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交通事故オープンデータ+OSM+街路写真による交通事故分析の試み(2)

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交通事故発生原因って何?

「交通事故発生原因」で検索してみると交通関係のメディアや保険会社の啓発サイトらしきものが上位に現れ、事故原因の第1位は漫然運転、第2位は脇見運転、、といったような記述が散見されます。警察庁の統計交通白書などに出ている法令違反別の統計を元にしていると思われますが、これは交通事故を法令違反の種類ごとに分けたものであり、あくまで法を犯した当事者が悪い、という立場でのとらえ方です。まぁ、法令違反が悪いのはそりゃそうですが、人間だもの、間違いはあります。悪いのは当事者だけなのでしょうか。気合いを入れ直して運転すれば事故は減るのでしょうか。

環境要因はファクトに基づく対応が可能

他方、前回記事で見てきたように人間のうっかりを誘発しやすい環境要因というものもありそうに思います。法律違反はやめましょうといった精神論より、この交差点では事故が発生したが、運転手目線で見るとポールが視界を遮っているので動かして視界を確保しましょう、といったファクトに基づく対応の方が具体的で成果の検証も行えます。とはいえ責任のなすりあいのような議論は生産的ではないので、ここではデータに基づいた分析を試みます。

出会い頭自転車事故54件の分析

こちらが分析結果一覧のシートです。位置が大きくズレていたり車道の中心部にあったりして事故発生時の状況が推定できないものが17件あったため、分析に使えるデータは37件となりました。

自転車の通行帯

自転車通行帯の分類は国交省のサイトにあった「2.自転車通行空間の種類と通行ルール」という資料の分類に基づいています。ただし、路側帯のある車道は細かく言えばさらに3種類ありますがここではその区別はせずひとつにまとめて、全部で9種類に分類しました。

事故発生時の自転車の通行帯 件数
(1)歩道 1
(2)自歩道(自転車歩行者道) 21
(3)車道(路側帯無、歩道無) 3
(4)車道(路側帯無、歩道有) 0
(5)車道(路側帯/路肩) 11
(6)車道(自転車走行指導帯) 0
(7)自転車専用通行帯(自転車レーン) 1
(8)自転車道 0
(9)自転車専用道 0

chart (1).png

(1)と(2)を合わせて歩道内走行が22件、車道走行が14件、専用通行帯走行が1件でした。この数字で仮説を立てるとしたら次の通り:
- 自転車は車道よりも歩道を走行している時のほうが出会い頭の事故に遭いやすい。
- 自転車専用の通行帯がある場合には出会い頭の事故が起きにくい。

さらに歩道内走行22件の走行位置を調べると:

歩道内での走行位置 件数
(1)車道寄 11
(2)中央 3
(3)民地寄 8

chart (2).png
ということで走行位置が車道寄か民地寄かで今回大きな差は出ませんでした。文献(交通工学研究会発行「自転車通行を考慮した交差点設計の手引」19ページ)によると民地寄の方が事故が多くなっていますが、ここではむしろ車道寄の方がやや事故が多い結果となりました。(当方の推定誤りの可能性あり)

自転車の走行方向

本稿では車両としての本来の走行方向を順走、その反対を逆走としています。

走行方向 件数
(1)順走 14
(2)逆走 23

chart (3).png
逆走は順走より危険と言えそうです。

出会い頭事故発生交差点の類型

交差点の類型 件数
(1)細街路から幹線への合流点 17
(2)駐車場から幹線への合流点 9
(3)T字路 5
(4)十字路 6

chart (5).png
(1)と(2)はいずれも幹線の路側帯または歩道を通る自転車と、幹線に合流する自動車の交点であり、形態としてはほぼ同様。危険な交差点のパターンということができそうです。

事故を誘発する要素

自動車運転手の視界遮蔽物有無 件数
(1)左右 31
(2)右のみ 5
(3)左のみ 1
(4)なし 0

出会い頭事故の発生箇所では、必ず何らかの物体が運転手の視界を遮っていることが分かります。

事故を減らす(目的の)要素

信号機 件数
あり 1
なし 36

信号機設置の効果は明らかです。

横断歩道 件数
あり 12
なし 25

横断歩道がない箇所では、それがある箇所より2倍事故が起きていますが、信号機ほど効果が高いわけではなさそうです。

カーブミラー 件数
左右 4
右のみ 3
左のみ 5
なし 25

有無でいえば12:25で、横断歩道とほぼ同等です。

一時停止標識 件数
あり 13
なし 24

横断歩道とほぼ同等です。

停止線 件数
停止線+「とまれ」文字 10
停止線のみ 9
なし 18

有無でいえば19:18で、こちらの効果は、横断歩道より低いようです。

まとめ

標本数が37と少なく、位置情報の誤差や素人ゆえの誤りも含まれる前提ですが、今回の結論(仮説)として自動車対自転車の出会い頭事故に関してはおおよそ以下のようなことが言えそうです。

  1. 自転車は車道よりも歩道を走行している時のほうが出会い頭の事故に遭いやすい。
  2. 自転車専用の通行帯がある場合には出会い頭の事故が起きにくい。
  3. 車道脇でも歩道でも、逆走は順走より危険。
  4. 細街路や駐車場からから幹線への合流地点が出会い頭の最大危険ゾーン。
  5. 自動車運転手の視界を遮る障害物は事故に直結する可能性が高い。(逆に言えば取り除く効果が大きい)
  6. 交通安全設備で明らかに効果が高いのは信号機。横断歩道、カーブミラー、一時停止標識はある程度効果がありそう。

つづき

Code for Sagaのみなさんが今年もこのデータの分析をされるそうなので以後はそちらにお任せしようかなというところです。
福岡県も同等の交通事故データを2年分こちらでオープンデータとして公開しました。まとまったデータなので本格的な分析が可能だと思います。こうしたデータの公開をきっかけに交通事故を自分ごととしてとらえ、市民と行政が協働して取り組まれる動きが広がることを願っております。ご興味ある方はぜひどうぞ。You can do it!

交通事故オープンデータ+OSM+街路写真による交通事故分析の試み(1)

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