定点観測ということでいつものように都道府県別の半期集計をしようとしたところ、出典として利用させてもらっているOpenStreetMap Analyticsがどうやら動かなくなっているようです。そこで、代替策を調べていたところ、界隈では有名なハイデルベルク大学がohsomeという、過去に遡ってOSMデータの統計が取れるという素敵なサービスを提供していたので試させてもらった結果、代替策というより、日本でのマッピングが始まった2007年頃から、タグごとなど、より詳細な分析ができることが分かりました。
定点観測はひとまず脇において、日本全体の2007年頃から2019年までの地物の推移をいくつかピックアップして分析してみた結果を紹介します。
#1 道路タグ別距離数(km)TOP11
(グラフの元データ)
2011年頃の急速な伸びはyahooさんからのALPSデータインポートによるものであることは明らかです。いろんなことがありましたね。その後、2013年頃をピークにmotorwayやtrunkからtertiaryくらいまで、国や都道府県の管理道路に相当する距離はほぼ横ばいとなっています。国道や都道府県道は新しいもの以外はあまり描くことがなくなった肌感覚とも一致しています。
一方でunclassified,roadやresidential以下の道路はALPSデータでは古かったり、市区町村管理の道路と私道の見分けが付きづらかったりと、やや混沌とした部分が残っており少しずつ距離が増えています。residentialが2019年に少し減少したのは他のタグに変えられたということなのか、よくはわかりません。
伸びが顕著なのは5番目のtrack(農道、林道など)で、このあたりから商用地図では描かれにくい、OSMならではの地域密着型マッピングの傾向が現れているような気がします。なお、農道や林道は国交省の道路統計からは外れています。
serviceも伸びています。施設内の道路や住宅街の路地で使われているのでしょう。pathやfootwayなど歩道系の伸びもOSMの特徴と言えそうです。
#2 道路距離(km) - 管理者・用途別集計
(グラフの元データ)
国交省の道路統計年報2019「表2 道路現況総括表」(2018/4/1現在)によれば、国や自治体の管理する道路の実延長は1,224,765.6km。農道、林道、私道、自転車道、歩道は含まれないので比較が難しいのですが、上の表のうち、「管理道路小計」と「私道小計」を足した数字(約1,498,672.7km)と比べれば、100%には至らずとも、かなりのところまではマッピング済であろうと推測されます。
あと、この表で興味深かったのは自転車道がグラフで数字が読み取れないくらいに少ない(短い)こと。自転車専用道だけだとこんなものなのでしょうか。自転車道は今後増えて行く方向性と思われるため、日本での自転車道のマッピングルールが明確化されると距離数も増えて行きやすいように思えます。現在は車道や歩道との兼用が多く専用道ですっきりマッピングしづらいというところもあります。
#3 建物数
(グラフの元データ)
衛星/航空写真からいちばんトレースしやすい地物であるだけに順調に急速に伸びています。全国で約1250万軒マッピング済みですが、まだ落ち着く感じにはなっていません。
#4 shopタグ数
(グラフの元データ)
ランキングには社会情勢やマッパーの興味の対象が反映されているのではないかと感じます。やはりコンビニは何はともあれマッピングしますよね。理美容院が2位というのはやや意外でしたが、言われてみれば地域ニーズに密着していて、空き店舗が増えている地域でも根強く残っている気がします。以下、まぁ、現代の身近な衣食住に関わるPOIが続いています。
コンビニの全店舗数はこちらの記事によれば56,936軒でOSMマッピング済が約4万件なのでまずまずの網羅率です。しかしながらそれ以外はどこかの自治体の統計ではないかと思うくらいのレベルのように思えます。まだまだやることがいっぱいあって楽しみです!
#5 amenityタグ数
(グラフの元データ)
駐車場が1位なのは建物と同様にトレースしやすいということがあるのでしょうか。以下は飲食店や公共施設といったところ。公共施設は一時期の国土数値情報インポートによる影響が大きそうです。
#6 さいごに
ohsomeは、ブラウザからの操作だけでかなりのところまで統計的な数字が拾えます。条件のandやorなど細かい指定まではできないのですが、APIも公開されていて、こちらを使うとより複雑な条件指定などもできるようです。