今回もハイデルベルグ大学が提供するohsomeのダッシュボードを感謝とともに利用させてもらいます。今年リリースされた下記「OSM Quality Analyses」機能で建物の統計を拾ってみました。
出典:ohsome DASHBOARD Easy access to OSM History and Quality Analyses
マップ上で対象エリアを指定し(エリアをクリック後、選択されるまでやや時間が掛かるので気長にお待ち下さい)「Topic」で統計を取る対象物を指定し「Completeness(コンプリート率)」、「Currentness(最新性)」のいずれを分析するかを選びます。ここでは建物件数を指定し、両方を分析するように選んでいます。
「Run Query」ボタンでクエリーが走り、しばらく経つと下部にそのエリアの集計・分析結果が表示されます。
出典:ohsome DASHBOARD Easy access to OSM History and Quality Analyses
Mapping Saturation (マッピング飽和度)
飽和曲線というのか成長曲線というのかよく分かっていませんが、マッッピングが時系列で栄枯盛衰的に進展していく様をS字カーブの曲線モデルにあてはめて、現在どの段階にあるか、最終的には伸び率がゼロに近づいて飽和する見通しはどうか、といった内容を可視化しようとしているもののように思えました。(違っていたらご指摘を)
上記左側の日本全国の折れ線グラフでは(マウスカーソルを近づけると数字が読み取れます)以下のような結果でした。
・2023/11現在のOSMから抽出した建物数:20,729,330件
・ツールが見積もった建物総数:23,413,610件
・S字カーブから読み取れる直近3年の飽和率:72.53%
この数字を元にすると、日本全国の建物のコンプリート率は
20,729,330÷23,413,610✕100=88.5%
となりますが、個人的にはまだまだマッピングされていない建物は多いと感じているので少し違和感のある数字です。
調べてみると2016年現在の日本の建物数が3千9百万件という調査がありました。仮に4千万件を基準にすると
20,729,330÷40,000,000✕100=51.8%
となり、実感と近いと思えるため、以後コンプリート率はこちらを基準に計算してみます。
Currentness (最新性)
こちらは対象の地物がどれだけ更新されているかの目安を示すものです。上記右側の棒グラフの緑の部分が直近の3年間で追加・更新されたものでその割合が高いほどデータの鮮度が高いということになります。
棒グラフ上部の解説部分に直近の3年間での更新率が35%と書かれています。covid-19と重なる時期に約1/3の建物が新しくなったということになります。
ちなみに以前の記事では2016年時点での建物マッピング数は日本全国で約490万件とあり、7年間で4倍に増えています。いつまでたってもゴールの見えない感のあった建物マッピングですが、折り返し点に来たということは言えるんじゃないでしょうか。
都道府県別の比較
都道府県によりかなり特徴が異なっています。みなさまの地元はいかがでしょうか。実感に近い数字でしょうか。それとも。。
スプレッドシートはこちらに置いてありますので分析してみたい方はご自由にお使いください。
さいごに
このS字曲線での飽和率の考え方がもしロジスティック方程式のようなものを当てはめているものだとすると、それがマッピング量の増加を測る手法として適当かどうかはかなり実験的な試みなんじゃないかと感じました。今後ともハイデルベルグ大学のチャレンジには期待・応援しています。