前回(2017)は統計ツールOpenStreetMap Analyticsの道路距離数が計算されないというissueにより建物数だけ前々回(2016)と比較したのだが、その不具合が解消されたのでSotm Japan 2018開催とOSMの14歳の誕生日(の翌日)というこのタイミングでシリーズ3回目の統計をとってみた。
都道府県別OSMマッピング状況表_20180813
2016年の表と2017年の表に2018年8月の分を追加したものがこちら。M列以降が今回追加分。
概況
建物数については前回、対前年比130%だったが、今回は年末ではなく8月の段階ですでに対前年比135%と昨年を上回る増加ペース。
道路距離については2016年との比較になるが対前々年比102%と微増。一部2016年より減っている都道府県もあるが、離島のある都道府県でエリア指定が多少間違っていたり、統計ツールの不具合修正時に多少ロジックが変わった可能性もある。それにしてもほとんど道路距離が伸びていないということはかなり描き尽くされて更新フェーズに入っている状態といえる。
建物数
対前年比伸び率上位の都道府県
トップの高知県はなんと556%、2位の青森県は430%。アクティブなマッパーが登場したということか。いいですね。地域コミュニティの立ち上がりに期待。3位は岡山県で311%。クライシスマッピングが立ち上がったところはやはり急増の傾向は明らか。以下対前年比200%までピックアップすると佐賀、石川、京都、富山の順。
人口10人あたりの横並び比較
人口10人あたりで建物数を横並び比較すると、2軒以上が静岡県、鳥取県、北海道、福島県の順となる。1位の静岡県と3位の北海道はTop 500 in Japan last 2 months (order by map changes)の上位ランクマッパーがカレントで牽引しており、2位の鳥取県は2年ほど前のクライシスマッピングで一挙にコンプリート率を上げ、4位の福島県は2年以上前から複数のアクティブなマッパーが国内をリードする形で早くからコンプリート率を上げていた。
この比較は、実際に存在する建物をどの程度OSMに描き込めているか、コンプリート率の目安といえる。
道路距離
対前々年比伸び率上位の都道府県
道路密度(OSM道路距離/面積)による横並び比較
東京都、大阪府をはじめとしていずれも大都市圏である神奈川県、埼玉県、愛知県、千葉県と続く。
こちらの比較も、実際に存在する道路をどの程度OSMに描き込めているか、コンプリート率の目安といえる。
コンプリート率をざっくり仮定してみた
ゴールが見えないまま走り続けるのはツライ。日本の建物や道路はどこまで描いたらいったんコンプリートと言えるのだろうか。
建物
前々回の記事にあるようにestatの平成25年住宅・土地統計調査では総住宅(人が住める建物)数が6063万戸となっており、おおよそ日本の人口の半分の数字に等しい。住宅も戸建てと集合住宅があり、住宅以外の建物もあることなどからこれだけでは正確な推計は難しいが、ここではプラスマイナスでざっくり日本の建物の総数は人口の半分の数、と仮定する。
そうした場合の建物のコンプリート率は以下の通り日本全体で13.7。
静岡県、鳥取県、北海道、福島県の順に60%から50%程度の達成率となる。
ざっくりした推計なので当たり外れはご容赦願いたい。
道路
道路については、2011年前後のYahoo/ALPSインポートでかなりのコンプリート率となったが、現状はその位置を修正したり、新しく開通した道路を追加したり、住宅街の道路、農道・林道、小道、歩道といった小さな道を描き足すことが多いと思われる。
道路統計年報2017によれば道路総延長に対して歩道設置道路の延長が20%ほど。これにOSMでいうresidential以下の道路が残り10%ほどあると仮定して、現状70%程度のコンプリート率(車道+歩道)で残り30%ほどという状況ではないだろうか。
こちらは建物よりは精度が高いと思われるが、同様に当たり外れはご容赦願いたい。
その他
統計ツールにはamenityとriverの統計も追加されたので、今回から拾ってみた。
POI
現状はamenityタグの件数をカウントしているだけで、shopなど多くのタグが抜けているが、POIが多くマッピングされているかどうかの目安のひとつにはなりそう。
京都府、山形県、鳥取県、山梨県、高知県、徳島県、奈良県、神奈川県、宮城県、静岡県、といった順。
河川
河川距離は多くの都道府県で、道路距離の1/5程度であった。
詳細分析してみたい方はスプレッドシートをコピーしてご自由にどうぞ。CC0としています。