乗る」のが私としてはちょうど良いかもと思いました
次回予告
次回は来年5月に技書博13の開催が決まっています。
私の午前の感想は正直なものであり、もし恐怖に駆り立ててしまったらすみません。しかしながらこの「自分の経験をアウトプットして価値を届ける」経験はほかに代えがたいとてもいい経験です。特に、自分の作ったものが他人に届いた時というのが一番やってきてよかったなと思う瞬間の一つです。不安であれば個人ではなく企画で何人か集まって執筆する企画もあるようですからそこからでも十分だと思います。
一般・サークル参加どちらでも楽しめるイベントですからぜひ気軽にお越しください。
私も、(今度はもっとメジャーなものも含めて)題材を決めてもう一度参加しようかなと思ってます。
お会いできることを楽しみにしています。