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コモンズの地理データの活用(1) ウィキペディア編

Last updated at Posted at 2021-05-07

1 「コモンズの地理データ」とは

ウィキメディア・コモンズには画像、音声、映像などと並んで、ベクトル地理データも保存できるようになっています。ファイル形式はほぼGeoJSONですが、ライセンスや初期表示位置など必須のメタデータもいくつか決まっており、一般的なGeoJSON形式のデータを格納する際にはひと手間必要です。
当然ながらウィキメディア財団のプロジェクトとは相性がよく、テンプレートを介してウィキペディアウィキボヤージュで利用することができます。ウィキデータでも「コモンズの地理データ」というプロパティの値としてURLを記述することで、そのクエリーサービス上で可視化等に利用することができます。

なお、データあたり2MBまでというサイズ制限があるため、精緻・広大な地理データの格納には向いていません。利用する際にも高い位置精度が求められるような用途ではなく、ベースマップに対するオーバーレイのようなアバウトな可視化用途に適しています。

今回はウィキペディア上での使い方の例を紹介します。ウィキペディアで地図表現をする際にはOSMの地理データがよく使われていますが、地物の中にはOSMに登録するには微妙なものがあります。地理的な境界が曖昧なもの(◯◯地域、浸水エリア)や、OSMの対象外となっているもの(過去や未来の地物、ごく短期の一時的な地物)、取り扱いがよくわからないもの(選挙区、学校区、マラソンのコース、商店街)などです。こうしたもののうち、ウィキペディア記事の充実に役立ちそうなものを「コモンズの地理データ」に登録して使うと良いでしょう。

2 ウィキペディアの廃止市町村の記事に地図を表示する

行政区画は統廃合された後にも、その地域での生活に馴染んだ区画の呼称として残り続けることがよくあります。こうした区画はウィキペディアではCategory:日本の市町村 (廃止)などで丁寧に残されており、歴史的な経緯をたどる縁となっています。
しかしながら、その境界が地図上で明示されていることは少ないため、かなりもやっとした地理感覚になっていることが多いでしょう。

ありがたいことに「ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター (CODH)」から歴史的行政区域データがCC BY-SA 4.0で公開されています。古いもの(1920年頃より)ではややズレもありますが、現在の地図に重ねるとその区画がどのあたりに広がっていたのかがよく分かります。

ここではこの「歴史的行政区域データ」をもとに、過去の行政区画をウィキペディア上にベクター地図として表示する手順を紹介します。

2.1 該当区画のデータを探す

見つけたい区画名を検索画面で入力して探します。ここでは「明村」と入力しました。

探しているものが2行目にありました。

市区町村IDをクリックします。

GeoJSONを選んでブラウザで開くかローカルに保存してテキストエディタ等で開き、いちばん外側の{}を外してコピーします。

2.2 コモンズに登録

2.2.1 概要

コモンズには「Data:」という名前空間に「.map」という拡張子を付けてGeoJSONデータ(+規程のメタデータ)を保存することができます。
命名規約は特に明示的には無いのですが、国ごとの階層構造を作れるように最上位ディレクトリには英語の国名を付けて/で細分化することが多いようです。日本での登録例

2.2.2 「コモンズの地理データ」の登録手順

ここでは松戸市の前身となった町村のうち、「明村」を登録してみます。
コモンズにログインした状態で、ブラウザのURL欄に以下のように入力します。
https://commons.wikimedia.org/wiki/Data:Japan/Chiba-ken/HigashiKatsushika-gun/Akira-mura.map

すると以下のようなGeoJSONファイルの雛形が表示されます。

{
    // !!!!! All comments will be automatically deleted on save !!!!!

    // Optional "description" field to describe this map
    "description": {"en": "map description"},

    // Optional "sources" field to describe the sources of the map.  Can use Wiki Markup
    "sources": "Copied from [http://example.com Example Map Source]",

    // Mandatory "license" field.
	// Recommended license: CC0-1.0.
	// Please uncomment one of the licenses:
	// "license": "CC0-1.0", // クリエイティブ・コモンズ・ゼロ
	// "license": "CC-BY-1.0", // Creative Commons Attribution 1.0
	// "license": "CC-BY-2.0", // Creative Commons Attribution 2.0
	// "license": "CC-BY-2.5", // Creative Commons Attribution 2.5
	// "license": "CC-BY-3.0", // Creative Commons Attribution 3.0
	// "license": "CC-BY-4.0", // Creative Commons Attribution 4.0
	// "license": "CC-BY-4.0+", // Creative Commons Attribution 4.0 or later version
	// "license": "CC-BY-SA-1.0", // Creative Commons Attribution-Share Alike 1.0
	// "license": "CC-BY-SA-2.0", // Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0
	// "license": "CC-BY-SA-2.5", // Creative Commons Attribution-Share Alike 2.5
	// "license": "CC-BY-SA-3.0", // Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0
	// "license": "CC-BY-SA-4.0", // Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0
	// "license": "CC-BY-SA-4.0+", // Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 or later version
	// "license": "ODbL-1.0", // ODC Open Database License v1.0
	// "license": "dl-de-zero-2.0", // Data licence Germany - Zero - Version 2.0
	// "license": "dl-de-by-1.0", // Data licence Germany  attribution  Version 1.0
	// "license": "dl-de-by-2.0", // Data licence Germany  attribution  version 2.0


    "zoom": 3,
    "latitude": 0,
    "longitude": 0,
    "data": {

        ... GeoJSON ...

    }
}

説明欄に以下の様に記入します。
"description": {"ja": "千葉県東葛飾郡明村(1889/4/1-1933/3/31)"},

情報源欄に以下の様に記入します。
"sources": ""Copied from [https://geoshape.ex.nii.ac.jp/city/resource/12B0140038.html 千葉県東葛飾郡明村 (12B0140038) | 歴史的行政区域データセットβ版",

ライセンス欄に以下の様に記入します。(提供元のライセンスと同じものを選んで先頭の//を削除します。)
"license": "CC-BY-SA-4.0", // Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0,

この地物の初期表示ズームレベルと位置を指定します。(厳密なものでなくても構いません)
"zoom": 14, "latitude": 35.795, "longitude": 139.9061,

オリジナルのGeoJSONファイルから、上記2.1でコピーした内容(いちばん外側の{と}を削除したもの)を下記欄に上書きで貼り付けます。
... GeoJSON ...

「変更を公開」ボタンを押すと、間違いがなければ以下のように地図が表示されます。

エラーが出た場合は{}の係り受けが合っているか、カンマが抜けていないかなどフォーマットを確認してください。地図の初期表示位置が大きくずれている場合などにはズームレベルや緯度経度を修正してその位置を合わせてください。

2.3 ウィキペディアで地図表示

地図を表示するためのテンプレートとしてmaplink2を使います。以下のように記述して、ウィキペディアの該当記事に貼り付けます。
{{maplink2|frame=yes|zoom=12|frame-lat=35.7950|frame-long=139.9061|text=千葉県東葛飾郡明村の行政界|from=Japan/Chiba-ken/HigashiKatsushika-gun/Akira-mura.map}}

これで地元の人でも何となくしか分かっていなかった旧明村の区画が明確に把握できるようになりました。

テンプレートに設定するパラメータなど詳細はこちらを参照してください。

なお、対象エリアは編集時にプレビューでは表示されますが、保存するとすぐには表示されないことがあります。動的な処理になるため何らかのキャッシュが効いているようです。私の経験では1日後に反映され、表示されるようになりました。

3 補足

いわゆるオープンデータで、GeoJSON形式に変換できる地理データなら行政界に限らず全て同様の手順で利用できます。データが無い場合は自分で作るしかありませんが、アバウトな境界線で事足りるのであればgeojson.io などのサービスを利用して手書きで地理データを作ると良いでしょう。

次回はウィキデータ編を予定しています。

4 参考情報

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